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「ご冥福をお祈りします」の意味と正しい使い方を葬儀屋さんが教えます




「ご冥福をお祈りします」の意味と正しい使い方を説明します。
さらに葬儀の現場の経験を元に、実際お葬式ではどのように
「ご冥福をお祈りします」
が使われているのかについても解説しています。

結論 「どの宗教かは気にしない。弔電で使う」

お急ぎの方のためにまず結論から。

「ご冥福をお祈りします」は
「死後の幸福をお祈りします
」という意味です。

一部で言われている
「冥福」という言葉はキリスト教や浄土真宗で使ってはいけない、という「葬儀知識」ですが、
お葬式に参列される方は気にしなくても良いと思います。
しかし「ご冥福をお祈りします」は主に弔電の中で使われる言葉なので、
実際遺族に対する挨拶は「ご愁傷様でございます」を使う方が無難です。

以上が結論。

以下、詳しい解説です。

弔電

冥福の読み方は「めいふく」

冥福の読み方は「めいふく」です。

当たり前とお思いかもしれませんが、意外とネット上では、↓こんな間違った漢字や読み方で検索をかける人が多いのです。

「ご宴福をお祈りします」
「ご幸福をお祈りします」
「ごしゅうふくをお祈りします」
「ごほうふくをお祈りします」
「ごえんふくをお祈りします」

全部間違いです。

「冥」の意味

葬儀の司会をやっていたある日、弔電(お葬式のときに送る電報)を読んでいて、ふと思いました。

「故人の御冥福をお祈りします」
の「冥福(めいふく)」って何だ?

弔電の文章やテレビのニュースなどのよく使われる「冥福」という言葉ですが
ふだん何となく使っていて何となく意味は分かるのですが、
ちゃんと調べたことはありませんでした。

「福」はなんとなくわかりますが「冥」という言葉の意味は?

まず「冥」を広辞苑で引いてみます。

「冥」・・・
①くらいこと。くらがり。やみ。
②道理にくらいこと。
③奥深いこと・例「冥想」
④目に見えない神仏の働き
⑤死後の世界 冥府

お坊さんが、遺族からいただいた御布施に領収書を書くとき
領収書の項目に「冥加料」って書くときがあります。
(えっ、お坊さんがそんなことするの、と思われた方もいると思いますが、書くのです。
相続税が発生するご家庭の場合、お寺の御布施も相続税控除の対象になるので、領収書が必要になります)
冥加っていうのは「○○冥利に尽きる」という使い方と一緒で、
神仏のご加護(守ってくれること)を指します。
で、冥加料っていうのは神仏の加護に対する御礼、
ってことで社寺へ納めるお金のことです。
これは「冥」の④の使い方ですね。

一方で主人公を絶体絶命の状態に追い詰めた悪者が言うせりふ
「冥土のみやげに教えてやろう」
の冥土(または冥途)ですが
広辞苑によると
「死者の霊魂が迷い行く道。また行き着いた暗黒の世界」
ということになります。
これは「冥」の⑤の意味に近いですね。

冥福の意味

さてここまで理解できたところで
「冥福」の意味です。

同じく広辞苑より
「冥福」・・・「みょうふく」とも読む。
①死後の幸福。使用例「冥福を祈る」
②人の死後の幸福を祈るために仏事を修すること。追善。

ということになります。

というわけで
「御冥福をお祈りします」は
「(故人の)死後の幸福をお祈りします」という意味になります。

冥途

冥福という表現は宗教上問題ない

さて、この冥福という単語は何か特定の宗教から生まれた言葉ではないので
オールマイティに使えるはずなのですが、こういう意見もあります。

「冥」という字は(暗くぼんやりしてはっきりと分からない)
死後の世界を連想させる。
だから確実に神の国に逝けると考えている一部のキリスト教の場合
阿弥陀如来の他力本願により極楽浄土に逝けると考えている浄土真宗の場合
使わない方が良いのでは、

という意見です。
この意見は結構見かけます。

これに対して私は
実際は、「冥福」という表現を使っても問題はない
と考えています。

そもそも「冥福」の「冥」にはたしかに 先程述べたように
①くらがり や ⑤ (はっきりしない)死後の世界
というネガティブな意味もありますが、それ以外に
④目に見えない神仏の働き
という意味もあるのですから、
冥福という言葉を使ったからといって
一概に失礼とは言えないと思います。

葬儀屋さんという仕事柄、キリスト教や浄土真宗のお葬式の最中に
「御冥福をお祈りいたします」
という文言の入った弔電をこれまで何百通も代読していますが
宗教者から指摘されたことはないです。
(仏教の葬儀の弔電に、キリスト教の言葉である「天国」の文字が入っているときは
さすがにお坊さんの許可をもらいますが)

それから横浜市の火葬場では、
遺族に渡す書類を入れる封筒に、ずっと前から
大きく「ご冥福をお祈りいたします」と印刷しています。
もし致命的な問題があるのなら、
上記の宗派の方が抗議をしてやめさせているはずです。

つまり
キリスト教や浄土真宗の場合「ご冥福をお祈りします」を使ってはいけないという説は、
冠婚葬祭のマナー本で良く書かれている
「○○宗の方の焼香の回数は○回」
というのと同じで
信者の方はそれほど気にしていない
というのが実情だと思います。

雑誌のネタとして、もしくはスノッブな一部の人たちの発言として
「冥福」 を使うべきではないという事が言われているだけなのではないでしょうか。

だから実際のところ
「御冥福をお祈りします」の使い方に関しては
特に気にしなくても良いと思います。

葬式

冥福は主に弔電の文章で使う

お葬式の挨拶として遺族に面と向かって
「○○様のご冥福をお祈りいたします。」
と言ったなら、なんとなく違和感を覚えるはずです。

なぜなら
「御冥福をお祈りいたします」というのは
「哀悼の意を表します」や「お悔やみ申し上げます」と一緒で
口語体(会話で使われる言葉)ではなく、
弔電の中で使われるのがふさわしい言葉(弔電用文語体)だからです。

「御冥福をお祈りいたします」自体がお葬式という「非日常」な状況で使われるうえに、
さらに「文語体」を口にすることになるので、
実際葬儀のときの挨拶として使われるのを耳にすると
少し不自然というか窮屈(きゅうくつ)な印象をうけます。

もちろん
言う方も言われる方も、
お葬式という状況に慣れていなくて気持ちにも余裕がないので
はっきりとおかしいって、感じることはないのですが。

ただ、できれば、遺族に対するお葬式の挨拶の際は
「この度はご愁傷様でございます」
を口にするのが一番しっくりくるのではないでしょうか。

シチュエーション別に見ると、
実際、お悔やみの言葉は下記のような使い分けをされます。

ご冥福論争とは?

ネット上で定期的に発生する「ご冥福論争」について解説しておきます。

このブログのアクセス記録を見ていると
ときおりこのページに普段の10倍近いアクセスが集まるときがあります。

「うわっ炎上したのか?」とドキッとするのですが
原因をたどっていくとツィッターでこのページが取り上げられて
アクセスが集まっているようです。

リンクをたどってみると下記の現象が起きています。
→有名人が亡くなる
→ニュースを聞いた人が「冥福を祈る」とツィートする
→宗教的に冥福は使っちゃいけないと諭(さと)す人が現れる(ご冥福論争勃発)
→いや、使ってもいいんだよ、と反論に私の記事が引用される
という現象がツィッター上で毎回起きているようです。

ご冥福を使用禁止にするのは無理がある

聞きかじっただけのスノビズムで使うなと言っている人は置いといて
自分の信仰する宗教の教義と合わないので、冥福を使われるのは不愉快、
と実際におっしゃっている人がどれくらいいらっしゃるのかというのは私には分りません。

一例としてご冥福禁止論者の論理構造を挙げるとこんな感じでしょうか。

A教義では極楽浄土OR天国に行けるとされている

B冥には(暗くぼんやりした世界)という意味があり
Aの教義と相反する表現である

Cウチの教義とは合わない

D(世間に対して)使うな

こういうふうに考えている人が仮にいたとしたら、教義を理由に
冥福の使用禁止を世間に認めさせるのは難しいと思います。
なぜなら
「冥福」という言葉が教義(もしくは教団)の内部ではなく、外部にある言葉だからです。
インターネット1

確かに一般論としては
その教団の教義の内部から生まれた言葉が外部でも使われるようになってしまい
そのうち意味が変容してしまう、
それに対してそもそもこの言葉の意味はこうだよ、と諭(さと)す
というのは当然のことだと思います。

たとえば
神学論争(決着の着かない空論)
他力本願(人頼み)
というように、世間で本来の意味とは異なる使われ方をされるようになったことに対して
それぞれの教団の宗教家が抗議するのはよく分かるのです。

でも冥福って言葉は、そもそも特定の教義の内部の言葉ではなく、
最初から世間で使われていた普遍的な言葉ですよね。

外部にあった言葉の意味に対して、
その言葉の定義はうちの教義に合わないから使うな
ということを世間一般に求めるのは
ちょっと無理があるように思うのです。
(前述したように実際そんな主張をしている人がどれくらいいるかはよく分からないのですが)
もちろん、合わないって主張するぶんには別にいいのですよ。
でもそれが世間に受け入れられるかっていうと難しいと思うのです。

上記の論理をどうしても通すとなると
そもそも前述した論理構造の
A教義では極楽浄土OR天国に行けるとされている
が真実であることの「客観的な」証明が必要になってしまうのではないでしょうか。

そんなわけで
やっぱり他人が冥福を使うことを差し止めようとするのは、ちょっと無理があるかな
というのが私の結論です。

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お葬式で使ってはいけない言葉