(PR)

流通ジャーナリスト金子哲雄さんの葬儀について思う




流通ジャーナリスト金子哲雄さんの葬儀のお礼状の内容が話題になっているようです。
http://megalodon.jp/2012-1006-1118-49/www.nikkansports.com/entertainment/news/f-et-tp0-20121004-1027694.html

自分の死を覚悟し、腹の据わった入念な最期の迎え方をした事例としては過去

入川保則「自主葬のすすめ」を読んで
「葬儀」という作品
映画「エンディングノート」の衝撃

という記事で紹介してきました。

私は普段テレビを見ないので金子氏のことは
訃報で初めて知りしました。

皆さんと同じく
なかなかここまではできないな、
という感想です。

訃報の直後ツィッター

キャプチャ

とつぶやいてしまったのですが
この文章の内容を読むと
葬儀屋さんの対応にも満足しているようで良かったです。

葬儀屋さんの立場として申し上げますと
自分の余命を悟っている方との事前相談というのは
精神的にとてもつらいものです。

お客様の期待に応えなければ、というプレッシャーでの中で
いつ飛び込んでくるか分からない訃報を待つというのは
ちょっと何とも言えない気分です。

今回金子氏は葬儀屋さんの名前を挙げて謝辞を述べています。
私はお礼状で名前を挙げられたことはないですが、
遺族代表の挨拶の中で、謝辞を述べていただいたことが何度かあります。

その時の自分の気持ちから類推すると
金子氏のこの葬儀を担当した葬儀屋さんの今の心境は
「うれしい」とか「やった」とかではく
「ホントにこれで良かったのか」「もっと何かできたのではなかったか」
とむしろいたたまれない気持ちなのではないか、
と思うのです。

因果な商売、という言い方がいいのかどうかわかりませんが
葬儀屋さんはこの機会を与えてくれた故人に感謝して
この気持ちを糧に成長していくしかないのでしょう。

金子 哲雄「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」を読んで

先日お亡くなりになった流通ジャーナリスト金子哲雄氏が

亡くなる間際にお書きになった本の紹介です。

「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」金子 哲雄

以前「流通ジャーナリスト金子哲雄さんの葬儀について思う」という記事を書きましたが
この本を購入した動機は二つあります。

一つは金子氏がどのように自分の死と向き合ったのか
二つ目はどのように葬儀社を選んだのか

以上二点を知りたかったのです。

どうして金子氏がここまで死と向き合うことができたのかという点についてですが
兄弟4人の内3名がすでに亡くなっていらっしゃるとのことです。

きっと日頃からいろいろ死について考える機会があったのだと思います。

私の母も金子氏とほぼ同じ年齢で亡くなりました。
そのため私も母を亡くしたときからずっと自分の死を考えています。

もちろん考えることと実際に受けいれることとは
雲泥の差があります。
「ひたすら泣いた。しまいには泣いていることさえ分からなくなるほどだった」
というような重い文章を読むと、
果たして自分は金子氏のように死を受けいれることができるのかどうか。

次に二つ目のどのように葬儀社を選んだのか、という点についてです。

本文から引用です。

「 まがりなりにも、「流通ジャーナリスト」として情報を発信してきた。
自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。

 賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。
自分が何度も口にしてきた台詞だ。葬儀は、人生の幕引きだ。
これも含めて、人生なのだ。その最後の選択を間違えたくなかった。」

「では、葬儀はどうか。
これは間違いなく、一生に一度だ。しかも葬儀には、当の主役はいない。
だから残された身内で揉めることがままあるというのは前述した通りだ。
だから、主役の意思を生前に確認しておくことが大事なんじゃないか。
私はそう考えた。どうせ意思をはっきりさせるなら、
ついでにプロデュースしてしまえばいい。そう思ったのだ」

ということで葬儀について考えられたようです。
この考えは実に正しく立派だと思います。
望んでいても実行に移せる人は本当に一部だと思うので。

この「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」には金子氏の生い立ちも載っていますが
頭を使って極めて戦略的に生きてきたことが分かります。
特に主婦目線での経済評論というポジショニングがブルーオーシャンだった
っていうのは確かにそのとおり。
こんなこと(参考記事:「Never Ending Note 未来に残すエンディングノート」(集英社)を買ってみました)を書いている自分がいかにセンスが無いかという・・・

このように頭の良い、商品の価格にこだわってきた流通ジャーナリストの金子氏が
どのような基準で葬儀社を選んだのか、
葬儀社に勤める人間としては大変興味を持ったのです。

しかし
その答えは載っていません。

「葬儀社の方を自宅に招いた」から話が始まってしまうのです。

最初地元だからという理由で選んだのかと思ったのですが
「偶然とは言え、病院も同じ区内、葬儀社も同じ区内」と書かれているところをみると、
最初から地元の葬儀社という基準で選んだわけではないようです。
菩提寺の契約葬儀社なのかと思ったのですが、

葬儀社から菩提寺を紹介されているので、それも違う。

病院はセカンドオピニオン、サードオピニオンと複数まわっているのに
(記述から読み取る限り)葬儀社には1社しか会っていないようなのです。
時間と体力が限られていたというのは分かるのですが。

葬儀屋としての自分にとって
ほかにも何点か引っかかる所はあります。

構成作家に葬儀のシナリオを依頼しようとして事務所のスタッフに
「式次第が決まっているから」と止められてしまう
というくだりがあります。

これは残念です。

お経を読んでいる所以外では、いかようにも演出?のやりようがあります。
司会の文言、ナレーション、いろいろできたはずです。
ましてや住職は理解のある方なのだから。
(もちろん、依頼された構成作家にかかるプレッシャーを想像すると
きついものがありますが)

それから
院殿居士の戒名を高野山からもらってそれが励みになるというのも
個人的にはちょっと複雑な心境です。
とこのように葬儀屋さんとして思うところはいくつかあります。
ただ最後に書かれた奥さんの手記を読む頃になると
まぁそんなことは、どうでもいいか、と思えてきます。
それくらい奥さんの手記は胸を打つ内容です。

本人と遺族が満足してくれたのだから、それで万事OKだろうと。

なにより「葬儀」が、
ちゃんと本人と遺族両方のお役に立てたのが
葬儀屋さんとしてはうれしいです。

金子哲雄氏の御冥福をお祈りいたします。











16 件のコメント

  • 金子様は家族に看取られ多くの参列者に見送られました。
    その一方、核家族化や単身者の増加で無縁死する者も増えますね。
    海外はどんな状況なのかな。
    日本は死まで格差社会ですね、無情なものです。

  • 金子氏は「ダイエットしている」とTVで言っていましたが、やはりご病気だったんだと今回の報道を見て納得しました。急激に痩せられたのでオカシイとは思っていましたが。なんとなく、金子氏のこの性格から癌になるんじゃ?って。

    私の姪も癌で4年前に亡くなりました。18歳でした。
    生前中、納棺の際には、これを入れて欲しい、告別式のBGMはこれ等、姉に色々注文つけていましたよ。会いたい人にも会っていたし、行きたいところにも行っていました。
    ある意味、長生きすればいいってものでもないな、自分のタイムリミットが判るのも悪くないと思いました。

    ひとつ気になったのは『早期リタイア』って違うと思います。自死じゃないのに(T_T)

    セレモニーみやざきさん、事前相談増えそうですねってか、業界全体の事前相談件数が増えるかも?

    私も「エンディングノート」を書こうと最近考えています。死期って判らないから(T_T)

  • 猫丸様、
    > 海外はどんな状況なのかな。
    ちゃんと調べたことはないのですが
    先進国ほど孤独死が多いイメージがありますね。

  • locomaco様、
    確かに、癌は「締め切り」があるのでいい、とおっしゃる方がいらっしゃるようですが
    そこまでの達観に至るまでの苦しみは想像を絶しますね。

    果たして自分なら・・・
    といつも考えてしまいます。

  • なるほど、先進国はどこも核家族化なのかな。

    金子家には子供がいないそうですから、跡継ぎもいない事になりますね。
    先立つ側はいいかもしれませんが、最後に残された者は大変ですね。
    特に長生きして残った高齢者は、身寄りもなくもしもの時、世話してくれる人もいないでしょうから困った事になりますね。

    葬儀とは残された者のカルマなのかもしれませんね。

  • 韓国は世界でもトップクラスの出生率の低さであり、5年前に三星(サムソン)研究所から「2500年には韓国から民族が消滅する」(中国人だけが増殖)と発表されており、民族は絶滅危惧民族ですが葬儀社も絶滅危惧職種です。

    すでに韓国の大都市での葬儀の90%以上は”病院葬”であり、病院で死亡⇒病院で葬儀⇒火葬場が一般的な流れになり、少子高齢化、核家族化が進むと、施設死亡が孤独死を防ぐ最大の策であることから、医福施設葬⇒火葬⇒合祀が多くなるでしょう。
    何を持って先進国とするのかで異なりますが、福祉先進国では孤独死は少ないです。

    核家族化=葬儀の縮小は必然的な流れであり、施行件数増加に固着すると「落とし穴」に落ちると思います。

  • 猫丸様、
    > 最後に残された者は大変ですね。
    金子さんほどの方ならその辺りの備えも十分にされていたかと。

  • prof様
    > 「落とし穴」に落ちると思います。
    私の周りにも首までハマって人、たくさんいます。

  • 金子氏の葬儀は「Haier型」、国内の葬儀社(特に大手と中規模)は「Sharp型」に分類され、かなり危ない状態です。
    Sharpは「売れば売るほど損」(原価率99%)であり、過剰な投資や固定経費が経営を圧迫してROC企業が筆頭株主。(生産⇒在庫⇒販売)
    Haierは「売れば売るほど儲かる」ために世界1位へ。(注文⇒生産⇒納入) 在庫ゼロ方式
    (必ずしも為替問題だけではない)

    金子氏の葬儀を行った葬儀社も「Haier型」。
    大手や互助会は投資(箱物や設備、営業)が大きくなり、中規模業者も負けじと投資や経費拡大。
    小規模は「力とカネが無い」ので無理が出来ずに、相談や受注から「依頼者に合った葬儀を組み立てられる」との利点もあり、金子氏もこの辺りに気が付いたのかも知れません。

    病院であれば「病床利用率70%」が経営破綻のラインですが、我が家の近くの複数の葬儀社斎場は25%以下(施行時以外は事務所も無人)ですが、新たな
    斎場建設をしており、他人事ながら不安。
    (互助会2社が参入し、立派な斎場を建てたので)

  • ある新聞記事に救急電話の中に、寂しいから話し相手になって欲しい、リモコンを落としたから拾って欲しい等、救急搬送に関係ない依頼が沢山あるとの事。
    おそらく身寄りの無い高齢者に多いかと思います。
    葬儀社にも似たような事あるでしょうか?
    日本は身寄りの無い高齢者が激増するんだろうな!?
    中国なんか一人っ子政策で日本より身寄りの無い者が増えるでしょうね!!

  • prof様、
    今回いただいたコメントともちょっと関連する記事を書いているところです。
    顧客目線からの中小優位説に対する不服申し立てなんですが・・・

  • 猫丸様、
    > 葬儀社にも似たような事あるでしょうか?
    あります。
    急に連絡が来なくなると心配になるのですが。

  • 物理教師様は、その様な電話がきた場合、どんな対応を取るのでしょうか?
    葬儀社や担当者によって、まちまちと思いますが。
    便利屋さん向けみたいな内容では、葬儀屋さんも大変ですね。

  • 物理教師様は、今現在のダイハツミライースのCMを見た事あるでしょうか?
    遺言のシーンなんですが、ユーモラスで面白いです。
    ○○ワイド劇場で家政婦は見たのシリーズがありましたが、葬儀屋さんのユーモラスな本を執筆して作家デビューしてみてはいかがですか(笑)
    葬儀屋は見た、なんてタイトル面白いかもしれません。

    ヨタ話しで失礼しました。

  • 猫丸様、
    最近とんとテレビを見ないんでちょっとどんなものかわからないです。
    すいません。

  • コメントを残す