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葬儀の新商品開発が難しい理由




上場している神奈川の互助会 サンライフさんが超高級骨壺の販売を始めました。

新着情報一覧|プレミアム骨壷【公式】
新着情報一覧|プレミアム骨壷【公式】金額は350,000円~1,200,000円(税別)まで
オーダーメイドもあるようです。
制作はあの大倉陶園
陶器に疎(うと)い私でも知っているということは恐らく有名。
MEN’S EXの日本の名品特集記事で知りました。なるほど・・・
これはすごい・・・

でも・・・

ねぇな

今回はこの商品をネタに
葬儀の新商品の難しさ、について語ります。
(俎上(そじょう)にあげてしまったサンライフさん、すいません)
壺

ペルソナを考える

新商品を開発するときは
マーケティングで言うところのペルソナ(顧客の詳細なイメージ)を想定しますが
この商品ではイメージできません。

・横浜山手エリアの高級住宅街にお住まい
・不動産会社経営3代目
・陶器と絵画収集が趣味
・事前に葬儀のことを細かく考えている

というように ありそうな条件挙げてみても
たとえば・・・買うのはこんな人っていうのがリアルにイメージできないんですよね。

「こんな高価な骨壺持ち込まないでよ、割れたら責任問題になるからさ」
と葬儀担当者にクレームをつける横浜市営斎場の職員は
表情すらすごくリアルにイメージできるのに(^^;)

競合を考える

骨壺にはレギュレーションがないので(都内の民営斎場は外部から持込禁止というくらいか)
容量的に問題なければ基本的に何でもいいわけです。
であるなら仮に上記の条件に合致する人が実在したとしても、
自宅でずっと飾っていた○○作のあの壺を使ってくれ、という展開になりそうなんですよね。
つまり他の高級陶器という「競合」がたくさん存在する状態。

あと百歩譲って潜在需要のある人がいたとして、
その人に販売している葬儀社スタッフのフローもイメージできません。

販売オペレーションを考える

おそらく1000件に1件くらいの成功率、と現場のスタッフが踏んでいると、
潜在需要のある顧客が現われても、どう勧めていいかわからないでしょう。

それに葬儀は時間制約があるので、
でまれにに売れる商品はいざっていうとき供給体制に問題が有ることが多いです。
都度発注の場合は間に合いませんとか、
倉庫の在庫を取り出したら瑕疵品だったとか割れてたとか。

そのリスクを現場は分かっているのでますます腰が引ける→ますます売れないの無限ループ
に陥りがちです。

あとあまり考えたくありませんが
墓荒らしの盗難リスクっていうのもあるかもしれない。

戦略無き高価格化というのは、他に策が思いつかないので値下げしますというのと実はあまり変わりません。

ただしこの商品がそうなのかは私には判断つきません。
話題作りを狙っている可能性もあるので

私の考える新商品

ここからは私の考える新商品についてお話しします

葬儀というのは数十年のスパンで見ると結構変化しているのですが、急進的な変化というのはなかなか起こりません。

そのため新商品というのは消費者より1歩先に進んでしまうと受入れられません。
いわゆる全く新しいジャンルを提示してキャズムを越える、ということが難しいのです。

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ほどよく半歩前に出るのが肝要なのですが、このさじ加減が難しい。
もしかして葬儀業界内の大企業ですらシェア1~2%であることを考えると、最初から参入障壁のあるニッチ狙いが正しいのかもしれませんが。

現代仏壇の場合

さて、「半歩先」の昔の成功例としては、現代仏壇ですかね。

仏壇の機能はそのままに、変化した生活様式(マンションの洋間)に最適化させたというコンセプト。

現代的でモダンな祈りのインテリア|仏壇のあるリビング|八木研
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遺骨から作ったダイヤモンドの場合

一方苦戦している例に挙げるのは気が引けますが、
遺骨から作ったダイヤモンドなんかは厳しそうな印象。


葬儀の新商品を考えるときは
現在ある商品の「本質」や「機能」を考えることが重要
「表面」だけをなぞっても絶対失敗します。

たとえば墓に消費者が求めているものは
1.○故人との対話機能
2.○「半」永続性

改善すべき従来のお墓のマイナス要素は

3.×高い費用
4.×遠い場所
5.×持て余す物理的空間

上記のダイヤモンドは1を取り入れ、
4,5のマイナス要素を解消しています。

しかし2と3をクリアできなかったのが失敗かと。
2は「半」永続性がポイントだったのに、「半」ではなく単なる「永続性」にしてしまったのが問題です。
故人を知っている人が生きているうちは、墓(もしくはそれに準ずる機能)が必要でしょう。
しかし故人を知っている人がこの世にいなくなってしまったら、遺骨、もしくは遺骨を象徴するモノは
むしろ土に還って形の無いものになってほしい、と思う人が多いのではないでしょうか。
だから弔い上げという形で50周忌あたりをめどに合祀したり位牌をまとめたり、
という慣習を作り出したのだと思います。
それなのにダイヤモンドは永遠に存在してしまいます。
捨てるわけにもいきません。
余計な「永続性」という機能を付けてしまったのが敗因でしょう。

これが私の新商品

だから
・10万円以下で(散骨するより安い、という価格優位性を持たせるのがポイントの一つ)
・遺骨を圧縮して白磁色の5センチ四方の立方体にして(コンパクトかつ生々しくない程度の遺骨感を出す)
・100年程度の耐久性しかない
という商品を売り出せば墓じまいがはやりだした昨今、売れると思うんですけど、どうでしょ?
立方体











4 件のコメント

  • 大倉は神奈川の企業であり法人営業部(結婚式の引き出物)との付き合い以外にも、
    神奈川県内企業としての「お付き合い」もあるのでしょう。
    商品としてのクオリティーは高いのですが、ビジネス的には?
    話題つくりとしてはOKでしょう。

    実は大倉は、「オーダーメードで骨壺」を造っていました。
    有名人では、黒柳徹子さん。
    黒柳さんクラスですと「青山で葬儀」でしょうので臨海もあり得ますが、「恐らく博善」。
    となると「骨壺持ち込み禁止ですが、特例でOK」でしょう。

    アメリカの様に骨壺と遺骨(遺灰)を自宅に置く習慣があれば良いのですが、
    納骨堂はともかく「墓に入れる場合は疑問」です。(納骨堂もサイズ問題あり)
    ROCでも翡翠で出来た500万円程の骨壺を見たことがありますが、
    「お金は生きてるうちに使う方が良い」と考えていますので、私は廉価で結構です。

  • prof様
    アメリカの様に骨壺と遺骨(遺灰)を自宅に置く習慣
    >アメリカの様に骨壺と遺骨(遺灰)を自宅に置く習慣
    先日見たウォールマートやコストコのサイトが面白かったので
    これで一本記事を書こうと思います。

  • 祖母の納骨の際、骨壺から遺骨を取り出し、ハンカチもしくは懐紙に
    包んでいました。骨壺は法要をお願いした葬儀屋さんが引き取ってくれたのですが、
    もし超高級骨壺を使用していたら。。。

  • はっちゃん 様
    >超高級骨壺を使用していたら。。。
    観賞用に再利用・・・は難しいですよね。

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