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葬儀業界はなぜ教育に力を入れざるを得ないのか




たまの休みには神保町をうろうろします。
そしてデリフランスお茶の水のランチメニューのカレーを食べます。
これが最近の至福の時。

ちなみにカレーはお茶の水店にしかない模様。
中村屋のカレーがあの値段であの味なら、ここのカレーはもっと評価されて良いと思うのですが・・・
ネット上で評価する声をあまり聞かない。
私の味覚がおかしいのかなぁ。
ここのはゴロッとチキンが入っているところなんか、いいと思うのだけどなぁ。

確かに大盛りを注文するとソースポットを二つ持ってこられて、
「食いしん坊」感がハンパなくて恥ずかしいって言うのはあるけど。

カレー

さて今回はカレーの話ではなくて
三省堂本店で買ったこの本の話。

「レクサス星が丘の奇跡」

トヨタの高級ブランドレクサスのトップ店舗を取材した本です。

この手のすばらしいと言われる職場をレポートした書籍はたくさんあります。
ただちょっと意地悪な言い方ですがマスコミ取材を何度も受けたことがある立場からすると
ライターもしくは記者が優秀なら対象が誰であってもそこそこ素晴らしく描くことは可能なのです。
誰にだって最低一つはいいところがありますから。

長年葬儀屋さんをやってると仕事柄、いろんな企業の方とお会いすることがあります。
もちろん私が見たのは一部にしか過ぎませんが、マスコミで取り上げられていたことが本当だったこともあれば異なっていたこともあります。
だからひねくれた私は全部を鵜呑みにせず学ぶべきところと、そこは美辞麗句でしょというところはちゃんと区別するように心がけています。

たとえば
この本の裏表紙に「見返りを期待せずに与えれば必ず返ってくる」という社主の言葉が載っているのですが、これって結局見返りをめちゃくちゃ期待して下品じゃないか 、とかね。

しかしそんな意地悪な見方を差し引いても
基本的にとてもよい職場だと感じました。

同意できる箇所を挙げてみます。

「こんなにまでしてくれて、どうもありがとう」と感謝されたとする。
しかし、本当はどう思っておられるかわからない。
いわゆる「おせっかい」や「有難迷惑」かもしれないが、レクサス星が丘のお客様は、そんな本意はけっして口にしない。
逆に、「ああ、若い人たちが、私のために気遣ってくれているな。
ここは喜んでいる気持ちを伝えなくては」と、反対に気遣ってくださることもある。

普段は、サプライズよりもコツコツ、サプライズよりもプラスワンを心掛ける。そうでないと、お客様を喜ばせることは長続きしない

この辺りは「演出」を手放しで肯定している葬儀業界と比べて、大人だと思いました。

この点は葬儀業界も見習うべきです。
(参考記事:葬儀業界の老害のひとりごと その2

でも葬儀業界も負けてはいません。

この本では素晴らしいサービスのエピソードの数々が紹介されています。
レクサス販売店と葬儀業界全体を比べたら到底勝てないでしょう。
しかし葬儀業界もトップクラス同士に限っていえは全然負けていないと思いました。
過酷な労働条件でやっているぶん、葬儀業界の方が頑張ってるかもしれません。
世間の方には信じてもらえないかもしれませんが。

サービスとは、感謝の心を伝えること。
コンシエルジュは「わかりません」とは言わない仕事。
サービスとは、先に「心」ありき。
売ろうとせず、お客様にとっての一番を考える。
そして、お客様から頼まれないこと。
サプライズよりもプラスワン。
すべてのエピソードが一本の糸で繋がった。ここに共通するのは「思いやり」の心だ。

私が企業を取材した本で知りたいのは自分の職場での再現性です。
善き経営者がいて善き従業員がいて、めでたしめでたし、では物足りないのです。

この本ではまとめとしてレクサス販売店の素晴らしさの秘密が思いやりの心にあると分析して終わっています。

しかし思いやりの心を持つにはどうすればいいんでしょうか

文中にも

だから、いくら深掘りして「そこまでのサービスをするモチベーションの理由」を取材しようとしても、「不思議なことを訊く人だなあ」と首を傾げられてしまうのだ。取材は、一つの壁に当たった。

という、とまどいの記述があります。
この本ではそれを職場環境に求めているようです。

しかし私は、最大の要因は思いやりの心を持ったスタッフを採用できたからではないか、と考えています。
後天的な教育で思いやりの心を養うのは不可能です。
葬儀屋さんの仕事を例に挙げれば
悲しみに暮れる遺族を前にして何も感じないスタッフに対して思いやりを持てと説いても効果はありません。
きっと他に向いている仕事があるはずというアドバイスぐらいしかできないでしょう。

トヨタそしてレクサスという確立したブランドがあるために優秀な人を選べるということ
これが強さの秘密であると私は考えました。

もちろん優秀な人を選ぶためには目利きが必要です。、
ビジョナリーカンパニー2でも言われてることですが「誰をバスを乗せるか」
という問題です。

以前「一に採用、二に教育、三に配属」 というリクルート発祥と言われる言葉を紹介しました。
採用業務が主力分野であるリクルートだから言える言葉です。

こういった社員教育に生かせそうな本が出版されたり、教育系コンサルタントが幅を利かすのは、世の中の仕組みとしてそこに需要があるからです。
需要を言い換えるなら「教育でなんとかなるという幻想」です。
その需要に供給することによって、出版業界やコンサルティング業界の飯の種ができます。
採用したときの素材で決まると言ってしまっては、彼らの出番がなくなってしまいます。

教育なんてしなくていいといっているわけではありません。

教育は大事です。
経営者の教育方針が間違っていればその優秀な人材を潰してしまう可能性もあります。

でも教育が採用に優先することはありません。

本書でも述べられている通り差別化されたレクサススタッフのクオリティの高さは熱心にマニュアル教育をしたからではありません。
そうしたいというマインドの人間を集めているからです。
採用に比べると教育は非力だなと思います。

大学生の時の同級生に誰もが知っている進学校の出身者がいました。
もう一つ上のランクの大学にも受かっていたのですが、特待生扱いになれるということと、最終的に弁護士になるのであれば出身大学は関係ないという理由で入学したということでした。
彼曰く、彼の高校は大学受験対策に特化した授業してるかというとそうではないと。
賢いやつが集まってるので、ほっといても勉強して大学に受かるから授業は教師の趣味に走ったことを、結構やっていると言っていました。
つまりあの高校の優位性は教育内容ではなく、「優秀な生徒が集まること≒採用」にあったのです。

そしてなぜその進学校が優秀な学生を集められたかと言うと、素晴らしい高校であるという世間一般の認知があったからです

葬儀業界人手不足です。全体論としてレクサスレベルの人材が来るわけではありません。
ブランド力のある企業というのもありません。
だから逆説的になりますが、採用がうまくいかないなら、次善の策とは分かっていても教育を頑張るしかないのです。

葬儀業界の結論としては教育を頑張る、にならざるを得ないけれども問題の構造を見誤ってはいけない、という話でした。

それにしても来年(2018年)も好景気で売り手市場で葬儀屋さんの採用はますます厳しくなるのだろうなぁ。(T_T)











2 件のコメント

  • レクサス星ヶ丘店、前を通ったことはあります(笑)
    素晴らしい人材を採用出来ているのでしょうが、やはり条件の良い職場だからでは
    ないでしょうか。東海地方ではT社さんと、そのグループは大変な優良企業ですから。
    仕事のレベルの高さも、衣食足りてなんとやらの面があるかと。
    T社さんは下請けには大変厳しい、を通り越して無茶ぶりすごいですけどね。

  • はっちゃん 様
    >レクサス星ヶ丘店、前を通ったことはあります
    レクサスに乗っているとドアマンが礼をしてくれるらしいですよ。

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