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世田谷区みどり会館の失敗




先日都心部に足を伸ばして、ひさしぶりに世田谷区の公営式場であるみどり会館で担当を持ちました。

斎場を作るのはたいへん

みどり会館は確か10年ほど前に建設されたと思います。
他の区の公営式場に比べてちょっと式場使用料が高め(84,000円)なのが、世田谷区らしいというか。
それでも民間の式場に比べればずっと安いんですが。

複数の会館建設を経験した葬儀社であれば、物件探しや近隣住民との交渉などの難しさは良くお分かりかと思います。

たくさん式場を持っている大手葬儀社でさえ、ある葬儀会館のまわりには
「葬儀会館建設反対」の幟(のぼり)を近隣住民に立てられているのを見たことがあります。
基本的には実害がどうこうというより、生理的な嫌悪感によるNo!なので、
一度こじれると説得が難しいのです。
葬儀会館建設の住民説明会の時に
「地価が下がるかもしれない」
という意見にはデータを見せて説得することが可能です。
しかし
「子供の教育に悪い!」
とヒステリックに叫ぶ若い奥さんにはお手上げです(←実話)

そういう実態を知っているので
駅から徒歩で参列できないという立地のまずさには目をつぶって、
世田谷区が式場を作ったという点は、高く評価されても良いと思います。

みどり会館は商圏を読み違えています

しかし運営において、行政の限界というか、ダメな部分が見られます。
それは、セクショナリズムのせいか、
みどり会館の商圏を読み違えている点です。

大体、都内の場合、葬儀式場の商圏は半径3キロのエリアになります。
その式場に依頼する遺族または故人の居住地の8割はその式場の半径3キロ圏に入ります。
この図はみどり会館を中心として半径3キロの商圏を描いたものです。
みどり会館

みどり会館は世田谷区の区営斎場なので、
世田谷区民しか使用が認められていません。
(故人もしくは二親等内の遺族が世田谷区民に限る)

上記の地図を見て頂ければ分かりますが、世田谷区民にしか使わせないということは、みどり会館の商圏の3分の1の人々にしか、みどり会館を使わせないということなのです。

みどり会館が予約待ちでいっぱいという使用状況ならともかく、駅から徒歩で参列できない立地のまずさも影響して
(商圏を見るときは物理的な距離より移動時間ベースの方が精度が高いと考えられています)
式場の回転率は特に良いとは言えないようです。

みどり会館は、三鷹市と杉並区を巻き込んで、商圏内の人口比に応じて建設費を負担させ、三鷹市と杉並区の人にも使わせれば良かったのでないでしょうか。
その方が、建設費を抑えられ、なおかつ公共サービスの理念に添っていると思うのですが。
(ちなみに三鷹市と杉並区は公営式場を持っていません。)

逆に大田区にある臨海斎場の建設の際には、世田谷区はまんまと建設費を負担させられています。
臨海斎場は目黒・大田・品川・世田谷・港の5区が建設費を負担して数年前に建設されました。
位置関係はこの地図をご覧ください。
この図は臨海斎場を中心として半径3キロの商圏を描いたものです。
臨海斎場

これは世田谷区の葬儀社に勤める葬儀屋さんから聞いた話です。
ある日世田谷区役所の人がやってきて
「臨海斎場の世田谷区民の使用率が低くて困っているのですが、何が原因だと思いますか?」
と聞かれたそうです。
その葬儀屋さんは一言
「遠いから」
と答えたそうです。
見たままですよね(^^;)

上記のような失策は、葬儀社の経営者にちょっとリサーチすれば避けられるはずなんですけどね。

安置施設は評価します

いろいろ世田谷区を批判しましたが、最後にフォローを。

みどり会館がカプセルホテル型とはいえ霊安室を設置している点は高く評価します。

死亡人口の増加・家族葬や直葬の増加・都市部の持ち家率の低さ
などによって、病院で亡くなって通夜を執り行うまでの
御遺体の安置場所の不足は、深刻な問題

になっています。
それにも関わらず、公営の式場や火葬場は霊安室を持たないところが多いのです。たとえば横浜市営斎場は4カ所ありますが、いずれも霊安室がありません。
24時間遺体を預かることの管理責任を考えてのことかもしれませんが、
行政はもう少し霊安室不足問題を真剣に考えるべき
だと思います。











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