二子玉川のiTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズで2022年5月27日(金)~6月8日(水)まで行われている
「END展~死から問うあなたの人生の物語~」
に行ってきました。
「数少ない休みの日に葬儀屋さんが死の展覧会に行くなんて、F1レーサーが休みの日に長距離ドライブするくらい酔狂」(意訳)
と妻に見送りの言葉を吐かれながら、向かった二子玉川。
密を避けるために事前に登録が必要ですが、平日なら前日でも予約可能みたいです。
この展覧会の特徴は
「死を考えることで生き方を考える、という重いテーマに、漫画を使うことで参加させやすくした」
という点にあります。
とはいえ日本の漫画は豊潤でレベルが高いため、参加しやすいからといって決して浅いわけではないのです。
私が訪れたときは、客層の9割が、30代から50代の女性。
経済的に独立していて、普段から本を読んでいそうなタイプの方が多いです。
終活を始めるにはちょっと若めなので、この展覧会の目論みは成功していると言えるでしょう。
それにしても、男どもは、ホントこういうの嫌がるよね。終活セミナー講師をしていてそう思います。もちろん嫌がるのは個人の自由なのですが、イヤなことから目を背けたところで、消えてなくなったりはしないですよ。
あなたの存在は無くなるが、あなたの死は残るので。
入ってすぐは、お約束のお題でお出むかえです(笑)
うつり込んだバカボンがいい味だしてます。
ちなみに写真下の円グラフのアンケート結果ですが、約半数がお葬式支持派。
年齢層を考えると、葬儀支持派がやや多いという第一印象でした。
しかし受付の方にたずねると、回答者の母集団は、前回六本木で開催された同内容の展覧会の参加者とのこと。
こういう展覧会に来る人は、死に対する意識高い系だと思います。その母集団のかたよりから考えると、意外と葬式支持が少ないのかも、と考えなおしました。
全体の印象として死を扱ったイベントとしては、ほどよく抑制が効いています。
従来の道徳や倫理と、表現の尖りぐあいのバランスが丁度よいのです。
↓尖っているのは、こんなところ。
個々の作品としては、タブレットで読めるしりあがり寿さんの漫画が良かったです。
1コマを拡大して鑑賞するタイプの漫画家さんではないと思うので(笑)、主催者側のこのチョイスは正解。
どうも最近の日本人は、長生きだけに価値を見出しているような気がしてなりません。
戦中派は、そんな価値観ではなかったと思うのですが。
パーキンソンの法則(1時間で済む仕事も、10時間与えられると10時間かかる)が正しいとすると、長生きを許されたと思った瞬間に、生は希薄になっているはず。
さて、このEND展を観ながら考えたのですが、
表現技法として小説と比べると
「死」の実体と「展示されている漫画」にはまだ距離がある、と葬儀屋である私は感じました。
セックスとエロ漫画の距離感、に近いかな。
小説が、言葉の不自由さ(≒イメージを限定し過ぎない)を武器に、どんどん内面に入ってくる感じなのと比べると
漫画の中では、死の生々しさは表現のフィルターを通して、洗練され軽減されています。
これは優劣の問題ではなくて、一般論としての表現技法の違いです。
このように感じる自分にとっては、死は事象というより観念であるのだなと気づかされました。
いろんな表現に触れても、自分にとって最適解が、そのまま与えられるわけではありません。
最後は自分で考えて、自分の答えを見つけるしかない、
それが自分にとっての「死」なのでしょう。
・・・という文章をつらつら書かされてしまったのは、このEND展の力ですね。
万人向けではありませんが、みんな死ぬので、END展、おすすめです。
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