すでにダブルの礼服(喪服)を持っていて、これからお葬式に参列される方、
もしくはこれからお葬式の服を買おうと思っている方に向けてこの記事を書きました。
たまに耳にする「お葬式にダブルの礼服(喪服)を来ていくのはアリか?」というテーマです。
目次
結論
お葬式にダブルの礼服を来ていくのはマナー違反ではない。
でもダブルの礼服が似合っている人はほとんどいないので
これから買うならシングル(いわゆる普通のジャケット)にしておいたほうがいい。
以上が結論です。
ダブルの礼服とは
・礼服(喪服)とは何か
・ダブルとは何か
についてそれぞれ解説します。
礼服とは、冠婚葬祭の際に着る服のこと
礼服とは、冠婚葬祭の際に着る服のことです。
冠婚葬祭のうち特に「葬」(葬儀)ときに着る服のことをかつて「喪服」と言っていました。
しかし最近では女性がお葬式のときに着る和服のことを「喪服」と言うようになったため、礼服と言うと男性が結婚式やお葬式に着る服を指すことが多いです。
さらに正礼服である燕尾服や準礼服であるモーニングなどのフォーマル度の高い礼服と区別して、スーツスタイルのお葬式の服を「略礼服」と呼んだりします。紳士服量販店で、この呼び方を見かけた方も多いでしょう。
シングルの礼服とは
そしてその礼服(のジャケット)もボタンの配列によってシングルとダブルに分類されます。
シングルは、ボタンの配列が中央に一列になっているもの。
おそらくお店で売られてるジャケットの9割以上は、シングルに分類されるでしょう。
シングルのボタンの数によって、
- 2つボタン
- 3つボタン
- 3ツボタンの段返り(一番上のボタンが、ラペルの裏側についていて、正面からは2つに見える)
- 1つボタン(お葬式の服では珍しい)
に分類されます。
ボタンがいくつあったとしても、留めるボタンは1つだけです。
たまにスーツを着慣れていない方が、全部ボタンを留めていることがありますが、これは間違いです。
ダブルの礼服とは
次に
↑これがダブルの礼服です。
ボタンの配列が左右対称に2列になっていることから、ダブルと呼ばれます。
以前私は、体の前面で布が重なっているからダブルと言うのだと思っていたのですが、違うのですね。
正式にはダブルブレステッド(double breasted)と言います。
ボタンの種類は
- 6つボタン(左右3つずつ)
- 4つボタン(左右2つずつ)
の大きく2種類に分類されます。(デザイン性の強いダブルジャケットには2つボタンというのもあります。)
さらにここから、どのボタンを留めるかによって、更に分類されます。
ほかにも6つボタンのすべてのボタンを留めるタイプや、6ツボタンの一番下のボタンを1つ留めるタイプなど色々な種類があるのですが
日本の礼服で多いのは、画像で挙げた4パターンです。
お葬式でのダブルジャケットの着用率
現在男性のダブルジャケットのお葬式での着用率ですが、おそらく1割位でしょう。
ただし世代によってかなり差があります。
20代~40代くらいで着用している人はほとんどいません。つまり若者は着用しません。
50代~60代にかけては2~3割と比率が高まりますが、逆に70代を超えるとその比率が減っている印象があります。
いわゆるオヤジが着ていることが多いです。
なぜオヤジはダブルの礼服を着るのか
ではなぜオヤジはダブルの礼服を着ようとするのでしょうか。
太った男性がゆったり着れる
シングルだとへその上5センチくらいでボタンを留めることになります。
一方先程紹介した
のダブルだと、ボタンを掛ける位置がへそのあたり、つまり下腹部にくるためお腹を締め付けません。
格段にお腹は楽です。
そのため太りやすい50代~60代の人気があるのでしょう。
逆に70代を超えるとやせてくるので、(体重の平均値及び標準偏差)昔着ていたダブルがブカブカになり、シングルに買い替えるのではないでしょうか。
ただしダブルでお腹が楽なのは、この4ツボタンの下1つがけのみです。
他の6つボタンや、4ツボタンの2つがけではこの効果は得られません。
バブルのときに流行った
1980年代末のバブルの時代にダブルのスーツが流行りました。
ソフトスーツと言って、素材的にやわらかく、デザイン的にゆったりめのスーツがもてはやされたため、ゆったりめのダブルのスーツが流行ったのです。
今の50代60代の男性は、バブル期にダブルのスーツを着た経験があるため、礼服もダブルのスーツを着ることに抵抗がないのでしょう。
ダブルの礼服がダサいと言われるのは、この時代遅れ感も関係していると思われます。
ダブルの方がフォーマルっぽいという誤解
ダブルのスーツがよりフォーマルであると誤解をしている人は多いです。
よく考えてみれば分かりますが、フォーマル度の高い燕尾服や、タキシードやモーニングは全てシングルです。(参考記事:正喪服・準喪服・略喪服の違いなど無い!ことを葬儀屋さんが解説します)
前述したように中高年が着ることが多いため、「大人の男が着ているからフォーマル」という誤ったイメージが確立されてしまったのでしょう。
ダブルの礼服をおすすめしない理由
冒頭の結論で、
「これから買うならダブルではなくシングルにしておいたほうがいい。」と申し上げた理由、言い換えるならダブルの礼服をおすすめしない理由を解説します。
ダブルはジャストフィットしにくい
そもそもスーツとの美しさというのは、肉体との一体感で、一体感を出すためにはサイズがジャストフィットしていないといけません。
そのため既製品のスーツを買う時は、ウエストを詰めたり裾を伸ばしたりと細かい調整を行うのです。
そしてダブルはシングルに比べて、ジャストフィットしにくいのです。
私の周りのスーツにお金をかける人は、「既製服のダブルはぴったりのがないので、ダブルはオーダーでしか作っている」とよく言います。
一時期私もダブルのスーツが欲しくなって、とはいえオーダーする予算もないため、自分に合う既製品のダブルをかなり探したことがあります。
セレクトショップをいくつも回って、やっと見つけたのが当時伊勢丹にあったカルーゾというイタリアのブランドの、ダブルのスーツでした。
この話にはオチがあって、やっとぴったりのダブルのスーツが見つかったということで、補正のためのスボンの裾のピン打ちや袖のピン打ちが全て終わり、修正伝票を書いたあとで、
ジャケットがイタリアサイズで48なのに、パンツが50のサイズだったことが判明。セットアップではないので、ジャケットが48なら当然パンツも48でないと売ってもらえません。
15分ほど、何種類ものブランドのダブルのスーツを、サイズ違いで着ては脱ぎ着ては脱ぎを繰り返しているうちに、店員さんも上下間違えたサイズをフィッティングルームの私に渡してしまったらしいのです。
でも自分には上が48で下が50がジャストフィット。
「せっかく見つけたのに」とあきらめかけていたとき、申し訳ないと思った店員さんが上司とかけあって、その組み合わせで特別OKにしてくれたのです。
(↑その時のスーツです)
それくらい既製品で本当に合うダブルのスーツに出会うのは難しいのです。
失礼ながら、葬儀式場でダブルの礼服を見て見ると、サイズ感がおかしい人が多いです。
一つには先程述べたように、肥満体型の方が多いというのもあるのですが、そもそもジャストフィットしづらいというダブル特有の問題があるのです。
さらに礼服のシングルよりもダブルは品数が少ないので、さらに自分の体型に合うダブルに出会える確率が低くなります。
またバブル期にダブルが流行った話をしましたが、当時ゆったり目のダブルを着ていたので、太った今ならなおさら、オーバーサイズ気味の選択をしがちです。
もうジャストフィットする要素が何一つありません。
安物しかない
このように「似合うダブル」を着るためにはある程度お金をかけないといけないにもかからわらず、
礼服のダブルはどこで売られているかというと、紳士服量販店で5万円前後で売られているものが中心です。
月のお小遣いの平均額が4万円と言われる一般のサラリーマンにとって、5万円の服が大金なのはわかります。
しかし5万円では大人が着てしっくりくる良いダブルのスーツには出会えないのです。
さきほど述べた私が買ったダブルのスーツは、17万円でした。
このクオリティで黒いダブルのスーツを用意できるなら、問題ないのです。
ダイアナ妃の葬儀では、チャールズ皇太子とウィリアム皇子は、ダブルのスーツを着用しています。
チャールズ皇太子は、複数の仕立て屋に、皇室御用達にあたるロイヤルワラントを与えている立場ですから、普段着用するスーツはオーダーの高級品です。
ちなみにドレスコード的にモーニングではないのか、と思った人もいるかもしれません。確かにエリザベス女王や、エリザベス女王の夫であるフィリップ殿下の葬儀の際、皇族の男性は軍服もしくはモーニングを着用していました。
ダイアナ妃の場合は、すでに皇族を辞めていたため、国葬ではありませんでした。そのためフォーマル度を下げたのでしょう。
国内において高額の価格帯では、シングルのブラックスーツはたまにありますが、ダブルのブラックスーツはまず見かけません。
そのためお葬式用のダブルを買おうと思ったら、結局紳士服量販店の略礼服の売れ筋商品を買うしかないのです。
当然5万円クラスでは、クオリティにも限界があります。
結果、葬儀式場のダブルは安物であふれかえるのです。
以上の理由で、ダブルの礼服はおすすめしません。
ダブルの礼服が時代遅れ、ダサいと言われる理由
ネット上では「ダブル礼服 時代遅れ」や「ダサい」というワードで検索が行われています。
こんなふうに言われてしまう理由を考えてみましょう。
私は20年近くメンズEXという紳士向けファンション紙を愛読しており、メンズファッションにくわしいと思っています。
シングルよりもメジャーになることはありませんが、セレクトショップでは毎年ダブルのスーツがラインナップに入ります。チャールズ皇太子などの世界的ウェルドレッサーも定期的にダブルのスーツを素敵に着こなしています。
ダブルのスーツ自体は、伝統的かつ完成されたクラシックなデザインであり、時代遅れでもなく、ダサいわけでもありません。
ただ日本のダブルの礼服に関しては、前述したように
- バブル期を経験した太ったオヤジが
- サイズの合っていない
- 安物を着ている
がために時代遅れやダサいと言われてしまうのです。
たとえシングルであったとしても、バブル期のような肩パットがガッチリ入っていて、サイズが合っておらず、安物であれば、同様に時代遅れやダサいと言われてしまうはずです。
伊勢丹新宿店のオーダーサロンで、30万円位の予算をかけてオーダーでダブルのブラックのスーツを仕立てれば、カッコいいダブルの礼服ができあがるはずです。
実際そんな酔狂は人はいないと思いますが。
ダブルの礼服のメリットとデメリット
ダブルの礼服のメリットとデメリットをまとめましょう。
メリット
お腹が楽
先程述べたように、4つボタンの下1つがけだとお腹の締め付けが弱いので、肥満体型の人にとってシングルよりもお腹が楽です。
よりフォーマルと思ってもらえる
プロトコ-ル(国際的なマナー基準)では、ダブルの方がフォーマルということは、まったくありません。しかし日本人にはそう誤解している人がたくさんいるため、フォーマルだと思ってもらえます。
デメリット
見た目がカッコ良くない、ダサい
どうしてもダブルはジャストフィットしづらいので、似合っている人が少ないです。
品数が少ない
ブラックのダブルのスーツはほぼ紳士服量販店でしか販売されていないので、安物が多く、クオリティもそれなりです。
おすすめのダブルの礼服
これまでダブルの礼服(喪服)について、説明してきました。
もちろんダブルの礼服(喪服)を着ていくのは、マナー上はまちがいではないので、デメリットを理解したうえで、それでもダブルの礼服(喪服)を買いたい方には、以下の商品をおすすめします。
Amazonで購入
時間はそれほど無いが、予算が2~3万円ほどある場合、AmazonPrime、もしくはPrime Try Before You Buyを利用して黒いスーツをサイズ違いで何点か、翌日配達で自宅に取り寄せましょう。
合わなかったのは返品してください。送料、返品の送料ともに無料であることがほとんどです。
さてシングルに比べてダブルの流通量は少ないのですが、それはAmazonにおいても同じです。
ウール素材なのに2万円前後の価格設定は良心的です。
以下は、ウールではなく、ポリエステル素材なので、高級感はありません。
ご予算が1~2万円の方におすすめです。
紳士服量販店で購入
紳士服量販店の路面店は割高なので、今日お葬式の服が必要、というケース以外は正直おすすめしません。
ただダブルの礼服(喪服)は、ほぼ紳士服量販店でしか販売されていないため、ここで買わざるを得ません。
↑若者向けの紳士服量販店ではダブルの礼服(喪服)はまず売っていません。
↑青山やAOKIなどで購入ください。
またイオンでも扱っています。
(参考記事:イオンにお葬式の服(礼服・喪服)を買いにいってみた 2023年版 – 考える葬儀屋さんのブログ)
おすすめのシングルの礼服
最後に参考までにシングルの礼服(喪服)をお求めの方へ。
↑くわしくはこちらの記事に書きましたが
時間のない方はAmazonの利用をおすすめします。(解説記事:Amazonでおすすめのお葬式の服を買いました(男性編))
時間のある人はユニクロで購入するのがベストです。
以上、なぜダブルの礼服(喪服)はダメなのかについて解説いたしました。
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