通常、お通夜が始まるまでに納棺の儀式を行います。
今回は納棺の流れを解説します。
納棺を行う理由
お通夜までに、亡くなった方を御棺に収めなくてはなりません。
昔は人が亡くなると、野辺送り(のべおくり)という葬列を組んで、お墓まで故人を運び、穴を掘って土葬(どそう:故人を土に埋める)をしていました。
これを遺体のまま行うのは抵抗がありますから、棺に収めることは必須でした。
またドライアイスが普及するまでは、ご遺体が変化してしまうこともあったでしょうから、できるだけそれが分からないようにする目的もあったでしょう。
そしてこの棺に納める作業が、納棺として宗教と結びつき、宗教作法として儀式性を持つようになりました。
そのため「納棺の儀」と呼ばれることがあります。
現在は土葬ではなく火葬場で火葬が行われ、ドライアイスやエンバーミングなど遺体処置技術も向上しました。
それでも昔からの伝統もあり、火葬場のルールでは棺で収めた状態で火葬することになっているため、現在でも納棺は必須です。
納棺の流れ
場合によっては湯灌(移動式の風呂を使って故人を清めること)を行った後、納棺を行うこともあります。
遺族が参加しますが、基本的に葬儀社のスタッフが解説しながら行いますので、遺族の方は段取りを覚える必要はありません。
- 故人を布団に寝かす
- 合掌する(仏式の場合) 無宗教やキリスト教の場合は黙祷(もくとう)します。
- 浴衣を脱がして別の服を着せます。経帷子(きょうかたびら)と呼ばれる白装束であることが多いです。
白い着物の他に
・足袋(たび)
・草履(ぞうり)
・杖(つえ)
・すねに巻く脚絆(きゃはん)・
・手の甲につける手甲(てっこう)
・燃えるタイプの数珠(じゅず)
などが含まれます。
要は、お遍路さんの格好を思い浮かべてください。それからドリフターズのコントでよく見られた額に付ける三角の布、あれは天冠(てんかん)といいます。
亡くなった人であることを示す印と言われています。
現在は額につけず、棺の収めるだけのことが多いです。額に付けなくなった理由ですが、ドリフターズがコントで使用したため、孫の世代が故人を見て笑い出すという現象が起こったから、という説をある葬儀コンサルタントが唱えています。また、浄土真宗だけは、白装束は不要という考え方です。本来経帷子は、49日目に成仏するまでの旅の姿ですが、浄土真宗だけは亡くなった瞬間に成仏すると考えるため、旅の服装は不要と考えるためです。
最近は儀式の自由度が高くなってきたことと遺族の要望で、
経帷子は棺に入れるだけで、故人には生前のお気に入りの服を着せるケースも多いです。 - 故人を棺の中に収めます。
- 故人の姿を整えます。女性の場合、お化粧することも多いです。
納棺師がいる場合は納棺師の方がお化粧をしますが、遺族が参加しても構いません。 - エンバーミング(遺体保全処置)を行っていない場合は、ドライアイスを棺の中に入れます。
- 副葬品(故人の思い出の品)を棺に入れます。遺骨を汚したり火葬炉を傷つけたりする可能性があるので基本的に燃え残らないものという条件です。
よって金属製のつえや眼鏡、時計や、底に金属片が入っている靴などは認められません。実際多いのは生前のお気に入りの服、雑誌、新聞、お菓子などです。辞書などの分厚い本は、火が通りにくいので認められないことがあります。
置く場所は、特に決まっていません。年配の親戚の中には自分の写っている写真を入れられることを、あの世に連れて行かれると嫌う方もいらっしゃるので注意しましょう。一度、私の担当でもめたことがあります。
また三途の川を渡るときに通行料として必要ということで、葬儀屋さんが昔の通貨である六文銭を紙に印刷したものを入れます。
一通り副葬品を収め終えたら納棺は終了です。
- 合掌もしくは黙祷を行って棺の蓋(ふた)を閉めます。
- その後、棺は式場の祭壇前に移動されます。
- 親戚は控え室で、通夜の開式の時間まで待機していることが多いです。
これで納棺は終了です。
(地方や葬儀社によって細部が異なります。)
東冠さんという葬儀社さんが、納棺の動画をアップロードしていたので、紹介させていただきます。)
以下の記事(通夜の流れ)に続きます。
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