今回はお葬式に参列するときの服装の話ではありません。
参列するときの服装の話は他のサイトでていねいに説明していますから、
ここでは触れません。
日本人の葬儀の服装は間違っている? | 考える葬儀屋さんのブログ
葬儀屋さんの服装についての話です。
葬儀屋さんの服装のレベルってホテルマンに比べると、
コールド負けって感じですね。
最大の原因は
いろんな意味で、だらしのない奴が多いから
っていう身も蓋もない話になるのですが(^^;)
でも最近は制服を導入する葬儀社も増えて大分、
改善されてきました。
ちなみに私、メンズの服飾に関しては、詳しい方だと思います。
以前、ある国内有数のファクトリー(服を作る工場)の
役員のお葬式の担当をしたことがきっかけです。
お葬儀まで日数が空いたので、
会社の方と話すとき最低限の服飾の知識があったほうがよいだろうってことで
勉強を始めました。
まず本屋で今は亡き落合正勝氏の本を買い漁って読むというところから始めて。
で分かったのが、
メンズの場合ファッションセンスがなくてもルールに関する知識
(夏にはリネンやシルクの素材が良いとか、
バランス良く見せるためのサイジングとか)
を集積していけばなんとかなるってことです。
それから自宅で、一人で食事をするときはメンズファッション系の本を
読むようになりました。
これは、写真がメインなので頭を使わなくて良いってことと、
雑誌の構造上、卓上に広げたままにしておきやすいって理由です。
そんなこんなで知識だけが集積されました。
ことわっておきますが、
服飾に詳しいことと、おしゃれなことと、かっこいいことは、
必ずしも同じではないですからね。
私はちょっとだけ服飾に詳しい人です。
かっこいいって言われることは、悲しいかな無いです(>_<)
それからメンズの服装のルールが分かっていると、自分の着こなしだけでなく
納棺の前に故人にお召し物を着せる際、バランスよくお着せすることができます。
シャツの襟の開き具合と、ネクタイの厚みを考えると、
ネクタイの結び方はシングルノットでいいかな、というように。
やっぱり第一印象が大事
「人は見た目が9割」って本がありましたけど、
葬儀屋は見た目10割くらいに思っておいた方がよいです。
まず人は最初の3秒間で、その人が好きかどうかを判断するらしいです。
第一印象が大切といわれる所以(ゆえん)です。
ましてや、葬儀屋さんは、亡くなった大切な肉親の体を出会ってからすぐ預けられて、
数時間後には数百万のお金の話をしなければいけないわけです。
第一印象で「ちゃんとしている人」に見えなければ話になりません。
だから病院に到着したら、車のバックミラーで服装をチェックして、
病院のエレベーター内の鏡で再度チェックします。
そして病室のドアを開けるときはいつも緊張して,背筋を伸ばしてます。
そしてドアを開けたら深々と頭を下げる。
たまに
「外見でなく中身で人を判断しろ!」
という人がいます。
これは一理ありますが、こういうことを言う人の中身は
ダメなことが多いです。
だって初対面の相手に
俺の中身がどんなものか時間と手間をかけて調べろ
と言っているわけですからね。
こんな傲慢な人はダメでしょう。
ではここからは少しアイテム別の話をしますね。
靴
靴が汚いと全身がみすぼらしく見えてしまいます。
靴のデザインは
内羽根(靴紐を通す部分の皮が靴の外側に出ていないタイプ)の
ラウンド・トゥ(つま先が丸い)の
ストレートチップ(つま先に一本、線がある)
でしょう。
↓こんな靴です。
これがもっともフォーマルに見える靴です。
色はもちろん黒。
わたしはプライベート用の靴は5~8万円くらいのものを履いてます。
唯一の道楽です。
昔はそんな高い靴、誰が履くねん!と思っていました。
しかし底を張り替えて使えば10年は軽くもつということが分かり、
むしろ高い靴の方が割安だと感じるようになりました。
しかしこのクラスの靴は仕事では使えません。
一般の方は式場ですまして立っている葬儀屋さんの姿しか
ご存じないと思いますが、
裏では肉体労働なのです。
設営作業の場合はスポーツシューズを履きますが、
自宅に訪問して御遺体や御棺をお持ちするときは、
当然革靴です。
で、このとき両手は御遺体や御棺をお持ちしたままなので、
外に運び出すときは、当然靴べら無しで
靴を履かないといけません。
手荒に靴をはくのですぐに踵(かかと)がダメになってしまいます。
それで私はASBEEという靴屋さん(名古屋発で全国展開しています)の、
オリジナルの内羽根のストレートチップを購入して3足のローテーション
(この方が靴を休めることができて、長持ちします)
で使っています。
1万円を切る内羽根のストレートチップは少ないので重宝します。
この靴のラスト(木型)が合う方にはおすすめです。
とはいえ定期的に手入れをしても、やはり、皮の表面が部分的にはげてくるので、
傷の補修クリーム(普通の靴のクリームではなく傷補修用です)で
メンテナンスしています。
それでも皮は痛んでくるので、ヒール(かかとの底の部分)を交換したりしないで、
ヒールがダメになったタイミングで、買い換えます。
制服
式用の制服が支給される葬儀社が増えてきたようです。
しかし、事前に採寸した場合でも、
まずサイジングは狂っていると考えた方が良いでしょう。
大体、オーバーサイズです。
大げさな言い方をすると、
メンズの服は1㎝、サイジング狂っていてもなんか変な感じになります。
私は修理屋さんに持ち込んで肩以外の直せるところは可能な限りお直しします。
ほんの少しタイトめにするとデキル感じに見えます。
(個人差ありますけど)
時計
よく高級機械式腕時計を付けている葬儀屋さんを見かけます。
それでなくても
「葬儀屋は儲かっている」
という世間のやっかみ(誤解?)がありますから、やめた方がよいと思います。
基本的に葬儀屋さんは黒子ですから
相手が受ける印象よりも、自分の趣味を優先するようではまだまだだと思います。
あとはビジネスマナーの本に書かれている常識の範囲内で大丈夫です。
と、ここまでは基本です。
しかし私の場合変則的に、わざと隙(すき)を作ります。
なぜかというと、私は見た目が固いタイプなのです。
病院内業務で白衣を着ていて、医者に間違われることもたまにあります。
プレゼンとか講義とか取材のときは、このルックスは重宝するのですが
葬儀の打合せの場合、堅苦しくてお客さんが気軽に質問しづらいのではないか、
と心配になるのです。
打合せは、いかにお客さんに情報を発信させるか、という部分があるので
相手を気後れさせないようにしなければなりません。
(参照:コンプレインが多いお客様はやりやすい)
そのため、
シャツのカラーステイを抜いたり(襟が柔らかく見えます)
ネクタイのノット(結び目)下のディンプル(くぼみ)をわざと左右非対称にしたり
ってことをやって
やり過ぎない程度の「抜け感」を作ります。
どこまで効果があるか分からないのですが、
男の装いって、自己満足の部分と、
それが与える精神的な安定の部分が大きいですからね。
それでもまだお客さんが緊張していて固いなと思うときは、
わざと小さなドジ(頭を鴨居や天井の電灯ににぶつけたり)をふむときもあります。
余談ながら、休みの日は
シャツにカラーステイを入れて、ディンプルも左右対称、
クリース(折り目)の入ったパンツにジャケットでタイドアップしているので、
同僚からは
「休みの日の方が、きっちりしている」
と言われます(^^;)
レアケースですけど、私みたいな人は、ご参考までに。
(さらに追記)葬儀屋さんは勉強しておくこと
ただし葬儀屋さんはプロとして
葬儀の服装の正しい世界基準を知っておくべきだと思います。
たとえば制服のズボンの両サイドに黒い線(側章と言います)の入った葬儀屋さんを
火葬場で見かけたことがあります。
なんで、線が入っているの?と尋ねたところ、彼らは答えられませんでした。
おそらくこれはタキシードのデティールを模したのだと思います。
ではなぜタキシードにはこのような線が入っているのか?
①サイドの縫い目を消した方がよりフォーマルだから。
②タキシードは(というかメンズの服は)軍服を起源とするが、
サイドに線を入れると行進のときにきれいに見えるから
(北朝鮮の軍事パレードの映像を思い出してください)
という理由です。
こういった服装の関する基本知識は
プロである葬儀屋さんには必要だと思います。
ふむふむφ(..)そうなんだ。確かに、服装が変なだと信頼できない気がします。ピシッとした方がいいですね。
山P猫様、コメントありがとうございます。
この業界、まだまだだらしのない方が多いもので(^^;)