「哀悼の意を表します」
の意味と正しい使い方について
実際に葬儀現場で働く葬儀屋さんが解説いたします。
目次
読み方
読み方は
「哀悼(あいとう)の意(い)を表(ひょう)します」
です。
余談ですが、葬儀屋さんになるまでずっと「あいたく」と読むと思っていた同僚がいました。
哀悼の意味
次に意味です。
「哀悼」という文字を分解してみます。
哀・・・「哀(かな)しい」とも読みます。
「悲しい」と語源が一緒で、切なくて胸が痛むことです。
悼(とう)・・・「悼(いた)む」とも読み「痛む」という字と語源が一緒です。
「人が亡くなったときに自分の心を痛める」
という意味を持ちます。
というわけで
広辞苑では
「哀悼」・・・人の死を悲しみいたむこと。
というように解説されています。
先ほど述べたそれぞれの語源を当てはめると「哀→悲」「悼→痛」ということで
「哀悼」≒「悲痛」という解釈もできますね。
「意を表する」は、「気持ちを表す」という意味ですから
「哀悼の意を表します」・・・亡くなった方のことを思うと悲しくて心を痛めています
ということになります。
「哀悼の意を表します」の使い方
さて
「哀悼の意を表します」
の葬儀現場における正しい使い方です。
例文
お母様のご逝去(せいきょ)を悼(いた)み、心から哀悼(あいとう)の意(い)を表(ひょう)します。
というように使います。
しゃべり言葉では使わない
まず注意点としては
お葬式の時に遺族に話しかける際、使ってはいけません。
しゃべり言葉で使用するとかなり違和感があるはずです。
弔電で使う
基本的にこの「哀悼の意を表します」という言葉は弔電の文章の中で使われる
「弔電用文語体」です。
口語体(しゃべり言葉)ではないのです。
例文を挙げると「〇〇様に対し、謹んで哀悼の意を表します。」となります。
弔電では定番の表現です。
「表(あらわ)す」ではなく「表(ひょう)す」という
漢字の音読み+サ行変格活用
という格調高い表現にしているのも、
文語として使用されることを前提としているからです。
そのため話し言葉の中で使おうとすると
失礼というわけではないですが
ちょっと違和感があるはずです。
弔電で使う際、さらに弔意(とむらう気持ち)を強調したい場合は
頭に「謹(つつし)んで~」や「心より」を付けてください。
メール・SNSやメッセンジャーでは使わない
しゃべり言葉ではダメでも、弔電で使っていいなら、メールでも使っていいのでは、と考える人もいるかもしれません。
でもメールで使うのはおすすめしません。
判断の難しいところですが、
メールは、おしゃべりより格式ばってはいるが、弔電ほどフォーマルではない、と考える人が多数派でしょう。
おそらくメールの文章で「哀悼の意を表します」というフォーマルな表現を使ってしまうと、違和感があるはずです。
そもそもお悔やみの言葉をメールで送ってくるのはいかがなものか、と思う遺族もいるかもしれません。
お葬式のマナーが適切かどうかを判断するのは、受け手(遺族)側です。あえてリスクをおかす必要はありません。
将来人々の価値観が変化していけば、OKになるかもしれません。
ツィッターなどのSNSや、ラインなどのメッセンジャーは、メールよりもさらにフォーマル度は下がります。当然「哀悼の意を表します」は使ってはいけません。
英語の場合
とはいえ、海外の人に対してお悔やみの言葉を送る場合は、メールを使わざるをえない場合もあるでしょう。
英語なら
I give you my condolences.
という表現を使ってください。
似たような表現
「哀悼」を使った似たような表現の例文としては
「○○様に対し、哀悼の意を捧げます。」
「○○様に対し、哀悼の意を込めて、お悔やみ申し上げます。」
が挙げられます。
いずれも「哀悼の意を表します」と同じく
亡くなった方のことを思うと悲しくて心を痛めています
という意味です。
言い換え表現
同じお悔やみの表現としては
- 哀悼の誠を捧げる
- ご愁傷様
- ご冥福を祈る
- お悔やみ申し上げます
が、挙げられます。
それぞれ使い方のルールが微妙に異なるため、下記の記事で確認してください。
哀悼の間違った使い方
以前弔電で「哀悼の念」という言葉を使っている人がいました。おそらく「哀惜の念」と混同している可能性があります。
「念」には「気持ち」という意味があるので、相手に意味は伝わりますが、辞書には載っていない言葉です。
それからめったにいませんが、弔電文をネット上ですべて一から自分で入力したからでしょうか、
「哀卓」「哀倬」「哀棹」という間違った漢字を使う人がいます。注意しましょう。
以上「哀悼の意を表します」の意味と正しい使い方でした。
「追悼の意」の意味と使われ方
時折、哀悼の意の替わりに「追悼の意」という表現が使われることがあります。
読み方
読み方は「(ついとう)の(い)」です。
例文
例文としては
「追悼の意を込めて故人に黙祷(もくとう)を捧げます」
「故人に追悼の意を捧げます」
「追悼の意を表します」
というような使われ方をします。
意味
「追悼」の意味は
死者の生前をしのび、その死を悲しむこと
です。
言い換え
「哀悼の意」という言葉が使われるときもあります。「哀悼の意」とほとんど同じ意味ですが
一般的な葬儀の場合は「哀悼の意」を使う方が自然でしょう。
「追悼の意」は追悼式典、たとえば慰霊祭(無宗教形式の法事みたいなもの)などでたまに使われる程度です。
誤った使い方
まれに弔電の文章の中で
「追悼の辞」を捧げる
と書いてくる人がいます。
「追悼の辞」は式典において、遺影の前で文章を読み上げる行為を指すため、弔電の文章で使うのは間違いです。
注意してください。
その他のお悔やみの言葉
その他葬儀で使われる言葉の注意事項は下記の記事を参考にしてください。
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