葬儀屋さんのヒューマンエラーを防止する




今回の記事は以前書いた
葬儀のミスを無くす方法
という記事の続編という位置づけです。
葬儀現場のヒューマンエラーの分析と対策
を考えます。
(ここではヒューマンエラーはミスと同じ意味として使っています。)
エラー
当たり前ですが葬儀の作業の大部分は人が行なうので
ほっておくとヒューマンエラーが多発します。

そこで葬儀社は「改善」を行うわけですが
うまくいっていないことが多いです。

葬儀社のヒューマンエラー防止がうまくいかないわけ

大体ダメな葬儀社の場合、改善報告書に
・原因が一つしか記載されていない
・対策はいつも、当事者の「今後注意します」のみ
という内容です。

他のサービス業でも上記のような傾向はあると思いますが
葬儀社はさらにその傾向がひどいと思います。
なぜなら過労がヒューマンエラー発生の最大要因で、
それは業務構造的にどうしようないと思っているから。
だから精神論で終わらせようとする。
しかしそれでは話が逆です。
労働環境のコントロールが難しいからこそ
ちゃんとした対策が必要だと思います。

過労なのは夜勤の医者だって同じ。
しかし医療現場ではインシデント(重大な事故に繋がる可能性のある事象)の分析と対策が、
がんばりますですまされているわけではありません。

というわけで今回参考にした書籍がこれ

医療におけるヒューマンエラー―なぜ間違えるどう防ぐ

河野 龍太郎 医学書院 2004-07-01
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by ヨメレバ

 

 

ヒューマンエラーの防止方法が発達している業界としては、
人命を預かる航空業界と医療業界が双璧です。
著者は元管制官ですが業務中に
大惨事になりかねないミスを犯してしまったとのこと。
それがきっかけでヒューマンエラーの研究家になり
この本では医療業界の分析結果をまとめています。

分析と実践

さてここからは分析と対策の実践編です。

この本の手順に則って
以前社内で発生した葬儀の御礼状(参列者に渡す挨拶状です)の作成ミスの原因を再調査してみました。
(細部は変えています)

ちなみに当時の報告書によると
原因は担当者の不注意、
対策は担当者の今後気を付けますの決意表明でした。
多分、これでは再発防止にはなりません。

事件の概要

「事件」の概要はこんな感じ。

  1. 当直していた担当者A(社歴2年)とスタッフC(社歴10年)が明け方、訃報連絡を受け
    一緒に病院へ駆けつける。
  2. ご遺体を安置後そのまま2時間かけて遺族と葬儀の打合せをAが中心となり行なう。
  3. その後会社に戻りAは印刷所に葬儀で使用する礼状の発注を行う。
  4. その際、手書きの申込書に記入する際、通夜と葬儀の日付を間違える。
  5. その後印刷所から礼状の原稿をAが受け取り、喪主に見せ、併せて原稿の読み上げも行う。
  6. 喪主からOKをもらい、印刷所へGOサインを出す。
  7. 印刷した物が納品されスタッフBが受け取り、返礼品との同梱作業を行う。
  8. 通夜葬儀両日礼状を配布し、翌日親戚からの指摘で日程の間違いが発覚

まずこの件について
上記の書籍で紹介されている
「時系列事象関連図」を使ってみました。

まず事件の流れをチャート化します。
それから問題点と思われるところに×印をつけます。
↓こんな感じ(クリックで拡大) 図Ⅰフロー
分析図1
ここであれ?と思うのが書面と読み上げの両方の確認を行っているのに
喪主がOKを出しているところ。

しかしこれは医療現場でもよくあることだと
「医療におけるヒューマンエラー」に書かれています。
横浜市立大で患者取り違え事件があったときも
看護師は患者本人の名前を呼んで確認を取っていたらしいのですが、
その患者さんは別の名前で呼びかけられているにもかかわらず、
「はい、はい」と返事をしていたらしいのです。

手術の緊張と医者にたいする信頼からこういう現象はたまに起こるとのこと。
このケースも喪主は
・疲れていた
・担当者Aを信頼していた
という状態であったようです。

問題点の抽出

次は
考えられる問題点を考えて付箋を貼っていく作業です。

発生した問題をフローチャート化し、次に
考えられる問題点に付箋を貼っていく作業
を行ないます
↓こんな感じです。 図Ⅱ問題点
分析図2

背後要因

そして
その付箋を並べて「なぜそうなったのか」という質問を繰り返し
背後要因をしつこいくらいに追求していきます。
↓こんな感じです。 図Ⅲ背後要因+対策
分析図3
これ以上ないという状態まで追求が終わった後
対策を考えます。
そしてその対策の中から、
優先順位をつけていきます。

対策の発想手順

どのように対策を考えるかは
この本のP85の図7-1を参考にして欲しいのですが
対策の発想手順を抜粋すると以下のようになります。

  1. やめる
  2. できないようにする
  3. わかりやすくする
  4. やりやすくする
  5. 知覚能力を持たせるようにする
  6. 認知予測させる
  7. 安全を優先させる
  8. できる能力を持たせる
  9. 自分で気づかせる
  10. 検出する
  11. 備える

大きく分けると
1が問題の消滅
2~4が環境設計
5~11がスタッフスキル
となります。

葬儀業界の場合


葬儀業界の人間が対策を考えるときにやりがちな失敗は6以降から考え始めてしまう
こと。
職人文化をまだ引きずっているので、システムのことは全く考えないで
脊髄反射的に個々のスキルでなんとかしようとしてしまうのです。

ちなみに5.の、知覚能力を持たせるようにするというのは
休息と取るなどコンディションを整えさせるということ。
そのため葬儀社経営者の考えでは条件反射で無理,ということになります。
とはいえ、改善できないけど大きな原因の一つではあるので
一応報告書には入れるようにします。

1から4までの中で一番見落としがちなのが1です。
やめちゃえば?という発想。

「図Ⅲ背後要因+対策」の右下のオレンジの付箋がそれ。
規定の挨拶文の名前を入れ替えるだけの礼状の製作は
葬儀屋側の惰性もしくは自己満足であることが多いような気がします。
消費者側(喪家+参列者)は礼状に
それほど価値を感じていないのではないでしょうか。
一方で利益はほとんどなく、ミスを誘発する可能性は極めて高い。
だったら最初から作らなきゃいいんじゃないですか、
という「考え方が必要」ということです。
その考え方を採用するかどうかは別として。
(あくまで規定文に名前を入れるタイプの礼状の話です。
たまに自分で考えた手書きの文章を複写して配る御遺族がいらっしゃいますが、
それはアリです。)

それから管理者は
ミスに対して無策であることを責めるべきで
ミス自体を責めるべきでは無いと思います。

ミスを責める→おざなりな対策案→またミスが発生→ミスを責める
というループに入り出すと、
ミスの発生が現場でもみ消されて報告が上がってこなくなります。
(ちなみに航空業界においてミスの責任は社内では問われないそうです。
そうしないとミスの発生原因などの報告が全部上がってこないかららしく)

この本の解説によるとミスはゼロにはできないことが前提である、とのこと。
これまで行なってきたように地道に論理的に発生率を下げる方法を考えていくしかありません。











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