親御さんや御兄弟や配偶者がなくなった直後の方や
もしくは危篤の連絡を受けて移動中に
「これからお葬式のこととかどうしよう」
と心配されている方を想定して
この記事を書きました。
自分の大切な人が亡くなって(亡くなりそうで)
取り乱した状態で
知識も、残された時間もない状況で
適切な行動を取ることは大変難しいでしょう。
(私もそうでした。両親を見送った後、葬儀社に就職したという経歴です)
この記事を読んで頂くことによって少しでもお役に立てればと思っています。
これからすぐに
次の3つのことを順番に行ってください。
Ⅰ安置場所を考える
Ⅱ墓のことを考える
Ⅲ葬儀社のことを考える
今の時点でやるべきことが多そうでどうしようと不安に思われている方も多いと思いますが
実は上記の3つを押さえておけばとりあえず大丈夫です。
Ⅰ安置場所を考える
日本人の約8割の方は現在病院でお亡くなりになっています。
病院で亡くなると、ずっと病院内に亡くなった方を
長時間安置しておくというのは大変難しいのです。
なぜなら病院側も次の入院患者の受入れ準備を行わねばならず、
そのため亡くなった方を病院以外の場所に移動してもらいたい、
というのが病院側の本音なのです。
亡くなると
エンゼルケア(清拭(せいしき)ともいう。亡くなった方のお体の処置)を
1時間ほどかけて看護士の方が行います。
その際に、看護士が遺族に対し
「葬儀社はお決まりですか?」
と聞くことが多いです。
これは暗に
「お体の(病院外への)ご移動を早くお願いしますね」
という意味なのです。
ここで葬儀社が決まっていない方はあわててしまって、
よく考えず病院から紹介された葬儀社に葬儀全てを依頼して
後々後悔することになるわけですね。
こういった事情なので時系列上、
まず「安置場所を決める」ことが最優先事項となるのです。
遺体の搬送は誰が行う?
さて安置場所のことを説明するちょっとその前に。
(表現上冗長にならないようにご遺体を移動することをあえて 「搬入搬出」と表現した箇所がございます。ご了承ください。)
安置場所が決まったとして、そこに故人を連れて行くのはどうしたらいい?
と不安に思われるかもしれません。
ダメな葬儀実用書には「法的に遺族が自家用車に乗せても問題なし」
などと書かれていますが、鵜呑みにしてはいけません。
死後硬直・体液漏れ・遺体を落とすなどの物理的なリスクを考えると
遺族が行うのは実際不可能です。
プロである葬儀屋さんに頼みましょう。
とはいえこの段階で葬儀施行をお願いする葬儀屋さんが決まっていない方も多いでしょう。
もしかすると、病院のスタッフの方から葬儀屋さんを紹介されたかもしれません。
病院の契約先である遺体搬送を請負った葬儀屋さんが
そのまま葬儀施行を行うものと思いこんでいる方も多いと思います。
実は
A 遺体搬送をお願いする葬儀屋さん
B 葬儀施行をお願いする葬儀屋さん
を別にしてもいいのです。
今はとりあえずAの葬儀屋さんが必要ななので
手っ取り早く病院に紹介してもらっても良いでしょう。
注意点はAの中には遺体搬送業務のみの依頼と知ったとたんに
手を抜いたり料金をふっかけてきたりする葬儀社も一部いることです。
国立系病院は入札方式で病院出入りの葬儀社を選んでいるのでハズレは少ないですが
私立系病院は寄付金を積んで選ばれている葬儀社もいるので注意が必要です。
私立系病院でAの葬儀社に依頼をする場合は、
ハッキリと「搬送だけ」とは言わず
御社にB(葬儀施行)もお願いするかもしれないと匂わしつつ、
「搬送とドライアイス(遺体保全に使う)の料金はいくら?」
と聞いてください。
相場は数十㎞の搬送で2~3万円、
ドライアイスが1万円前後、
と言ったところです。
もしふっかけられたと思ったら病院に相場を確認する
(「高いと思うので病院に確認させてくれ」など)と言ってください。
値引きすると思います。
ただしそのような信用できない葬儀社には、搬送はともかく葬儀施行は依頼しない方が無難です。
ではここまでご理解頂いたところで
Aの葬儀屋さんと相談しつつ、
下記の選択肢の中から良いと思った安置場所を決めて下さい。
安置場所の選択肢
安置場所の選択肢は主に下記の6つです。
①自宅
②マンション
③葬儀社の式場・霊安室
④貸し葬儀式場
⑤火葬場
⑥病院
各安置場所のメリットデメリットを一覧にしたのがこの図です。
(↓クリックで拡大します)
それぞれのメリット・デメリットを○×で解説していきます。
最終的な選択は、葬儀屋さんと相談して決めるべきですが、事前の理解に役立ててください。
自宅
まずはオーソドックスに自宅に安置するという選択肢です。
○故人や遺族の希望をかなえることができる
病院で最期を迎えることになってしまって、亡くなった後とはいえ一度故人を自宅に帰したいと思う家族の方は多いでしょう。
そういった方にとって、自宅安置は選択肢の一つです。
×当然だが家を持っている必要がある。
×弔問者が来ると休まらない
交友関係が広い場合、お通夜お葬式までの期間、自宅にお参りに来る人が結構いらっしゃるかもしれません。生活空間に頻繁に他人が入ることになりますから、看病疲れの回復していない遺族にとっては負担になることがあります。
×(身内だけの葬儀を考えている場合)近所にバレる
外部から人を呼ばず、身内を中心とした家族葬などをひっそりと行いたい方は、近所にバレることを嫌がります。
病院から自宅までの故人のご移動は寝台車という専用の車を使います。最近はエスティマなど黒や白のワンボックス車であることが多いので、一見ご遺体とお乗せしているというふうには見えません。とはいえシーツを被せたご遺体を載せたストレッチャーを、ご近所の方に見られてしまうと不幸事があったことが分かってしまいます。
マンション
○故人や遺族の希望をかなえることができる
自宅の選択肢で書いたのと同じことです。
×安置スペースに余裕の無いことが多い
どうしても自宅に比べて狭いので、安置するスペースが確保しづらいです。
ただし畳1畳分のスペースがあれば物理上は可能です。
また通路や廊下が狭いのでご遺体をうまく部屋まで運べるかどうか心配する方もいらっしゃいますが、そこは葬儀屋さんが抱きかかえたりして御安置しますので大丈夫です。
同様にエレベーターが狭いという心配をされるかもしれませんが、余程築年数が古い建物でなければ、エレベーターの下側が開閉式でストレッチャーを差し込める構造になっています。
またエレベーターが無ければたとえ部屋が何階であっても階段を使って葬儀屋さんが運びます。
このように葬儀屋さんは大変ですが、遺族の方は気にする必要はありません。
×管理人への報告が必要
これは居住者の死亡報告という意味もありますが、重要なのは搬入搬出で設備の協力を求めるケースがあるからです。
上記のエレベータ-の開閉をお願いしたり、故人を乗せる車両の駐車場所を確保してもらったり、というようなことです。
さて自宅とマンションはパッと思いつく安置場所ですが
これらが無理な場合、次の選択肢が浮上します。
葬儀社の式場・式場霊安室
ほとんどの葬儀社は、自社の会館や事務所内に安置施設を持っています。
○とりあえず安置できる。
上記の図をご覧頂ければ分かるとおり
安置場所の選択肢はいろいろありますが、条件が合わないことも良く起こります。
でもご心配なく。
とりあえず葬儀社が所有する安置室が、使用可能です。
故人の安置場所が無くて路頭に迷うということはありません。
ひとまずご安心してください。
また 24時間安置可能というのも強みです。
以下説明する他の施設は、昼間しか安置できないというケースも多いです。
×安置環境は葬儀社によってさまざま
安置は、極端な言い方をすると、畳1畳のスペースがあれば可能です。
そのためひどい葬儀社だと、コンクリートの打ちっ放しの部屋にただ御棺を並べていたり
カプセルホテル状の冷蔵庫に、ただ遺体をお納めして、遺族の同席を認めなかったり、というケースがあります。
良い葬儀社の霊安室は、きれいな個室を用意しているケースが多いです。
その場合、遺族はゆっくりと快適に過ごすことが可能です。
このようにクオリティが本当にピンからキリまであります。
葬儀社のクオリティが、霊安室に反映されているのです。
×有料のところが多い。
企業である葬儀社のサービスなので、ちゃんとした霊安室であれば、それなりの料金がかかります。
都市部の個室タイプだと1日あたり1~3万円が相場です。
貸し葬儀式場
これは寺院が所有する葬儀式場の中や(寺の敷地内にあることが多い)
公営の葬儀式場の中にある霊安室のことです。
当然その式場をお通夜お葬式で使用することが前提です。
○お通夜まで移動無く、ご遺体を預かってもらえる
安置する場所はお通夜お葬式で使用する式場(施設)内にありますので
お通夜の前に一旦お体を車両に乗せて式場に移動、という手間と時間をかける必要がありません
×安置スペースが無いところも多い
そもそも安置スペースを持っていない式場の方が圧倒的に多いです。
ご遺体を預かるということは 24時間管理責任が生じるということですから
これを嫌がる式場が多いということです。
×死亡の段階で葬儀式場が決まっていないといけない
通常病院から直接安置場所に向いますから、病院を出るまでに葬儀式場が決まっていないといけません。
しかしこの記事を読まれている方は事前相談を行っておらず、時間と情報が不足している方が多いでしょう。
なかなか先に式場を決めている方は少ないのではないでしょうか。
火葬場
火葬場の中に霊安室を設置している場合があります。
○費用が安め
東京以外の火葬場はほとんどが公営なので料金は安めに設定されています。
×そもそも霊安室が無い
上記の貸し葬儀式場の項目に記載したことを同じです。
ご遺体を預かるということは 24時間管理責任が生じるということですから
公務員は嫌がります。
横浜市の規模ですら市営の火葬場に霊安室はありません。
×あっても受入れ数が少ない
仮に霊安室があったとしても死亡人口の割に数が足りていないことが多いです。
いざっていうときに空きが無くて困ることも多いです。
×安置環境が良くないことが多い
あくまで安置機能があるだけでも有り難く思え、的な運営なので
コンクリートの打ちっ放しの部屋にただ御棺を並べていたり
カプセルホテル状の冷蔵庫にただお納めして、遺族の同席を認めなかったりというのが普通です。
他の条件として最終的にその火葬場を使わないといけない、というものがありますが
通常火葬場って選択肢が複数あるケースは少ないのでこれは問題にならないでしょう。
病院の霊安室
「えっ、病院から早く故人を移動させなきゃならないから安置場所探せ、と言ったではないか!」
と思われたかもしれません。
たしかにほとんどの病院が移動をせかすのですが、まれに、数日くらいなら安置させてくれる病院が(本当にまれに)あるので、念のため項目に加えました。
ダメで元々で聞いてみてはいかがでしょうか。
○費用がかからないことが多い
保険点数の付く正式なサービスではないので料金を取ることが、できないのでしょう。
×小さい病院だとそもそも安置スペースが無い
専用の霊安室が無い小さな病院だと、そもそも安置自体が不可能です。
霊安室があって、さらに保冷用の施設がある大病院のケースが望ましいです。
×長期間は無理
あくまで病院側の厚意で安置させてもらっているので、長期間は無理です。
次の安置場所が決まるまでのつなぎとして考えて下さい。
以上で御安置場所が決まったら(もしくは御安置が完了したら)次回の
実際に両親を見送って分かった身内が亡くなったらすぐにやるべき3つのポイント その2
に進んでください。
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