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「仕事本」の私の文章がおもしろい理由




私が寄稿した本が6月17日から書店に並び始めます。

(Amazonは23日からです)
コロナウイルスによる緊急事態宣言が発せられた4月7日から約3週間の間に起こった出来事を、いろんな職業の77人がそれぞれ日記として書いたものをまとめた本(アンソロジー)です。

さて、この77本の文章の中で特におもしろいのは、葬儀社スタッフの赤城啓昭氏、そう、私のだと思う。

いや、まぁ、待て。
鼻白む気持ちはわかる。
これからその理由を話すから、とりあえず少しでいいから私の話に耳を傾けてくれ。

私に文才があるって、言ってるわけじゃない。

確かに葬儀屋さんの中では、文才に関して内心一番だと思っている。(だって葬儀屋さんの3割は中学生レベルの漢字を書けなくて、9割は1,000文字以上の文章を書けないので)
でも、ちゃんとしたライターの方と比べたら、足下にも及ばない。

でも今回の企画の文章のおもしろさというのは

出来事 × 文才

で決まると思う。

だから自分の身に起こった出来事がありふれていると、相当の文才を要する。
人によっては仕事がなくなって、外出制限されたことで「何もできない」「何も起きない」状況だ。
自室で半日1人で過ごした風景を、おもしろく描こうとしたら、もう芥川賞級の文才が必要だ。

コロナウイルスってつまり、「死の恐怖」だ。

志村けん氏の訃報は、普段の日常に「死の恐怖」を持ち込んだ。

今回の執筆者の中では、私が最もコロナウイルスに近づいた「出来事」を経験している。
それはコロナウイルスというテーマで執筆する上で、職業柄たまたま有利だったに過ぎない。
ずるいとさえ言っていいが、有利であったことには変わりはない。

みんな緊急事態宣言下の日常を描いている。私は緊急事態宣言でも変わらない、自分の日常を描いたが、その日常は一般読者にとって非日常の極みだろう。そういう文章を、みんな読みたいのではないかな。

そして私の物語は、完結している。

この本を6月に出版することは最初から決まっていたので、スケジュール的に原稿の締め切りを4月中に設定せざるを得なかった。
それゆえ、コロナ禍の真っ最中で、話を終えなければならない。
みなさんのほとんどの物語は、完結していない。

葬儀は強制的に、イヤでも3~5日程度で完結する。
だから物語をちゃんと完結させることができる。

完結しているから、起承転結を描くことができる。

そして、完結していると言いながら、最後は、ちゃんと新しい物語が生まれる一文で締めくくってある。
お葬式って終わらせるんじゃなくて再生させる装置だから。

どうですか?

読みたくなりませんか?

そう、今回の書評は、この本を読みたいと思わせるための、戦略だ。

特に私の文章を、ね。

********(追記)*********

実は、以上の書評を、最終稿を出版社に提出した直後、つまりこの本を実際に読む1ヶ月前位に書いていました。(昨日1割ほど修正した。)

で、以下は、実際に読んでみた感想です。

「芥川賞級の文才が必要」なんて書いてしまいましたが、実際に芥川賞作家の町田康氏が執筆陣にいました(笑)

また「ほとんどの物語は完結しない。」とも書きましたが、未完ゆえに、それぞれ生活の瞬間を切り取っていて、味わい深くなっている文章もたくさんあります。

シャレで私の文章がおもしろいと、のたまわりましたが、自分は下記の5つの文章が特に好きです。同意してくれる読者は多いんじゃないでしょうか。

ミュージシャン 尾崎世界観 さん(P62)
ミュージシャンらしい、気負わないけど、それでいてリズム感のある文章。関係ないけど「鬼」のPVカッコ良くて何度も見たなぁ。

女子プロレスラー ハイパーミサヲ さん(P87)
興業中止の影響をまともに受けているのに、強くて折れない心。勇気づけられる。

ホストクラブ経営者 手塚マキさん(P104)
ホストで社長っていえば、最もイイ格好したがる人種を掛け合わせたイメージがあるのですが、弱った心情をも吐露する率直さがいいです。

ピアノ講師 大峰麻衣さん(P155)
ファイティングポーズをとり続ける姿勢と文体が好きです。

経営学者 中沢孝夫 さん(P430)
大人のシニカルで冷静な視点。

最後に、左右社の編集の方に対し
限られた時間で、こんなにバラエティに富んだたくさんの人々の声を集められたことと、私に執筆の機会を与えていただいたことに、謝意を表します。











5 件のコメント

  • >だって葬儀屋さんの3割は中学生レベルの漢字を書けなくて、9割は1,000文字以上の文章を書けないので
    笑えました。

    関東の地方都市在住です。
    以前は都内から10年遅れで流行が来ると言われていました。
    今はスパンがずっと短いですが…

    今から30年前は「○○造花店」という葬儀屋が残っていた時代でした。
    そういう葬儀屋にあたると、スタッフは「お前、テキヤじゃねん」という感じの方が大勢いました。

    その頃、数少ない都内の葬儀で、スタッフの質が天と地ほど違うのに驚きました。
    これは都内有数の葬儀社(社葬メイン)だったからかもしれません。

    ところが最近私の地域でも、明らかに大卒で普通な新人くんを見かけるようになりました。
    中年以降のスタッフには元ヤンみたいな人が多いので、続くかは心配ですが…

    あなたの指摘も近い将来変わるかもと期待しています。

    • 高庵寺 様
      >だって葬儀屋さんの3割は中学生レベルの漢字を書けなくて
      これはちょっとしたジョークでして
      地方都市の大手葬儀社だと、実は地元志向の国公立卒やマーチ卒はけっこういる時代なんですけどね。

      >続くかは心配ですが…
      20数年前の私ですね(笑)

  • お疲れ様ですm(__)m
    沖縄県で仕事していました。(  ̄▽ ̄)
    石垣市火葬場、いなんせ斎苑行きましたけど、
    綺麗になっていました。
    葬儀社さんの案内で葬儀備品商社と一緒に
    西表島火葬場やジャングルに行きました。
    コロナ禍でも待ったなし。。。

    昨日のいなんせ斎苑は、8基中5基が稼働していました。
    日本の津々浦々に伺って、葬送儀礼の数々をみて勉強しています。
    黒いかりゆしの礼服というかシャツの弔問客は沖縄らしさがありました。
    東京は、全人口の10%位ですから、
    東京感覚で語ると、エライ赤恥をかくなと痛感しました~~
    伊豆諸島の利島は、土葬率100%

    那覇の夜の街は、思ったより人出はありました。しかし、観光客は激減しています。

  • 先生、施行件数を増やすために大事な項目は何でしょうか。優先順位つけて3つ教えて下さい。
    先生がどうやって指導してるのか凄く興味があります。

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