先日葬儀業界を視野に入れての就職活動中の方から下記のご質問をいただきました。
(原文は葬儀業界のイノベーション(技術革新)のコメント欄を参照してください)
「冠婚葬祭業界は選考もいよいよ佳境に入っております。
しかし選考に進めば進むほど、不安に思うことがあります。
それは、ご遺体への恐怖心です。
(中略)
しかし葬儀の担当ともなると、ご遺体と接する機会が必然的にある…
そう考えると、自分にできるだろうか、と不安でなりません。」
私の結論は
「ご遺体は怖くない、大丈夫!」
です。
ではその理由を説明していきます。
まず「遺体が怖い」という問題を分析するため
「問題を分割」していきます。
遺体が怖い(と感じてしまう)原因は二つ。
「見慣れないものに対する恐怖」
と
「プリミティブ(原始的本能的)な恐怖」
です。
まず「見慣れないものに対する恐怖」についてです。
学生時代沖縄から出てきた友人が「地下鉄に乗るのが怖い」と言っていました。
それと同じ構造だと思うのです。
これは見慣れる、つまり経験することで克服できます。
次に
「プリミティブ(原始的本能的)な恐怖」
についてです。
これはさらに2つに分けられると思います。
「感染に対する恐怖」
と
「死のイメージを喚起させることに対する恐怖」
です。
(参考記事:葬儀屋の息子の自殺率は高い?)
まず「感染に対する恐怖」ですが、
これは「知らない、分からない」ことが生み出す恐怖です。
医学的知識を得て適切な対処の仕方を知ることで、克服できます。
詳しくは↓この記事を参考にしてください。
御遺体を「適切に恐れる」
とはいえ、慢心して予防を怠ったりしないよう、
多少の恐怖心は残しておきましょう。
次に
「死のイメージを喚起させることに対する恐怖」
です。
より本能的な恐怖なのでコントールするのが難しいと思われるかもしれません。
そう、だからコントロールしなくていいです。
むしろ恐怖を増大させてもいいくらいです。
この恐怖は根っこでは「畏怖」につながっています。
「畏れる」ということです。
この畏れるという言葉には死への恐怖以外に
故人を敬う気持ちも含まれています。
だからこの「畏れ」は克服、つまりなくすべきものではなく、
葬祭業に就いている間、ずっと持ち続けるべきものだと思います。
以上の説明を図解化するとこんな感じ(クリックで拡大)
とはいえ、怖いものは怖いんですけど・・・
という場合はこう考えてください。
何度も納棺を経験すると
「遺体=故人」は葬儀屋であるあなたに完全に身を委ねているということが、感じられるはずです。
(ただの動かない肉のかたまりなんだから当然でしょ、
っていう人はそもそも葬儀屋としての感性を持たない人なので
問題外です)
つまり、「遺体=故人」はあなた(葬儀屋)の味方なんです。
職業差別する世間や、志の無い同僚や、当たりの厳しい遺族に比べれば
よっぽど付き合いやすい、と思いませんか?
葬祭業をやってみてこのように思えない、というのであればおそらく
職業差別する世間や志の無い同僚や当たりの厳しい遺族の存在に
耐えることができないでしょう。
ということであれば、むしろ遺体への恐怖が問題なのではなく、
それ以外の適性が問題、ということになるのではないでしょうか?
ちなみに自分の周りで遺体に触れるのがダメで
この仕事を断念した人はいないです。
というわけで、
「ご遺体は怖くない、大丈夫!」
という結論なんですが・・・
いかがでしょうか?
故人しか相手にしない事が多い我々エンバーマーの離職率は、計算していませんが低くはないようです。
所謂、特殊遺体。まぁ隠しても仕方ないことですが、「お会いできない程」の方も実際にいらっしゃいますからね。その時は申しつけてください(キリっ
受注、担当ならば畏れるほどご遺体に接する時間も暇もないかな、とも思います。
(会社にもよるでしょうけど)下げ、搬送、安置、打ち合わせ、手配、設営、納棺、通夜告、出棺、設営、戻り後の食事
お別れなしの直葬でもないかぎり、ご遺族と接する時間の方が長い。後飾り終わって集金入金してもすぐに四十九日。納骨の話が終わらない内に、次の下げ。
あれ?葬儀屋っていつ休むんだ?
あとは感染防御ですね。
結核、肝炎、HIV…移らないと本気で思ってる葬儀屋の多いこと…。予防接種も併せてどうぞ。
因みに特殊遺体が駄目で、離職したエンバーマーと搬送専門業の知り合いがいます苦笑。
エソバソマー様、
> 故人しか相手にしない事が多い我々エンバーマーの離職率は、計算していませんが低くはないようです。
エンバーマーの離職の最大の要因は
供給過多による待遇の悪さだと個人的に思っているのですが
いかがでしょうか?
物理教師様
>エンバーマーの離職の最大の要因は 供給過多による待遇の悪さだと個人的に思っている のですが
現在のところ、エンバーミング施設を有しているのは大手互助会が多く待遇は悪くないようです。
外国人エンバーマーは自宅や車をあてがってもらっているようですし。
人員は国内養成学校卒だけでは足りていないようです。2名で月150件以上の施術の企業もあるようです。
施設も北陸や九州、東海で増加傾向にあります。
離職の要因としては、売上に貢献できない職種なので企業側が評価しにくく
(ご遺体の状態を一律で評価できないため、処置件数=エンバーマーの技術力とはならないため)
出世や将来性に希望を持てず、独立も(様々な理由で)厳しい事が大きいようです。
丁寧に回答いただき本当にありがとうございます!
まず「ご遺体は怖くない、大丈夫!」という言葉を見た瞬間、肩の力が抜けました。
そして、自分が感じている恐れを分析していただいて、腑に落ちました。落ち着きました。
これからの就職活動で前向きに、選考に集中することができそうです。
ありがとうございました。
また何かお聞きすることがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
エソバソマーさん,
もう少し世間で認知されるようになればいいですよね。
納棺師的な感じで。
blueさん、
お役に立てて良かったです(^_^)v
応援してます。
かんばってくださいね!
物理教師様、私は大学3年の将来、葬儀業界への就職を目指している者です。初めてコメントさせていただきます。わかりやすく葬儀業界を解説なさっている記事を読んで勉強させていただいております。
本題なのですが、私は今、葬儀社のインターンシップをしたいと考えております。しかし、インターンシップを行っている葬儀社はあまり多くありません。物理教師様は葬儀業界を知るためにインターンシップは必要だと思いますか?また、インターンシップ以外にこの業界を知る方法はどの様なものがありますでしょうか?
お答えいただければ幸いです。
心理学男子さん、コメントありがとうございます。
心理学男子さんのご質問も書いてるうちに回答量が多くなってしまったので
個別に記事を立てても良いですか?
物理教師様、返事ありがとうございます!
もちろんです、お願いします。