今回はこの本をご紹介します。
故人サイト
古田雄介 社会評論社 2015-12-11 売り上げランキング : 39747
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<アマゾンから転載>更新直後に殺害・ツイート直後に事故死。リアルタイム闘病記録・自殺実況中継・ファン巡礼慰霊碑サイト。それは遺書なのか、あるいはダイイングメッセージなのか!?漂い続けるネット墓標を徹底調査!!
いろんな原因で管理人が亡くなってしまったサイトを紹介している書籍です。
この本が読み手を惹きつけるとしたら
①自分が突然亡くなるとも思わず直前まで記される文章から感じる日常の不条理への恐怖
②そして 死に直面した人の心の葛藤に対する息苦しさと共感
③それを乗り越えようとする覚悟への敬意
の3つの要因によるものだと思います。
(虚言癖少女の「私もうすぐ死んじゃうの詐欺」というのも
ある種の哀しさを感じて興味深いのですが
他のサイトとは重みが全く違うので今回は論じません)
今回書籍という媒体でネット上の死に触れるという手段を選んだということは
普段ネットにアクセスしない人を読者として想定しているのでしょうか。
あえて紙にしたことで、ネット空間を対象化し
より読み手の想像力をかき立てるという効果はあったかもしれません。
さて
自分は願わくは③のような「立派な」最期を迎えたいと思いつつ
恐らく無理だろうなぁと思っている人間です。
恐らく無理だろうなぁと思っている人間です。
今でも思い出すのは
若くして亡くなった奥様の画像データを
御主人が開式直前に持参された葬儀のこと。
それをプロジェクターでスクリーンに投影しました。
最後の画像は亡くなる直前に奥様が走り書きしたメモ用紙で
最後の画像は亡くなる直前に奥様が走り書きしたメモ用紙で
「いい人生でした。ありがとう。」と書かれていました。
この境地に自分も最期は行けるものなのだろうか
と時折思い返すことがあります。
この書籍の出版社のサイトの紹介文には
「死はネットで学べる。」との一節があります。
確かに現在リアルに死を学ぶ機会がほとんど無いという状況も理解できますので
キャッチコピーとしては有りだと思いますし
一般の読者にとってこの本は有用なものでしょう。
しかしそういった事情を理解した上で
日々リアルな死に触れている葬儀屋さんの立場としては
本当の死はネットでは学べない
ものだと思うのです。
ネット上の死も前述した奥様の死も
私にとって同じ三人称の死であるわけですが
おだやかな死に顔に触れたときのヒヤッとした冷たさや
遺族の慟哭を見ていながら何もできない苦しさというのは
経験してみないと分かりません。
紹介文は編集者が書いたものかもしれませんし
著者は葬儀屋を経験しているらしいということを分かった上で
それでも死はネットではなくリアルで学ぶべきもの、
と申し上げておきます。
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