終活セミナー講師を即席で養成したので、その方法についてです。
以前商圏の被っていない提携先の葬儀社の社長さんから
「はじめて終活セミナーやるんだけど講師をやるスタッフに、セミナーのやり方教えてやってくれない?」
と頼まれました。
セミナー本番の前日に(^^;)
そこでまず講師役のスタッフに
「亡くなった人になりなさい」と指示を出します。
仰向けに寝そべらせてしばらくしてから思いっきりボールをぶつけます。
「痛いっ」
「亡くなった人が痛いといいますか!」
「申し訳ありませんっ。月影先生」
すいません、この指導のくだりウソです。
元ネタ結構有名だと思うんですが
分からなかったらすいません。
それにしても「ガラスの仮面」て終わらせる気ないよね。
あと永野護の「ファイブスターストーリーズ」も。
えーとそろそろ本題にもどっていいですかね。
って私が脱線させたんでしたね。
明日空いている葬儀スタッフは2人いるけどどちらにするかと言われたので
20代の器量は普通だけど(すまん)朗らかで元気そうな女性を選びました。
(以下のやりとり、私が偉そうなしゃべり方をしていますがこれは話者を分かりやすくするため。
実際は敬語でしゃべっています。)
「じゃ、まず基本から。明日セミナーに来る人の目的は?」
「お葬式のことを知りたい、ですか?」
「そう。じゃ君の会社がセミナーをやる目的は?」
「お葬式を依頼してもらいたい、です。」
「その通り。ということは君のやるべきことは役に立つお葬式の情報を提供して、君の会社にお葬式の依頼がくるようにすることだよね。
これは基本的で且つ極めて重要なことなので覚えておいて。
それから明日いらっしゃる聞き手の性別と年齢は?」
「50代から80代くらいまでで、女性の方がちょっと多目です」
「で、明日のセミナー対策だが、題して『孫作戦』。
参加者にとってカワイイ孫と認識してもらえ」
「それでいいんでしょうか」
「とりあえず今回は。
最初にいったように今回の最終目的は君の会社にお葬式を依頼してもらえるようになること。
そのために必要なのは好感。
葬儀という商品は購買のタイミングを売り手も買い手もきめることができないので、いつ購入してくれるか分からない。
ロジカルな説得をしたところで、それは購買アクションには結びつかない。
もしかしたら5年先になるかもしれない。
そのときにはロジカルな説得は頭に残っていない。
残せるのは好感という感情。
感情ならは5年経っても覚えている。
その好感を持ってもらうのが狙い。
極端な話、好感持ってもらえるなら葬儀の話なんてしないで歌を歌ってたっていいんだ。
昔中森明夫がアイドルの仕事は「好かれること」だと非常に本質的なことを言っていて・・・」
「中森明夫って歌手ですか?」
「いや、いい。中森明夫のことは忘れてくれ。
さて、そこでだ、彼ら彼女らが最も好感持つものはなんだ?
孫だろ。
孫が一生懸命頑張っている感じを出して。
それならたどたどしいしゃべり方をしてもむしろプラスになる。」
「明日参加者は30分くらい前から入場し始めるだろう。
もうそこからセミナーは始まっている。
資料は最初から渡さないで着席してから渡して。
そのときになんでもいいから話しかけてみて。
寒いところありがとうございます、とかこの会場の場所すぐ分かりましたか、とかなんでもいい。
それを全員に。
会場の温度を1℃上げるつもりで。
相手と自分の両方をリラックスさせるためにやるんだ。」
設営準備の時に式場のイスを並べながらでも、自動的にすらすら言葉が出てくるレベルにして。
冒頭の1分が滑らかに出てくれば、後は水平飛行に入れる。
それに冒頭から原稿に目を落とすと自信が無い印象を与えるから、それはやっちゃだめ。」
「話す内容は事前相談者に話していることでいい。
本当はだめだが時間が無い。
本番はもう明日なので何をしゃべるか、ではなくどうしゃべるかが重要。」
「それから、講師席から見て怖い顔しているおじさんがいるかもしれないが気にしなくていい。
彼らは表情筋が弱っているだけで、不機嫌なわけじゃない。
ただしおばさんも固い表情しているとしたら、それは講師の君が緊張してるから。
君の緊張が聞き手に伝わってしまっている。
そのときはとりあえず笑顔を継続しろ。
笑顔は得意だろ?
大切なことだからもう一度言う。笑顔だ。
笑顔を浮かべていれば、早口になることも、緊張が伝わることもない。
うなずいてくれるおばさんがかならずいるから、最初はその人だけを見て話して。」
(実は当日知り合いの女性に頼んでうなずき役のサクラとして念のため投入。
実際は数人うなずいてくれていた女性がいたので、結局無駄足だったが保険として)
次に練習。
まず大まかに修正しながら1回、
ムービーで撮影しながら通しで1回
自分の動画を見せたあと通しで1回
本人は4回目を望んだが、そこでストップ。
なぜならこの本に書いてあるように
「演技と演出」平田オリザ
演劇の初心者の場合によくあるケースですが、練習すればするほど、なんだかダメになっていくという場合があります。これは、稽古を重ねれば重ねるほど、所作や台詞に慣れてきてしまい、新鮮さがなくなってしまうのです
この兆候が出てきたから。
そして翌日の本番を迎えました。
いろいろありましたが、なんとか無事終わりました。
「ありがとうございました・・・どうでしたか?」
「君の会社にとっては70点。お客さんにとっては30点。
構成にはほとんど手が付けられなかったからね。でも限られた条件の中ではよくやれたと思うよ。」
「良かったです。」
「言っとくけど孫作戦のスキルは明日から劣化する。
自分が40才になって今日みたいなセミナーやっているところを想像すれば分かる。
今回はあくまで応急処置。
もしお客さんにとって70点にしたければ、また呼んで。
少なくとも10日前にね」
コメントを残す