葬儀社が生き残るためのカギを教えます




KFSという言葉を御存じでしょうか?

KFSとは?

KFSとは
KFS=key-factor-for-successの略で「(主に企業戦略の)成功の力ギ」
という意味です。
ここを押さえておかないとその事業が成功しない、という戦略上のポイントを指します。

詳しくは大前研一氏のこちらの書籍

で詳しく説明されています。

例えば携帯産業のKFSはこんな感じです。

黎明期  デバイス小型化
1995年 通話圏拡大
2000年 使用者数増やす
2006年 通話料下げる
2010年 スマホ化

では、葬儀業界のKFSは何なのか?を今回は考えてみましょう。

葬儀業界の未来は暗い

本題に入る前に、葬儀業界の近未来を予測しておきましょう。

2020年の死亡者は約137万人でしたが、2038年頃には168万人でピークを迎える予定です。
矢野経済研究所のレポートによると現在葬儀業界の市場規模は約1兆8千億円くらいです。
これは2018年データなのでコロナ禍の影響を受けた2020年は1兆6千円前後の数値になっているはずです。
かつてマスコミは葬儀産業をずっと成長産業と言っていました。(残念なことに先ほど紹介した著作の中でも、大前研一氏が同じ事を言っています(T_T))

少子高齢化と、それが生み出す景気低迷・社会保障不安・末期医療の高額化・葬儀の小規模化省略化などの結果、これ以上市場が拡大することはありません。

極めて楽観的シナリオですが、葬儀業界の市場規模が、コロナ禍の悪影響から回復して、横ばいで2038年を迎えたとしましょう。
単純に1件当たりの単価は約2割下がります。


2020年度のTKC(会計系情報提供会社)のデータを見ると、葬儀社の売上高経常利益率の平均値は4.7%しかありません。
メーカーなら技術革新でコストカットが行えるかもしれませんが、
葬祭業は労働分配率が5割以上の労働集約産業です。

件数が増えていくのに合わせてスタッフを増やさなければならず、固定費比率がどんどん上がって利益を圧迫します。

火葬のみが増えてくると、少ないスタッフで運営できますが、通常の葬儀に比べて利益は1~2割になってしまうので、状況はさらに悪くなります。

楽観的シナリオでも救いがありません。

このままいくと、葬儀社はバタバタ潰れていきます。

先ほど申し上げたようにKFSはそもそも「成功の力ギ」という意味合いが強いのですが、環境が悪化している葬儀業界においては「生き残るための戦略」と言えるでしょう。

葬儀社のKFSを教えます

では、この葬儀業界を生き残っていくための葬儀社のKFSとは、何でしょうか?

  1. 会館所有
  2. 女性活用
  3. 標準化
  4. 大企業化
  5. 死ぬことで発生する問題のソリューションビジネス部署

が葬儀社のKFSです。

これはKFSが変化していくというよりも、この順番でKFSを積み上げていかないと次のKFSに移行できないと考えてください。

例えば会館所有を飛ばして、いきなり女性活用はできません。
詳しくは後で述べますが、女性を活用するためには、筋力のハンデを解消する必要があります。
そのため前の段階で、自社会館を所有することが必要です。これによって重い祭壇や備品の運搬や設営作業から、女性を解放することが可能になります。

会館所有(1990年代~)

葬儀は自宅や寺で、行うものでした。

1968年公開の勝新太郎主演、葬儀業界を舞台にした異色映画「とむらい師たち」では、ギャグとして「お葬式のための会館」が登場します。
実際に葬儀会館の建設が始まったのは1970年代からです。

奇しくも病院で亡くなる人が、自宅で亡くなる人を上回り始めたのもこの頃です。
つまり死が、日常から切り離され始めたのです。

急激な人口増加と経済成長を背景にして、参列者数は増えていきました。

そんな時代に、消費者側から見た葬儀会館のメリットとしては以下の点が挙げられます。

  • 自宅葬や寺院葬に比べて安価(会葬者が多い場合、テント・幕張などの出費が発生するので自宅葬や寺院葬の方が高くつく)
  • (生活空間を分離させることで)心理的物理的にラクで快適
  • キャパシティに余裕がある
  • (立地が良いことが多いので)参列者を呼びやすい

葬儀社からすれば、初期投資のハードルがある一方で

  • (機材を外部に持ち出したり、現地設営をしなくてよいので)ラク
  • 参列者が増えることによる会館の認知度アップ

というメリットは大きいものがありました。

葬儀会館がなければ集客で苦戦することになるため、バブル期を経て2000年代頃までは、各葬儀社がこぞって葬儀会館を建てていました。

会館を持つということが、当時の葬儀社のKFSだったのです。

これが2000年代後半になると状況が変わります。

会館が増えすぎて飽和状態になりました。
また葬儀の小規模化に伴い、大きな収容力を持つ会館は持て余し気味になります。
葬儀単価が下落して、会館の収益性が低下、減損会計の対象になり始めます。(多くの葬儀社は財務がいい加減なので、「減損会計なにそれ?」というところが多いのですが)

現在、新規の会館建設は一部大手のみが行っている状態であり、コンビニの居抜きなどかなり初期投資を抑えた形態になっています。

女性活用(2000年代~)

葬儀業界は男社会でした。

葬儀は重い祭壇を設営したり、ご遺体を階段で2階に上げたりと力仕事です。
また人はいつ亡くなるか分からないため、葬儀屋さんは24時間営業です。ひどい葬儀社だと、月10回夜勤ということもありました。
これも夜だけ働くという話ではなく、朝出社してお葬式の担当して、夜会社に泊まって病院の搬送行って、翌朝打合せをして、その夜お通夜の担当をする、ということは日常茶飯事でした。

力仕事+夜仕事(以前は法律により女性の夜間労働には制限がありました)のため
必然的に、経営者は男性を採用しようとします。

死亡人口は増えてきたにもかかわらず、「葬儀屋さんになりたい」という人は少ないままで、必然的に葬儀屋さんの労働力は足りなくなります。

男性だけの力に頼っていては、組織を維持もしくは大きくすることができません。

そこで女性活用がKFSになります。

それ以前にも派遣やアルバイトとして、女性を現場につける葬儀屋さんはいましたが、そんな扱いでは求人や育成にも限界があります。
正社員としてちゃんと女性の採用を始めたのが2000年代ごろでした。

先ほどの力仕事の問題は、その前のステップで葬儀会館を建てていれば、ある程度クリアすることができます。
葬儀会館であれば、重い荷物を運んだり設営したり、通夜が終わった遅い時間に遠方から帰宅したりする状況から解放されるからです。
重労働さえなんとかできれば、接客サービス自体は男性より女性の方が優れていることが多いです。

こうして女性スタッフを採用しはじめた葬儀社が、業績を伸ばしていきます。

標準化(2010年代~)

葬儀業界は職人の世界でした。

仕事は「師匠のやっていることを見て覚えろ」、というスタイル。
その結果何が起きたかというと、みんなやり方がバラバラで、人と違うやり方に職人的アイデンティティを見出す世界です。

これの何がまずいかというと、

  • 人的コストの無駄(葬儀は、都度編成されたチームで行うので、担当であるAさんのやり方とBさんのやり方が違うとスタッフが振り回される。)
  • 品質バラバラ(ベストの方法が採用されないので、間違った方法論を通す人がいる。そして最初に覚えたことは変えようとしない)
  • 人が育たない(せっかくホスピタリティマインドがあって誠実でも観察力や、人から教えてもらうための人間関係の構築力が低いと、スキルが身につかず生き残れない)
  • デビューまで時間がかかる

町の零細葬儀社のままでいたいなら気に留める必要はありませんが、これでは組織が発展せず停滞します。

ここで必要なのが標準化です。

どのスタッフも共通の、洗練されたオペレーションで働いて、生産性を上げることが必要です。

葬儀業界は新人教育が下手である – 考える葬儀屋さんのブログ
大工は去れ! – 考える葬儀屋さんのブログ

この記事でも書きましたが、なんで「見て覚えろ」という方法論がまかり通ってきたかというと
「葬儀屋さんにナレッジマネジメント(言語化)の能力がなかった」
というのが最大の理由です。

そのためマニュアルも無かったのです。

意識的に標準化を行いたい葬儀社は、新卒の採用を始めました。

中途入社の経験者は、前の葬儀社で覚えたクセを治そうとしません。
また葬儀の担当は、担当とお客さんだけの世界(≒周囲からはブラックボックス)になりがちのため、同僚から実態が見えづらく矯正されづらいのです。
それだったら、ちゃんとしたマニュアル作って新卒を採用して一から教え込んだ方が早い、という考え方です。

こういう葬儀社は、共通のマニュアルがあるのはもちろんのこと、
現場の抜き打ちチェックや、業務テストを人事評価と連動させています。
また式場のデータベースなども自主的に作成する社風があります。

会館建設、女性の採用まではうまくやった葬儀屋さんも、この標準化でつまずくことが多いです。

大企業化(2020年代~)

葬儀業界は零細企業のあつまりでした。

今後は大企業化が、葬儀社のKFSになるでしょう。

中小規模の葬儀屋さんは今後廃業するところが増えていって、大手葬儀社の寡占化が始まるはずです。

なぜなら大企業の方が、構造的に生産性が高いからです。
今後の厳しい環境の中では、生産性の高いところしか生き残れません。

なぜ大手葬儀社は零細葬儀社より生産性が高いのか – 考える葬儀屋さんのブログ

詳しくは、以前この記事に書きましたが、
サービス業でも規模の経済は働きます。

大手葬儀社の方が、スタッフの振り分けなど人材を流動的生産的に使えます
10人のスタッフで10件の葬儀を運営するより、100人のスタッフで100件の葬儀を運営する方が簡単です。

例えば、葬儀業界と同じく「箱(施設)+サービス」を組み合わせた組織としては病院と宿泊業が思い浮かびます。

病院の場合、日本は国民1人当たりの病床数が世界一と言われながら、現在(2021年)コロナ病床の逼迫が伝えられています。
こうなる原因は、欧米は公営の大規模病院が多いため生産性が高く(≒効率的に患者をさばける)
日本は個人経営の中小規模の病院が多いため生産性が低いからです。

欧米の場合、
公営のためコロナ患者引き受けを命令できて、
リソースを生産性の高い大規模病院に集中させているため、
日本と桁違いの感染者と死亡者を出しながら、なんとか対応できているのです。

 

宿泊業の場合、池田信夫氏も述べているように、
ホテルの79%は大企業(資本金5000万円以上)である一方、旅館の大企業は13%、つまり87%は中小企業です。

<https://livedoor.blogimg.jp/ikeda_nobuo/imgs/2/2/2227169d-s.jpg>

旅館の施設数はホテルの4倍ですが、ホテルは施設が大きいため客室数はホテルの方が多いです。
当然ホテルの方が効率的に人を使えるので、
客室稼働率はホテルが80%であるのに対して、旅館は38%に過ぎません。

大企業化が有効なことが、ご理解いただけるでしょうか。

また大手という状態を成立させているということはその前段階として、会館所有・女性活用・標準化をうまくやっているからであって、そのため生産性が高いという因果関係も成り立っています。
会館所有・女性活用・標準化やらずに、大規模化を行うとどこかに歪みをもたらします。(一部の互助会ではそれが起こっています。)

大きなシェアを持つ葬儀社が少ない理由 – 考える葬儀屋さんのブログ

葬儀費用が消費者物価指数に登録された本当の理由 – 考える葬儀屋さんのブログ

また
・ローカル色薄まり、葬儀の均質化同一化が起こっている
・自由競争を疎外していた菩提寺と出入り葬儀社の結託も、檀家減少の結果、弱まっている
ことも、大規模化に有利に働いています。

死ぬことで発生する問題の ソリューションビジネス部署(2030年代~)

みんな、死にます。

イーロン・マスクは不死を目指しているそうですが、仮に成功する時代が来てもかなり先でしょう。

「葬儀」という商品の存在感はどんどん低下しています。
葬儀をしたいという人々の欲望はなくなることはありませんが、冒頭で申し上げたように環境がそれを許さなくなっています。

「葬儀だけ」に依存する従来の葬儀社は、存続することはできないでしょう。

https://www.kamakura-net.co.jp/assets/img/service/ver1_1.png
事業案内 – 株式会社鎌倉新書

↑これは葬儀業界においてITを駆使して終活情報提供を行っている1部上場企業「鎌倉新書」の事業案内です。

ここに葬儀社が生き残る戦略のヒントがあります。
葬儀だけでなく、領域と時間軸を拡げて、死に関わるビジネスチャンスを押さえていく方法です。

葬式はしなくても(できなくても)、死への準備は必要です.
残された人にとっては、発生した問題を解決してくれる人が必要です。

この問題には、全ての人が直面します。

この分野の対応することが、葬儀社が今後生き残るためのKFSです。

最後に

中小葬儀社に勤めている、まだ若手の葬儀屋さんは将来に不安を感じているかもしれません。

過去何度か同じことを書いてきましたが、葬儀業界の人材は流動的、つまり転職しやすい業種です。
もしあなたにやる気と実力があるなら、上記のKFSを押さえた葬儀社に転職することは難しくないはずです。

葬儀業界の未来は暗いですが、日本全体の未来の暗さに比べればまだマシだと思います。
(あんまり元気の出る励まし方ではなくて申し訳ないのですが、ウソはつきたくないので)

全葬蓮の会長でもないかぎり、葬儀業界全体のことを考えて思い悩んでも仕方ありません。

衰退産業の勝ち組企業で活躍することを考えましょう。











コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください