ティア社長 冨安徳久氏の偽善と葛藤と残酷

一代で葬儀社ティアを上場企業にした冨安徳久氏は、優秀な経営者だと思う。
ただ彼の敬愛する松下幸之助氏もそうであったように(参考文献:血族の王)、表向きの立派な発言の裏には偽善と葛藤があるように思える。

新著「最期の、ありがとう。 葬儀業界改革に挑んだ葬祭プランナーの物語」

今回冨安氏の新著が出た。
彼の半生を描いた内容である。

新著と言っても、初版が出たのが2008年で、それ以降加筆修正を繰り返し、今回は4版に当たる。そしてその度に出版社を変えている。このような事例は珍しい。

初版 ホメオシス 2008/7/10発売

二版 講談社+α版 2009/9/17発売

三版 株式会社Wonder Note 2018/07/07発売

四版(新著) 最期の、ありがとう。 葬儀業界改革に挑んだ葬祭プランナーの物語 現代書林 2025/9/4発売

この著作を基にしたウェブ配信のドラマが2025年10月より始まるらしく、今回の改訂は、それに合わせたものではないかと思う。
この本とは無関係だが、2026年2月には浜辺美波主演の葬儀会社を描いた映画も公開されるらしい。葬儀業界が注目されるのであれば、良いことだ。

問題の箇所

さてこの冨安徳久氏の半生を描いたシリーズの問題箇所を、加筆修正が行われる度に指摘している。
(↓前回の記事ティア社長冨安徳久氏へのエール )

ティア社長冨安徳久氏へのエール

作中
「息子は明治大学に合格したにもかかわらず、親に内緒で大手葬儀社の面接を受け合格し、明治大学に行かず就職した」
と述べているが、これはウソで、実際は
「大学を全部落ちた自分の息子を、冨安氏は自分のコネで大手葬儀社に就職させた」
が事実である。ここまで書く以上、当然裏取りはしている。

この記述箇所は、版を重ねる度に修正が加えられている。

初版・二版にはこう書かれている。

「うん、大学に行きたい」
と言って、勉強をしはじめた。夏頃「どこを受けるの?」と聞くと明治大学だという。
それから、本格的に受験勉強が始まったようだった。そして翌年、無事合格。

三版からは大学名が消えた。

「うん、大学に行きたい」
そして受験勉強をしはじめた。夏前頃からは本格的に猛勉強が始まったようだった。そして翌年、無事合格。

そして今回の四版では、大学受験と合格の箇所がまるまる削除されている。(P270のあたり)
つまり息子は大学受験をしていないことになっている。

私のこのブログの指摘を受け続けて、徐々に隠蔽をはかったのかもしれない。
訂正や謝罪が行われたわけではないし、採用のくだりはそのまま残っているので、「経歴詐称」の事実は残る。
巻末に小さく「フィクション部分も含まれる」趣旨の但し書きがあるが、さすがにそれは免罪符にはならないだろう。
別の章の見出しには「学歴より、感動」という文言があって、かなりのブーメランになっている。
冨安氏は講演でも、学歴は重要では無いという趣旨の発言をしている。(参考記事:株式会社ティアの冨安徳久社長ヘ
もうお分かりだと思うが、学歴が重要と考えているのは、他ならぬ冨安氏自身である。

また

この業界は今でも九九.九九パーセント一族で経営しているので、僕はあえて一族ではやらない、と決めて子供達にも伝えていた。

と述べている。業界のほとんどが同族経営だから同族経営をしないというのは説明になっていないが、そもそもこの記述はウソだろう。

なぜなら一時期、息子をティアに入社させていた。
いくら親馬鹿でも「社長の息子」を入社させたら周囲がどう扱うのか想像できないほどの阿呆であるはずがない。
ティアの感動エピソードをまとめた著作でも、自分の息子をまるまる一章を使って紹介していた。

これで、「跡を継がせない」と考えていた、というのは無理がある。

ティアは上場している。明治大学に受かり大手葬儀社に自力で採用されるくらい能力があると、跡継ぎの息子を優良誤認させたことは、投資家の判断材料になる可能性がある。コンプライアンス的に問題があるだろう。
また私を含めて、ちゃんと受験勉強をして大学に合格して、就職氷河期の中、苦労して意中の葬儀社から内定を得た人達にとって、こういう行為はとても醜悪に見える。

冨安氏は、他社が既にやっていたことを、「業界でティアが初めてやった」と言うことがある。歴史修正には抵抗が無い人らしい。

余談だが、
二版で冨安氏は国立の山口大学経済学部に現役合格したと書いているが、三版ではその記述を削除している。
息子と同じく、合格はしたけど葬儀屋をやるために行かなかったと…
まさかとは思うが、大丈夫か?

その後、息子は結局ティアを去った。その経緯は分からないが、私がもし筆頭株主のY氏であったなら、冨安氏の息子が跡を継ぐことには反対しただろう。親の七光りにも限度がある。

ちなみに「継がせない」という記述は初版と二版にはなく、記述されるのは、彼の息子がティアを去った後に出版された三版からだ。

感想

冨安氏は謝罪し訂正すべきだと、私は考えていたが、ここに至ってはもうこのままでいいのかもしれないと思うようになった。

(以下の記述は、彼の息子に関する業界内の見聞や、息子の言動から判断した私の感想である。)

冨安氏の息子が、もし冨安氏の息子でなかったなら、自分のことを凡庸な葬儀担当者と割り切って生きていけただろう。
もしくは別の業界に転身して、自分の能力に合った職業で成功していたかもしれない。
だが、実態の伴わないフワフワした意識高い系の発言を続けながら40歳を迎えてしまった。これは冨安徳久氏の息子であったことと、冨安氏の期待のせいではなかったか。

最近は、息子自身も経歴を詐称するようになってしまった。

https://x.com/kangaerusougiya/status/1463097063357378566

残念ながらこれはもう、直らないだろう。

息子がこうなってしまった原因が、ウソをついても世の中渡っていけるという冨安氏の教育にあるのなら、因果応報ということだ。

彼の息子は何者にもなれないまま、空回りを続けながら老いて行くのだろう。

そして冨安徳久氏はこれからも講演会で、あのキラキラした表情を浮かべながら、学歴不要論や子育てについて、嬉々として持論を開陳し続けるのだ。

残酷だと思う。