上場している名古屋の葬儀社ティアで、遺体を取り違えて別の人を火葬してしまうという事件が2024年3月にありました。
葬儀場で遺体を取り違えて出棺、女性火葬される…遺灰に見覚えのない遺品で判明 : 読売新聞
その際私はXで、同様のことがまた起こることを予言していました
https://x.com/kangaerusougiya/status/1768238171308089401
2025年1月、予言通り、また遺体を取り違えて火葬する事件が発生しました。(発表は2025年7月)
名古屋 葬儀場で遺体取り違えて出棺し火葬 遺族に謝罪 | NHK | 愛知県
私が予言できたのは、内部で何が起きているか、大体予想が付いたからです。
改善できなければ、また今後同様のことが起こるでしょう。
ティアの内部で何が起きているかを推察します。
目次
ティアとは
御存じない方のために、ティアとはどんな葬儀社なのか簡単に解説を行います。
ティアは1997年、名古屋で冨安徳久氏によって創業。
2014年6月23日に東証一部上場し、現在は東証スタンダード。
2024年の時点で、年間施行件数24,545件、売上188億3,911万円、従業員数899人、店舗数202店。
5年後に300館、施行4万件体制を目標としている。
参考までに、一橋大学のビジネススクールの学生が書いたティアの分析の間違いを、私が指摘した記事を載せておきます。
おそらく人材も教育体制も業界トップレベルでしょう。それにもかかわらずなぜ今回のようなことが起きたのでしょうか?
ミスはダメージが大きい
ミスがダメなのは小学生にも理解できることですが、具体的にどういう影響があるのか、本題に入る前に言語化しておきます。
(日本語でミスというのは正確にはヒューマンエラーと呼ぶべきですが、今回の文章ではミスという呼び方で統一します。)
お葬式は金額が大きく、やり直しが利かず、遺族の感情が不安定であることが多いので、ダメージを大きくします。
まずミスが引き起こしたクレームの消火作業のために、対応コストが発生します。やらかした現場スタッフはもちろんのこと、そのラインの上層部まで巻き込むことになります。長期化すると、のべ日数で1ヶ月間、その案件に拘束されるということもありえます。
次に葬儀費用を回収できないということも起こりえます。100万円を超える売上が回収できなくなるということです。
さらにこじらせれば、訴訟などの法的リスクがあります。
そして上場企業は報道され大事(おおごと)になりやすく、ブランド価値が毀損されます。
さらに悪化すると当然売り上げにも影響することがありえます。
沈静化に成功しても、今度は再発防止策がオペレーションコストになります。
例えば個人情報の漏洩が起こると、社内データへのアクセス手順が複雑化して煩雑になる、といったようなことです。
以上もろもろの出来事によって、職場の空気や環境が悪化してパフォーマンスが低下することもあるでしょう。
こんな大変な状況になるので、できるだけミスは起こしたくないと現場スタッフみんなが思っています。
しかしそれにもかかわらずミスが増えやすい状況になっているということを、これからお話しします。
ミスが増える背景
遺体の取り違えというのは、葬儀社において、あってはならない最大級の事故です。
これが起きるのは、軽微なものも含め、ミスの件数が増えているという背景があります。
殺人事件なんてめったにおきませんが、そのエリアで年間の殺人事件が1件から2件に増えたとしたら、その背景では窃盗などの軽犯罪も増えているのと同じ理屈です。
そしてこのミスの増加というのはティアに限らず、あらゆる葬儀社で起こっています。
この章ではその解説をします。
葬儀件数と現場負担の増加
死亡者数は年々増えています。
2014年の国内死亡者数は1,273,020人でしたが、2024年は1,605,298人です。この10年で約26.1%も増加しています。
これはつまり葬儀件数(火葬だけの人も含む)は、10年前と比較して26.1%増えているということです。
一方、労働力人口は2014年は6,609万人でしたが、2024年は6,957万人です。5%微増しているように見えますが、この中には年々増加しているパートの主婦や定年後の再雇用の高齢者が含まれているので、実際トータルの実質的な労働力は減っています。
総務省のデータによると、年間総実労働時間(労働総人口×労働総時間)は、この10年で0.7%減少しています。
これは日本全体の数値ですが、葬儀業界も事情は同じです。
葬儀件数が増え、業務量が増えているにもかかわらず、実質的な労働人口は減っているのです。
その結果、葬儀屋さん1人当たりの負担が増えています。
葬儀単価の下落
不景気や老後不安、価値観の変化、葬儀の小規模化などで、葬儀単価の下落が起こっています。
経産省や日本消費者協会の発表している葬儀単価の数値は、統計的データとしての信憑性が低いためあえて引用はしませんが、葬儀単価の下落は間違いなく起こっています。
ちなみに2020年に消費者物価指数の品目に葬儀が登録されました。
2020年の指数を100とすると2024年は103.4なので、一見増えて(値上がりして)います。
しかし消費者物価指数全体で見た場合、2020年の指数を100とすると2024年は108.5なので、世の中のインフレ率ほど値上がりはしていないのです。
葬祭業は労働集約型産業なので、葬儀屋さんの実質賃金は減っていると思われます。
従業員の質の低下
つまり、業務量は増えているのに、給料は減っているというのが現状です。
この結果、業界に良い人材が集まりにくくなっています。
ここ数年採用担当をやっていましたが、年々実感するようになりました。
採用のハードルを意識的に下げないと、人が集まらないという印象です。
お金をかけて新卒の採用も積極的に行っていた、自分が勤めていた葬儀社ですらそうだったので、一般の葬儀社の採用状況はかなり厳しいのではないでしょうか。
かつては業界のダーティーなイメージで就職ハードルが高かったのですが、給料が比較的良かったので人は確保出来ていました。
(遺族に頼られてやりがいがある、というのも魅力なのですが、働く業種を決める際にその情報を就職希望者は持ち合わせていません。)
近年は明らかに労働待遇の悪さで苦戦しているように思います。
ホスピタリティマインドがあってサービス業に就きたいという人は、今ならインバウンドの影響もあってホテル業界へ流れるでしょう。
さらに正社員を雇うだけの売上が上がらなければ、パート社員の比率を上げるしかありません。育成コストや業務習得時間が絞られますから、さらにスタッフの質は低下します。
業務量が増えているのに人手が増えず、労働負荷が増え、さらに従業員の質が低下したなら、ミスが増えるのは当然の帰結です。
ティアならではの事情
ティアの場合、上記の一般的な要因に加えて、さらに独特の事情が加わります。
分業制
ティアは上場企業なので法律を守らなければいけません。
(上場してなくても法律を守らないといけないだろうという正論は横に置いといて…)
人はいつ亡くなるかわからないので、葬儀社は24時間対応が原則です。
この不確実性を葬儀社の経営者がどうコントロールするかというと、最小限の人を雇って、葬儀依頼が集中した時には長時間労働させるという、いわゆるブラック労働で対応させます。
そのせいで多分葬儀社の99%は労働法を守ってないでしょう。
大手互助会のように、実質正社員なのに、外部委託の個人請負扱いにしてしまうというグレー方法なを取っているところもあります。(参考記事:互助会最大手ベルコが訴えられた理由)
しかしティアさんは上場しています。労働基準監督署からも目をつけられやすいですから、ちゃんと法令を遵守しなければいけません。
それに加えて働き方改革関連法が施行されました。
これによって長時間労働や休日変更が、やりにくくなりました。
葬儀業務は
病院搬送→安置→打ち合わせ→発注設営→通夜施行→葬儀施行→火葬場同行
という各業務の流れで行われます。
人が少なくて法律無視の個人商店なら、ずっと同じスタッフがベタ付きで全て行うこともあるのですが、これだと長時間労働や休日の消滅が起こり違法状態です。
法令遵守を徹底させるなら、徹底的な分業を行うしかありません。
各業務のタイミングで、その時手の空いているスタッフを割り当てるのです。
当然各業務によって異なるスタッフが、入れ替わり立ち代わり対応するということになります。
従業員に、残業を極力させず、予定通り休みを取らせるには、こうするしかないのです。
このオペレーションでは、スタッフからスタッフへ都度細かい引き継ぎを行わなければならず、コミュニケーションコストが跳ね上がります。とはいえそれにも限度がありますから、「聞いていなかった」ということが起こりやすくなります。
また、個々のスタッフの責任感も低下します。
その結果、ミスを引き起こしやすくなります。
外注化
先程の分業化と同じ理由で、不足する労働力を補充するため、外注化も行っているはずです。
2件目の取り違えでは
2人の遺体はいずれも提携先の企業が運営する施設で保管されていて、名字が同じだったことから取り違えが生じたとみられています。
と報道されていました。
上場企業であるティアさんの本体に比べて、外部業者の質は劣ります。クオリティコントロールをしたくても、他社なので手が及びません。取引先を変えようにも、活動エリア内という条件が付くので、それほど選択肢は多くありません。
生活保護案件の引受け
2件の報道を聞いて、一般の方は
「火葬までに、なぜ遺族は別人と気がつかなかったのか?」
と不思議に思ったはずです。
これは2件目の報道です。
ティアによりますと、2025年1月、名古屋市のティア瑞穂で執り行われた葬儀に、誤って身寄りのない遺体が運び込まれ、そのまま出棺しました。
遺族が立ち合いの元で別人の遺体は火葬されましたが、遺灰の中に見覚えのない遺品が含まれていたことで取り違えが発覚したということです。
この報道に関しても一般の人は
「身寄りはいないのに遺族はいたの?」
と不思議に思うでしょう。
これはおそらく生活保護の方の葬儀を引き受けているからです。
生活保護の方は、親族のサポートは無く、当然自分が亡くなった時のお葬式の費用の貯えなんてありません。そのため葬式はできないが火葬だけはできる程度のお金が、国や自治体から葬儀社に支払われます。
この場合登場する遺族というのは、生前は故人と交流はなかったが、自治体や警察から頼まれて遺骨だけは引き受けることを承諾した方達です。
この関係性が、「身寄りはいないけれども遺族はいた」と報道されているわけです。
この方たちは、火葬後の拾骨(骨拾い)だけに立ち会うことが多く、亡くなってから火葬までの安置中に、故人と面会しないケースも多いです。
生活保護案件を扱っている限り、火葬前に本人かどうか「遺族のチェック」が働かないのです。
1件目の取り違え報道で
火葬場を管理する(越谷)市は、取り違えが起こった経緯などの報告を同社に求めている。
とあったのは、自治体の紹介で生活保護案件を積極的に受けているからでしょう。
生活保護案件を引受けていることが、遺体取り違え確率を上げています。
世間はこの辺りの事情は分かりませんから、「ティアってなんて雑な仕事してるんだ」という印象を持つでしょう。
上場企業の報告義務
投資家の出資を受けている上場企業には、当然詳細な報告義務が求められます。
事件が起こった際、心情的にはもみ消したくても、バレた時のリスク大きすぎて、やらないでしょう。
絶対に報道せざるを得ない、というのが上場企業であるティアの立場です。
最近急激に規模を大きくして、売上でティアを追い抜いている非上場企業のK社という葬儀社があります。業界の評判からして、こちらの方が絶対いろいろやらかしているはずなのですが、全く表に出てこないというのは、つまりそういうことなのでしょう。
これまで説明してきたように
葬儀業界全体の劣化+ティアならではの事情
が組み合わさって、
ミスが増える→重大事故が起きる
という構造です。
事件後ティアで何が起こったのか
さてここからは、1件目の取り違えの後、どういう対策をして、それがなぜ機能しなかったかについて、論じます。
事件後のティアの対策
1件目発生の報道で
ひつぎや遺体の手首に目印としてつけた名札などの確認を怠ったという。
とあることから、以前から社内ルールとしては名札をつけるというルールはあったようです。
1件目が起こった直後に、上層部から経営企画か本部長だかは知りませんが、おそらく「早急に対策立てろ!」という叱責レベルの指示があったはずです。
2度目の遺体取り違えのあと、対策についてリリースされた文書がこちら。
名古屋市内における過失事故に係る一部報道内容に関して
まとめると、1度目の取り違えのあと、以下の社内ルールを決めたようです。(これをAとします)
①当社ご遺体用安置施設にてご安置時の表記物統一 上記場所安置時、故人様フルネーム、生年月日、没年月日等を記載した用紙(故柩紙)を棺に貼付する。納棺前の場合は、ご遺体用布団に貼付する。
②管理システムの導入 当社の安置施設入庫時、専用システムに個人情報を登録し、個体識別用QRコードを発券し棺または、ご遺体の手首に装着(リストバンド状)する。出庫時には、出庫情報のシステム登録と、QRコードの読み取りを必須とする。
(太字筆者)
そして今後は以下のオペレーションを導入するらしいです。(これをBとします)
①ご遺体用預かり時の表記物統一(当社およびパートナー企業共通) 当社にてご遺体をお預かりする際(パートナー企業の安置施設を含める)、故人様フルネーム、生年月日、没年月日等を記載した用紙(故柩紙)を、棺に貼付する。納棺前の場合は、首掛け名札として故人様に装着する。
②ご遺体搬送時のフルネーム確認(当社およびパートナー企業共通) ご遺体の引き渡しが発生する場面(例:ご自宅から会館搬送時、ご遺体用冷蔵庫から会館搬送時等)、寝台車ドライバーと受入対応スタッフ両名で、フルネームでの照合を行う。合わせて、搬送元場所と搬送先場所の照合を行う。
ティアの対策の問題点
A-①の方法は、ワンポケットの原則に反しています。
情報を見るべき場所は1つにすべきです。
「病院搬送時に手書きで名前を書いたリストバンドを故人に付ける」
のみではいけないのでしょうか?
本人確認の為、と言えば遺族は嫌とは言わないでしょう。入院中も同じことをしていたはずです。
またリストバンドに書かれた名前を遺族に確認してもらえば、間違いようがありません。
そして火葬直前に外せばよいのです。
A-②は遺体の入退室もチェックできるということなのでしょう。
しかしITシステムの煩雑さがあります。
システム登録のため個人情報の事前入力が必要ですが
・PCは事務所でないと打ち込めない
・スマホ入力では誤字脱字が生じやすい
という問題があります。
レポートレベルならスマホの音声入力を使えば簡単ですが、名前などの固有名詞では変換ミスが起きやすいです。
つまり、ITオペレーションがボトルネックになっています。
忘れるか、最悪やらないというスタッフが出てきます。
確かにテクノロジーを導入することは有効ですが、
テクノロジーを入れていいのは、作業量を増やさない、もしくは減らす場合のみです。
作業量が増えているとしたらそれは、実効性のない、やったというアリバイ作りのための対策です。
B-①は情報の複線化(複数の情報を加えることで確実性を高めること)をしたいのでしょうが、本来の目的は本人確認です。
チェック回数や項目を増やしていってダブルチェック・トリプルチェックを行うというのは社内外に対して「やってます感」を出すことには有効ですが、
統計的にはミスの頻度を下げないことが分かっています。(Koyama, A. K. 2016)
なぜならチェック行為が煩雑になるのでやらないという問題と、他にチェック機能があるから自分は手を抜いても大丈夫だろうという安心を生じさせるからです。
往々にして、「過ぎたるは及ばざるがごとし」になりがちということですね。
この記事の前半で述べたように、現在葬儀スタッフの業務の負荷はギリギリかオーバーしています。
1件目の事故の際、故人に付けられた名札を見るというルールがあったにもかかわらず、守られていませんでした。
それなのにさらに煩雑なチェック方法を導入しても実行されないでしょう。
ただ分厚いルールブックができあがるだけで、誰もそれを実行しようとはしないのです。
社内の人間でさえそう思うのですから、外注先に至っては
「何の寝言を言ってんだ」くらいのものです。
とりあえず遺体取り違えを火葬するという最悪の状況を回避するために、水際でせき止めると割り切って
「病院搬送時に手書きで名前を書いたリストバンドを故人に付けて、出棺時に確認する」
が最も実行性が高いのではないでしょうか。
このあたりの構造的問題に関して、中間管理職の中には気づいている人もいたはずです。
しかし大事になったからなんとしろと大騒ぎしている状況で、
「よりシンプルな確認方法にして徹底させる」と役員に提言できる人はいなかったでしょう。
チェックしたかをチェックするための用紙を作っていないことを祈ります。おそらくお葬式が終わってからファイリングするときに、みんなサインしていることでしょう。
参考までに過去に書いた葬儀屋さんのミス対策の記事を載せておきます。
ティアはどうすればいいのか?
他に対策はあるでしょうか?
生活保護案件を受けない
シンプルに生活保護案件を受けないという方法があります。
生活保護案件は拾骨までに身内が誰も顔をチェックしないから、こんな事件が起こりやすくなっているわけです。
そうであれば止めてしまうという選択肢もあるでしょう。
確かに普通の火葬のみの案件に比べると生活保護案件は、
・1件あたりの手間が少ない
・未払いのリスクがない
・確実に黒字にできる
といった側面はあります。
とはいえ、さすがに3回目の事件が起こるとブランド価値の毀損は大きいでしょう。
個人的意見として、天秤にかけたら続けるのはどうかなというところです。
しかしティア創業者であり現社長である富安徳久氏は自伝の中で
「勤め先の互助会が、生活保護案件を取り扱わないことを決定したのが気に入らず辞めた」という主旨のことを述べています。
そう言った手前、生活保護案件から手を引くことはできないでしょう。
フランチャイズ方式という爆弾
今後一番厄介なのはティアが葬儀業界で珍しいフランチャイズ体制(以下、FC)をとっていることです。
加盟希望企業を募って、立ちあげ時にノウハウを与えて、ティアの看板を掲げさせるという方式ですね。
その後加盟店からは、売上の一部をロイヤルティとしてもらうビジネスモデルです。
IR情報によると2024年の段階で、ティア本体の葬儀件数は18,314件でFC加盟店は6,231件です。ティアの葬儀件数の四分の一はFC加盟店が行っているのです。
2024年のグループ全体の売上は188億3千9 百万円ですが、FC加盟店から受け取ったロイヤルティは5億6千万円でした。
現在のように現場がカツカツの状況になってくると、FC体制を取ったことはボディブローのように効いてきます。看板はティアなのに、中身はティアのレベルに達していない可能性は高いです。
実は遺体取り違えの前に、FC加盟店の社員が香典泥棒をするという信じられない事件が発生しています。
2023年3月
香典袋の現金12万円窃盗か 葬儀会館の従業員逮捕…会社が謝罪「厳粛に受け止める」
世間は、これをティアがやったと認識したでしょう。
ティア本体から謝罪文が出ています。
これは能力がどうこう言う以前に、職業倫理が壊れています。
もちろん最低レベルの社員がやらかしたことですが、ボトムの社員がこのレベルということは、組織全体のレベルもかなり低くなっているということが推察されます。
コンプライアンスの遵守には、ルール策定だけではなく組織の空気が重要です。
自分の会社が新聞で報道されたり、社内監査スタッフや会計士から質問を受けたりという経験が積み重なってくると、自分が上場企業に勤めているという意識が芽生えてきます。個人の資質に差はあれど、当然これは「ちゃんとしなきゃいけない」という緊張感が芽生えます。
M&A先ならこの変化も起こせるかもしれません。
しかしFC加盟店のスタッフには、そこまでピンと来ないのです。
FC加盟店がダメ組織だったとしても看板がティアなので、ティアがやったこととしてこれから報道されていくわけです。
契約を締結する際に、不祥事の際の契約解除条項は入れてると思うのですが、予防にはなりません。
以前私は、社内プロジェクトの一環として葬儀社のフランチャイズ方式について研究したことがあります。しかしこれまで述べてきたような状況が予想されるため、あまりにリスキーということでやらない方がいいという結論に達しました。
カフェ業界の場合、スターバックスは直営中心でドトールはFC中心と、どちらの戦略も成立しています。しかし葬祭業は肉体労働であり、知的労働であり、感情労働でもあるため、難易度が高いのがやっかいです。
葬儀業界でFC方式を取っている会社はほとんどありません。大手企業が少ないということもありますが、クオリティコントロールが効かないリスクを嫌がるからでしょう。
ティア本体が遺体取り違えを2年連続でやらかした状況で、FCがまだ大丈夫というのは、
・生活保護案件を受注していない
・もみ消している
という可能性もあります。今後FCの遺体取り違え報道はないかもしれませんが、他の事象が発生する可能性は大いにあると思います。
というわけでおそらく今後もやらかすでしょう。
果たしてFC戦略を社長の冨安氏が望んだのかどうかは分かりません。創業社長とは言っても株式は5%しか持っておらず、約半数を持つ出資者の意向だったのかもしれません。
以上が私の推察ですが、これが当たっているようであれば私の知見をティアさんで生かすこともできると思います。
「コンサルとしていい仕事しますよ」と言いたいところですが、過去に冨安社長のやらかしを批判したことがある↓ので無理だな(笑)
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