国民民主党の山口花氏の誤りを指摘する

日頃グーグルアラートというサービスを利用しており、葬儀に関する記事がネットにアップロードされると知らせてくれる。
そこで先日、国民民主党の山口花氏のブログ記事を発見した。

東京都における「終活」を考える〜火葬場の外資参入を放置しない〜

政治家を志す若い人は、基本的に応援したいのだが、あまりにもひどい内容なので指摘したい。

東京の火葬場の現状

文中固有名詞は出していないものの、言及されている東京の火葬場について、簡単に解説を行う。
御存じの方は、飛ばして次の章へ。

東京博善は、東証プライムの上場企業広済堂ホールディングスの100%子会社である。
東京23区で6つの火葬場を運営しており、火葬の7割のシェアを占めている。

親会社の広済堂ホールディングスの資本の推移は以下の通り。
2019年、廣済堂に米系ファンドが買収を提案すると、旧村上ファンドが対抗買いを仕掛けて大株主となった。
同年、村上側やHIS創業者澤田氏の持ち株が中国系実業家羅怡文(ラオックス社長)側へ移った。
翌年には福岡の麻生グループが大株主となるが、2021年に持ち株を減らして退き、その間に羅氏が主導権を握った。
2024年6月、羅氏が広済堂ホールディングスの代表取締役会長CEOに就任した。
こうして「日本資本→村上ファンド→麻生→中国資本」と主導権が移った。

山口花氏の文章の指摘

では、山口氏の文章の指摘を行う。

人が亡くなる場所は、都市のあり方を最も静かに、深く物語っているかもしれません。

ポエム感満載で、この文章は始まる。
そして何を言っているのかよく分からないポエムが、ずっと続く。

私が都政から提案したいことは以下です。
①価格の透明化
広告と実際の価格が大きく乖離するような“詐欺的葬儀”を規制。価格の「総額表示」を義務づけます。

詐欺広告は既に景品表示法で規制されており、過去数社が消費者庁に警告を受けている。

(参考記事:「小さなお葬式」が消費者庁の処分を受けた件 – 考える葬儀屋さんのブログ
とうとう「イオンのお葬式」が消費者庁からダメ出しされた件 – 考える葬儀屋さんのブログ

後半の総額表示義務は結構なことだが、葬儀費用総額に含まれるアイテムの種類やコストは統一できない。祭壇や棺は各社異なるし、本来必要なアイテムを含めないことで総額を少なく見せる行為が横行する。例えば価格.comでは電化製品の比較は機能しているが、葬儀の比較は機能していない。
総額表示を義務づけただけでは、消費者は比較判断をできないだろう。

②火葬場のキャパシティ拡充
都が主導して、特に市部で不足している火葬場を整備。地元住民のための公共インフラとして再定義。

地元住民のための公共インフラとして再定義、というのは言っている意味がよく分からない。
既に公共インフラだと、多くの人がそう思っているだろう。

問題は
NIMBY(「火葬場使わせろ、でも近所には作るな」)とケガレ思想による住民の強烈な拒否反応である。火葬場不足の現状は、火葬場建設の反対運動の結果であり、ある意味「民意」なのだ。

山口花氏は、自分の選挙区である練馬区に火葬場を作りましょう、と言い出してみるといい。
確実に落選するだろう。

③火葬場経営の監視強化
都内の火葬場運営における外資参入や利益構造を「見える化」し、不正や独占を防ぐガバナンスを強化。

これは東京博善を指していると思われるが、前述したように東京博善は東証プライム上場企業の広済堂ホールディングスの100%子会社である。
つまり会社法や有価証券上場規程に則って運営されている。もちろんこれで100%不適切行為が防げるわけではないが、資本や利益構造はガラス張りだし、これ以上にガバナンスを機能させる仕組みは、他に無い。
投資家の方なら理解できるだろう。

それでも不正を行っていて、それがバレていないだけだ、というなら証拠を出すべきだ。
中国資本だから、という理由でそう思い込んでいるなら差別主義者である。

繰り返すが東京博善は、上場企業の子会社である。法律の範囲内で、株主の利益を最大化するために施策を打つのは当然のことだ。
本当に火葬費用をコントロールしたければ鉄道や電力のように許認可制にするしかないだろう。
(この理屈を上場企業に勤めている友人に言うと理解してくれるのだが、一部の零細葬儀社の人には理解してもらえない。理解してもらえない理由は明白だが、炎上するので言わない。)

(参考記事:東京博善の火葬料金値上げは正しい – 考える葬儀屋さんのブログ

災害や感染症の拡大時、火葬・埋葬の“流れ”が追えないことは、公衆衛生上の重大なリスクです。コロナ禍で私たちは、「誰が」「どこに」「どのように」葬られたのかを把握できないという現実を突きつけられました。

④ “死のトレーサビリティ”の構築
亡くなった方が、いつ・どこで・どう葬られたのかを都単位で管理できる仕組みを。公衆衛生と災害対応のためにも不可欠です。

「いつ・どこで・どう葬られたのか」に関して、火葬の場合、情報は火葬許可証の発行時に、役所で記録される。
埋葬の場合、埋葬許可書を管理者に提出しなければならないし、勝手に埋葬されるのを防ぐために、墓埋法という法律がある。

(参考記事:死亡届の改善案を考えてみた – 考える葬儀屋さんのブログ

コロナ禍の時も、超過死亡の原因など不明点はあるが、「いつ・どこで・どう葬られたのか」は当然ハッキリしているし、記録も残っている。

 

以上のことから、山口花氏が提案している施策は、全て既に行われているのだ。
そしてそれはちょっと調べればすぐ分かることなのである。

つまり彼女はそれすらもしない(できない?)人物であるということである。

最も弱い立場にある人たちが、「知らなかった」という理由だけで、不透明な葬儀業者に数十万円単位の“上乗せ請求”をされる。

「知らなかった」というのは不利益を被るに十分過ぎる理由ではないだろうか?
無知な人が、損をするのは当たり前だろう。
我々が買い物をするとき、ネットで情報を得るのは、「知らない」ことによって高い品物をつかまされることを、避けるためだ。

私が葬儀業界に在籍してから30年間、インターネットが普及して葬儀に関する情報は格段に増えた。それでも「知らなかった」と言う人は存在し続けている。
一体いつまで、甘えるつもりなのか?

山口花氏のように、知らないことを何も調べずにボケッとしている人は不利益を被るかもしれないが、多くの消費者は、葬儀のことを事前に調べて知ろうとしている。
それは、葬儀費用が年々低下していることからも分かるだろう。

以前書いたように、
悪い葬儀屋を駆逐したければ、消費者が賢くなる以外に方法はないのだ。

だから今後、もし行政が行うべきことがあるとすれば、消費者教育である。

まとめ

この記事を読んだ当時、山口花氏は都議選に立候補中であり、落選したらそっとしておこうと思っていた。しかし当選されて権力をお持ちになったので、今回俎上に挙げることにした。

優秀なブレーンがついていれば、政治家は必ずしも賢くなくてもいいのかもしれないが、彼女の文章を読む限り不安になる。政治家なのに、行政や法律に無知であり、それを調べようともしない。
多分、他の分野でもやらかすのではないだろうか。
無能な働き者は有害といわれているので、有能な働き者になっていただくか、何もしないかを、お願いしたい。

一方で
「既に行われていることを、やりますとポエムっぽく言っておけば、後で公約達成のフリができて、アホな有権者をだませるだろう」
という確信犯である可能性もある。

であれば、そのクレバーさについて、気が合いそうだ。
応援する。




2件のコメント

東京の火葬事情が理解できる良記事ですね。やっぱり考える葬儀屋さんの文章は読みやすいです。いろいろありましたが、これからも葬儀関係ネタの更新を楽しみにしています!

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