東京博善の火葬料金値上げは正しい




都内23区内に6カ所の施設を持ち、火葬のシェア7割を占める民間火葬場 東京博善が、2021年1月4日からの火葬費用の改定を決定しました。

業界内はざわついています。

私の周辺では、予想通り反対意見が多いですね。
・儲かっているのに(87億の売上で25億の営業利益)
・貧困層も利用せざるをえない公共性の高いサービスなのに
値上げするとは何事か、という論調です。

感情としては理解できますし、東京博善にはいろいろ問題はあります。

しかし値上げを行うことに関しては正しいと、私は考えます。

東京博善の価格改定の内容

まず今回10年ぶりの、価格改定の主な内容をおさえておきましょう。

以下、全て故人が大人の場合の金額です。

現行 改訂後
特別殯館 177,000 145,000 ↓値下げ
特別室 107,500 107,500 →据え置き
最上等 59,000 75,000 ↑値上げ
減額公費 29,500 29,500 →据え置き

これ以外の変更点としては、従来火葬場併設の式場を使用すると葬儀屋さんに10%の販売手数料が支払われていたのが、5%に減額されるとのこと。
これは葬儀屋さんの実入りが少し減らされたという話です。

社会的に影響が大きいのは、最上等の値上げです。

地方の方にこの話をすると驚かれるのですが、東京博善の火葬場にはランクがあります。
四ツ木斎場の使用料280,000円の貴殯館を筆頭に、特別殯館(ひんかん)・特別室・最上等と続きます。

大きな違いは火葬炉前のレイアウトと内装の違いだと考えてください。一番安い最上等は、1つのフロアに仕切りが無くズラッと火葬炉が並んでいる構造です。(画像はこちら
一方、特別殯館・特別室などランクが上がると一つのフロアに火葬炉が2つだけでゆったり使えます。

東京博善ホームページよりhttps://www.tokyohakuzen.co.jp/mp4/2.mp4

最上等が一番値段が安く、数も多いので、一番消費者に選ばれている火葬炉ということになります。

それが来年、59,000円から75,000円に値上がりするのです。

東京博善の値上げが正しい理由

さて冒頭で述べたように東京博善の値上げは正しい、と私が考える理由をこれから説明します。

過去何度か東京博善のことは記事にしています。

火葬料金の高価格化を擁護します | 考える葬儀屋さんのブログ

東京博善への見解に異論を唱えてみた | 考える葬儀屋さんのブログ

佐藤信顕氏との顛末について | 考える葬儀屋さんのブログ

お時間があれば、上記の記事に目を通していただいてから、下記の内容を読んでいただくと、より理解しやすいと思います。

東証一部上場の完全子会社だから

東京博善は、東証一部に上場している出版系企業である「廣済堂」の完全子会社です。

・100%の消費者が必要とする商品(火葬)を持っていて、
・独占状態で価格弾力性がほぼ無い(いくら値上げしても消費者は購入せざるを得ない)
という状態です。

上場企業の完全子会社であるということは、投資家を含むステークホルダー(利害関係者)の利益を最大化する努力をしなければなりません。
利益を増やせる環境にあるのにそれをしないのであれば、それはむしろ投資家に対する背任行為です。投資家が、「上場企業とはいえ火葬場なのだから、値上げに賛同できない。株式を売却する」と言い出せば話は別ですが、そんな投資家はいないでしょう。

だから値上げは正しいのです。

青天井で上がるのでは?

以前福島原発の影響が続いている最中に、東京電力が電気料金の値上げを発表して叩かれたことがありました。
感情的には分からなくもありませんが、しかし上場企業である以上、値上げできるのなら値上げするのは当たり前のことなのです。

とはいえ、新規参入が法的政治的に不可能な現在の独占状態では、火葬炉の金額は青天井で上がってしまうのでは、という懸念も確かにあるでしょう。

独占的かつインフラである電力や交通関係の企業は、価格改定を行う場合、国の許認可が必要になっています。
火葬場も同じく社会的インフラなので、本来は行政がちゃんとコントロールすべき事案です。しかしそれは行われていません。

電力や交通系に比べるとマーケットが小さい、つまり省庁の利権が少ないせいでしょうか。
行政の怠慢ですが、これは東京博善が悪いわけではないので、東京博善を責めてもしょうがありません。
互助会のように、監督官庁の経産省のキャリアのために、天下り先を用意してコントロールするという不健全な行為をしていれば非難されるべきですが、そういうわけでもありません。
(参考記事:ダメな互助会はちゃんと潰そう | 考える葬儀屋さんのブログ

社会問題にならない程度の、価格戦略を行うのは当然なのです。

貧困層をどうするのか?

「貧困層が、火葬という必要不可欠なサービスを受けられなかったらどうするのか」という意見もあるでしょう。
しかしこういった方には葬祭扶助という、国や自治体が火葬費用を肩代わりする仕組みがあります。
(参考記事:金がないから「親の遺体を放置」が通用しない訳 | 東洋経済オンライン
そしてこの場合、火葬費用の減額が適応されます。今回の東京博善の価格改定でも、減額処置に関して値段据え置きにするという配慮がなされています。

今後死亡者が増える状況で、自治体が安価な火葬場をどんどん建設していけば、競争原理で東京博善は値下げせざるをえないでしょう。しかしこれはNIMBY(「火葬場使わせろ、でも近所には作るな」)によって不可能です。つまり東京博善が値上げできるのは、ある意味「民意」の結果なのです。

火葬場側の問題点

東京博善にも問題はあります。
正確に言うと「廣済堂に」ですが、投資家に利益を還元することを最優先だと考えると、長年業績不振の出版部門はすぐに整理すべきです。
社外のステークホルダーの多くが、そう思っているでしょう。

11月9日に連結業績予想を出していますが、4億円の純損失ですね。
もしかすると、東京博善が強引な値上げをしてもリカバーできない額だとあきらめたから、今回はこの程度の値上げで済んだのかもしれません。
多少強引な値上げで黒字化できる可能性があったなら、もっとエグい値上げをしていた可能性があります。

それからもし、10年前の値上げときと同じように、谷塚斎場や日華多磨斎場などの民営斎場が、追随して同額の値上げを行うようなことがあれば、これはカルテル(談合)と言われてもしかたないでしょう。行政は独占禁止法に基づいて指導すべきです。ただ10年前もスルーだったので、前例踏襲で今回もスルーの可能性は高いのですが。

あと以前から申し上げていますが、いい加減、心付けの禁止を宣言すべきです。
(参考記事:民営火葬場は心付け(寸志)廃止を宣言すべき | 考える葬儀屋さんのブログ 

バーターで良いタイミングだと思うんですけどね。

今回の価格改定をもっとうまくやる方法

以上のように、おおむね今回の価格改定を私は容認していますが、もっとうまくやる方法がないか、と考えてみました。

火葬場不足が予想される昨今、プライシング(値付け)による混雑のコントロールはどうでしょうか。

以前こういう記事を書きました。
年末年始の火葬場の運営はこうすればいい | 考える葬儀屋さんのブログ
同一火葬炉も日にちによって価格差をつけることによって、年末年始の繁忙期を分散させてはどうか、という提案です。

この考え方を応用し、9時から15時まで1時間ごとに7回ある火葬炉サイクルのうち

直葬(火葬のみ)が多い 9時10時15時の火葬炉は 据え置きにする。その一方で
式施行利用者が多い11時12時13時の火葬炉は値上げする

という案はいかがでしょうか。

現在コロナ禍が、直葬(通夜葬儀を行わず火葬のみを行う)の増加に拍車をかけている状態です。格安を売りにしている葬儀社なら5割が直葬というところもあるでしょう。
お通夜お葬式を行う人は、みんなが集まる時間や、火葬後の法事や食事を考慮すると、スケジュール上、お昼前後の時間帯の火葬炉を使わざるを得ません。
一方、直葬を行う人は集まる人数が少なく儀式も無いので、どの時間帯でも特に問題はありません。

現在の予約方法は、同一価格で早い者勝ちなので、ただ空いているという理由で、直葬の人がお昼前後の火葬場を予約するという事態が起きてしまいます。

直葬の人は、経済的事情で、葬儀費用を少しでも抑えたいというインセンティブが高い傾向にあります。そこで、昼間の時間帯の火葬価格を引き上げ、早い時間と遅い時間の価格は下げることによって、直葬の人が昼間の時間帯を避けるようにする、言い換えると式を行う人が昼間の時間帯を利用しやすいようにすればいいのではないでしょうか。

ここで懸念されるのが、
「式を行う人も安い時間帯の火葬炉を取りたいと言い出したらどうするのか?
そうなると、とんでもない時間帯でお葬式を行わねばならず、葬儀屋さんの施行運営に負担がかかるのではないか?」
ということです。

これは火葬場が「直葬の人は9時10時15時の火葬炉を優先的に使うように」とやんわりルール化して、葬儀屋さんにお願いすれば効果を発揮するはずです。

これには葬儀屋さんも協力してくれるでしょう。
葬儀屋さんにとってもこのシステムは有利に働きます。たとえばお葬式のメンバーを出棺後、直葬の担当に回すという、施行の分散によるシフトがうまく組めるからです。

葬儀屋さんも協力的で、消費者にもインセンティブが働くので、絶対とは言わないまでも、火葬場の混雑緩和に有効では?と思うのですがいかがでしょうか。

 

 











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