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葬儀漫画「終のひと」について語ります




葬儀屋さん漫画「終のひと」について語ります。

連載がスタートしました。

私とちょっとご縁がある、新しい葬儀漫画「終(つい)のひと」の連載がスタートしたというお話しです。

ちょうど1年前の2019年に
取材協力した漫画がグランドジャンプに掲載されました | 考える葬儀屋さんのブログ
という記事で、葬儀屋さんが主人公の読み切り漫画をご紹介しました。

この漫画には企画の段階で取材協力させていただきました。
取材当時は、作者の清水俊さんと「企画が通るといいですよね」というお話しをしていたのですが、その後しばらく動きがありませんでした。
私は故 土田世紀氏の出版業界を描いた漫画「編集王」が大好きなのですが、雑誌に載る漫画家さんというのは本当に一握りなんですよね。
「ダメだったのかな」
と思い始めた頃に掲載されたので、とてもうれしかったことを覚えています。

掲載されたときは「次は連載になるといいですよね」というやりとりをしていたのですが、1年経過して、「う~ん、連載は無理だったか・・・」と思い始めた頃に、清水さんから、ツィッターで連載開始の御連絡が!

念願のご紹介と相成りました!

私は葬儀漫画の書評記事を過去にいろいろ書いていて、葬儀漫画にはちょっとうるさいです。
これまではレディースコミックス系の、職業モノやラブコメテイストの葬儀作品が多かったのですが、
「終のひと」のように男性向けの作品というのは、意外とありませんでした。

「命が消えたあと、集い会う人々に寄り添う、葬儀屋の矜持を描く」っていうコピーもいいですね。

病院の契約先の葬儀社が、搬送だけでも請け負おうとするところなど、葬儀屋さんの内情の描き方もリアルです。

まだまだ始まったばかりで、次の展開が気になります。

掲載誌のKindle版も出ています。
みなさんも是非一読ください!

清水さんの今後ますますのご活躍に期待しています。

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」の感想です。

第1巻

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」第一巻が、発売されました。

第一巻読後の感想です。

この作品、男性誌に掲載されていることもあって、ハードボイルドタッチなバディ(相棒)ものなんですよね。
これまで葬儀漫画って、レディースコミックスに連載されることが多く、職業モノとラブコメが多かったことを考えると
この点がまず新しいです。

まだ1巻ではありますがヒロイン出てきません。
まさかあの経理のおばちゃんが…(笑)

そして「感動ポルノ」に堕ちてません。

葬儀屋さん漫画って「感動ポルノ」にしやすいんですよね。
この記事でも書いたように、大切な人が亡くなっているシチュエーションなら、泣かそうと思えばいくらでも泣かせられるのです。
でもそれは表現として安易です。

もちろんこの作品には、感動するポイントはいくつもあるんですよ。(ネタバレになるので言えませんけど)
でも感動ポルノにしないバランスが絶妙なのです。

作中で「感動ポルノ」を拒否しているところに、作り手の誠実さを見ました。

作者の清水俊さんは文春オンラインのインタビュー
『「良いお葬式」というのはなんでしょうか。』という問いを立てています。

実は葬儀屋さんである私にも「正解」は分かりません。

良いお葬式とは、葬儀屋さんではなくて遺族が決めるもの。
遺族が「お葬式をやって良かった」と思ってくれたなら、それは良いお葬式でしょう。

しかしその正解へのたどりつくために、「いつもこれだけやっていればOK」という方法論はありません。
誠実な姿勢で考え続けた結果、正解が与えられるものだと思います。

『うん、うん。「分からない」ってことを分かってくれてるな。清水さん』

とインタビューを読みながらうなずいてました。

しかし最初にとりおこなわれるお葬式がいきなり○○とは、意外な展開でしたね。

おっと、これ以上はネタバレになりますので、是非一読くださいね。

第2巻

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」第二巻が、発売されました。

メインストーリーは生活保護がテーマです。

少子高齢化と、それから生じる景気低迷から予測すると、今後、今回のお話しのような別れが増えてくるのは確実です。

私も生活保護を受けていた方の火葬を、何度か担当したことがあります。

これから火葬という直前に北海道から到着した故人の老いた妹は、数十年ぶりの再会だというのに、当然交わす言葉はなく、30秒ほどじっと顔を見つめているだけでした。
その表情は「悲しみ」という言葉だけでは足りなくて、後悔や罪悪感や、もしかしたら怒りも少しは混じっていたかもしれません。故人に対してか、自分に対してかまでは分かりませんが。

火葬後、遺骨を抱いて深々と頭を下げる妹さんに、「最期、間に合って良かったですね」とだけ、申し上げました。
本当は生きている間に・・・と言いたいところですが、皆さんそれぞれに事情があるというのは、この仕事を10年ほどやれば分かることです。

 

「終わりよければすべてよし」という言葉があります。

だから今回の話も「最期をいかに飾るか」にみんなが奮闘します。

重いテーマなのですが、ラストにちゃんと救いを残しています。

是非お読みください!

第3巻

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」第三巻が、発売されました。

実は発売間もない段階で書評を書くことってあまりなくて
ネタバレしないで、読みたくなるような書評を書くのって難しい(笑)

今回は、DIY葬や社葬などがテーマになっています。

DIY葬とはDo It Yourself、つまり葬儀屋さんの手を借りずに、遺族だけで行うお葬式のことです。
社葬は会社が主体となって行う、大規模であることが多いお葬式のことです。

これまでいろいろ葬儀漫画を読んできましたが、真正面からDIY葬と社葬を扱ったものは無かったのではないでしょうか。

このあたりも清水さんの創作者としての志を感じます。

社葬編はまだ途中なので、DIY葬について。

なんどかこのブログでも、DIY葬について述べています。

がんばれ! 奥山晶子

DIY葬はやめておけ

トイアンナさんから取材を受けた記事が公開されました。

要は、「危険すぎるからやめておけ!」ということです。

にもかかわらず、
エアコンで遺体を冷やしとけばいい、とか
Amazonで棺を買えばいい
とか、「素人」が想像で語るおとぎ話がメディアでは流通していました。

その都度葬儀屋さんはちゃんと反論してきたのですが、商売上のポジショントークと思われがちだったかもしれません。

そんな世間の誤解に対し、漫画というビジュアルで、「失敗」を描いた功績は大きいです。

是非!読んでみてください。

第4巻

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」第四巻が、発売されました。

今回は社葬と、死因究明制度の問題点がとりあげられています。

いろいろ葬儀漫画を読んできましたが、これまで社葬と、死因究明制度の問題点を描いた漫画はなかったのはないでしょうか。

社葬は、葬儀社内にプロジェクトチームを組んでたくさんの人を動かすことが多いので、大手葬儀社が依頼を受けることが多いのです。
そのため小規模の葬儀社が舞台の葬儀社漫画では、扱うのが難しいという背景がありました。

そのあたりの構造的問題も、うまくクリアされています。

死因究明制度の問題点が描かれてこなかったのは、おそらく描くとヤバいから(笑)
それにもかかわらず、作品中では思いっきり「神奈川県警」と名指しです。

横浜市民は病院で亡くならないと10万円以上かかってしまうので、それを避ける方法を考えてみた

おそらく神奈川県警の賄賂報道が背景にあったと思うのですが、清水さんも編集も思い切りましたね。

今回も作り手の覚悟を味わってください。

(追記)
>神奈川県警の賄賂報道が背景にあったと思う

と書いたのですが、4巻の話は3巻のエピソードの一部伏線回収になっています。
3巻エピソード連載のときは、もしかするとまだ神奈川県警の賄賂報道がなされていなかったかも。
賄賂報道にかかわらず、取り扱う予定だったとか・・・

第5巻

清水俊さんの描く葬儀屋さん漫画「終のひと」第五巻が、発売されました。

こちらが最終巻ということで、「終のひと」もとうとうラストをむかえてしまいました。

家族葬がもてはやされる昨今ですが、葬儀は故人や家族ためだけではなく、人生で関わった全ての人達のものでもあるよ、と改めて訴えかけてくれる内容です。

作者の清水俊さんは文春オンラインのインタビュー
『「良いお葬式」というのはなんでしょうか。』という問いを立てています。

この作品が始まるときに、清水さんは「良い葬儀」について論じています。
この五巻の中で、宗助から「良い葬儀だったよ」というセリフが発せられます。
「終のひと」なりの「良い葬儀」が、示された瞬間です。

*******以下、少しネタバレです**********

ラストシーンで登場したのは、宗助なのか、という考察です。

私は「宗助ではない」説をとなえたいです。

第一話から読んでいる方はお気づきの通り、最終話は第一話の循環構造になっています。

第一話で宗助が履いている靴は、外羽のストレートチップに見えます。

最終話の男性が履いている靴は、内羽のプレーントゥに見えます。

つまり別人。

暗い病院の廊下なので、それほど明確に描かれている訳ではありませんし、そもそも靴は履き替えられます。
そのため、どちらとも解釈できる絶妙の表現です。描き手はあえてそれを狙っているのかもしれません。

もし宗助だったなら、ある意味ハッピーエンド、
宗助でなかったとしたら、葬儀を経ることによって次のステージを迎えたということです。

どちらだとしても味わい深いラストです。

総評

全てを読み終えての、総評です。

「終のひと」の功績は、1巻の感想でも申し上げましたが、「感動ポルノ」という安易な選択をすることなく、葬儀とそれを取り巻くテーマに真正面から取り組んで、葬儀漫画の可能性を拡げていったことです。
その姿勢は最終巻までブレることはありませんでした。

また葬儀業界に対する緻密なリサーチを行ったのでしょう。葬儀業界の中の人の厳しい視点で見ても、破綻のないリアリズムを保っていました。

生活保護、DIY葬への誤解、検死問題、部分火葬などは、現実に存在する切実な問題であったにもかかわらず、過去の葬儀漫画では扱われてきませんでした。
その意味ではきわめて社会性を持った作品であるとも言えます。

最後に…
清水さん、これまでの表現者としての誠実な創作姿勢に、一読者として、葬儀業界の人間として、敬意を表したいと思います。
おもしろい作品をありがとうございました!











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