DIY葬はやめておけ

DIY葬のDIYとはDo It Yourself(ドゥ イット ユアセルフ)の略語で「自分でやってみよう」という意味。
つまりDIY葬とは、葬儀屋さんの手を借りずに、遺族だけで行うお葬式のことです。

DIY葬はムリ

「DIY葬」という言葉は2013年頃にはすでに存在していたと思います。しかし定着することなく、しばらくすると現れては、また消えていく、を繰り返しています。
なぜ定着しないかというと、「そんなことはできっこない」からです。

自分が勤めている葬儀社は、新人育成プログラムが業界内でもっとも洗練されていると自負していますが、社会人経験のある新人が入社してきた場合でも、火葬のみ(直葬)の式を担当させるまで半年はかけます。
特に遺体の扱いは専門性を要するからです。

肉親を亡くしたというストレスを抱えた遺族が、拙い知識と経験で、時間に追われてできることではありません。

たまにDIY葬をやったという人がいます。しかしよくよく話を聞いてみると、たまたまうまくいっただけであり、葬儀屋さんに支払う10万円を浮かすために過大なリスク(故人を腐敗させる等の取り返しの付かない失敗)を背負ってまでやることではありません。

DIY葬儀ハンドブック

さて悪い例として今回紹介するのはこの本。

DIY葬儀ハンドブック

この本のあとがきで、著者のライターである松本祐貴氏はこう述べています

私が父の葬儀の喪主を務めたのは2年前でした。葬儀の知識は一切なく、ネット系の葬儀社にひっかかり、勧められるがままに祭壇を花で飾り、僧侶を呼びました。(中略)「あのときこんな本があったら、どれだけ楽だっただろう」
そんな思いで、具体的に必要な知識、道具、行動、金額を入れ込み本書の制作に臨みました。

ここで疑問点が2つ。

ネット系の葬儀社に頼んで失敗したのなら、ネット系の葬儀社ではなくちゃんとした葬儀社に頼みましょうという結論になるはず。
なんで解決法がDIY葬なのでしょうか。

次に著者が巻末に記載している参考文献を一部抜粋します。

参考文献
『葬式は、要らない』島田裕巳(幻冬舎新書)
『冠婚葬祭しきたりとマナー事典』岩下宣子監修(主婦の友社)
『無葬社会』鵜飼秀徳(日経BP社)
小さなお葬式のコラム https〃www Osohshittjp/cdumn/
終活ネット(原文ママ) https/syukatsulabo jp/

このブログをお読みいただいている方ならご理解頂けると思いますが、葬儀業界のことを語るのに、島田裕巳岩下宣子鵜飼秀徳を参考にしているのは、あーやっちまったな、という感想です。
一般人が信じてしまうのは仕方ありませんが、ライターがこれをやるのは葬儀本を書く資格無しです。

なによりおかしいのが、ネット系の葬儀社にひっかかってヒドい目にあった、と言っているのに「小さなお葬式」や「終活ねっと」などのネット系葬儀社のサイトを参考文献に挙げていること。

ちょっと理解に苦しみます。

ところで最近こんな本が出ました。

この週刊朝日MOOK本の中のインタビューで、このDIY葬ハンドブックの版元の担当者が、「葬儀を自分1人でやった女性のブログを読んでこの企画を思い立った」という主旨のことを答えていました。

この「DIY葬儀ハンドブック」ですが、出版直後に批評しようとしたものの、著者の不幸事が執筆のきっかけなら、気の毒だと思ってこれまで看過してきました。しかしそうではなく、出版社からのオファーを引き受けただけだったようです。

さて内容ですが、葬儀屋さんが読めば実務上の細かいツッコミどころがたくさんあります。
大きく分けると、事実として間違っている箇所と、遺族にそれをやらせるのはムリという箇所です。
両方を満たしている例を挙げてみましょう。

↑遺体搬送の解説(P67)

いやいや、シーツ使ってこんな持ち方したら、ご遺体が「く」の字になって圧力がかかり体液が漏れる危険性があります。
それに車中の人はどうやって車に上がったのだろう。
絶対リアバンパーに故人の頭ぶつけるよね。

正解は故人をシーツでくるんで体側に2人並んで持つ、ですが実際に中腰で車中を移動するのは脊柱起立筋と、大腿四頭筋にけっこう負担がかかります。
専門業者に頼んで、専用の車両とストレッチャーを使うべきです。
搬送費用の2万円を浮かすために、こんなことをするのは危険が大きすぎます。

(P78)プロであればある程度の予測はできますが、予期せぬ変化が起きるのがご遺体です。状態のチェックは常に心がけてください

小さい文字でこのような警告文を書いているのですが、チェックしろ、言われても、遺族にどうしろと。

ある程度想像力のある一般読者なら、やっぱりDIY葬はあきらめて葬儀屋さんに頼もうってことになるんじゃないでしょうか。

この本、単なる葬儀知識の紹介にとどめておけば、問題はなかったのです。
他の葬儀本と差別化しようと思ったのかもしれませんが、火葬のみくらいならあなたにもできるかも!と勧めているところが罪深いのです。

追記

余談ですが、8年ほど前にもDIY葬を勧める本が出ていまして、
がんばれ! 奥山晶子 | 考える葬儀屋さんのブログ
その内容を批判したこの記事がライブドアブログニュースでとりあげられたため、結構祭り状態でした。

それからとある葬儀社がAmazonで

DIY葬セットなるものを販売しています。

自社のスタッフの存在理由を全否定ですね。

実質、棺と骨壺とマニュアルのセットのようです。
マニュアルの内容ですが、プレスリリースを見ると
<つばさ公益社 新商品のお知らせ>「DIY葬(自葬)プラン」提供開始|株式会社つばさ公益社のプレスリリース
「事故現場での対処法もまとめた知識ガイド」とのこと。
どうかしていると思います。

一方で日本に葬儀社が約5千社あって、業界のモラル低めであるにもかかわらずDIY葬を勧めているのがここだけ、というのがいかにDIY葬が無理筋かの証明と言えるでしょう。




8件のコメント

DIY葬はダメという結論はその通りです。

DIYの代表と言えば「家庭菜園」です。
私も試したことがあるのですが、当然赤字です。
ベテランの方にお聞きすると、少し黒字になるそうです。
もちろん、原価に人件費は含まれません。
なぜなら趣味だからです。

DIY自宅を実践された方のブログをいくつか拝見しました。
業者に委託の半額強くらいでしたね。
もちろん人件費は考慮しません。
ただし、ある方はスタートから居住まで9年間かかったと書かれていました。
もちろん最高に楽しかったとの結論です。

DIYは人件費を考えれば必ず赤字になります。
それでも、それを上回る喜びがあるからやります。
DIY葬に喜びはあるのでしょうか?

お疲れ様ですm(__)m
離島などは葬儀社がなくて地域や家族で
自葬していますけど~~
それ以外で、素人がやるリスクは多大ですねぇ

私の友人が叔母の直葬を自分でやりましたが、
瑞江葬儀所に自家用車で搬送しました。
二度と自分じゃやらないそうです。

納棺していないと火葬場は受けてくれない
ところがほとんどですね。

ネット通販で棺、骨壺を3万円で買っても
届くまでのリードタイムがあります。

先日、札幌に直葬3万6000円の会社を
見つけました。佐藤葬○より安いです(  ̄▽ ̄)
ブローカーより安いです(  ̄▽ ̄)
実際にはドライアイス10キロ6000円、
会館安置1万5000円は追加になりますから、5万7000円ですかね。

あんしんサポートが6万9000円で最低かと
思っていましたけど~~驚きです。

関東エリアには直葬40万円とかあり、
私としては、火葬料抜きで15万円迄かなあ。
各地で10万円以下の直葬も目立ちますから、
自葬は避けて欲しいですねぇ~~

新島は葬儀社なく、建設会社が棺を売り、
町役場の棺レール付きバンで火葬場に搬送します。

西表島なんかは、石垣島に遺体搬送して
高速船チャーター10万円、遺骨もチャーターして10万円( ノД`)…

しかし、葬儀社って、ありがたいですm(__)m

感謝です

すべてを自分の手で行うのは厳しいとしても、今は納棺すら立ち会わない人も多いし、火葬だけなら多少の知識と「力(人手)」があれば出来ちゃうので、葬儀社ではなく便利屋で「一式5万円」も可能ですよね。葬儀を行わない人(故人に思い入れのない人)にとって葬儀専門会社の必要性はどこにあるのかと考えますね。

たけうちそうじ 様
コメントありがとうございます。
>葬儀社ではなく便利屋で「一式5万円」も可能ですよね。
葬祭業は資格不要で許認可事業ではないので、誰でもやろうと思えば始められます。
それでも一式5万円でやっているところが無いってことは、無理なんだと思います。

赤城様
初めまして。
今日からブログ記事を拝見させていただいています。
葬儀についての学び、気付きの場として活用していきたく思います。
宜しくお願いします。

ご遺体の安置、高度な技術と経験が求められます。
搬送先が複数あり、安置所により対応に差異が生じるので注意するようにしています。

DIY葬については、
・コスパが悪い
・クリアすべきハードルが多くかつ高過ぎる
という点から「どうなのかな」と個人的には感じています。

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