尾出安久の「ブラック葬儀屋」は読まなくていい

尾出安久の「ブラック葬儀屋」は読まなくていい、という話です。
最近「ブラック葬儀屋」
という本が出版されました。

著者は「尾出安久」氏という葬儀屋さんです。

ブラック葬儀屋 (幻冬舎新書)

尾出 安久 幻冬舎 2016-01-29
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かつて

という本を出しています。
当時はまだ葬儀屋さんが本を出すのは珍しい時代だったので
そのはしりだったと言えるでしょう。
彼が約15年ぶりに出したのがこの「ブラック葬儀屋」です。
この本の私の感想を集約すると
「時代遅れ」「役に立たない」
ということです。

ちなみにこの本によると「ブラック葬儀屋」とは、

お客様のことより自分たちの売上げや儲けを優先し、お客様を満足させるサービスとは何かを考えず、ひとうの社会人としても不十分な人材が多く、サービス業という自覚に欠けた葬儀社のこと

だそうです。

前半はずっと
「・・・と、したり顔で話すブラック葬儀屋の社長」
という調子で、こんなひどいブラック葬儀屋がいるんですよ、的な
告発もしくは俺は悪い葬儀屋の手口を知ってる自慢、が続きます。
(本当にそんなに詳しいのなら、そういう人間がたくさん周りにいる
あなたの環境もどうなのかと思うのですが。)

読んでて不愉快になってきたのは
私が葬儀業界側の人間だからという理由だけではないでしょう。
もちろん葬儀業界には解決すべき問題は今なおたくさんあります。
しかしこの本で取り上げているレベルのブラック葬儀屋って
20年前ならいざ知らず、今は(実在したとしても)少数派です。
それを今、わざわざ本にして
世間の認識をむりやり20年前に引き戻す必要ってある?
我々中堅世代の葬儀屋のこれまでの「浄化活動」をなんだと思っているんでしょうか。
この本読んだ他の葬儀屋さんもおそらくそう感じると思います。
(お約束の病院で仕事を取る話も出てきますが
今じゃ病院の葬儀業者への依頼率って下手すると1割切ってるんじゃないかな?)

なぜこの本はことさら葬儀屋はブラックと主張するのでしょうか。

出版社は「葬式は、要らない」を出した幻冬舎ですよね。

葬式は、要らない (幻冬舎新書)

島田 裕巳 幻冬舎 2010-01-28
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(参考記事:島田裕巳「葬式は、要らない」の誤りを指摘する
島田裕巳「葬式は、要らない」の情報操作を指摘する )
編集者の悪意にまんまと乗っかかっているんじゃないでしょうか?

ブラック葬儀屋は親切そうに近付いて不安を必要以上に煽る、的なことを書いているけど
それやってんのは筆者のお前自身じゃん。
葬儀屋2
章立てを見て後半に有益な情報が出てくるかもと思ったのですが
ネットに普通に出回っている情報の羅列です。
過去何度か指摘していますが、
葬儀本の良し悪しは「良い葬儀屋の選び方」が的を射ているかどうか、
で決まります。
少数派になったブラック葬儀屋に気を付けろというアドバイスだけでは
今では大して消費者の役に立ちません。
良い葬儀社の選び方、という知識が必要です。

強いて「良い葬儀屋の選び方」が記述されている箇所を挙げるとすると
92ページからなぜかやたらと互助会を擁護しています。
あくまで文中からの情報からの推測ですが
筆者の所属する葬儀社って○○○○じゃないでしょうか。
(中の方、情報提供お願いします)
もしそうだとするといかがなものか、と思います。

略歴を見ると筆者ももう還暦近いようです。
おそらく現場は離れているでしょう。
葬儀屋はブラックだけど今の自分はホワイトってことで
葬儀業界周辺に生息して食べていくつもりなのでしょうか。
結局最後まで私は尾出安久氏に対し
消費者に対する良心も現状を改善する意志も感じることができませんでした。
いろんな意味でお疲れ様でした。

葬儀屋さんの書いた「良い」葬儀本を読みたい方はこちらをお買い求めください。




11件のコメント

私が在籍している会社は冠婚葬祭の会社ですが、お客さまの希望より売上優先。
しかも毎月何かしら社員に買わせる、おかしな会社です。
最近でいえば〈おせち一人5個ノルマ〉〈恵方巻一人20本〉とか社長の誕生日、バレンタインには割り勘で出しあう、社長の新築祝いは自腹と完全強制のヘンな会社です。

はぁ・・・コメントもそうですがこんな世界に物理教師さんが居るのが信じられないですね。売り上げは当然上げていかなければサラリーいらんのか?と言う話ですが
別次元の問題も多いようですね。うちは他社さんで聞いている話の◎○△を取れ!とかはありませんけど社員に対してはホワイトでもないですね・・・そもそもブラックって消費者側に対してでなく雇用者側に使う用語ではないでしょうかね?
お客様の満足と売り上げを両立できる商品力がこの世界に必要だと思います。
社の存続、運営と葬儀の理想の葛藤も経営者にはありますでしょうね・・・。

ブラック企業在籍中 様
>恵方巻一人20本
食えねー(T_T)
ひどいですね。

かかし 様
>そもそもブラックって消費者側に対してでなく雇用者側に使う用語ではないでしょうかね?
そうなんですよ。
私もそういう定義で記事を書いてきたので。

「マイナンバー倒産葬儀屋」が出てくると思いますが、ブラックさんにも
「すり抜け方法」を伝授します。
家族を除く「他人の社員や従業員」との雇用契約を解除して、「業務委託契約」に
切り替えます。(業務上は変化は出ないが、経営者の責任はほぼゼロになる)
「他人の社員や従業員」には、契約切り替え前との条件に「少し上乗せした金額を
提示」して、契約の切り替えで「損は出ない」と思い込ませます。
契約は、「双方の随意契約」と思い込ませて安心感を持たせ、仕事をさせます。

業務委託契約により、葬儀社は社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)の
支払いがゼロになり、トラブル発生時には「業務委託契約者の個人責任」に
押し付けられます。(いわゆる、一人親方の自営者と同じ)
月々の手取り額は「同じか、若干上昇」のために、「勘違いをして、契約変更」を
する葬儀従事者が出てくるかも知れません。
トップ・セールスやトップクラスの経営陣であれば、「業務委託契約は大幅な
収入アップ」ですが、一般の葬儀従事者であれば「明らかに不利になります」。
好きな時に「実質首切り」(業務を出さない、補償はいらない)を行えます。

この方法は「超ブラックですが合法」ですので、葬儀屋経営者は上手く導入を
するのも良いのですが、葬儀従事者は「気を付けましょう」。
「葬儀屋さんの言葉を信じるのは、従事者にとっては危険です」。
下請けに「丸投げ」をする時も、「業務委託契約書」にすることでリスク回避。
葬儀施行中に事故で怪我をしたり死亡しても、全てが「業務委託者の自己責任」で
あり、委託元の葬儀屋さんの責任や保障・賠償はゼロ。(基本的には労災認めず)

prof様
これはいくら労務関係に弱い葬儀屋さんでも気づくのでは(^^;)
ただ以前マイクロ法人を結構本気で検討したことがあります。

ここ数年、相談が多いのが「委託契約の罠」で、特に建築系。
建築は「派遣が禁止(違法)」ですので雇用契約で働かせるのですが、
雇用となると企業側の負担が大きいので、「委託契約」で逃げます。
従事者は、雇用契約よりも委託契約の方が「20~25%程度の高給」のために、
「ころりと騙されています」。(国保や国民年金を払っても、手取りが多くなる)
委託契約ですと社会保障はナシ、労災認定もナシで「ハイリスク」ですが、
「外国人労働者や高齢者労働者達」が引っ掛かり、相談に来ます。

葬儀もロンドンの「ロイズ的」な形状になり、委託や請負制になると「切磋琢磨」が
進み面白いと思っています。(現在の葬儀社斡旋とは異なる)
「終身雇用が基本」の日本ですので馴染みはありませんが、「業務委託契約」の
法律上の不備の件では厚労省東京労働局とやり合っています。

葬儀従事職員の永遠の課題である「待機時間問題」を考えると、
業務委託契約にすると「手持ち時間、呼出待機が認められず」、雇用者有利に。
例えば、昼間は正規職員、夜間は業務委託等の使い分けもありです。
業務委託者は昼間に仕事も出来て「Wワークが可能」であり、トラブルが
なければ「ハイリスク・ハイリターン」です。

prof様
>業務委託者は昼間に仕事も出来て
でもいつ呼び出されるか分からないので
この仕事ってノマド系じゃないと難しいですよね。
そんな能力持っている人いるでしょうか?

自営や自宅系の人が「昼は本業」。
夜は、自宅で「電話受付と病院下げ等」の業務請負(車は葬儀社のを使う)。
「イオンの葬儀」等の規格物葬儀であれば、追加や格上げが出来ないので
「ルーティン通りの仕事」で対応できる部分が多く、能力発揮が出来ずらい状態
ですので、ある意味では「セミプロで対応が出来るでしょう」。
これは、「看護師と看護助手、病棟クラーク」等と同じで、資格や知識の必要でない
雑務は「看護師以外に行わせる」ことで、看護の質を確保するとの部分と同じです。

日本の看護師は介助業務(配膳や食事介助、トイレ解除、散歩介助)等が多く、
本来の看護業務に対する支障もあります。(海外では介助を看護師はしない)
フルセットの葬儀を行う葬儀社であれば「対応が必要」であり、スキルのある者が
当直をする必要がありますが、斡旋サイトや直葬に依存する葬儀社であれば、
「夜間は業務委託」が楽です。

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