「葬式は、要らない(幻冬舎新書)島田 裕巳 」の批評を行いつつ、
葬儀費用に関する言論の問題点を指摘します。
(私のブログの他の記事をお読みいただければ分かりますが、
葬儀業界・仏教界の改革は今後も是非必要だと私は考えているということと
新宗教に関する島田 裕巳氏の著作には教わる点は多いと思っているということを最初に断っておきますね。)
葬儀費用について書かれた文章があったとして、
その文章が信用できるかどうかを簡単に見分ける方法があります。
それは
財団法人日本消費者協会の発表する「葬儀についてのアンケート調査」
のデータを引用しているどうかです。
このデータを引用している文章は、信じてはいけません。
この「葬式は、要らない」という本の主旨は
「葬式は贅沢だ」だから「葬式は、要らない」
という論理展開です。
そして、「葬式は贅沢だ」の根拠として
日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」を引用しています。
日本消費者協会の発表する「葬儀についてのアンケート調査」の数字は
統計と呼ぶにはあまりにもデタラメです。
その点についてはまず
マスコミが報道する葬儀費用のウソ 1
をお読みいただけますでしょうか。
日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」を引用するダメな書き手には以下の3つのパターンがあります。
そして島田 裕巳(しまだ ひろみ)氏には
今回それらのパターンが全部当てはまっているようです。
1 資料やデータの読み込みが甘い
「葬儀についてのアンケート調査」については、
日本消費者協会から調査書を取り寄せて目を通せば、
明らかにずさんな統計の取り方をしていることに気付くはずです。
またグーグルで「日本消費者協会 葬儀」と検索すると
このブログの上記の記事が5位と6位で表示されます。
(2010年2月13日現在)
このようにネットをちょっと調べても
日本消費者協会のデータがおかしいことが分かるはずです。
これらのことに気づかないということは、
適当に書き流している文章であるということです。
島田 裕巳氏は本書の19ページで日本消費者協会のデータを真に受けて
「東北の葬儀費用は四国の倍かかる」
と書いています。
そんなわけないじゃん(^^;)
前書きで「しきたりも現在では地域差がなくなり」って書いてるんですから
日本消費者協会のデータが間違っているのでは・・・
って思うでしょ。フツー。
素直なことはいいことですが、学者としてはダメでしょう。
過去に人を信用して苦労されているはずなのに・・・(>_<)
2葬儀業界を取材するというフィールドワークを行っていない。
日本消費者協会のデータを鵜呑(うの)みにすると
葬儀1件において葬儀屋がもらっている金額は
平均180万円ということになります。
しかしこんなに稼いでいる葬儀社は実際皆無です。
葬儀屋さんはうすうす日本消費者協会のデータが間違っていることに気付いています。
(ただ一部の悪い葬儀社が「ウチなら全国平均より安くできますよ」と
アピールするために日本消費者協会のデータを悪用しています。)
葬儀屋さんに取材を行えば、
日本消費者協会のデータを引用するような愚は犯さないはずです。
「葬式は、要らない」には
仕事柄普段から業界紙や葬儀関係の文献を読んでいるものからすると、
目新しいことはほとんど書かれていません。
それは、まぁこの本が初心者向けだから良いとして、
他にこれまで述べられなかった「新しい視点」を
何か書かれても良かったのではないでしょうか。
まだこの本(お坊さんが困る仏教の話)の方がおもしろいです。
資料の寄せ集めでなくフィールドワーク(葬儀屋さんや仏教関係者への取材)を行えば、もっと良いものが書けたと思います。
3本当は日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」が間違っていることにうすうす気付いているが、葬儀社批判の本を売りたいがため、あえて引用する。
悲しいかな葬儀屋はよく世間から叩かれます。
(参照ページ:なぜ葬儀屋は嫌われるのか)
(参照ページ:葬儀は高いという問題と葬儀屋は嫌われるという問題を深く考えてみる)
もちろんこれまでの葬儀屋の行いにも多くの原因があり、
それは深く反省すべきです。
しかし一方で葬儀屋を必要以上に悪者にし、消費者不安を煽り
本が売ろうとする輩(やから)がいます。
(参照ページ:気は確かか?週刊ダイヤモンド)
要はもの書きの良心や誠実さよりも、
マーケティングを最優先しているということです。
「葬式は、要らない」の出版社は幻冬舎です。
幻冬舎社長の見城氏の著作を読むと幻冬舎はどの出版社よりも、「売れる」ことにこだわっているようです。
おそらく最初に
あの「島田 裕巳」にお葬式批判の本を書かせれば売れるんじゃないか
という編集サイドのマーケティングありきだったのではないでしょうか。
(実際、売れているようです)
もちろん商売ですから売れることを考えるのは大切です。
しかしこの本に書かれている、史実・視点・意見はほとんど過去に誰かが述べていることです。
それだけならまだしも、間違ったことが書かれています。
実際もう100万円を切るお葬儀は全然珍しくありません。
ことさら葬儀の実態からかけ離れた金額を持ち出して、
葬儀業界を非難するのはやめてください。
以上が日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」のデータを引用する書き手の3つのパターンと
「葬式は、要らない」の批評です。
それからこの本の不満点をもう一つ。
(まだ言うか(^^;))
島田 裕巳氏の葬式仏教に対する考え方には私も多くの点で賛成します。
しかし葬式仏教を否定して、葬式を否定して、
そしてその先をどうするのかということについて本書であまり触れられていないのが不満です。
そこは自分で考えろということかもしれませんが
遺族の「故人を弔(とむら)いたいという気持ちの処理」に関してはほとんど述べられていません。
もちろん葬儀は遺体の物理的な処理だけでよい
という遺族に対してはこの本で十分でしょう。
でもそうではない方がほとんではないでしょうか。
お金の問題ももちろん分かりますが、心の問題はそれ以上に大切でしょう。
それについて(この本が初心者向けなら、なおさら)
もっと意見を述べるべきではないでしょうか?
島田 裕巳氏は宗教学者なんですから。
「葬式は、要らない」島田裕巳氏のインタビューを読んで
、に続きます。
やはりこのトンデモ本を取り上げてくれましたね(笑)。ありがとうございます。
葬儀費用の国際比較についても「はぁ?」って感じです。
例えば、著者が宣うアメリカでの平均葬儀費用→44万円
これには、
長年に亘る教会への献金について、考慮されていない。
会食費が計上されていない(実際には、埋葬後、会食をすることが行われているが)。
それから、これは未確認ですが、アメリカでは葬儀社が24時間出動体制を取っているのかが疑問。(事業運営コストに大きく関わります)
都内葬儀社員 様、いつもコメントありがとうございます。
この国際比較のデータの顛末にかんして、碑文谷さんが、解説してくれています。
http://romagray.cocolog-nifty.com/himonya/2010/02/post-5728.html
こちらのサイトもご覧ください。
島田裕巳氏は、学者を名乗っているが、話をするときの論拠のデータが聞いていて、いつも分からない。本人の推測から始まって、実際の検証を行っていないのでは、とすぐに思ってしまう。
また、論旨展開も論理整合性がない。
話術がうまいから、聞いていてそうなんだ、と思うことが多いかもしれないけれど。文章も流して読む分には読みやすいのかもしれない。
けれど、どうしてこういう人が大学の教授にまでなれたのか、不思議。
作家はいいけれど、すくなくても学者の肩書きは使わないでほしい。
一般人 様、コメントありがとうございます。
島田さんはちゃんとした本もお書きになっているんですが、今回の「お葬式は、要らない」はちょっとひどかったですね。
おまけに売れてしまったというのが致命的で(^^;)
また消費者に誤った情報が浸透してしまいました。
初めまして、こんにちは。
「葬式なんていらない!」を検索していたらこちらに大変くわしてコメントされており参考になり有難うございました。
ボクはこのようなタイトル感心しませんね。
自分の身内の葬儀を通じて考えると葬儀を簡単にワイド・ショー風にアレンジされることは非常に不愉快です。
経済が低迷する中、死亡者数だけは確実に増加する葬儀、葬儀業界に対する僻みもあるように思えます。
それと葬儀という「縁起でもない」と忌み嫌われていたことに対する正確な情報のすくなさも要因でしょうか。
先日ニューヨークのグランド・ゼロを訪れた後にビリッジ近くで素敵な Funeral Home があり、友人が興味を持ち「中に入りたい」と言ったので見学させてもらいました。TVスターのようなイケメンなマネージャーが観光客相手に大変親切に対応して下さりアメリカの葬儀を話してくれました。
その時気になったのですが資格取得が大変厳しいこと、そして英語が正確かどうか不安ですが資格者でないと故人を扱えないようなことを言っておりました。
日本の場合はどうでしょうか。
例えばボクのような設計士の場合1級建築士は国家試験ですし設計事務所登録を都道府県に申請しなければ設計業務が出来ません。
そして5年更新をし、会計年度に合わせて年次報告書を行政に提出します。
葬儀社も同様な登録業種なのでしょうか。
あまり聴いたことが無いのでふと気になりました。
僧侶の場合の資格はどこが認定するのでしょうか。結構分からないものです。
ステファンス 様、コメントありがとうございます(^_^)
> 葬儀社も同様な登録業種なのでしょうか。
実は日本において葬祭業は登録業種ではありません。
葬祭ディレクターという資格はあるのですが、これも必須ではありません。
アメリカや中国にはちゃんと葬儀屋さんになるための大学や学部があるそうで、このあたりも日本の葬儀屋さんが玉石混淆で評価されないところなのかもしれません。
ニューヨークのお話、大変興味深く伺いました。
ありがとうございます。
またお時間がございましたらお立ち寄りくださいませ。
百万でも高い
なぜ葬儀屋だけが儲からねばならんのかと
警告を鳴らす意味だけでも十分価値がある
坊主もそうだ
島田氏は時々仰られるが
戒名の必要性の無さについてもそうだ
他の人が言ってることでも
知名度のある人間が言うことで
知らしめるということもあるし
ことさらとやかく言う問題かなと思いました。
酒井様、コメントありがとうございます。
返事が遅くなりまして申し訳ありません。
葬儀というものに関して、多様な意見が存在するということは
(特に都市部で)葬儀屋をやっていれば、必ず感じることです。
私は、その時のそのお客様の価値観にそってお葬儀を行うことが「正しい」と思っています。(他の記事でも直葬や小規模葬や俗名の利点を伝えています)
この記事で指摘しているのは島田氏の価値観ではなく、それ以前の単なる「事実誤認」です。
最近葬儀業界が改善されつつあるのは、「正しい」情報が消費者に届くようになったからだと思います。
このブログでは「正しい」情報を伝えて、その情報から消費者の方が自分なりのお葬式を選択してもらえれば、と望んでいます。