東京博善への見解に異論を唱えてみた

いろんな所に議論をふっかけていると思われている私ですが、基本的に、論理的かつ建設的な議論が可能で、発言の影響力が大きいと判断したテーマに限っています。

そのため、例えばある葬儀屋さんの葬儀観のツィートが、自分と真逆の考えだったくらいでは、スルーです。
それ以前に、私の情報処理能力の問題もあって、実はそもそも同業の情報発信は、ほとんどチェックしていなくて、本が出た場合や、Googleアラート上でメディアに載った場合しか目を通していないのですよ。

さて、最近日本一の葬儀系YouTuberの佐藤信顕氏のあるツィートをタイムラインでお見かけしました。
一部意見を異にする箇所があって、とはいえツィートってラフにやる場合も多いので、いちいち言及するのもどうかと最初は思ったんです。
しかしどうやらフォローワーが5万人以上もいらっしゃって、影響力をお持ちだと判断して今回取り上げてみました。

ツイッターではなくブログを使ったのは、以下の文章をお読みいただければお分かりになると思いますが、若干専門的で且つ長くなったから。

都内の火葬場の前提知識をお持ちでない方は
多死社会の到来:コロナ騒動の裏側で麻生太郎の家業が「葬儀場利権」に触手を伸ばすワケ(後編)
こちらの記事をお読みいただくのがよいでしょう。(この記事の主張が正しいと言っているわけではありません。)

23区の火葬の7割のシェアを、東証一部上場企業の廣済堂の子会社である東京博善が持っている、ということをおさえておいてください。

火葬場が公営なのは儲からないから?

火葬場の大半が公営である理由として、公金入れないと運営できないくらい儲からないからという文脈で展開していますが、
そうではなくて
第一に昭和43年の厚生省通達があるから、でしょう。
「墓地、納骨堂又は火葬場の経営主体については、(中略)原則として市町村等の地方公共団体でなければならず、これにより難い事情がある場合であつても宗教法人、公益法人等に限ることとされてきたところである。」の一文が効いているわけですよね。

次にNIMBY(住民の反対運動)があるから、ですよね。
葬儀会館のように、法律で認められていて、法律をしっかり守っていれば、住民が反対しても建設はOKなんですけどね。

大半が公営で民営が少ないのは、儲からないから、の帰結ではありません。現に東京博善はとても儲かっています。

民間はできることならやりたがっていますよ。

過去数回複数の組織から、「火葬場のことでお話しをうかがいたい」と接触がありました。
「通達あるのでこれから建てるのは無理です。宗教法人使ったとしてもNIMBYで無理でしょうね。私なら廣済堂の株を買い占めますね。他の選択肢と比べたらまだ一番良いと思いますよ」
といった話を、今まで食べたことのない料理を勧められながら話した記憶があります。(笑)
ちなみにその内のお一人は、廣済堂の財務諸表が既に頭に入っていました。

東京博善の一番安い火葬炉は確かに収支ゼロに近いですが、高額火葬炉や式場収入含めると高利益体質です。
87億の売上で25億の営業利益という驚異的な数字です。
絶対的なニーズのある存在不可欠なインフラなのに法規制がなくて、さらに今後20年近くに渡って件数増加が見込まれている産業なんて、最終的にシェアの取り合いになるのは分かっていても、みんなやりたいですよ。

現金を溜め込むのは災害時のため?

それから災害時のことを考えて現金ため込んでいるという話も同意できないです。
東京博善側としては、主要インフラであることを切り札にしてtoo big to fail(大きすぎて潰せない)前提でいくのが合理的だと思いますけどね。
仮に現金がなくても、国が援助せざるを得ないでしょう。

たとえば電力会社は普段現金はためてなくて、災害が起きてから引当金勘定積み上げるって感じですよね。
また鉄道会社の財務諸表を見れば分かりますが、日銭の入る商売で、確実に利益をあげられる体質ならばキャッシュはそんなに溜め込まないものです。

でも東京博善の場合は、NIMBYのせいで次の投資先がないので、親会社の補填に回した残りを結果的に積み上げざるを得ない、という構造だと思います。
物言う株主からしたら吐き出せ、ってことになりますね。良い悪いではなくて株主資本主義というのはそういうものです。

ここらへんのところは経営者である佐藤氏も分かっているはずなのに、博善擁護に回るのはなぜなのでしょう。

遺族の気持ちだからとかなんとか言いながら、慣習化している心付けをそのままにするコンプライアンス的に健全ではない姿勢ひとつ見ても、甘やかしてはダメだと思います。
「遺族のお気持ち」なんて表現に逃げないで、「一切受け取りません」とアナウンスすればいいだけの話なんですから。

うん、このあたりも博善擁護に異を唱えようとおもった動機の一つかもしれない。

国のせいであって東京博善のせいではありませんが、上場企業でインフラなのに法規制がない、という構造をほっとくと迷走は続くでしょうね。
鉄道やエネルギー産業などのインフラのように、本来は法的根拠に基づいてある程度コントロールすべきなんですけどね。

佐藤さん、もちろんスルーいただいても問題ありませんし、ご意見がありましたら、コメントお待ちしています。




2件のコメント

関東の地方都市在住者です。

居住自治体の火葬場は「昭和43年の厚生省通達」通り、自治体の経営です。
火葬技師の運営は「事後審査型条件付き一般競争入札」により運営委託です。
これ以外の売店の業務などは、入札ではなく、○○市母子寡婦福祉連合会になっています。
もちろん、管理業務(火葬証明書の発行等)は自治体が直接行っています。

当然ながら公共施設なので、公務員はもちろん、全ての職員が「心付け」は厳禁です。
施設内のいたるところに、「心付けは受け取りません」の張り紙がありますし、絶対に受け取りません。

また、知る限り、市内の葬儀社のスタッフは心付けを受け取りません。

人というのは弱いものなので、心付けを受け取るようになると、有る無しで無意識のうちに対応に差が出るものなのです。

>慣習化している心付けをそのままにするコンプライアンス的に健全ではない姿勢
事実上の独占なので問題が顕在化しないのでしょうが…
経営者はこういった問題の放置が、会社の不健全化を招くということを理解していないのでしょうか?
全く理解できません。

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