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「終活ねっと」がつぶれた理由




今回は葬儀ブローカー(ネット上で葬儀社を探している人を集客して、葬儀社に紹介し、紹介手数料を得る組織)の「終活ねっと」の創業者岩崎翔太氏の功罪をかんがえてみましょう・・・って思いましたが「功」が探しても見つからなかったので「罪」を考えてみましょう。

成功した起業家に成功した理由を聞くと「運が良かった」という回答がよく返ってきます。
これはたまたま宝くじに当たったという意味で言っているのではありません。メチャクチャ頭を使ってプレッシャーにも耐えてがんばったが、自分より優秀で頑張っていた奴さえ成功できなかったケースがたくさんあることを考えると、自分が成功できたのは「運が良かった」と言っているわけですね。

でも終活ねっと創業者は、本当に文字通り「運が良かった」と思うのです。

終活ねっとと創業者の現在

「終活ねっと」を御存じ無い方のためにこれまでの軌跡をざっとふりかえっておきましょう。

「終活ねっと」はうまくいくのか?

 

くわしくはこちらの記事に書いていますが、灘高から東大に入学した岩崎翔太氏が在学中に起業した葬儀社紹介サイトです。
途中ファンドの出資を受けつつ、その後、2018年にオンライン系ポルノサイトで当てたDMMと資本業務提携契約を結びました。
2019年秋頃に関根勤氏を起用したCMや広告をご覧になった方も多いでしょう。

株式会社終活ねっとの代表者の変更とDMM.comの子会社化について – 株式会社終活ねっとのプレスリリース

この当時は↓こんな終活ノートを出したり

(葬儀業界の広告は無法地帯なので本当かどうか疑わしいのですが)終活サイトアクセス数No.1を誇ったり、のっている時期でした。

実は、終活ねっと、2020年に3月末時点でDMMの子会社になっており、創業者の岩崎氏は退任、社長は別の人になっています。
創業者はサイトをDMMに売却し、それで得たお金でエンジェル投資家(起業した人に出資する)になったようです。
エンジェル投資家のポートフォリオ – ANGEL PORT

おそらく一生食べていける大金を手にしたはずであり、経歴をおおまかになぞると、間違いなく成功者だと思います。

終活ねっとのすごさ

創業者である岩崎氏がすごいのは、葬儀ブローカーとして後発であるにもかかわらず何一つ新しいことをしなかった・・・どころか劣化版を市場に提供したにもかかわらず、売り抜けに成功したことにあります。

初期のインタビューで、「高齢者の課題を解決することを目的」として起業したとおっしゃっています。そう思うならならブローカー業ではなく実際にモノやサービスなどの実業を提供すべきだと思うのですが、企業理念を後付けするのは多くの起業家がやっていることなので、ここは特に問題があるとは思いません。

立ちあげたサイトの記事は、ファンドの出資が行われる以前の段階において、学生アルバイトが調べ物をして書いたというレベルでした。
オリジナリティのある記事や体験情報は全くない状態。
20代そこらでは、当然でしょう。
葬儀屋との紹介契約も結べず、わずかに墓の紹介販売を行うレベル。サイト内にアフィリエイトバナーを貼っていたくらいです。

終活カウンセラーという資格ビジネスで一山当てた武藤頼胡氏がブレーンについていましたが、うまくいっていなかったです。

当時、終活ねっとよりうまくやっていた葬儀ブローカーは他にもたくさんありました。しかしそれらはほとんど消えていっています。

葬儀ブローカーが生まれてから消えるまで

消えた葬儀ブローカーと終活ねっとは、どこで明暗を分けたのでしょう。

それは好奇心旺盛な山師的気質のあるお金持ちのDMMのオーナーが、終活ビジネスは儲かると勘違いしたという一点に尽きるのではないかと思うのです。

DMMのオーナーは以前、問題のあるサイトをよく分からないまま買収した過去があります。
はちま起稿買収問題、DMM.com亀山敬司会長が経緯を語る(山本一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース

DMMとの資本提携が1年遅かったら、終活ねっとは消えていたでしょう。

以前経済評論家の山崎元氏が「早く成功する秘訣はおやじを転がすこと」と言っていましたがまさにその通り。

そして、上記の成功に再現性はありません。
もう一度同じことをやっても成功しないでしょう。

つまり岩崎氏は「運が良かった」のです。

しいていえば、あの時点でレッドオーシャンだった葬儀ブローカーを、戦略の無いまま目指した蛮勇は評価されるべきなのかもしれません。
DMMのオーナーに、終活アドバイザーは儲かると勘違い「させた」なら岩崎氏の功績もいくらかはあるのかもしれません。

とにかく運が良かったにしろ大金を手にしたのですから、彼は人生の大勝負に勝ったと言えるでしょう。

終活ねっとの罪

終活ねっとの罪は、ネット上に余計なサービスを増やしてしまったこと。

どこの葬儀ブローカーに頼んでも、紹介される葬儀社は同じ、つまり提供されるサービスは同じです。なぜならその地域で、葬儀ブローカーの仕事を引き受けると決めた葬儀社は、あらゆる葬儀ブローカーからの依頼を受けようとするからです。
料金体系も底値を競うチキンレースになっているので、あとはネット上でどう見せるか、悪い言い方をすると消費者にどう誤解させるか、です。
競争相手が増えることにより、レッドオーシャン化が加速し、必然的に仕事を受ける葬儀社もどんどんブラック化していきます。
基本的に葬儀ブローカーからの紹介で食いつないでいる葬儀社はすでに死に体なのですが、経営者は自分の会社をどうしても潰したくないですから、現場をブラック化して問題の先送りをせざるをえないのです。残るのは疲労困憊した葬儀担当者と、そんな担当者におざなりな対応をされる遺族の不満です。

終活ねっとは結果的に、そういう余計なサービスを1つ増やしてしまったのです。

本来起業はリスクを取ってやるもので、失敗したからといって批判されるものではないし、起業する若者は応援したい、というのが私のスタンスです。
それにもかかわらず、岩崎氏にそういう感情を持てないのは、ただ葬儀業界を荒らしてしまっただけ、だからです。

ちなみに終活ねっとの、新社長は
2019年11月29日 – 代表取締役社長の異動に関するお知らせ – SBI損保SBI損害保険株式会社
SBIグループで少額短期保険を取り扱っていた人物でしょうか。

実はSBIグループも葬儀ブローカー業務を以前立ち上げて、そして潰しています。

葬儀社紹介サービスがなくなるわけ


大きなグループとはいえ、古巣のことなので知らないということはないはず。

こうしてみるとDMMのオーナーだけが、気のいいタニマチとして重宝されているということでしょうか。

朝倉祐介氏も言うように、ゼロから企業を作り上げる能力と、それを上昇させる能力と、水平飛行を維持する能力は別物です。このステージで企業を売却した創業者の判断は当たり前と言えば当たり前なのですが、それ以前に彼だけは、このサービスに先が無いことを確信していたはず。

勝ち抜け、おめでとう。

終活ねっと潰れました

その後、私の予想通り終活ねっとは潰れました。

2016年 スタートアップ
2018年 DMMと資本業務提携契約
2019年 プロモーションに予算を投下。関根勤氏のCMを打つ
2020年 DMMの子会社化。岩崎氏退任、売り抜け。新社長に島津勇一氏就任。
2021年 DMMファイナンシャルサービスへ事業引継。サービス名を「終活ねっと」から「DMMのお葬式」に変更。
2022年 サービスの終了と撤退を表明。
「やさしいお葬式」を運営する、同じ葬儀ブローカーのライフエンディングテクノロジーズへ事業引継。

買ってみたら全然ダメだったことに気づいたのでしょう。
創業メンバーを退任させて
毎年組織構造変えたりトップを変えたりと施策を打ち出しましたが、早々と撤退しました。

繰り返しになりますが、後発で、且つ劣化したサービスを提供してレッドオーシャンを生き抜くのは不可能です。

実質的にサービス名を「終活ねっと」から「DMMのお葬式」に変えた時点で、終活ねっとは終わっていたのでしょう。

私の予想は「3年保たない」だったのですが、ほぼ当たったようです。

最終的にライフエンディングテクノロジーズへ事業引継が行われたようですが、実際は顧客情報だけ渡したのでしょう。

葬儀ブローカー「よりそう」は大丈夫なのか?

↑こちらの記事で、現在の葬儀ブローカーの世界を分析しています。

現在は、墓とITに強い鎌倉新書と、大手互助会がバックについている「小さなお葬式」の2強状態です。
ネットサービスは基本的にトップの総取りです。

「よりそう」をはじめとするそれ以外の葬儀ブローカーは、赤字でしょう。ベンチャーキャピタルが手を引いた時点で、潰れるはずです。

終活ねっとの事業を引きついだライフエンディングテクノロジーズも赤字続きで債務超過になっています。

2022年現在
終活ねっとのCTOだった組田 隆亮氏は、岩崎氏の退任と同時に終活ねっとを去り、現在は株式会社メディカルフォースのCTOをしています。
岩崎 翔太氏は、2022年Pacific MetaというNFT関係の会社を立ちあげたようです。

ちなみに「小さなお葬式」を創業した田中智也氏は、売り抜けで得た資金を元手に冷凍宅配食サービス「ナッシュ」を2016年に立ちあげて成功しています。
岩崎氏も強運だけではないことをいずれ証明されるのでしょう。











6 件のコメント

  • 始めてコメント新たに残させて頂きます。
    葬儀社に務めているものです。
    近々また新しく「みんなが選んだ葬式」がスタートしますが成功すると思われますか?
    出尽くしているように見えてもまだまだ後発でも参加してくるのですね。

    • 南陽様
      コメントありがとうございます。
      >「みんなが選んだ葬式」がスタート
      そうなんですね。
      詳しいことはわかりませんが、第一印象としては、サービス名に使えそうな単語がもう残っていないんだなと感じました(笑)

  • コメント失礼します
    このての物は葬儀業界を滅ぼしかねないと思うのですが…
    幸い私たちの市では市内の葬儀社の間で暗黙の了解のような感じで小さな~やイオ○などは受けないというのが浸透しています。
    そのため市内のかたがそれらに葬儀を依頼した場合他の市から葬儀社が来ることになっております。
    遠方から来るので予算的にも厳しいのもあるかとおもいますがサービスの質の評判もあまり良くなく、最近ではほぼそれらの葬儀ブローカーによる葬儀は無くなっています。
    田舎なので直葬の需要も低いからできるのかもしれませんがなんとかこの状態を続けていければと思っています。
    長文失礼いたしました。

    • たくお さま
      情報ありがとうございます。
      そうなんですよね、基本的に営業もできなくて、商売もうまくいっていない葬儀社が、葬儀ブローカーの仕事を受ける傾向がありまして
      結局悪循環なんですよ。

  • お疲れ様ですm(__)m

    情報収集の邪魔だから消えて欲しいです。

    低廉価格の為に葬儀社を苦しめる悪い商売ですねぇ~~

    丸投げのクセに葬儀社とか言うな‼️

    私と大阪の葬儀社社長が昼飯を食べていたら
    小さ⭕から葬儀依頼電話があり、

    LAW「出なくていいの❓」
    社長「暇なヤツがやればいいです」

    早い話が、ハイエナの仕事は、やらない

    まかりなりにも、自力で仕事が取れれば、
    14万円入る訳ですねぇ~~

    しかし、ハイエナに手数料払うと
    マージン率分だけ中抜きするから、

    赤城さんの言う7万円を引くと、酷いブローカーだと1万円位しか儲からない‼️

    11万4000円で、4万円抜かれたら
    4000円しか浮かない‼️笑笑

    上述の社長は、開業当時はユニをやっていました。

    確かに複数のブローカーから仕事を受けている会社ありますけど~~
    やはり好みがあるので、1社や2社が多いです。

    因みに私の友人葬儀社で、あまり汚い会館を小さな町に造り、小さ⭕で会館の写真を載せたら、依頼の電話すら来ないところがあります。

    あれって、それなりに仕事ぶりや設備なんかもチェックしていますねぇ笑笑

    技術は完璧ですけど。

    大きな会社で、人を遊ばせたくないなら、
    ブローカーからもらっても仕方ないけど。

    小さな会社は、受けない方が賢明です。

    大体、記事をパクる会社なんかは、
    モラルがないですし、私ならば民事訴訟ですね。

    赤城さんは、人間ができています。

    m(__)m

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