山口恵以子さんは葬儀費用を誤解している




先日作家の山口以子(やまぐち えいこ)さんがエッセイの中で、
母の葬儀の際「総額32万円だったはずの葬儀費用が、200万円に膨らんだ」ことを悔やんでいるという記事がNEWSポストセブンのサイトに掲載されました。

「葬儀社と契約した際、いちばん安い祭壇を選んで、総額32万円のセット料金だと思っていました。すると棺・骨箱・遺影の額・告別式の会席膳などの費用が加算されて、最終的に200万円弱になってしまったんです。すべてが後の祭り。事前に調べるべきだったと、いまだに悔やまれます」(山口さん)

本論に入る前に、まず山口恵以子さんのお母様のご冥福をお祈りします。

実際はどうだったのか、ことの経緯が記された山口恵以子さん著作を購入して読んでみました。

描かれた葬儀費用の誤解

さて上記の件ですが、結論から言うと、葬儀屋さんに落ち度はなかったようです。
山口恵以子さんが「互助センター友の会」という葬儀社名まで挙げて、葬儀費用が高いと非難したのはやり過ぎです。

一般消費者がやりがちな誤解をされているので、以下指摘しておきます。

本書の第一章から引用します。

葬儀社と契約した時、祭壇の写真を何枚か見せられて説明を受け、私は一番安い三十二万円弱を選んだ。てっきりそれで葬儀費用が全部まかなえると早合点したのが大間違いだった。
(中略)
最終的に出た葬儀費用の見積もりは百五十二万六千八百四十九円だった。これに導師への御礼と雑費が加わると、二百万円にリーチが掛かる。

山口さんは契約した時点で、ちゃんとした見積書を作ってもらうべきでした。
↓互助センター友の会のサイトにも、32万円弱のコースに何が含まれているかは、細かく載っています。
M3会員 葬祭の部|プラン紹介|メモリアル|互助センター友の会【公式】

入会時にもし積立金だけでお葬式ができるなどの誤った説明があったのなら、黙っていないでちゃんと抗議すべきです。それをしなかったというのは、本人にも誤解していたという引け目があったのではないですか?

それにエンバーミングを含めて150万円程度というのは、相場として法外に高い値段ではありません。
葬儀社によって幅がありますが、例えば上場している葬儀社の単価としては普通です。

円単位まで計算しているということは、見積書も明瞭だったはずです。
最終的な請求金額も、見積金額とほぼ同じだったようです。

しかしもう母のエンバーミングまで頼んでしまったので今更「止めます」とはいえない。

それは山口さんの思い込みです。エンバーミング(遺体保全処置)までで、打ち切ってもよかったのです。
お葬式が終わってみると法外な金額になっていたという話ではなく、見積りの段階で「これくらいかかりますよ」と事前に示しているのですから。
不満があったのに何も言わず承諾しておいて、後日著作で文句を言うというのは大人の行為ではありません。

それに互助会が所有する会館の立地が最優先事項だったわけですから、打ち切るという選択肢を提示されても、その選択はしなかったのではないでしょうか。

百人近くが参列した父の葬儀費用と大差ないのはどうしてなの?

100人程度ではそれほど大きな費用差にはならないからです。

参列者数で変わるのは変動費(通夜料理と返礼品)です。
通夜料理 @3000円×50人(用意する通夜料理は参列者の半分くらいが目安)=150,000円
返礼品@500円×100人=50,000円

よって150,000円+50,000円=200,000円となって、葬儀費用全体の1割位の違いに過ぎないのです。

不意に、兄の経営していた整骨院で働いていた整体師さんがお母さんを亡くされた時、家族葬で弔ったことを思い出した。
「H先生はいくら掛かったって言ってた?」
「六十万」
「ウッソーー 全然違うじゃない!」

他人の住まいの「家賃」を聞いて安かったとしてもいきなり「ウッソーー 全然違うじゃない!」とは言わないですよね?

立地は?間取りは?築年数は?って個々の条件を確認しますよね?

なんで葬儀の時だけ、内容無視で、金額だけで単純比較なんでしょうか。
おまけに伝聞の伝聞の情報です。

試しにネットで検索してみたら、出るわ、出るわ、事前に詳しい見積もりを出してくれる会社とか、五十万〜六十万円で家族葬を行ってくれる会社が沢山あるじゃないの。比較検討すれば、予算に応じていくらでも都合の良い会社が選べるのだ。

後の祭りが口惜しくて堪らない。

たしかにそのように謳(うた)っている葬儀ブローカー(ネットで葬儀社を探している顧客を集客して、葬儀社に紹介し、手数料をもらう組織)はたくさんいますが、
葬儀社を訪問してのやりとりですら、当初と話が違うという経験をしたのに、なんでネット情報はそのまま信じるのでしょうか。

このブログでも度々指摘しているように、葬儀ブローカーの、後から追加費用を次々に上乗せして請求するやり口は、彼らの常套手段です。

「小さなお葬式」が消費者庁の処分を受けた件 | 考える葬儀屋さんのブログ

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高い葬儀費用を払う羽目になったのはあなたの責任です

さて以上のような意見を述べると、こういう反論が返ってきます。

「事前に葬儀費用の見積もりを取れと言われても、まだ当人が生きているときから見積りを取るなんて、縁起でもないし、抵抗がある」

この気持ちは分かります。

しかし、事前によく下調べをして納得のいく葬儀費用を払うことと、
亡くなるまで葬儀のことを考えないで、結局高い葬儀費用を払う
ということはトレードオフの関係にあります。

スーツ量販店で喪服が、同じ商品にもかかわらず、ネット販売の倍の値段で売られているのは、いざという状況(明日葬儀に参列するなど)になってから買いに来る人が多いからです。つまり買い手の立場が弱いときは、高い物を買わされる、というのは経済理論的に当然のことです。

事前に下調べをしないことは、別にいいのです。目の前にある問題を先送りすることに精神的な便益を感じるのは個人の自由です。

ただその結果、高い葬儀費用を払うことになってしまうのは、消費者が選んだ結果であり、自分の責任です。
これを「悪い葬儀屋のせい」で、済ませてしまっては、いつまでたっても問題が解決しません。

厳しいようですが、悪い葬儀屋を駆逐したければ、消費者が賢くなる以外に方法はないのです。

追記

補足しておくと、この本、葬儀費用のところ以外は母と娘の関係を描いた良いエッセイだと思います。

ネット記事では、山口さんが葬儀社そのものを非難しているような文章でしたが、全体を通して読むとそこまでではありません。

お葬式の内容に関して最終的には、

美しい祭壇と生花、きれいな遺影を見ていると、当初の″ぼられた感″は跡形もなくなり、満足感だけが心に残った。
葬儀社のスムースな式の進行と行き届いた配慮。格調のあるお経を上げてくれた導師は人柄も練れていて、この方に来ていただいて本当に良かったと、素直に感謝する気持ちになれた。

と満足されています。

つまり最終的には葬儀社スタッフにも葬儀の内容にも満足しているのです。

それだけに、葬儀費用がどうこうのくだりは書かなくても良かったのではないか、とも思います。
百歩譲って、事前相談を啓蒙したかったのであれば、もっとスマートで適切な表現方法はいくらでもあったはずです。











9 件のコメント

  • お疲れ様です(-_-)
    私の創った連盟の会員葬儀社さんは、
    直葬ならば
    6万9000円~14万円です。
    互助会上がりの1級葬祭ディレクターが
    かなりいます。元部長もいます。

    もちろん、家族葬や一般葬もやりますけど。
    赤城さんが前に試算された、
    火葬式の7万円損益分岐点?
    ドンピシャです
    みんなが敬服しています。
    釣りに行くような方が、正にその値段です

    ドライアイスは、10キロ1400円~
    5000円まで仕入れに幅があります。
    非会員石垣島の某葬儀社は、海上輸送費が
    上乗せされて、那覇の2倍になるのです。

    ご喪家はとにかく、規模を押さえて、
    料理は控え目に、などなど

    今なら、私が自分で棺を8500円で買い、
    私のプリウスで搬送して、
    大宮聖苑で12000円でやります。

    ドライクーラーは借りますし。
    花は近所で買います。ムム
    これって、奥山さんの世界ですねー
    (*´・ω・`)b

    でもね、錯誤がありますから、
    私ね、見積書見ながら、素人に
    解らないとか思っちゃいます。

    そういう点では、ブローカーは
    分かりやすいです。
    私は、コールセンターとかないですけど。

    今や、価格比較がネットでできますけど、
    技量や真心の比較や相性なんかわからない。

    大きくて立派な葬儀ならば、高くて当たり前
    小さくすれば安くなる。

    見積書みて判らなきゃ、
    私がお力になります‼️(/▽\)♪

    総見積額を見て高いと思ったら、
    まずは支払える限度額を伝えて、
    料金を落とすべきです。

    合い見積しましょう。

    しかし、安けりゃいいのか?

    それ自体が気になりますけど~~

  • 通りがかりに失礼します

    タイトル、および文中の
    「山口恵以子」さんのお名前が
    「以恵子」さんになってますよ

  • リリー・フランキーさんも、東京タワーで似たようなこと書かれてますね。残念です

  • 考える葬儀屋さん。
    あなたのブログを見ると本当に頭のいい方なんだと伝わり、勉強でよく読ませていただいています。私は友の会の兄弟会社に勤めています。あなたみたいな上司が居ればいいのにといつも思います。これからもブログ楽しみにしています。

  • しかし、事前によく下調べをして納得のいく葬儀費用を払うことと、
    亡くなるまで葬儀のことを考えないで、結局高い葬儀費用を払う
    ということはトレードオフの関係にあります。

    仰る通りです。
    事前相談で予めお見積りを取ること、個人的にはおすすめです。
    高額な商品ですから慎重に選んでもらえたら。

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