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お寺が税金を払わず、お布施の金額を言わないのには理由がある




お寺(宗教法人)に対する世間の批判で多いのは
税金を払わない
・御布施(葬儀の際の読経や戒名への御礼)の金額をハッキリ言わない
ということではないでしょうか。

葬儀業界にいる人間としては
・宗教者なのに人格者が少ない
も付け加えたいところですが(笑)私の意見は今回置いといて・・・

坊主が強欲だから、と思っている方も多いようです。
確かに強欲な坊主は多いのですが・・・って今回悪口ばっかりかい!

税金と御布施の金額に関しては、彼らは法律に従っているだけです。そしてそういう法律なのには、それなりの理由があります。

そんな税法の仕組みを解説してくれるのがこの本。

著者の三木義一(みき よしかず)氏は、青山学院大学の学長を務めたことをもある、税法の専門家。
その分野の権威でもありながら、ユーモアを交えながら一般読者にも分かりやすく、巷(ちまた)の税の疑問に答えています。

なぜ宗教法人は税金を払わないのか

では1つ目の疑問。

なぜ宗教法人は税金を払わないのか。

会社が利益を上げると、その利益には通常税金(法人税)がかかります 。
しかしお寺などの宗教法人の場合、法人税はかかりません。

これは以下の考え方によります。

会社というのは、最終的に株主という個人の持ち物です。
会社は利益を追求し、会社の利益は最終的にその個人に還元されるため、本来なら個人から税金を取るだけで済むはず。わざわざ法人から取る必要はないのです。

しかし法人に課税しないというルールにすると 、経営者はいつまでたっても個人に還元せず会社の中に溜め込もうとするかもしれません。
そのためまず法人に課税し、残りを個人から徴収しようというのが国の考え方です 。

さて宗教法人は、当然宗教活動を行うわけですが、

  • 宗教法人の資産は誰か特定の個人の持ち物ではない(はず)
  • 宗教活動は営利を目的としていない(はず)
  • そのため利益が個人に還元されない(はず)

という「建前」になっています。

あくまで建前にもとづいた税法理論ですが、
以上の点が、通常の法人と事情が違うということで、税金を免除されているのです。

なぜ御布施の金額を言わないのか

次にお布施の金額を言わない理由です 。

先ほど宗教法人には課税されないと申し上げましたが、宗教法人でも33種類ある収益事業と認定される活動を行うと、その活動から生まれた利益には課税されます。

ところが何をもって収益事業とするかというこの線引きが、ケースバイケースなのが実態です。

例えばお守りやお守りの販売は、宗教活動であり収益事業ではありません。
お寺の敷地内で販売されている線香やお花の販売は、物品販売業のため収益事業であり本来なら課税されるのですが、これらをお墓に供えると宗教活動の一環となり、収益事業ではなくなり課税されないのです。

大切なペットが死んだときに、お坊さんにお経をよんでもらう飼い主もいます。

このときにお坊さんがもらう御布施には、課税されるのでしょうか。

以前ペットのためにお経をあげているお寺と、国が裁判で争ったことがあります。判決では「収益事業と認定」されて課税されることになりました。
人間のお経は当然宗教活動ですが、ペットへのお経は宗教活動ではないと認定されたのです。

宗教活動ではなく収益事業と判断された最終的な決め手は、ペットのお経をあげていた寺院がインターネット上に「料金表」を掲載していたから、でした。
「支払う金額があらかじめ決まっていたら、それは「経済活動の対価」と考えられるので、収益事業になる」という解釈を裁判所が行ったのです。

ちなみに、ペットのお墓は「倉庫業」、ペット供養の法要は「請負業」ということで、どちらも収益事業と認定され、課税されたとのことです。
なにがなんでも白黒付けなきゃいけない裁判所が、むりやり法解釈を行った、というところでしょうか。

ここまで書いてきて、もうお分かりになったでしょうか。

この裁判所の判例にのっとると、お布施の金額を事前に決めておくことは、収益事業と見なされて税金を取られかねないということなのです。

そのためお寺はできるだけ御布施の金額を、ぼかしているわけですね。

以前イオンが僧侶紹介業を始めたときに、御布施の金額をサイトに掲載したところ、全日本仏教会から抗議を受けて掲載をとりやめた、という事件がありました。
(参考記事:お布施のHPでの目安提示をイオンが取りやめた理由 | inside Enterprise | ダイヤモンド・オンライン

この事情を深読みすると、社内の法務部門から「徴税の恐れがある」と言われたのではないでしょうか。

とはいえ近年は、檀家さんに聞かれたら「実際のお布施がいくらか」を答えるお寺が多くなりました。

時代とともに「お気持ちで結構なんて言われても、困る」という消費者の方が増えてきたからでしょう。

ただ最近はお寺の派遣業というのが増えてきて、インターネット上に料金を掲載している組織もたくさんあります。

こういったところは税金を払っているのでしょうか?
それともグレーゾーンで、将来税務署の査察が入って一悶着起こるのでしょうか?

宗教法人にも課税すべき

税法の権威である著者の最終的な見解は「宗教法人にも、ちゃんと課税すべき」というものです。
その理由は、葬儀業界の中の人である私にも、十分納得できるものでした。

ぜひ御一読ください。











2 件のコメント

  • 50万支払った遺族が何か勘違いされてませんか?と突き返されたそうです。令和なのに!?課税しろって思います。門徒数もぼやかしてるし

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