前回
お寺が税金を払わず、お布施の金額を言わないのには理由がある | 考える葬儀屋さんのブログ
という記事の中で
この本を紹介しました。
実はさらにもう一つ、葬儀業界の事例を取り扱っています。
ベルコが印紙税を払ってなかったということで、約3,000万円の追徴課税を受けたという2009年の事件です。
一般の方に説明しておくとベルコは日本最大の冠婚葬祭の互助会で、おそらく日本で一番お葬式を行っている組織です。
正直なところ過去に何度か、ベルコは申告漏れで追徴課税を食らっていたので、またやらかしたんだろうというのが当時の私の印象でした 。
●1999年→大阪国税局より、積立を中断している互助会会員の積立金を所得に計上していないとして、1997年3月までの3年間に計約33億円の申告漏れを指摘される
●2002年→上記と同じ理由で2000年3月までの3年間に計約28億円の申告漏れを指摘される
●2005年→上記と同じ理由で2003年3月までの3年間に計約31億円の申告漏れを指摘される(出典:http://gekkankiroku.cocolog-nifty.com/edit/2009/08/34-9b57.html)
ベルコの新聞沙汰をまとめたサイトがありました。→お葬式無料情報センター|お葬式トラブル記事特集|
おそらく何度も食らったのは、税法の解釈でベルコが譲らなかったせいでしょう。
一方で、今回の印紙税の件を、この本で理解してみるとベルコが気の毒です。著者も無茶な例として採り上げていいます。
(過去の申告漏れのせいで、目をつけられていたとしたら、自業自得の部分もあるのですが)
そもそも印紙税とは、契約書や領収書に課税される税金です。
いちいち納税していられないので、税金を払う代わりに収入印紙を購入して貼るわけです。
領収書に貼られることが多いので皆さん経験済みでしょう。
かつて経済学者の野口悠紀雄氏が著書の中で、「契約書や領収書に徴税することを思いついたやつは天才」と称えていました。
印紙税の問題は「何を契約書や領収書と認定するかということは、税務署の判断に委ねられる」ということです。
表題に契約書や領収書と書いてなくても、その機能があると判断されれば、認定されることもあります。極端なことを言えば、ベニヤ板に書いた落書きに契約書の機能があると判断されれば、それも印紙が必要ということになります。 一方でヘンだと思うのが、電子化された契約書は、印紙が必要とされないのです。
さてベルコの場合、葬儀後に送っていた遺族への挨拶状の文中に、「葬儀代として○月○日〇〇円 領収いたしました 」と書いていたことで、この挨拶状は領収書であると認定されてしまったのです。
この挨拶状とは別に、ちゃんと領収書を発行しているはずなので、ベルコ側からすればこれは税務署の言いがかりでしょう。
しかしこういった細かい事情は、葬儀業界内にいる私でさえこの本を読んで初めて知ったので、一般のほとんどの人は、ベルコが脱税したと思っているはずです。
国も、税法上の重箱の隅をつつかないで、ベルコ特殊な雇用形態(実質従業員なのに、業務委託契約にしている)を、ツッコむべきです。
(参考記事:互助会最大手ベルコの謎 | 考える葬儀屋さんのブログ
【魚拓】「ベルコ」裁判 現場の実態を見ない不当判決 業務委託契約の濫用を許すな – トピックス – 情報労連リポート)
この事例が発生してから、どう見てもお葬式の見積書なのに、婉曲的な表現で「これは見積書ではありませんよー」と記載する葬儀社が増えましたね。
この「節税対策」も、いつかは税務署にやられるんじゃないでしょうか。
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