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「至高の靴職人 関信義-手業とその継承に人生を捧げた男がいた」を読んで




過去何度か書いたことがありますが
私は靴が好きです。

そこで今回紹介するのはこの本。
「至高の靴職人 関信義-手業とその継承に人生を捧げた男がいた」

伝説の靴職人 関信義(せき のぶよし)の半生を追った本です。
この本で描かれる関信義氏の人生もおもしろいですが、戦後の日本の靴業界を知る上でもこの本は貴重な情報源です。

彼は2012年頃引退しているのですが、
晩年(ご存命なんですけど、靴職人としてのキャリアの晩年という意味です)に作られた靴を、私は持っています。

バーガンディのUチップ。
芸術的なステッチ(縫い方)。
針を革の反対側に貫通させず表面だけに通し、複数の革をそれぞれつなぐ本物の職人にしかできない技法。
関信義氏の引退宣言を聞いてから立ち寄った山陽山長(関氏がオーダー部門を担当していたSANYO系の靴屋)に飾ってあった一点物の展示品です。

これが私の足にぴったりで。

私の人生で後にも先にも衝動買いってこのときだけです。
美しいだけでなく、返りも柔らかく、長時間履いても疲れない。
ダークブラウンのシュークリームをたまに使うことで、
ワンウォッシュのINCOTEXのジーンズにも合うし、ベルベストのライトグレーのスーツにも合う色に育ちました。

この本で描かれる関氏のヤクザな人生と、この繊細で芸術的な機能美がどうしても結びつかない(^^;)

彼は弟子を自分の工房で教え始めるのですが、その後工場に修行に出します。
靴業界では個人商店は店上がり、工場は製造上がりと呼ばれるのですが、
製造上がりに出したのは、こんな理由。

店上がりが基本、ひとりの職人から仕込まれるのに対し、製造上がり、すなわち工場で経験を積んだ職人には先輩がいて、小僧の仲間がいて、みなに揉まれて技を覚えていく。

工場に修行に出すのは技術は多くの人から学んだ方がいい、という考えからなんですね。
大量生産の多くの工場を渡り歩きつつ、職人としての自分の世界を確立した関氏らしい考え方です。

かつて私は葬儀業界就職希望者に対し、まずは大手葬儀社に就職しろというアドバイスをしたことがあります。
(参考記事:葬儀社に就職したい!転職したい!人に葬儀屋さんがアドバイスをします(完全版)

関氏と同じ理由です。

それでも、志とプロ意識があればちゃんと本人の個性は確立します。
このあたり、サービス業とものづくりの違いはあれど共感できました。











2 件のコメント

  • はじめまして。
    静岡の葬儀社に勤務する者です。
    私も靴が好きでして、ついついコメントしたくなりました。
    とは言え、ステッチが細かく正確か、程度の知識しかないので靴好きとはおこがましいですね。
    革の表面だけに糸を通すという職人技ならではの個性。
    葬祭の人間も、志とプロ意識という基本がしっかりしていれば職人技にたどり着けるのでしょうか。勝手な妄想戯言を失礼いたしました。

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