6年前に40才の若さでなくなったプロレスラー橋本真也氏の元奥さんの著書が出版されました。
火宅 プロレスラー・橋本真也の愛と性
橋本 かずみ (著)
問題は冒頭の橋本真也氏が亡くなってから葬儀までの部分。
どうやらお葬式までの間に、橋本真也氏の遺体は顔が真っ黒に変色し、腐敗臭を放つ状態になっていたようなのです。
この葬儀屋、遺体処置を失敗していたのでは・・・
元奥さんは、橋本真也氏の状態が変わり果ててしまったのは
夏の暑さと解剖のせいだと思っているようです。
遺体処置を失敗するまでの流れ
変死した場合、検死という遺体の検査があります。
日中に検死が行われるまで、遺体を冷やしたりする一切の処置は禁止されているので
なんの処置も施されずに警察の霊安室で一晩遺体が放置された結果
遺体の腐敗が進行する
というケースはあります。
しかし
死亡当時の状況とこの本の記述から考えると、以下の時系列になります。
午前9時頃体調不良を訴える
→救急車で病院に運ばれるが、10時36分に死亡確認
→夕方には葬儀社の安置施設に安置されていた。
死亡から安置までの間におそらく検死は行われたのでしょうが
検死といってもそこはあの「横浜」ですから、
あっさりしていた可能性は大です。
つまり死亡から遺体の保全処置までの時間は5,6時間というところでしょうか。
病院で闘病後亡くなったケースに比べて、数時間処置が遅れた程度です。
そして死亡したのが7月11日で火葬が7月16日でした。
5日後の火葬なんて、ざらにあるケースです。
確かに死亡状況と故人の体型は顔面鬱血(うっけつ)を起こしやすい条件でしたが、
手記を読む限り、死亡直後は顔が少しむくんでいた程度だったようです。
tissue gas(細菌が原因で体内にガスが発生する現象)などの突発的な変化が起こってもいないのに
このケースで遺体を腐敗させてしまうというのはどうも腑(ふ)に落ちません。
葬儀社の失敗では?
おそらく葬儀屋が遺体保全処置の選択肢をドライアイスしか持たず、
かつ彼らのドライアイスの当て方がまずかったのが原因ではないか、
と私は疑わずにはいられません。
ドライアイスは一見体の外部を冷やしているように見えますが、目的は、腐敗しやすい体の中心部を冷やすことにあります。
橋本さんは体重135㎏だったそうですから、成人男性の2倍以上です。
そうなると当然、通常の冷却方法では、十分に体内を冷やすことが難しかったはずです。
また腐敗の進行が判明した段階で
防臭剤の使用や遺体用のファンデーションの使用などは行ったのでしょうか。
そもそもこのようなリスキーなケースの場合
(ジャイアント馬場さんのように棺が特注の場合は、早期の納棺を行って冷却効果を高めるというのは難しいかもしれませんが)
・保冷用のカプセル(カプセルホテルの様なボックスに遺体を納めて冷却する)を使用する
・エンバーミングを委託する
という選択肢もあったはずです。
エンバーミングなら失敗しなかったのでは?
エンバーミングに関しては御存じない方も多いと思いますので、補足説明をします。
エンバーミングとは遺体の衛生保全技術です。
ご遺体に、血液の替わりに防腐剤を注入することで、腐敗を遅らせます。この場合、ドライアイスは不要です。
また変色等を起こしていれば、専用のファンデーションでできるだけ隠すようにします。
私は過去何度もエンバーミングを利用したことがあります。
ドライアイスを使用しないで、1ヶ月間遺体の状態を保全したこともあります。外部からの変化は全く見られませんでした。
また交通事故で損壊した遺体を、かなりのところまで修復したこともあります。
このエンバーミングを行うには、専用の施設と、業界団体の資格を持ったスタッフ(エンバーマーと言います)が必要です。
つまり先行投資と、一定の需要が必要なため、一部の大手葬儀社がこのエンバーミングを行っています。
実名を挙げるのは避けますが、今回橋本真也の葬儀を行ったのは、中小規模の葬儀屋さんだったようです。
そのため適切な処置を施せなかったのではないでしょうか。
最終的に、急死でショックを受けている遺族にさらに追い打ちをかける結果を招いています。
橋本真也氏の腐敗の進行が葬儀屋の失敗のせいだとしたら
葬儀業界に籍を置く一人として、恥ずかしく、故人と遺族に申し訳なく思います。
零細企業の葬儀屋さんは、エンバーミングの技術を持たないので、「ドライアイスで冷やす」ことしかできません。
「ドライアイスは何㎏以上使わないといけない」とか「ドライアイスの処置が大事」とことさら言いたがる、零細企業の葬儀屋さんが中にはいますが、根本的なテクノロジーが不足しているのです。
もし橋本氏と同様のケースが自分の肉親の身の上に起こってしまったら、エンバーミングが可能な葬儀屋さんを探しましょう。
今回は故人の尊厳を考慮し
この件について述べようかどうか迷いましたが
遺族が書籍で公表していること、
このケースが一般的な事象であると世間に認識されることを防ぎたい
という理由で記述したことをご理解いただければと思います。
また葬儀社の方には下記の本をおすすめいたします。
ご遺体の変化と管理―“死後の処置”に活かす | |
伊藤 茂 照林社 2009-05 |
(以下プロレスファンへのつぶやき)
冬木弘道が亡くなる1週間前、橋本に挑戦を申し込んだとき
癌ていうのは絶対ギミックだと思ってた。
実際に亡くなったという報道を聞いたとき、
死ぬまでプロレスラーでいたかったんだと思った。
それから冬木に引退の花道を用意した三沢の侠気もかっこよかった。
もうみんないない。
「ご遺体の変化と管理」は、
先輩から後輩への「一子相伝」のような教育体系
(往々にして誤った知識が継承されることが多い)が主流の葬儀業界において、
必携と思われる良著ですね。
大昔この本の著者が「セレモニーサービス研究所」というBBSをネット上で展開していたことがありますが、
非常に参考になりました。
この本は、ワタシも業界入って最初の頃に買いました。
橋本氏のケース。。
おっしゃる通り、物理教師さんが指摘しなければ、一般人は、みんな夏場にお亡くなるとこうなるのか、と誤解を招きかねません。
5日の間に、変色と腐敗がここまで進むケース、あるんでしょうか・・・
ワタシはまだ経験が浅いので、よく分かりませんが、通常で5日あいてしまっても、そういうことは今までないです。。
茨城の同業者 様、コメントありがとうございます。
> 先輩から後輩への「一子相伝」のような教育体系
一子相伝ならまだいいほうで、なかにはジャギみたいなのが
いっぱいいますよね(^^;)
さくら さん、
> ワタシはまだ経験が浅いので、よく分かりませんが、通常で5日あいてしまっても、そういうことは今までないです。。
私も同僚の葬儀を含めて数千件の事例を知っていますが
亡くなった日に安置して5日で腐敗というのは(tissue gasを除いて)
経験がありません。
>私も同僚の葬儀を含めて数千件の事例を知っていますが亡くなった日に安置して5日で腐敗というのは(tissue gasを除いて)経験がありません。
そぅなんですか。
ということは、やはりかなり特殊というか、タイトル通り、失敗のケースなんでしょうか・・
それにしても、
物理教師さん・・・
コメントレスにある「ジャギさま」で、激しくウケてしまいました(^^ゞ
あるある、と想って(´∀`*;)
見覚えのある本が!!
何とか管理が少し緩くなりましたので。
先週は数万人のデモ(対外的には1万人)があり、PEKから戻ると庁舎前は立ち入り禁止で5メートルおきに警官が配意されていました。
騒ぎも収拾し、今週末は平和だと思います。
情報として、日本のマスコミや日本国内の人達が、大きな誤解をしている件に関連する話し合いも行いました。
先般の新幹線事故で死亡した方の遺族に対して、事故から3日後に「死亡補償金」(国家賠償額)を提示したことに対して、日本国内の有識者や一般人は「死亡直後にとんでもない、非常識だ、人権侵害だ」とまくし立てていましたが、私としては補償額の提示と承認は「死亡後、出来るだけ早く行うべき」と考えており、その様に指導しています。
これには、中国特有の考えとシステムがあるためであり、これを知らない、考慮せずに「死者へ対する冒涜だ、人権軽視だ」と騒ぐのは、思慮が足りないと感じています。
中国やROCでは、事故や災害で死亡した(被害者)の場合は、加害者(当事者)からの補償金(賠償金)を受け取る、もしくは金額の提示と承諾、支払い保証が行われなければ「火葬も葬儀もしません」。
金額が決まらない、支払われないうちに葬儀を行い、火葬をしてしまうと「証拠であるご遺体がなくなります」。
全てのご遺体に司法解剖を行うわけではないので、外表所見の少ないご遺体では、「実は事故で死亡したのではなく、たまたま病死したのでは」と加害者側の弁護士等が騒ぎたて、補償金が受け取れない場合もあり、決定前に葬儀や火葬を行うと「かなりの減額」が一般的です。
そのために、今回の事故被害ご遺体の葬儀や火葬は事故発生から1週間目以降(最終補償額の約1,200万円で承諾)から始まり、これは約1,200万円の提示と承諾(通常国家補償額の6倍)の翌日です。
すなわち、金額の折り合いが着かなければご遺体の葬儀や火葬が出来ない状態であり、被災死亡後は速やかに補償交渉を開始し、葬儀と火葬を行える状態にすることが重要なのです。(近親者の死亡直後に、正しい判断が出来るかは少々不安ですが、代理人である弁護士と交渉が最善)。
今回も全てのご遺体は民政部施設で保管していましたが、ご遺族の希望があれば施設内の司法解剖室にご遺体を移し、検証をする予定でした。
日本との大きな違いは、火葬場には必ず解剖施設が設置されており、司法解剖は葬儀場(殆どに解剖施設あり)か火葬業で、民政部が行う点です。
日本の尺度で測ると、死亡直後の示談交渉は「不謹慎」となるのかも知れませんが、示談交渉が数年にも及ぶ場合は、葬儀や火葬・埋葬はその締結後であり、残された家族のことを考えると、中国では被災死亡直後の示談は「正解」であり、今後も継続されます。
prof様、
現地の貴重な情報ありがとうございます。
>金額の折り合いが着かなければご遺体の葬儀や火葬が出来ない状態で
うーん、そうなんですね。
何かこれもつらいですね。
prof様も移動の時は十分気をつけてください。
といってもそのあたりは十分心得ていらっしゃると思いますが、
ちょっと日本で報道を聞いていると心配になります。
歴史には大きな変動が付き物です。
今の状態は1969年の日本(新宿駅騒乱や数万人規模のデモ、学生、安保理闘争があった)の様で、大きな違いは火炎瓶や投石が飛ばない、鉄パイプがない等で安心です。
明日もデモをメールやフェースブックで呼びかけており、庁舎周囲は警備が厳しくなっています。
prof 様、
今の体制を変えたとして、次にどんな原理が来るんでしょうか。
なにしろ人が多いですから、政治も大変でしょうね。
1日で全身みどり色に変色し腐敗臭が出た事があります。
体内でガスが発生する場合や脳系、血液関係の死因の場合は考えられます。
夏場などドライアイ処置を行い保全の為に納棺を行っても顔色が変色する事もございます。
いくら処置を慎重にしても正直こればかりは絶対に安全というのは御座いません。
方法があるなら教えて頂きたい位です。
ご家族様には安置の時点で(特に夏場など)
日程が延びる場合など、、、顔色が変色する事もあり得ますので、出来る限りの保全の為に納棺をさせて頂9とか、冷蔵設備の霊安室に安置をするとか、様々な提案を示します。
御遺体の変化は予測出来ませんよ。
葬儀屋さん 様
エンバーミングはどうでしょうか。