エンバーミングは日本に定着するか? 




エンバーミングとは

まずエンバーミングって何?という方に説明を行います。
詳しくはIFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)のサイトをご覧いただくのが良いと思いますが
エンバーミングとは遺体の衛生保全技術です。

エンバーミングは元々アメリカの南北戦争戦争がきっかけで発達したと言われています。
戦争で亡くなった兵士の体を修復して、腐らないようにして故郷に送り返すために、エンバーミングの技術が役に立ったからです。

現在でも海外で亡くなった方を自国に送り返す際にはエンバーミングは必須です。
これがないと出国できません。

日本は火葬の文化だったので20年くらい前は、「エンバーミングなにそれ?」状態だったのですが、きれいな姿でお別れをしたいというニーズが一定数あり、まだ全体の数パーセントですが、徐々に件数が伸びています。

 

エンバーミングのメリット

1.遺体の衛生状態を良くする
エンバーミングを行うことで衛生状態を高める。
2.遺体の状態を保つ
ドライアイスを使わなくても長期間遺体の状態を保つことができる

エンバーミングのデメリット

1.費用がかかる
大体15万円~20万円くらいかかるようです。
2.処置方法に心理的抵抗がある
遺体に防腐剤を注入する処置が必要なので、遺族が心理的な抵抗を感じることもあると思います。
3.日本の火葬文化とのミスマッチ
欧米では平均8割以上がエンバーミングを行うそうです。
(海外の著名人が死後、そのままの姿で横たわっているニュース映像を見ることがありますがこれはエンバーミングを行っているからです)
あちらは土葬の文化が主流なので最後まで遺体のきれいな状態を望みます。
またアメリカは国土が広いので最後のお別れまで日にちが空くことが多いのです。
一方日本では、比較的早期に火葬をしてしまうので、エンバーミングの利点が生かしづらい部分があると思います。

IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)のサイトをみるとエンバーミングを行う業者は国内ではまだ10社程度のようですね。
処置数も伸びてはいるものの、まだ一万数千体のようです。
年間死亡人口114万ですから、1%を少し超えた普及率ということですね。
(2018年現在、3%くらいまで伸びてきました。)


ところでイノベーター理論というものがあります。

(JMR生活総合研究所のサイトから引用)
1.イノベーター理論とは
イノベーター理論とは1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類したものです。
1.    イノベーター(Innovators:革新者):
冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。
市場全体の2.5%。
2.    アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。
市場全体の13.5%。
3.    アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者):
比較的慎重派な人。
平均より早くに新しいものを取り入れる。
ブリッジピープルとも呼ばれる。
市場全体の34.0%。
4.    レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者):
比較的懐疑的な人。
周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。
フォロワーズとも呼ばれる。
市場全体の34.0%。
5.    ラガード(Laggards:遅滞者):
最も保守的な人。
流行や世の中の動きに関心が薄い。
イノベーションが伝統になるまで採用しない。
伝統主義者とも訳される。
市場全体の16.0%。

それからイノベーター(3.5%)+アーリーアダプター(13.5%)=16%
のラインを超えると一気に一般に普及すると言われています。
しかしそこには通称キャズム(溝)があり、そのラインを乗り越えるのは難しいとされています。

過去普及しなかった革新的な商品はこのキャズムを超えられなかったと言うことですね。

日本におけるエンバーミングは
イノベーション(革新的商品)だと思います。

イノベーター理論を適応すると、普及率は1%台ですから、まだイノベーターの人しか興味を示してないということですね。
おそらく後数年で、アーリーアダプターにも広まると思います。
問題はその後です。
キャズム(溝)を超えてアーリーマジョリティの段階(普及率16%越え)にいけるかどうか。

日本消費者協会のアンケートはあてにならない

ちなみに日本消費者協会の第8回葬儀についてのアンケート調査報告書によると
「エンバーミング」を知っている人は56%
エンバーミングが必要と思う人は22%
どちらとも言えないという人は65%
必要ないという人は3.1%
という結果でした。

正直このアンケート結果を見たときは、キャズムを超えて意外と受けいれられる素地はあるのかなと驚きました。
しかし日本消費者協会の調査はゆるいので、怪しいと思って原典にあたってみると・・・

やはり「質問内容による誘導」というトリックが使われてました。

質問事項は以下の通り
(引用始まり)
「Q17 遺体に「エンバーミング(遺体修復処置)」という処置が行われることがあります。
事故後の顔の修復や、遠方からの参列者を待つための長期保存の目的で行われます。
そのことについて知っていましたか
①知っていた ②知らなかった

SQ18 「エンバーミング」の必要性についてどう思いますか。
1つ選んでください。
①必要だ ②どちらともいえない(ケース)による ③必要ない ④わからない ⑤その他   」
(引用終わり)

Q17 をよく見てみると 事故後の修復などの処置を行うことを知っているかという質問であり、エンバーミングという単語を知っているか?という質問ではない、ということが分かると思います。

またSQ18はQ17で①知っていた、と答えた人のみに回答させるべきと思うのですが、エンバーミングなんて知らないという人にも、必要かどうかと、回答を迫っています。
(回答者数はQ17もSQ18も1125人です)

おまけにQ17で 「事故後の顔の修復」「遠方からの参列者を待つため」・・・と説明しているのでSQ18の回答者は「必要ない」とは回答しずらいでしょう。
つまりSQ18は質問の趣旨が
「あなたにとってエンバーミングが必要か」ではなく
「事故後の顔の修復が必要か」「遠方からの参列者を待つことは必要か」にすり替わっています。

それにまだ全体の1%の普及率ですから、実際にエンバーミングを施した遺体を見たことのある回答者もほとんどいないと思います。

つまりこの日本消費者協会のアンケートは
あなたはエンバーミングをしたいか、
という潜在需要の分析には、全く参考にはならない

ということです。
(これは別に日本消費者協会が、エンバーミング推進派の肩を持ったということではなく、単に質問の作成方法がずさんなだけだと思います)

私が現在勤めている葬儀社も、お客様の要望があった場合、エンバーミングの専門業者にお願いして、エンバーミングを行います。
仕上がりはとてもきれいですし、お客さんはほぼ全員満足されます。

エンバーミング普及の障害

しかし今後のエンバーミングの普及を考えるといくつか障害があります。

まず自社でエンバーミングの設備を整えようとすると
設備の初期投資が必要であり、エンバーマー(エンバーミングを行う人)の調達も大変だと思います。
ということは大多数の零細業者
(葬儀業界は10人以下の葬儀社が全体の65%を占めます。参照:就職活動の思い出
が参入することはほぼ不可能です。
となるとエンバーミングの専門業者に委託する方法になりますが、ご遺体のエンバーミング施設への移動の手間と利益(エンバーミングの処置料を差し引くと数万円程度)を考えると、葬儀社側は積極的にエンバーミングを勧めようとは思わないでしょう。
(言い換えれば、エンバーミング施設を持てる大手にとっては参入障壁のあるサービスを持てるということですが)

エンバーミングは普及しない

結論としては供給側の問題もありエンバーミングは
キャズムを超えて日本全国に普及ということにはならないと思います。
関係者によると、現在の15万円~20万円というエンバーミングの値付けは、エンバーミングの一般的な普及を目的として、利益をかなり抑えているようです。
そうではなく、エンバーミングは一部の富裕層サービスという位置づけで、30万円以上のプライシングで展開すべきではないでしょうか。
特に都市部で展開するのなら、高価格化することによって、富裕層にクラス感をアピールした方が、最終的な利益は大きいと思います。











コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください