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一日葬(ワンデーセレモニー)が割安ではない理由




最近一日葬(別名1day葬、ワンデーセレモニー)
という言葉を耳にする機会が増えてきました。

一日葬とは

一日葬とは
通夜・告別式という2日間かけて行う一般的な仏式の葬儀の流れではなく
通夜を省いて葬儀告別式だけを1日で行うスタイルです。
一部の葬儀屋が数年前から喧伝している手法で、
消費者中にも興味を持っている方が多いようです。

一日葬は安くできるという勘違い

おそらく消費者の方は一日葬に関して
2日間で行うことが1日になるんだから、葬儀費用も割安になる
と思っていらっしゃるのだと思います。

自称「葬儀のスペシャリスト」(笑)日本エンディングサポート協会理事長佐々木悦子さんも同じように思っているようです。

毎日新聞の佐々木悦子さんのコメントです。

佐々木さんによると、どの葬儀社でも、
イラストのように一般的な白木の祭壇を省き
故人を参列者が囲むスタイルにして、
通夜か告別式だけの「1日葬」にすれば
費用を抑えられるそうだ。
「親族20人、一般参列者10人として、
葬儀一式と火葬で総額60万円くらいからできます。
僧侶の考え方にもよりますが、
仏式でも執り行うことはできますよ」(佐々木さん)。
1日葬にしても斎場の賃料は2日分かかるところがあるので、
そこは確認しておきたい。

でもこの考え方は間違っています。

一日葬は割安ではない

一日葬にすることによって葬儀費用が割安になることは
あまり期待できません。

ではなぜ一日葬が割安ではないのか
イオンさんのサイトを例に検証してみましょう。

一日葬プランと家族葬プランの項目の違いを
一覧にしてみました。
(参考ページ:イオン家族葬プラン と イオン一日葬プラン

検証した項目の差額の分が安くなっているので
一日葬ってお得じゃないの?
と思われたかもしれません。

しかし、安くなっている項目をよく見てください。
司会以外のほとんどの項目が
「別に二日間の葬儀を一日にしたから安くなっているわけではない」
ことにお気づきになったでしょうか?
二日間の葬儀を一日にしたことが原因で安くなっているのは司会の項目ぐらいです。

つまりイオンさんの一日葬が安くなっているのは、
葬儀の期間を短縮したからではなく
単に物品のランクを下げただけのことなのです。

これなら別に(司会の項目以外は)2日間の葬儀の時も同じような
グレードダウンを行えば葬儀費用を下げることが出来るはずです。
一日葬をやるか通常の2日間の葬儀をするかは
ほとんど関係ありません。

これは別に
イオンから顧客を紹介される葬儀屋が1日葬の時に割高な金額を取っている、
そしてイオンがそれに迎合している
と言うわけではありません。

葬儀屋さんにとってはコストは変わらない

実は葬儀屋さんの立場からすれば
社員の残業代が数時間分、かかるだけの違いで、
一日葬も通常の二日間の葬儀も、
必要なコストはほとんど変わらないのです。
たとえば棺などの物品を2日使おうが1日使おうが原価は変わりません。

また式場の使用料に関して言えば、
一日葬であっても
前日の通夜の時間帯を他の喪家に使ってもらうことはできないので
式場側としては結局二日分の費用を支払ってもらわないと困るのです。

となると安くできそうに思えるのはスタッフの人件費くらいですが・・・
これもほとんど安くなりません。

以下の
一般的な葬儀の流れ
を見て下さい。

通夜(1日目)

①設営
②納棺
③通夜
④会食

葬儀告別式(2日目)

⑤葬儀告別式
⑥出棺
⑦火葬
⑧拾骨
⑨会食
⑩解散

一日葬は上記の③と④を省くわけですが
①と②を葬儀告別式の当日に行おうとするとスケジュールがかなり厳しくなるので、
葬儀屋さんとしては①と②は前日に済ましておきたいのです。
というわけで葬儀屋さんは①と②を葬儀告別式の前日に行なうことになります。
つまり葬儀屋さんとしては、
結局前日(通夜の日)もスタッフを動かすわけです。
別に一日葬だからといって、
葬儀屋さんのスタッフの人件費削減には
あまり効果はありません。

だから通常の2日間の葬儀であろうと一日葬であろうと
葬儀屋さんのトータルコストはそれほど変わらないのです。
お金
というわけで
イオンさんは原価計算を正確にやってはいるのですが
それはただの物品のグレードダウンなのです。

イオンの一日葬を安いと思ってもらえるように、
そしてイオンに葬儀の依頼が来るように
あえてただの物品のグレードダウンを
「一日葬は安くてお得」という認識にすり替えているだけなのではないか、
というのが私の考えです。

安いと消費者をだまして集客

そろそろ
一部の葬儀屋が主導で
一日葬をすすめている理由が見えてきたのではないでしょうか。

一日葬を喧伝すれば
世間が(一日葬がお得だと)勘違いして自社に依頼してくれる
と葬儀屋は思っているのです。

私は一日葬に反対するわけではありませんが
もし仮に一日葬を選択するのであれば
消費者の方はちゃんと上記の仕組みを理解していただきたいと思います。

それから一日葬が理由もなく割安になっている葬儀屋さんは
どこかにカラクリがあると疑った方が良いと思います。

中には、ほとんど直葬なのに一日葬と呼んで、
費用を抑えようとする葬儀業者もいるようです。
これは全く別の廉価品を売りつけているのと同じです。
線香
(追記)
首都圏の場合一日葬にすることで通夜の料理代が不要になるということは
言えると思います。
ただ西日本ではこの点に関して影響は余りありません。
何より通夜をなくすことで
本来参列できるはずの人が参列できなくなる可能性があるという
デメリットは大きいと思います。

葬儀費用以外の一日葬の問題点としては
・寺院が承諾しない(慣習に反しているので)
・お別れの時間の短くなることで、死を受容することのハードルが上がり、グリーフワークの障害になる場合がある
以上の点もご注意ください。











2 件のコメント

  • はじめまして
    私は神奈川県の葬儀社に勤めて18年になる者です

    こちらのブログは業界の全体が理解でき大変勉強になるので、かなり前より拝見させていただいてました

    今回はじめてコメントするのは一日葬に否定的な考え方に疑問を感じたからです

    まず一日葬で費用が安くなるのは間違いと断定してしまうのはどうかと思いました

    追記にもありましたが、私の神奈川県では通夜振る舞いがありますので、この費用は丸々抑える事が出来ますし、弊社では一日葬の式場の使用料は半額となっております
    その他にも仮に通夜をした場合、遠方より親族が来られますと宿泊施設の確保など、葬家は見えないところでも負担を強いられます
    数万円から人数によっては10万円以上負担される葬家もございますが、これもなくなります

    費用面以外にも理由として多いのは親族を二日間拘束してしまうのは申し訳ないという気持ちです
    余計な気を使うのが一日だけで済んだり、火葬だけでは整理の付かない気持ちにを和らげる観点からもグリーフケアとして意味あるものだと思います
    だから需要があるのではないでしょうか?

    私なりの考え方ですが、式をしない火葬だけの家と二日間葬儀をしっかりとあげる家と、このちょうど中間にあたるのが一日葬だと思っております
    これは葬家の経済的な面と精神的な面での落としどころなのでないかと思っております
    葬儀をするかしないかの二択ではなく、選択肢が増えた事で、家族葬(親族やごく親しい方を含む)が主流となっている現状から選びやすい葬儀の形になっているのだと思います

  • サリー様、始めまして。
    丁重なコメントありがとうございます。

    >こちらのブログは業界の全体が理解でき大変勉強になるので
    ありがとうございます。励みになります。

    前半部のご意見に、私の文章の引用でお答えしますと

    >一日葬に否定的な考え方に疑問を感じたからです
    →私は一日葬に反対するわけではありませんが

    >まず一日葬で費用が安くなるのは間違いと断定してしまうのはどうかと思いました
    →葬儀費用が割安になることはあまり期待できません。

    次に

    >費用面以外にも~

    以降の所ですが、主旨は下記の部分に集約されます。
    「私は一日葬に反対するわけではありませんがもし仮に一日葬を選択するのであれば
    消費者の方はちゃんと上記の仕組みを理解していただきたいと思います」
    今回の記事は一日葬がダメと言っているのではなく
    一日葬の葬儀費用の(表示方法の)問題点を指摘しています。
    印象操作や見積もり書のトリックで、ミスリードしようとしている葬儀屋さん(もちろんサリー様がお勤めの葬儀社さんのことではありません)に、だまされないように
    という警鐘を鳴らしています。
    ミスリードしようとしている葬儀社さんは結構見かけますし
    その点を指摘している記事も無かったようなので、
    今回言及させていただいた次第です。

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