川崎市が葬儀社のクオリティを担保している?という話

行政が葬儀社のクオリティを担保できるのか、という話です。
こういうニュースがありました。
明確・公正なサービス誓う | 中原区 | タウンニュース

川崎葬祭具協同組合(鳥海信明理事長)は7月6日、
葬儀における消費者トラブル防止に関する協定」を川崎市と締結した。

同協定は組合が消費者に対して明確・公正なサービスの提供を誓ったもので(以下略)

 

この締結は強制ではなく自主的なものなんですが
結果的に地方自治体が葬儀屋の質を担保しているような印象です。
こういう事例って結構珍しいんじゃないでしょうか。

さて文中の
葬儀における消費者トラブル防止に関する協定
ってなにかというとこれ
葬儀における消費者トラブルの防止に関する協定締結団体

川崎市は、葬儀の契約時における事業者と消費者間のトラブルを未然に防止するため「川崎市消費者の利益の擁護及び増進に関する条例」に基づいて、一定の条件を満たした葬儀事業者団体と消費者支援協定を締結しています。

文中に
「消費者支援協定は、技術の保証や安価な商品・役務提供について定めたものではありません。」
との但し書きがあります。
確かに初回締結しているのは葬儀社紹介機関ですしね
このあたりの保証度合いはユルユルでしょうね。
でも消費者支援協定を締結、って聞くと消費者は信用するよね。

(ちなみに川崎市消費者の利益の擁護及び増進に関する条例
とはこちら
書類

さて葬儀における消費者トラブル防止に関する協定の
具体的な内容を探してみたらこちらにありました。
葬儀における消費者トラブルの防止に関する協定書(解説付)

この協定に参加するにはどうしたらいいかを書いているのがこちら
葬儀の契約における消費者トラブルの防止に関する協定 協定締結事業者団体募集要項

ただ↑この参加規定と提出書類を見てみるとすごくハードル低いような気がします。

ある意味行政がお墨付を与えるわけですからこの手の審査用の提出書類って
一般的にうんざりするようなボリュームを求められることが多いです。
その「うんざり」感がある意味フィルタリング(選抜)になっていて
かなり本気の企業しかそもそもエントリーできない、って仕組みになっているはずなんですが。
(さらになんかあったときの行政の言い訳にもなる)

実際求められているのは規定書類2枚に
登記簿、名簿、活動内容が分かる書類だけです。

応募要件も常識的な最低限のコンプライアンスを要求されているに過ぎません。

3.応募要件

次の要件をすべて満たす場合に限ります。

  1. 川崎市内に事業所を有する事業者団体又は主に川崎市内で事業活動をする事業者団体であること。
  2. 事業者団体が安定運営されていること。
  3. 事業者団体に葬儀に関する相談窓口を設置していること。
  4. 加盟事業者が消費者に対して、不当に自己との取引を強制させるような行為をさせないよう、指導権限を有すること。
  5. 葬儀サービスの内容や料金について、消費者に詳細な情報を事前提供するとともに、見積書を交付し、書面にて契約すること。
  6. アフターサービスの基準を設定していること。
  7. 加盟事業者は葬儀のすべてを最後まで責任を持って契約書の通り施行すること。
  8. 事業者団体は葬儀等の施行者にアンケートを実施し、加盟事業者に対するチェック機能を有すること。
  9. 施行した葬儀の見積書及び請求書を事業者団体で精査するシステムを有すること。
  10. 事業者団体内に消費者からの苦情相談窓口を設置し、指導権限を有していること。
  11. 加盟事業者の育成・研修機能を有すること。
  12. この協定の趣旨を十分に理解し、本市条例をはじめ、消費者契約法、独占禁止法、景品表示法等の法令等を遵守することができる事業者団体、かつ加盟事業者に対しても法令遵守を徹底させることができる事業者団体であること。

※ただし、次の欠格事由に該当する場合は応募できません。

 

ア)行政処分等を受けた日から2年を経過しない事業者が加盟している場合。

イ)法人の代表者などが禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者である事業者が加盟している場合。

上記の応募要件を見てみると
数値化された定性的なハードルも無く、チェックも自己申告ぽいですね。

というかこれを守れていない葬儀屋ってそもそもアカンでしょ。
最後の方の欠格事由該当者なんて前科者ってことじゃん(^^;)

本来は条例に基づいて他業種と同じハードルを葬儀業界に課されるべきだと思うのですが
もしかしたら葬儀業界ってレベル感は他業種よりも2ランクぐらい低い業種だと思われて
逆にハードル下げてくれたとか・・・

総括すると葬儀社にとっては
ハードル低い割に、消費者アピールができる分、メリットでかい印象です

これって
葬儀屋さんにとってはかなりオイシイ仕組みだと思うのですが。
なんで他の葬儀屋さんも参加 しないのでしょう?

まさか、これでもハードル高い・・・とかじゃないですよね?

それとも私に見えていないハードルがあるのでしょうか?
(『葬儀における消費者トラブルの防止に関する協定書5-(2)第2号の「最後まで責任を持って施行する」とは、葬儀に係わるものすべてを外部事業者への委託等を行ってはならないこととする。』が料理屋さんや返礼品屋さんへの業務委托を禁じるという意味なら確かに超ハードル高い、ということになります。)

これをもっと発展させて川崎市では上記の用件を満たさない葬儀社は活動を認めない
というレベルまでやってくれたらおもしろいことになるのに。
(効果的ということではなく、あくまで実験的でおもしろそうという野次馬的期待です。
川崎市の葬儀屋さん、すいません。)
期待しています。




5件のコメント

私の母は川崎で葬儀をしましたが、火葬場もとっても気持ち良く利用させて貰いました。
背景にはこんなことがあったのですね。
良いことだと思います。全国に広がればいいのに。

この件に関しては、少々異なる見方をしています。

御存じの様に、行政は「縦割り機能」であり同じ市庁舎内でも横の連携は
ほとんどありません。(川崎市も局が異なると、考えや対応も異なる)
従来の協定締結においても何もなく、団体側のPR素材でしかありませんでした。
これは、大規模ショッピング・センターやスーパー・マーケットが進出した時に
自治体が「町の小売店を救済との名目で協定を結ぶ」ことと同様で、商工局や
経済局、地域振興課、市民課等が行う一連の流れです。

主に、NPO法人や中小事業団体との締結が一般的ですが、これらにより
「何かが変わる、何かが行われた前例はほとんどありません」。
何故、大手互助会や互助会団体と締結を結ばないか(シュアを考えれば互助会)を
考えれば、実効性の伴わない施策であることが分かると思います。
これらを役人は「飴玉をしゃぶらせる」と言います。(飴と鞭施策の1方法)
市役所としても「市民保護のために働いている」とのアピールが出来ますので。

prof様
>実効性の伴わない施策
はい、同感です。
ただ消費者が信用してしまうのは
いかがなものか、という点だけが引っかかります。

「信用性」に関する効果は大ですが、これは各団体の「力と能力」によります。
今回の「葬儀組合以外では2NPO法人が既認証」でしたが、川崎市が積極的に
PR(支援協力的)なNPOは1法人と見ています。
2法人のうち1法人は「葬儀社経験者による葬儀斡旋系」であり、1法人は「士業者と
役所関連者による葬儀斡旋系」、川崎市をはじめとした公的PRは後者です。
「士業者と役所関連者系」です。(前者に対するアピールより明らかに多い。

「士業・役所系」の理事長は、神奈川県異業種グループ連絡会議専務理事(事務局長)、
http://www.kanagawa-iguren.com/wp/wp-content/uploads/ig-news/ig-news104.pdf
事務所は神奈川県中小企業センタービル内(神奈川県庁外郭団体)に存在。
http://bb-building.net/tokyo/deta-y/152.html (外見と所在地はこれ)
副理事長や理事は県内の「行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士、消費生活
アドバイザー等」。(サンライフも士業と組んで新たな会社を作った 終活対策?)
これだけ力のある者達が終結すれば、「川崎市が協定は当然」でした。

因みに、士業・役所系の事務局長は、「川崎市内には135の葬儀業者があるが、
所在が明確なのは50だけ」との話しであり、これを持ち出されると
「士業や国家資格所持、役所系有利」なことも頷けます。
川崎市役所から数百メートルの所には「準大手の互助会本部」がありますが、
互助会系は「実効性のないものには手を出しません」。
葬儀系協同組合が「士業・役所系」と同等の考えや行動を出来るとは思えませんが、
作戦次第では「広報紙を利用したPRは可能」ですので、「英知のある策」を。

prof様
>2法人のうち1法人は「葬儀社経験者による葬儀斡旋系」であり
分かっている人は
業務を葬儀社に紹介する時点で
クオリティ保証なんざ存在しない
ということを理解するのでしょうけど。

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