おそらく日本の葬儀業界はこれから冬の時代に入るだろう。
そして春は来ない。
その原因は若い働き手が来ないということだ。
会社説明会は壊滅的状況
3月から企業の新卒採用活動が本格化しており、葬儀業界も例外ではない。
葬儀業界は20年ほど前から新卒採用を始め、年々その人数を増やしていた。
それが今年(2019年)は壊滅的に会社説明会に人が集まらないらしい。
もちろん数年前からの好景気と、若い労働力の稀少化による売り手市場の到来の頃から、その兆候はあった。
しかしこれほどまでとは、という今年の閑散ぶりである。
葬儀業界志願者減少の原因の一つとして、若手世代の仕事観の変化を挙げる人もいる。
やりがいのある仕事よりプライベート優先という価値観を持つ若者が増えつつある。
構造的に3Kならぬ7Kが避けられない葬祭業は不利だ。
ただこれは大きな原因ではない。
新卒カードを切るのはもったいない
新卒採用という同時期に一斉に企業が採用活動を行う仕組みは、買い手市場の場合、「間違いで」優秀な人材を得ることが可能だった。
みんなが知っている有名企業の採用枠が少ない時代は、エリート学生ですぐ埋まってしまう。
そうなるとそこそこ優秀な学生であっても、いままで興味を持ってこなかった他の業界にも目を向けざるをえない。
そこに普通なら就職先の選択肢に入ることすらできない葬儀業界のチャンスがあった。
だから新卒採用を始める以前なら採れなかった優秀な人材を、採ることができた。
でも今は中堅以下の大学生ですら、有名企業に入ることができる。
友達に自慢できる有名企業と葬儀社の両方から内定をもらったら、有名企業を選ぶだろう.
それをミーハーや浅はかと言うのは間違っている。
彼ら彼女らにとっては有名企業に新卒カード(特権)を使った方が合理的なのだ。
葬儀業界なんて中途入社はいつでもできる。
というか中途入社組の比率の方が圧倒的に多い。
それならわざわざ苦労して手に入れた新卒カードを葬儀社入社に切るのはもったいない。
有名企業から葬儀社への転職は普通にできるが、この逆はできないのだから。
雑な採用
そして葬儀業界はずっと雑な採用を続けてきた。
新卒採用の中心にいる大手葬儀社であっても、採用スタッフに目利きができる人が少ない。
目利きの能力ではなくポジションで採用スタッフを選んでいるからだ。
四大卒の葬儀屋を採用するのに、採用スタッフに「四大卒の葬儀屋」がいない。
就活をしたことがない高卒転職組の現場管理職か、遺体に触れたことのない四大卒バックオフィススタッフが中心で行う。
プロ野球選手のドラフト会議をバットを握ったことのない人間でやっている。
彼らにとっては、採用活動というのは会社生活の中のレクリエーションでしかない。
その結果、適性の無い学生を採り続け、採用のミスマッチをほったらかしにしてきた。
5年で5割すら残らないのが普通。
買い手市場の頃は使い捨てでいいと思っていたのかもしれないが、生存率が5年で5割を切っているなら投資のリターンは得られていない。
採る方も採られる方も双方が不幸になる。
ポジジョンが上がるほどITスキルが劣っているという批判は苦笑いで受け入れるオヤジも
採用の目利きができないという批判は受け入れない。
なぜなら
採用の目利きができる≒人を見る能力がある≒豊富な人生経験≒人間力 と捉えて
採用の目利きができていないと指摘されると、人格否定と受け取るからだ。
私はかつてある役員に採用の目利きの能力がないことを直接指摘して、激高させたことがある。
採用に必要なのは企業をどうしたいかという戦略と、採用活動の継続的なPDCAだ。
採用する側のオヤジの安い自尊心ではない。
不利な待遇
さらに新卒で入社したからといってなにか優遇されることは無い。
ろくな教育もせずにほったらかしで、遅かれ早かれバーンアウト(燃え尽き)を起こして辞めていく。
「消費財」としての寿命を全うできるのはまだ良い方で
実際はやりがい詐欺によって、志のある若者を使いつぶしているケースの方が圧倒的に多い。
冒頭で大卒が「優遇されることはない」と言ったが、むしろ不利になることすらある。
葬儀屋20年1,000件限界説 | 考える葬儀屋さんのブログという記事の中で、以下のように述べた。
大学の新卒入社で15年務めた37才のスタッフより、中途入社で10年しか務めていない高卒の45才の方が先に管理職になる可能性が高いです。
なぜなら現場の生産性は体力と相関があり、体力は若さと相関があります。そのため人事は、ハードな現場仕事ができるギリギリの年齢まで、若いスタッフを現場で使い続けようとするのです。
そのスタッフが管理職の適性を持っていても、十分現場仕事ができているうちは、管理職のポジションに上げるということはしません。
どんなにコーチングやマネジメント能力に優れたプロ野球選手がいたとしても、20代でコーチや監督をやらせないのと同じ理由です。
ロートルから上に上がっていくのです。
たとえ高学歴であってもこの構造は変わらず、優遇されることはありません。
この仕組みを組織が理解しているならまだいいほうで、私は他業種から転職してきた人事部スタッフが「大卒より高卒のマネージャー多いのは、大卒の能力が劣っているから」と発言しているのを聞いて暗澹たる気持ちになったことがある。
どの国、どの業種でも学歴とポジションが比例することはほぼ証明されている。
日本の葬儀業界だけ例外ということはありえない。
ヤクザと同じで、育ちのいいお坊ちゃんお嬢ちゃんより、チンピラが向いている職業だという偏見を持っていたのかもしれない。
またこれは昔の話だが、私は「〇〇大学出ているからといって調子に乗るな」と言われて先輩に殴られたことがある。当時大卒は組織内マイノリティで不遇をかこっていたのだから、調子に乗り様がない。(ちなみにその先輩は、葬儀会館清掃の女性に対する強制わいせつで、クビになった。)
個人的経験から言わせてもらうと、大学で身につけた学力は自分を助けたが、学歴は不利に働いたと思う。
このような悪い意味の学歴不問が大きな問題にならないのは、大卒に現場仕事が大好きというスタッフが多いからだ。逆に低学歴の方は学歴コンプレックスのせいか管理職になりたがる人が多い。
ある意味需給バランスが成立している状態だが、
マネジメントがやりたいという新卒にとっては不満だろう。
近年葬儀業界は、他に消費者にアピールする付加価値がないので価格競争に走り、ブラック化した。
時給で計算すればファーストフードのアルバイトやっている方がマシ、という葬儀社の正社員はいくらでもいる。
2038年まで死亡人口が増えていく≒葬儀件数が増えていくと言っても、単価が下がるだけで葬儀市場が拡大するわけではない。
そして今新卒で入る人達にとって、ピークを迎えてしまうのは、まだキャリア途中のこれから、という時点なのだ。
こんな状態で、将来性のある魅力的な業界だと思ってもらえるだろうか。
葬儀業界の今後
もちろん人が亡くなる以上葬儀業はなくならない。
でもただそれだけでいいのか。
遺体を火葬炉に放り込むだけの肉体労働者でいいのか?
それ以上の夢を語らなくていいのか?
若者にそっぽを向かれるのは当然なのだ。
新卒が来なくても中途入社組がくればいいだろう、だって?
新卒採用というシステムの是非は置いておくとして、新卒採用の人気度合いはその業界のバロメーターだ。
新卒採用で苦戦して中途採用が善戦するなどありえない。
外国人労働者によって延命を図っている国内サービス業は存在するが、文化産業である葬祭業にそのフェーズ(局面)はない。
人が来ないということは、レベルの低下を意味する。
それはすなわち葬儀業界が衰退していくということを意味している。
この20年間葬儀業界のレベルを徐々に向上させていたつもりだったのに、私はこの現状に愕然としている。
デービッド アトキンソン氏は、著作のなかで日本の経営者の無能ぶりを批判しているが
この有様は日本の葬儀社経営者の責任だろう。
これまで葬儀社の質を支えているのが人材であるということが分かっていなかったか、
口にしていても本気で言ってなかったということだ。
自業自得である。
東京五輪が終わって不景気になったら、また葬儀業界に人が来る?
そんな後ろ向きな希望的観測が、実現すると本気で思っているなら楽観的すぎる。
葬儀業界の就職に関してもっとも豊富な情報量を持つ媒体を運営してきたという自負を持つ私も、またこの責任の一端を担う立場にある。
悔恨と懺悔しかない。
さらに絶望、と書こうとしたが絶望に徹しきれない私の弱さがある。
明らかに退却戦の局面だが、葬儀業界に入ってくれる優秀な学生が少しでもいてくれるはず、というわずかな希望をまだ捨てられずにいる。
お怒りも感じる記事ですね。物理教師さんの言われておられた大切なキーであった業界全体の底上げ
出来ませんでしたね。会館の工事に来てくれてる職人さんを見ているとうちのスタッフはまだましだな~
と下を見てしていた私に刺ささります。葬儀そのものの価値喪失を感じつつありますが目の前にあることを積み上げるしかできない無能さを噛みしめながら、それでも応援してくださる私が担当したファンと言ってくれる人の思いを糧にもう少し踏ん張ります。
かかしさん
がんばりましょう!
おざす~~
久々です
LAWです。
®安心サポート葬 の商標を登録しました。
魚釣りのおっさんに、あんたは魚釣りのおっさんだと言いました。
武井さんの弱者保護、悪くない。
赤城さんの存在 ⇒ 明るい未来
私は、火葬研正会員、上級終活カウンセラーです。
イオン、ユニより安い葬儀を売り出します。
宜しくお願い致しますm(._.)m
LAW様
実業を始めましたか。