ひさびさに週刊ダイヤモンドで葬儀特集が組まれました。
互助会、特にメモリードがやばいことになっています。
目次
互助会がやばい
過去週刊ダイヤモンドの葬儀特集では的外れな企画や間違った記事が多く、このブログでも結構ネタにさせてもらいました。
しかし最近は全く葬儀業界を扱わなくなっていました。
おそらく前回取り上げられたのが2013年のはずなのでちょうど7年ぶりの復活です。
その間、間違った情報や、葬儀業界に対する理不尽な中傷記事をまき散らさなかったのは幸いでした。
しかし一方で、葬儀に関するコンテンツではもう部数を取れないという認識もあったのではないかとも思うと、それはそれで一抹の寂しさも覚えたものです。
さて今回の内容はというと、的外れな記事は少なくなっています。
外部ライターとして佐々木悦子や市川愛ではなく吉川美津子さんを起用したのも正解でした。
特集の一部はネットに掲載されています。(零細葬儀社「下請け化」の苦境、ネット系の価格破壊に打つ手なし | 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ | ダイヤモンド・オンライン)
特筆すべきは互助会の財務逼迫(ひっぱく)度ランキング。
互助会の監督官庁である経済産業省に情報公開請求を行い、各社の財務指標から作成した「やばい度」ランキングを掲載しています。
10年前に行われた二村祐輔氏監修の葬儀社ランキングはひどいものでしたが、今回は財務諸表から作成されたものなので当然精度が高いです。
互助会って何?という方は↓こちらの記事をどうぞ
特にメモリードがやばい
それにしてもメモリードがやばい。
以前の特集のときもイエローゾーンにいましたが、今回はレッドゾーンに入っていますね。
メモリードは、業界大手企業
メモリードは互助会の、というより葬儀業界の大手葬儀社です。
1969年に、吉田茂視(よしだ しげみ)氏が
(株)長崎冠婚葬祭互助センターという名前で創業しました。
2020年の段階で
- 葬儀件数は17,709件
- 売上高は約500億円
- 従業員は約3,200人
という冠婚葬祭業界では、有数の巨大企業です。
活動拠点は主に東京・埼玉・群馬・福岡・長崎・佐賀・宮崎にあり、創業者の吉田 茂視氏の息子達が、それぞれ運営しています。
つまり、一族経営企業です。
拠点エリア | 葬儀式場 | ホテル・結婚式場 |
東京 | 12 | 0 |
埼玉 | 16 | 3 |
群馬 | 49 | 10 |
福岡 | 17 | 4 |
宮崎 | 26 | 7 |
佐賀 | 22 | 7 |
長崎 | 35 | 16 |
互助会は、財務状況をくわしく公開しないので、はっきりしたことは言えませんが、おそらく葬儀の施行件数や売上高で、葬儀業界7位のレベルに位置します。
財務状況はワーストクラス
そして群馬、東京、長崎それぞれの財務内容がワーストクラスです。
他にも同じくらい財務内容の悪い互助会はあるのですが、売上ベースで業界7位の企業規模だけにメモリードのやばさはシャレにならないのではないでしょうか。
7年前の週刊ダイヤモンドの取材に対して、メモリードは財務情報の開示を拒否しています。
それは財務状況がヤバイせいだったのか、と合点がいきました。(互助会がヤバいっていう週刊ダイヤモンドの記事を読んで | 考える葬儀屋さんのブログ)
2019年発表のメモリードの財務諸表は官報のデータベースで確認できます。
メモリード長崎の最新の財務諸表を見ると185億の売上に対して営業利益がたったの100万円です。
もうちょっとで赤字でした。
結構な営業外収益を引っぱってきて当期利益をもどしています。その前年の営業外収益が大きくないところを見ると、うわやべっ、てな調子で有価証券でも一斉に売却したのでしょうか。
この経営状態で、会員から預かっている前受金に、一切手をつけないというのは
私が経営者なら、無理ですね。誘惑に勝てそうもありません。
(ちなみに預かっている前受金の半分を溶かして返さなくても、契約違反ではありません。知らない会員の人、多そうですが)
以前メモリードに在籍していたスタッフと話したことがあります。裏取りしていないので言及は控えますが、ああいうことをしていたからこの財務内容になったのか、この財務内容だったからああいうことになったのか・・・
この市場環境の中で、立て直す体力はもう残されていないと私は思います。
過去どうしようもなくなった互助会は、監督官庁である経産省主導で、体力のある互助会と合併させるということが行われてきました。
メモリードの場合は当然、too big to fail(大きすぎて潰せない)でいくことは確かですが、これだけ図体がでかいと分割しても支えきれるところってあるんでしょうか。
(追記:2022年12月 予想通りメモリード東京がなくなってしまいました。)
それから債務超過である互助会が5社(サンセレモホールディングス・アルファクラブ東北・ライムメンバーズ・東日本セレモニー・岐裳会)掲載されています。
2013年頃は全体の2割と言われていましたから、経産省も2015年頃に結構がんばって処理したということでしょう。ただ引き受けた互助会も弱ってしまうので、長期的には問題の先送り(≒担当官僚としては自分が外れるまでは延命させる)に過ぎないのですが。
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そしてやばそうなところには就職しないこと!
さらにメモリードの財務内容が悪化
その後、官報のデータベースに追加されたメモリードの財務内容を追記します。
上記の記事を書いて以降、さらに悪化しているようです。
メモリード長崎
2019年~2020年 赤字です
17億6,700万円の赤字です
2020年度のメモリード長崎の決算 17億6,700万円の赤字です。
21億600万円あった利益準備金を3億3800万円まで減らしています。
株主資本比率 2.4% !
互助会は莫大な前受金勘定(会員から預かったお金)が発生するので、株主資本比率は低くなりがちなんですが、それにしても低いです。
純資産が11億8,700万円しか残っていないですから、2021年度回復しないと債務超過の可能性もあります。
ここはメモリードグループでも中でも大きい(資産500億越え)ので、大変です。
2021年 売上大幅ダウンです。
2億6600万円の黒字化に成功しました。
それでも本業の指標となる営業利益は赤字で、あまり改善されていません。
売上高が22.8%もダウンしているのが気になります。
販売費及び一般管理費も大幅に下げているところをみると、リストラでもしたのでしょうか。
そうだとすると、葬儀件数は横ばいか微増のはずなので、現場のクオリティはかなり落ちているはず。
メモリード東京
2019~2020年度 1億4,100万円の赤字
2020年度のメモリード東京の決算 1億4,100万円の赤字です。
2021年度 2億4800万円の赤字
2021年度のメモリード東京の決算 赤字が2億4800万円ということで、さらに財務状況が悪化し、債務超過となりました。
債務超過でも現金が十分にあれば、必ずしも倒産するというわけではありません。会員から預かった前受金に手をつけているという可能性はありますが、半分は返さなくてもいいので違法ではありません。
2022年度 メモリード東京が消滅しました!
2022年の12月1日をもって、なんとメモリード東京がなくなってしまいました!
権利義務関係は群馬の㈱メモリードが引き継ぐそうです。
この段階で1億3,000万円の赤字。
おそらくもう単体で立て直しは不可能だと判断し、近いエリアの群馬の㈱メモリードとくっつけたのでしょう。
でもこの決算公告に載っているように群馬の㈱メモリードも
売上高営業利益率が45百万円/8659百万円=0.5%なので、結構やばいと思うんですが。
大丈夫でしょうか。
それからメモリード東京、2022年の12月1日に消滅しているはずなのに、それから1年近く経った現在(2023年11月9日)になっても、メモリード東京の名義でサイト運営しています。
常識的にありえないです。
株式会社メモリード総務部に問い合わせたところ、そのうち変更するとの回答でした。
コンプライアンス適当過ぎます。
https://www.tokyo-memolead.co.jp/about_us/
メモリード群馬
2019年~2020年 2億3,700万円の赤字
メモリード群馬、なぜか38期の決算公告の記載がなかったのですが
2020年度の決算 2億3,700万円の赤字です。
2021年度
6,200万円の黒字化に成功しています。
しかし、売上高が17.5%ダウン、営業利益は相変わらず赤字です。
2022年度
当期純利益1億円で、2021年と比べてほとんど横ばいです。
それにもかかわらず、メモリード東京のところでも述べましたが、メモリード東京が消滅したことで、実質メモリード東京の運営を引き継ぐことになりました。
一時期互助会の監督官庁である経済産業省が、債務超過の互助会を他の引受させるということを行いましたが、それを社内でやったわけですね。
かつての互助会同士の合併で、引受先の互助会まで弱ってしまうということが起きましたが大丈夫なのでしょうか。
2023年度
当期純利益2億500万円で、少し回復しました。
メモリード東京を引き継いだせいだと思いますが、バランスシートが膨らんでいます。
今となってはかつてのメモリード東京の業績がどうだったのか、分からなくなっていますが、メモリード東京を抱え込まなければもっと業績は回復していたのではないでしょうか。
メモリード宮崎
2021年
2021年は2億6千万円の赤字に転落
2億6千万円の赤字に転落してしまいました。
売上も33.2%ダウンと、大きく下げています。
2022年
2千900万円の当期純利益を確保しましたが、営業利益は6千4百万円の赤字です。
会員の積立金は?
会員の方が一番心配されているのは、積立金の状況ではないでしょうか。
メモリードのサイトによると積立金の半分は、互助会保証(株)と日本割賦保証(株)に委託保証されることになっています。
残り半分が、メモリードの流動資産に含まれているはずです。
上場している互助会の場合、B/Sの負債項目の前受金勘定を見れば分かるのですが、官報に載せるレベルのバランスシートではよく分かりません。
繰り返しになりますが、規約上、互助会側で預かっている積立金の半分は、返済の保証がありません。
これはどの互助会にも言えることですが、最悪半分は戻ってこない可能性があることは認識しておくべきでしょう。
メモリードのお葬式に参列してみました
コロナ直前の2019年頃、メモリード東京のある葬儀会館で、親戚のお葬式があったので参列しました。
この記事を掲載した当時は、会社名を匿名にしたのですが、前述したようにメモリード東京が無くなってしまったので、実名で掲載することにしました。
(会社はなくなりましたが、式場は存在しているようです。)
私の体験記は以前のものなので、現在はどうなっているのか分かりません。
財務状況が悪いままに会社が消滅してしまったので、良くなっていることはないだろうけど、というのが私の見立てです。
担当がダメでした
その互助会の葬儀担当者は30才くらいの男性。
彼がもう本当にダメダメ。
服装がダメ
髪型は長めで毛先を遊ばせすぎ。
制服なのか私服のスーツなのかは知らないがポケットにいろんなものを詰めているので、チャップリンの体型。
靴は葬儀の定番のストレートチップではなくカジュアルなビットモカシン(金具付きのローファー)
開式前のスタッフとの打合せの際は、1カ所しかない式場の入り口をずっとふさいで喋っていました。
まっすぐ立てないらしく、常にどちらかの足に体重をかけているいわゆるジョジョ立ち。
式進行を外部業者に丸投げ
そして彼は僧侶の登場から退席までの間、ずっと不在なのです。
開式前の説明やら式の司会やら焼香案内などの進行は葬儀スタッフ派遣会社のスタッフに丸投げで、全てやらせています。
遺族や参列者にはそこまで分からないでしょうが、私は業界内の人間なので、制服を見れば派遣会社の人間であることが分かります。
施行を外部に丸投げしているという話はうわさでは聞いていましたが、本当だったようです。
開式前からずっとエレクトーンの生演奏をしているのですが、リバーブかかりすぎで音が大きすぎ。
CDの方が良いのでは。
開式前に故人の画像を編集した思い出の動画が式場前方のスクリーンにプロジェクター放映されるのですが、スクリーンの前にお供えの果物を置きっ放しにしているため、スクリーンに果物の影が。
これらの生演奏や映像の放映は、「追加費用をもらうための口実」以上の存在意義はないようです。
派遣の司会はペースや滑舌は良いが、いわゆる歌うクセ(昔のバスガイドが良くやる節回し)がついていて気持ちが悪いです。
僧侶のお経が終わって、棺にお花を入れる段になって、あの担当者が再登場。
なぜかずっとヘラヘラ笑っていて、変な節回しでしゃべり続けます。
「ここで喪主様から、挨拶を頂戴させていただきます」
失礼ながら見てくれだけではなく中身も問題あるようです。
でもこれは合理的なのかも
確かに葬儀担当者のレベルというのは正規分布のベルカーブを描くので、葬儀担当者がたくさんいれば、ある程度レベルがピンキリになるのは避けられません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E5%88%86%E5%B8%83#/media/File:Standard_deviation_diagram.svg
もしかしたら運悪く最悪の担当に当たったのかもしれません。
ただ自分の会社にこのレベルの担当者がいたら、絶対に現場に出しません。
それ以前に採用しません。
それ以前に、担当者を現場につけていないというのは、会社のクオリティコントロールのポリシーがその程度ということなのでしょう。
企業姿勢の問題です。
おそらく10年前までの自分なら憤慨するだけで終わっていたでしょう。
しかしある程度経営者視点を持ってしまった今の自分は、これもアリかな、と思ってしまうのです。
互助会の場合は、会員制度に入会させて積立金を払った段階で、将来葬儀の依頼が来るのはほぼ確定しています。
だったらコストをかけて担当者のクオリティを上げる必要なんてない。
クレームが出ない程度にお葬式が終わってくれればいい。
もしクレームがでれば実質的な進行を請け負っている派遣会社に責任を押しつければいい。
あとは葬儀が終わったら営業部隊の泣き落としで、互助会の積み立ての再開を始めさせればいいだけ。
遺族に聞いてみると
病院対応から都度スタッフが変わって、引き継ぎ→引継ぎで行っていたらしいです。
そのせいか、出棺後の流れを喪主は把握していませんでした。
でもこれもある意味正しい。
限定された範囲の職域で良いなら、分業制のほうが教育コストは少なくて済みます。
育成に時間と手間のかかる先発完投型マルチタスクの担当者なんていらない。
そんなのはオーバースペック(過剰性能)です。
ずっと遺族に寄り添いたい、葬儀後もつきあいを続けたい、なんていうマインドを持った人を採用したら、きっとこのぶつ切りのオペレーション堪えられないないでしょう。
これって「奥さんを大事にしなさい、でも一緒にいる時間を減らしなさい」と言われるようなものだから、きっと葛藤にまみれてしまう。
だからそんな人は最初から採用しない。
むしろビジネスライクに、そつのないコンビニ店員くらいの情熱でやってもらった方が好都合。
この売り手市場で採用難の時代であることを考えると、そんなレベルの連中の方がいっぱいいるし、替えが効く分、安い賃金で働かせることができる。
以上のように考えてくると、低レベルの葬儀担当者を使うというのは、戦略として合理的で一貫性があります。
実は以前メモリードのスタッフが、私の働く葬儀社に転職してきたことがあります。
もっと上を目指したい、という理由で。
私の働く葬儀社のスタッフの方が、この互助会のスタッフよりもできることが多く、さらにレベルは数段上でしょう。
しかし売上はメモリードの方が多いのです。
つまり消費者はこの互助会の方を評価しているということなのです。
葬儀屋は次のステージへ
志ある葬儀屋さんにとって幸福な時代は終わりつつあるのかもしれません。
葬儀屋の変遷として
賤民(戦前)→チンピラ(戦後)→職人(高度成長期)→サービス系スペシャリスト(平成)
という流れでやっと理想型に近づいたと思ったら、こんどはコンビニ店員になってしまうのか・・・
私が後の世代に伝えられるものはオーバースペックな無用の長物になってしまったのでしょうか。
かつてきれいに葬式の幕を張ることをアイデンティティにしていた職人のように。
残念です。
メモリード…義母が働いていました。最悪の企業だと思います。契約が取れないと家族から名義貸しで成績を上げていましたから。入ってくる社員も、長く勤務している方は居なかったようです。
森本真生 様
情報ありがとうございます。