テキスト冬の時代に、YouTubeを始めて分かったこと

先日、運営しているYouTubeの登録者が、開始当初のひとまずの目標である1,000人を超えました。
スタートして1年くらいで到達できるかなと思っていましたが、実際には1年半ほどかかったことになります。

登録者1,000人強というのは、ChatGPTのDeep Researchによると、葬儀系チャンネル内ではベスト10になんとか入るレベルらしいです。まだ規模は小さいですが、実際に運営してみて見えてきたこともあります。

「葬儀屋さんの情報発信としてテキストと動画の両方を経験して分かった、それぞれの媒体の限界について」というのが今回のテーマです。
今後、情報発信をしようと考えている葬儀屋さんの参考にでもなれば、と思っています。

テキストの世界

このブログは、2009年に始めて、その後約10年で月間45万PVに達しました。
当時は、動画よりテキストコンテンツが優勢だった時代です。葬儀業界の情報発信者としては、頑張っていたと思います。

検索アルゴリズムの変化

ただ、2019年以降、Google検索のアルゴリズムが変わり、法人のアカウントを優遇し始めたことで、個人のブログは衰退し始めました。
「なんでこんなしょうもない葬儀屋の記事が、自分の記事より検索順位が上なのか」と、最初の頃は怒っていました。途中で検索順位は下げ止まりましたが、今度はGoogleが検索結果の最上段に「AIによる概要」を表示し始めました。私の記事がAIに引用された場合は、文中にリンクが付きますが、リンクをたどって私のサイトまで来る人は少ないでしょう。

つまり私の記事は、AIの養分にされるだけになっています。

AIが書いたサイトの登場

また、AIで書かれたサイトが検索上位に来るようになりました。
顕著なのはこのサイトです。
https://nara-seikaen.com/
SEO上有利とされる中古ドメインを取得して、AIに記事を書かせています。運営元の住所はバーチャルオフィスです。

最初は自分の記事の盗作かと思ったのですが、私の記事よりも、良く言えば網羅的、悪く言えば冗長です。体験情報がまったくないまま、「別に間違ってはいないが」というレベルの情報をかさ増ししている内容です。

管理者は同じ手法で、葬儀だけでなく、政治系のサイトも運営しています。
アクセスを集めやすいジャンルをゴールに、逆算してサイトを作ったのでしょう。

GoogleはAIが作成したサイトの評価を下げるとしていますが、このサイトは終活のあらゆるテーマで検索上位に来ています。当初、マネタイズ(収益化)をどうするのだろうと見ていましたが、最近はアドセンス広告を掲載し始めました。

ブロガーという名称自体が死語になりつつあります。テキスト冬の時代です。

それでも私が書く理由

それでも私がたまに記事を書いているのは、「考える葬儀屋さん」というワードの指名検索の件数が、全盛期からほとんど落ちていないからです。
「同僚や後輩に読むように勧めている」というコメントは以前からいただいているので、おそらくそういう方々が検索して、サイトを訪れていただいているのだと思います。
今後もそういう方々が訪問してくれる以上は、記事を書いていこうと思います。

動画の世界

一方、2024年末からYouTube動画の配信を始めました。正確に言うと、アバターにしゃべらせるVtuberです。

YouTubeを始めた理由

YouTubeを始めたのは、前述したように、テキストコンテンツだけでは情報を届けにくくなったことと、方法論を確立すればAIが制作をサポートしてくれると分かったからです。
といっても、AIに脚本を書かせているのではなく、これまで書いてきたテキストコンテンツを元に、

  • ブログの記事をしゃべり言葉に変換する
  • 解説のパワポ用資料を作成する
  • 音声を作る
  • 音声に合わせてアバターにしゃべらせる

などのわずらわしい編集作業を、AIにサポートしてもらっています。
(noteの解説記事:ブロガーがAIを使って(顔出し声出し無しで)YouTuberデビューする方法を教えます|考える葬儀屋さん

アバターだと、音声や画像の品質が一定します。
さらにアバターにした理由を付け加えるなら、おっさんの実写の顔をアップにしたところで、集客にはマイナスにしかならないというのもあります。
サムネイル用に、自分が怒った顔や泣き顔を作らなければならないのは、さすがにキツいです。

YouTube配信の課題

YouTube配信を始めて見えてきた課題について述べてみます。

コンテンツの限界

まず、編集を別にしても、葬儀系YouTuberはコンテンツを提供し続けるのが大変です。
葬儀の打ち合わせは、2時間くらいで終わります。
だいたい遺族や参列者に提供するテキストの分量など、音声化すれば10時間分くらいしかないはずです。
そのため、どのYouTubeチャンネルも、伝えるテーマ自体は似たり寄ったりです。
かなり息切れしているチャンネルも目立ちます。
腐乱死体と心霊現象を語り始めたら、オワコンです。

あとは、伝え方でどれだけ差別化を図るか、ということになります。
登録者数が1万人を超えているくじら葬祭や、ショート動画主体で6万人を超えるセルビスループは、おそらく出演者の容姿や清潔感、親しみやすさによって差別化できているのだと思います。

動画は意外と資産にならない

次に、ブログなどのテキストと比較すると、動画は積み重ねても、あまり資産にならないという印象を受けています。

葬儀系チャンネルで、8万7千人という圧倒的な登録者を誇る佐藤葬祭のチャンネルですが、2026年6月の再生数は、分析サイトによると約2万回ほどでした。

最近ほとんど更新されていないことも、一因かもしれません。ただ、フェイズは違うものの、同時期の私のYouTubeの再生数4万回を下回っていたのは意外でした。
葬儀系の情報というのは、あまり陳腐化しないはずですが、大量の動画をアーカイブとして蓄積しても、長期間にわたって再生数を維持するのは難しいようです。

受注装置にならない

さらに、YouTubeをはじめとした動画媒体は、葬儀の受注装置としてあまり強くないという印象を受けています。

葬儀社にとって、WEB媒体のコンバージョン(目標の達成)は、葬儀の受注です。
日常的に葬儀社の情報に接するという人は少なく、だいたい誰かが亡くなりそう、または亡くなったという状況をトリガーにして、葬儀社を探し始めるケースが多いです。

そもそも、YouTube界隈の知名度と、一般社会での知名度は同じではありません。テレビなどで「登録者100万人のYouTuber」と紹介されても、「誰?」となるケースは珍しくありません。まして葬儀系YouTuberのことなど、世間の大半は知らないでしょう。

葬儀を購入するタイミングは、売り手である葬儀社も、買い手である遺族もコントロールできません。
そのため、ゆっくりと視聴者との関係性を作ってから受注につなげる、一般的なYouTubeマーケティングの手法は機能しにくいです。
時間に追われる状況では、一から葬儀社の動画を観て、比較検討して選ぶということにはならないでしょう。
おそらくGoogle検索で「地名 葬儀社」と探し、葬儀社サイトのテキストを読んで、葬儀社選びの判断材料にする人が多いのではないでしょうか。つまり、動画隆盛前のテキスト時代と同じフローです。
候補を絞り込んだ後で、補足的に雰囲気を確認するというのが、動画の使われ方でしょう。

仮にYouTubeで全国的に知名度を上げたことで問い合わせがあったとしても、零細業者であれば、サービスの供給は地元周辺に限定されます。
これでは本業の大幅な売上アップにはつながりません。

私がYouTubeを続ける理由

私は、葬儀の受注を目的としてYouTubeを運営しているわけではありません。個人で、商売の集客を目的としない葬儀系チャンネルは、珍しいと思います。
伝えたいことは基本的にブログのテキストで発信しており、YouTubeはあくまで文章を読まない人のためと割り切って作成しています。
そのため、切り口が特殊な話、専門性が高い話、読み返さないと理解できない複雑な話は、YouTubeと相性が悪いので取り扱っていません。

今後、熱心に動画作成へ時間を割くこともないでしょう。
なぜなら、先ほどのテキストの世界と同じように、これまでの動画を養分として、AIが新たな葬儀解説動画を作る未来が見えるからです。

感動ショート動画への懸念

文章を読めない人が多くなったから動画が流行ったのか、動画が流行ったから文章を読めない人が多くなったのか、おそらく両方でしょう。

最近は、長い動画はイヤだという人も増えているらしいです。

最近流行っているのは、実際の葬儀の様子を撮影し、ショート動画に編集して、「感動葬儀!」「泣ける!」といった文脈でアクセスを集める手法です。こういった動画は、視聴者の感動ポルノへの欲求に、うまく乗っています。

クソだと思います。
これについては、後日またくわしく書くつもりです。
(先日マネーポストWEBに寄稿した記事:《葬儀社のSNS投稿が物議》たとえ遺族の許可を取っていても「葬儀の現場写真」が炎上してしまうワケ 商売のために「泣ける」感動ポルノをSNS投稿する葬儀業界の認識の甘さ | マネーポストWEB

というわけで、テキストも動画も、今から参入して成果を上げるハードルは高いです。
それでも、情報を発信せずにいられない人であれば、現状がどうであれ、発信を始めるでしょう。
環境は厳しいですが、これからの世代には頑張ってほしいと思います。