先日仕事で埼玉に行ったところ、現地の寝台者の運転手さんにいきなり話しかけられました。
「あなた、テレビに出てたでしょ」
と、言われたのでここ2,3年で出演したどれかかなと思っていたのですが、よくよく聞いてみると
20年前の話でした。私が初めてテレビに出演したときです。
よく覚えてるなとびっくりさせられたのですが、そこで今回はテレビ出演の話を書いてみることにしました。
テレビドラマに、葬儀のセット設営と葬儀屋さんのエキストラ役で参加していたことは
こちらの記事で書いたので(お葬式の撮影現場 | 考える葬儀屋さんのブログ)
今回は情報番組の類に何度か出た話です。
それでもテレビに出た理由
テレビに出たいだとか、出るのが好きという人はある程度いるのでしょうが、私は嫌でした。
そもそも行きつけの店で顔を覚えられて「いつもありがとうございます」と声をかけられることすら嫌な人間なのです。この感覚は分からない人には分からないでしょう。
誰かに存在を認識されたくないのです。
それでも出演した理由の一つは社命だったから。
もう一つの理由は、誰か葬儀屋が出演しなければいけないのなら、自分が一番ふさわしいと思ったからです。(-。-)y-゚゚゚
私の第一印象は「誠実そう」「頭よさそう」と言われることが多く、この両者を満たした風貌の葬儀屋さんというのは、20年前は私以外存在しませんでした。(すいません。ちょっと言い過ぎました・・・)
他の、不誠実で頭が悪そうな人間が、葬儀業界の代表としてテレビに出るくらいなら自分が出ようと思ったのです。
(もちろん今は違います。さらに私にはない「さわやか」の要素すら併せ持つ若手葬儀屋さんはいっぱいいます。)
まだテレビに力があった時代は、出演後にスーパーのレジ打ちの人に声をかけられたり、参列者のおじいさんに、「あっ」という顔をされた後、指を指されてニヤニヤされたりしました。タレントの人が街行く人に見つかってしまうことを「顔を指される」という風に表現をしますが、本当にこういうことなんだなと思いました。
ここ数年は、テレビに出てもそういうことは無いです。
何百万人が見ていようと、そのほとんどは私個人ではなく、風景としてテレビ画面を見ているだけです。
ありがたいことに、放送直後には、忘れ去られてしまいます。
気をつけていること
とはいえ、出演する以上は葬儀業界の代表のつもりで出ているので、真剣です。
自分の担当したお葬式の喪主さんに、テレビタレントの方がいらっしゃったので、以前レクチャーを受けたことがあります。
とはいえ素人が喋りながら撮影中ずっと意識していられることなど1つか、2つです。その1つは
「インタビューを受けてる時は、とにかく絶対に視線を下に落としてはいけない」です。
少しでも視線を落とすと自信なげに見えてしまうからです。
どうしてもちゃんとしたことを話さなきゃと思うと、思考に集中して視線はあらぬほうに飛んでしまいがちです。
「しゃべりの内容は多少適当でも、相手のアナウンサーはプロだから、ちゃんとフォローしてくれる。今は要約したテロップもでる。でも下を向いている絵は修正できない」
と言われました。
最近は、録画ならあまり緊張しなくなりました。
細かいことを気にしてもキリがありません。中学生男子が前髪の流れを気にしているレベルです。オマエ以外は、誰も気にしちゃいねぇよ、っていう。
「初めてテレビに映った自分を見た時がっかりした」という感想を漏らす人は多いです。しかし私はセミナー講師の練習のために、動画を撮ってチェックすることを繰り返してきたので、自分のしゃべる姿を見慣れていました。そのため、スタジオ収録の時にメイクをしてもらってライト当ててもらって、ちゃんとした構図で撮ってもらったときには、「俺、なかなかかっこいいじゃん」と思ってしまいました(笑)
私も別の意味で中学生レベルなのかもしれません。
あとバラエティには出ません。オモチャにされるのが分かっているから。
でも、生放送のワイドショーなら逆に出たいです。ああいう番組の視聴者は、何しゃべっても信じそうだから(笑)
葬儀の平均費用は300万円とか、全国放送で言いたい。
イヤなこと、よかったこと
テレビに出てイヤなことは、そもそも普段テレビに出る葬儀屋さんは少ないので、業界内でのみ、注目を浴びてしまうことです。
冒頭の寝台車の運転手の方も「日頃葬儀屋さんがテレビに出るのは珍しいから、記憶に残っている」と言ってました。
単純に「すごいね」と言ってくれるのはまだいいのです。
喋った内容にケチをつけられると、
「社葬の司会ごときでガチガチになるやつが、数百万人が観ている前でアドリブでしゃべってるやつに意見するんじゃねえよ。こっちはどう編集されるかまで考えながら喋ってんだよ」と悪態をつきたくもなります。
テレビに出て良かったことは
田舎の親戚からの扱いが良くなったこと。
就職の時には「せっかく東京のいい大学出たのに、葬儀屋なんかに」と、散々言われました。あなたに学費出してもらったわけでもないのに(笑)
今は「こんなに立派になって」です。 おい!
出版社のパーティーで、テレビに出たことのある執筆者の方と話すと、大体皆さん同じ経験をされているみたいです。
・本を出しただけじゃダメで、NHKに出ないと親戚の評価は上がらない
・数回テレビに出た程度では世間の知名度は全く上がらない
という点で意見が一致しました。
もう一つの良いことは、過去担当した遺族の方から「テレビ見たよ~」と電話を頂けることです。
さすがにテレビ画面は風景と言っても、自分のお葬式を担当している人がでたら「あっ」て気づきますよね。
あるご家庭のご主人のお葬式を担当した5年後に、奥様のお葬式を担当したのですが、そのお嬢様から「母が亡くなる1ヶ月前に、赤城さんがテレビに出ているのを病院のテレビで見たらしく、電話がかかってきたことがあって」と言われました。
その時は呑気にも、自分の晴れ姿?を見てもらって良かった程度に思っていました。しかしよくよく考えてみると、病気療養中で、もしかすると死ぬかもしれないという不安の中で、夫のお葬式を担当した葬儀屋さんをテレビで見かけてしまうというのはどういう心境だったのだろう、という疑いが自分の中に芽生えてきたのです。
思い切って四十九日の法要の時にその疑問をお嬢様にぶつけてみました。
「いや、むしろはしゃいでましたよ」と言われて、ありがたいような、ほっとしたような気持ちだったことを覚えています。
逆にテレビに出ていた方が、副業として葬儀スタッフとして働いておられることについては、どうお考えになりますか?https://news.yahoo.co.jp/articles/748e6181e10934a5a3b8269dbf3e5693feb8ba00
私の現場でこられたら困るなあと、思っています。メインにすべき立場がひっくり返ってしまうように思います。
佐々木 行恵 様
>どうお考えになりますか?
知り合いに一名いるのですが(サンプルn=1名ですが)、見た目も良くて礼儀正しくて個人的に高評価です。
この記事の俳優さんは、私は全然存じ上げなくて、世間の認知度って意外とそんなものではないかと、思ってしまうのですが。