葬祭屋の感動サービス幻想

今回ご紹介するのは、神田昌典氏は監修しただけにもかかわらず、(おそらくマーケティング上の理由で)一番大きく名前が載っているこちらの本。
「おもてなし幻想」

この本の主題をまとめるとこうなります。

感動サービスは顧客ロイヤリティ(企業に対する忠誠度)を高めない。顧客努力を減らすことが重要。

これを聞いてその通り、と思った方はこの本を読む必要はありません。

「え、そうなの?」と思った人はこの本を読みましょう。
コンタクトセンター(顧客対応部門)の膨大なデータを基に、さきほどの主題を証明しています。
データ抽出はコンタクトセンター部門をベースにしていますが、第8章で触れられているように、企業活動全てに当てはまります。

いくつかの文章を引用します。

顧客の観点からすると、何か問題が起きたときに心を支配しているのは、解決に力を貸してほしいという感情

感動させる必要などないから、とにかく問題を解決してそれまでやっていたことを再びできるようにしてほしい。

結局は基本的能力、プロとしてのサービス、基本を正しく実践すること。こうしたことが何より重要

顧客の企業満足度調査の結果と将来の顧客ロイヤルティとのあいだに統計的な関係は事実上見られなかった

顧客に「期待以上のサービスだったよ」と言わせるよりも、「おかげで手間がかからなかったよ」と言わせるべき


かつてこんな記事を書きました。
「感動葬儀」はいらない | 考える葬儀屋さんのブログ

葬儀とは購買意欲が高まった結果購入される商品ではありません。
望まない困りごとが発生してしまったから仕方なく購入されています。
つまり葬祭業はソリューション(問題解決)ビジネス
我々葬儀屋さんの仕事は遺族が困りごとの解決にがんばらなくてもいいようにする、つまり顧客努力を減らすことなのです。

これが分かっていない葬儀担当者がたまにいます。

葬儀担当者がやるべきことは、サプライズとか言いながら故人が生前好きだった物をペーパークラフトで作って葬儀式場にディスプレイして悦に入ることではありません。一歩間違えば、食料が不足している被災地に千羽鶴を送る行為と変わらなくなります。

葬儀担当者がやるべきことは、

  • 動転している遺族の気持ちを落ち着かせるように凛とした振る舞いをすること
  • 耳の遠いお年寄りにも良く聞こえるような、通る声で話すこと
  • なにも分からない遺族が安心できるように、信頼できる情報を提供すること
  • 誰が聞いても分かりやすい話し方をすること
  • 明確で納得できる葬儀費用を提示すること
  • 顧客を慮って、適切に絞り込んだ選択肢を示すこと
  • 喪主が少しでも故人を想う時間がとれるように、段取りに関しては必要なときにだけ適切なタイミングでアラートを出してあげること
  • 遺族が宗教儀礼の作法に気を使わなくてもいいようにすること
  • お別れの時間をできるだけ確保できるよう無駄のない段取りを組むこと

つまり故人を生き返らせること以外の、顧客のための問題解決を全部やれ!ということです。

感動させるうんぬんはそれができてからの話。




8件のコメント

葬儀担当者がやるべきことは、
動転している遺族の気持ちを落ち着かせるように凛とした振る舞いをすること
耳の遠いお年寄りにも良く聞こえるような、通る声で話すこと
なにも分からない遺族が安心できるように、信頼できる情報を提供すること
誰が聞いても分かりやすい話し方をすること
明確で納得できる葬儀費用を提示すること
顧客を慮って、適切に絞り込んだ選択肢を示すこと
喪主が少しでも故人を想う時間がとれるように、段取りに関しては必要なときにだけ適切なタイミングでアラートを出してあげること
遺族が宗教儀礼の作法に気を使わなくてもいいようにすること
お別れの時間をできるだけ確保できるよう無駄のない段取りを組むこと

つまり故人を生き返らせること以外の、顧客のための問題解決を全部やれ!ということです。

感動させるうんぬんはそれができてからの話

正解です。初心に帰りました。  講演の時使ってい良いですか?

はじめまして、山彦龍彦です。

終活関係の仕事(葬儀含む)を志望しているため、いつも考える葬儀屋さんの言葉に勉強させられています。

今回のお話しは本当にそうだと思います。葬儀(終活含む)は良い意味で黒子に徹してサポートすることが基本になるのだと思います。それができてからのプラスアルファなのだと心から思いました。

それが出来ないのに感動を作り出そうとしても上部だけのものになってしまうのだと。最悪、故人やその関係者を傷つけてしまうのだとそう思いました。

本当にその通り どう言えば上司に伝わるかなぁ 偉くなるしかないのかな

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