3年ほど前に名古屋の葬儀社を訪問したときの体験を書いてみたいと思います。
あくまで3年前(2006年ごろ)ということを前提に御読みください。
I葬祭K館
名古屋駅からバスに乗って数分で式場前に着きました。
まず建物の大きさに圧倒されます。
入館してあまりの豪華さに少し笑いそうになりました。
バスケットボールが出来そうな広さのロビーにヴィーナス像みたいなのがずらっと並んでいます。
「ゴージャス」というキーワードで評価するなら今まで見学した全国の式場の中では抜きんでています。
ゴージャスが葬儀式場に必要なのかはともかく。
事前相談の用件を告げるとカウンター下から資料をさっと出し窓際の席に案内されます。
これは良い印象でした。
事前相談に飛び込みで行った場合、相談が始まるまでの待ち時間の長さはその会社のサービスレベルを計る上で重要だと思います。
日頃の事前相談に対する取り組みという点と、なれない場所へ病院での看病の合間を縫って訪問しているのかも知れない見学者への配慮という点において重要なのです。
事前相談者への配慮があれば当然待たせる時間は最小限にするべきです。
資料を見ながら2分ほど待っていると男性の社員が現れました。
ホテルマンでも通用しそうな見た目と物腰の男性でした。
まず大まかな話を伺います。
意外だったのは名古屋では祭壇脇に立て札を挿した供花を飾らないという点。
飾るのは「その筋の人」だけだそうです。
ただ逆に言うとそんなに
「こんなところが関東と大きく違う」
という項目はなかった様に思います。
それにしても式場といい控室といい、たぶん目隠しをされて連れてこられて仏具を隠されていたらきっとホテルだと思ってしまうでしょう。
控室とは別にベッドルームがありカードキーを使って開けることが出来ます。
部屋の内装はシャンデリアがあり高級なビジネスホテルのようです。
しかし・・・です。
式場が最大8つ、一番大きい斎場は580席と聞いてちょっと?と思いました。
最近の傾向(葬儀の小型化)を考えるとこの会館のコンセプトはどうなんだろう。
建築されたのはバブル末期だったせいもあるのでしょうが、ちょっと時代に合わなくなってきているんじゃないだろうか。
これなら半分の規模の会館を駅から歩いていけるところに二箇所作るべきではないのか。
太平洋戦争末期の戦艦大和をイメージしてしまいます。
巨体をもてあまし気味なんじゃないでしょうか。
H会館N斎場
この式場は10年ほど前に建てられたとのことです。
建物は普通でやや老朽化しています。
半袖シャツ姿の男性に、
「ちょっとそこでお待ち下さい」
といわれロビーの席に着きます。
自分の部下なら
「お客さんの前では必ずジャケットを着用しなさい」
と注意するところですが・・・
それからテーブルの上の灰皿には山盛りの吸殻が・・・・(T_T)
3分ほど待たされ葬祭1級ディレクターの認定証を胸につけた別の男性が出てきました。
画像の粗いパンフレット片手の話で、あまり印象は良くないです。
一番ダメだと思ったのは
「事前の見積もり書が作れない」
と言われたことでしょうか。
会社の方針として作らないのか、本人にそのスキルが無いのか知りませんが、これはダメでしょう。
現在は改善されていることを祈ります。
T社 1回目
前述のH会館N斎場から歩いて数分のところにこの会館はあります。
ここにくるのは楽しみにしてました。
そもそも名古屋訪問のきっかけは
T社の社長の執筆した本
「日本で一番ありがとうと言われる葬儀社」
を読んだからです。
本の装丁はちょっと?でしたが、内容はおもしろかったです。
彼の評価すべき点は式場を建てる際、土地も建物も賃貸にして、コストを下げてたくさん作るというビジネスモデルを考えたことでしょう。
数あるT社の会館の中でここを選んだのは名古屋駅から最も近かったからです。
訪れたときはたまたま見学会のときでした。
余談ですが見学会の効果というのは、
見学会で顧客を取り込むことではなく、見学会を行っていると言うことをチラシで宣伝することで、見学会に足を運ばない層に盛況感をアピールすることに現れているのでは
と思うときがあります。
T社の話に戻します。
第一印象を一言で言うと「安い」でしょうか。
いえ、葬儀価格ではなく、建物の印象が。
自社式場と言うよりは公民館に近い。
控室(和室)のテーブルは地方の集会所においてあるような足をたたんで積み重ねられるタイプの物でした。
I葬祭K館を見学した後なので、よりその差が際だちました。
こういう言い方をすると批判しているみたいですが、この戦略は
前述のI葬祭K館に対するアンチテーゼ(否定的判断)
なのだと思います。
私が経営者でどちらかのスタイルを取るならこのT社の方を選びます。
それからチラシに
「愛知県で最初に価格を明確にしました」
って書いてたんですけど愛知県てそんなところだったんでしょうか。
対応してくれたのは初老の紳士です。
最初は良かったのですが、少し突っ込んだ質問をすると、しどろもどろになり始めました。
どうやら本社から来ているようです。
事業拡大に人材がついていっていなかった時期だったのでしょうか。
今は改善されていると思います。
帰りにコーポレイトカラーの紫色のテッシュペーパー5箱くらいをお土産に渡されましたが固辞しました(^^;)
私がプリンスなら喜んで新幹線で東京まで持って帰ったと思うのですけど。
富安社長の講演を拝聴する機会がありました。
人間としての印象は良いです。
まじめで誠実そうで熱意を感じます。
現場の葬儀屋の目線で見ると、本当にお葬式のことを考えている人なら、彼の下で働くのはやりがいがあると思います。
T社 2回目
今年(2010年)高校時代の友人が葬儀の事前相談のために、
T社さんのとある会館を訪れるということで、
私も同席させてもらいました。
(上記の会館とは別の会館です)
メインでしゃべったのは友人ですが、私がフォローする形で。
まずT社さんの葬儀費用の体系について。
チラシに表記されているイチ押しのセットは
1万円を払ってT社の会に入ると、
一般価格1,027,300円の葬儀費用が
505,300円割り引かれて
会員価格の522,000円になる
というもの。
ほぼ半額。
確かに互助会でも会員になれば半額、という話を良く聞きます。
で、いつも思うんだけど、この価格体系ってどうなんでしょ。
会員を囲い込みたいというのは分かるんですが。
1万円の入会金で100万円が半額、っていうプライシング(値付け)って、
「やっぱり、葬儀屋ってどんぶり勘定だね」って
言われかねないと思うんですが。
(いや、T社さんは上場しているから
どんぶり勘定は絶対あり得ないんですけどね。)
ちなみにこのコースの商品構成を考えると
私の勤める葬儀社や競合他社だと80万円くらいの値付けを行うと思います。
(あくまで私の判断です。それから東京都下の話)
だから会員価格の522,000円なら安い、一般価格1,027,300円なら高い、
という印象。
それにしても、そもそもこの価格設定で、
一般価格で申し込む人はいないと思うのです。
二重価格で消費者を釣っているような印象をあたえかねない価格体系はやめて
会員価格522,000円 、一般価格 650,000円くらいに
しといたほういいんではないでしょうか。
もちろん余計なお世話なのは重々承知しているんですが、
これだけマスコミに注目されると
業界を代表する葬儀社としてはこの方がふさわしいかなと。
それから担当の方の話しでは、結局葬儀スタッフ代が追加で7万円分、
発生するらしいです。
であるならば、最初のセットに入れておいた方がむしろ印象が良いと思います。
あと頂いたチラシの表側の
「アンケートの結果、95%のお客様から満足のお声をいただきました。」
という表現について、ちょっと気になりました。
アンケートサンプルは
「T社にてお葬式を施行されたお客様より回答いただいた1,000通のアンケート結果より。(2008年10月~2009年4月)」
というように表記されています。
この年T社さんは年間4500件ほどの施行件数ですから
2008年10月~2009年4月の7ヶ月間で2500件くらいは施行しているはず。
もし、たまたま返信されてきた全てのアンケートが
ちょうど1,000通だったというなら回収率40%ということになり、
アンケート回収率自体があんまり高くないと思います。
実際はもっとアンケートが来ていたとすると
ではその1,000通ってどうやってえらんだのだろう・・・
とひねくれ者の私は統計数字を見ると反射的に疑ってしまうんですよね、
すいません<(_ _)>
サンプルの取り方をもっと詳しく書いていただければと、思いました。
ちなみに葬儀のアンケートは実態よりも高評価になることが多い、
という傾向はあります。
(参照ページ:お客様アン ケートの評価を信じてはいけない!)
次に低評価のお客さんは、アンケートを返信しない
(高評価のお客さんほどアンケート を返信する)という傾向があります。
だからあり得ない数字ではないと思います。
現に私の勤める葬儀社のアンケート結果もそうです。
さて、多少苦言も呈(てい)しましたけどT社さんを訪問してみて
一番感じたことってT社さんて従業員の方がキラキラしているなぁ、
ってことです。
社葬を施行する関係上、いろいろな会社を訪問する機会があるのですが、
上り調子の会社の従業員って、T社さんのようなキラキラ感があるんですよね。
どこかの葬儀社に転職しないといけない、と言われたら
私はT社さんを選ぶと思います。
多分採用してもらえないと思いますけど(^^;)
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