今回批評するのはこの本
 「だから、葬式は必要だ。―弔いびとが葬儀業界の真実を語る」
この本「だから、葬式は必要だ。」は
 名古屋市の大手葬儀社
 株式会社一柳葬具總本店の社長、一柳(いちやなぎ)氏が
 お書きになった新刊です。
さて
 この本「だから、葬式は必要だ。」の感想を一言で言うと
 「かっこ悪い」
 だと思います。
その理由です。
「お葬式は、要らない」がベストセラーとなり、それに対して
 一条真也氏の葬式は必要! (双葉新書)や
 橋爪謙一郎氏のお父さん、「葬式はいらない」って言わないで (小学館101新書)
 がすでに出版されています。
 それにもかかわらず何匹目のドジョウなんだか知りませんが
 「だから、葬式は必要だ。」というタイトルの本を
 このタイミングで出すのは恥ずかしいと思います。
 これが「かっこ悪い」1番目の理由
そしてこの本「だから、葬式は必要だ。」の発行元は
 幻冬舎メディアコンサルティング、販売元は幻冬舎。
 幻冬舎メディアコンサルティングは、あの「お葬式は、要らない」を出版した、幻冬舎系列の企業出版を行う会社です。
 出版界の事情は知りませんが、これは両論併記というより
 無節操、もしくはマッチポンプなのではないかと。
 これが「かっこ悪い」2番目の理由。
そしてこれは大人げないと言われそうですが
 この本、一柳さんご本人はお書きになっていないのでは?
 これが「かっこ悪い」3番目の理由。
 一柳さんは昭和10年にお生まれらしいので、現在75才ですよね。
 偏見だとお叱りを受けるかもしれませんが、
 小さい頃から葬儀屋一筋だった75才の御老人がインターネットに言及するのは
 ちょっと無理があるのでは・・・
 また文中では最近の葬儀担当の体験もお書きになっている(P121)・・・(-_-)
 (もしこの私の推測が間違っていたなら、お詫び申し上げます。
 それから、後書きをお書きになっている碑文谷さんが、もし本文のライティングもされていたなら、申し訳ありません。)
そして最後にして、かっこ悪い最大の理由は
 新規業者批判にこだわりすぎて、消費者の気持ちが読めていないこと
 でしょう。
新規参入業者を批判することで
 既存業者を甘やかしていると思うのです。
 消費者が既存業者に対して不満があるからこそ、
 新規参入業者にかたむいているのだという自省は必要なのではないでしょうか。
伝統的な従来の葬儀スタイルを得意とする自社(一柳)の良さをアピールするための
 ポジショントークは仕方がないと思います。
 しかし特にひどい新規業者の行いを、良くある事例として攻撃することによって
 逆に葬儀業界全体をおとしめていると思います。
 これでは、既存の葬儀屋をおとしめている一部の新規業者と
 何ら変わらないのではないでしょうか
そもそも葬儀社の運営を
 「ビジネス」ととらえ「効率経営を目指し」「マニュアルを導入」
 することのどこがいけないのですか?(P16~)
 もしそれらが原因で新規業者の葬儀の質が低いのだとしたら、
 消費者にそっぽを向かれて、彼らの活動は終わってしまうでしょう。
 それとも消費者は馬鹿だから、その判断ができないとでも?
 他の業界なら当然の「競争」が始まったことを嘆いているように、私には思えます。
一部の新参者に荒らされたり、
 一部のマスコミに情報操作されたりしてしまう結果を招くにいたった、
 業界の体質や問題点をいままで放置していた
 既存の業者の責任はどうなのですか。
既存業者の自己批判は57ページにちらっと出てくるのみです。
 (仲良しでいたいのか、宗教界への批判は全く行われていません。
 64ページの内容程度のことなら書かない方がましです)
一柳氏は、キャリアも非常に長く
 全葬蓮(全日本葬祭業協同組合連合会、葬儀屋さんの業界団体)の副会長も
 お務めになったようです。
 今まで、情報格差にあぐらをかいていた世代の代表と申し上げたら
 言い過ぎですか?
 業界改善のための活動もされてきたかもしれませんが
 どうしてこれまで長い間、そして今なお
 世間から葬儀屋はペテン師やチンピラ同様に見られているのですか?
(個人的に世代論は好きではありませんが)
 若い世代の葬儀屋さんがこの「だから、葬式は必要だ。」を読んだら、
 いままでほったらかしにしておきながら、いまさら説教かよ
 って思うでしょうね。
冒頭の自宅安置の例(P18)にしても
 遺族側にとっての会館安置のメリット(生活空間と弔問空間の分離、物理的制約がない)もあるはずです。
 自社会館安置だろうが自宅安置だろうが、
 それを手間だと嫌がる葬儀屋は私の世代から下では会ったことがありません。
それからP47は明らかにティアさんを批判していると思います。
 二重価格と批判している価格例が、
 実際のティアさんのものとほとんど同じです。
 それから文章の主旨も
 以前私が書いたこのブログの記事(名古屋の葬儀社体験記2)と
 ほとんど同じです(^^;)
 ティアさんを批判するのは勝手ですが
 一柳氏は自社のサイトを一度でも見たことがあるのでしょうか?
 いまどき、すごくアバウトな見積もり例・・・には目をつぶるとしても
 一柳さんところも、会員価格として20%も割引にしてますね。
 消費者からみたら、50歩100歩という気がしないでもないですが(^^;)
 おまけにこの本の中では、
 「会員割引率は10%前後とみるのが妥当でしょう」(P86)
 って書いているのに(>_<)
 自分のところだけを棚上げするのはかっこ悪いですよ。
なんというか
 時代の変化に対応できないご老人の
 「最近の若いもんは・・・」という
 愚痴(ぐち)を聞かされた気分です。
 自民党の長老みたい、って言ったら失礼でしょうか。
たしかにこの本に書かれている
 継承すべき伝統の価値
 に関しては、傾聴に値します。
 大切に継承したいと思います。
 しかし、葬儀業界の大先輩に無礼を承知で申し上げますが
 この本の内容に関しては
 継承すべき伝統の価値より
 老害の方が勝(まさ)っていると思います。
(追記)今回一柳氏の「だから、葬式は必要だ。」の本の内容を批判していますが、
 株式会社一柳葬具總本店に関して、
 何らかの評価を下しているわけではありません。
 まだこの目で確かめたことがないので。
 ご理解ください。
(さらに追記)
 著者として本を出版した以上、
 本の購入者に作品を論評されるのは普通のことだと思います。
 しかし一方で本職の物書きでない人にとって、
 いろいろ書かれるのは厭なものだというのは私も十分理解しております。
 この文章は別に著者を困らせることが目的ではありませんので、
 要望が有れば希望箇所を削除するのはやぶさかではないことを、
 お断りしておきます。









 









一柳さん、今まで5~6回位しかお会いしていませんが、私の印象では「無口で温厚な人」、他社や他人を批判するタイプではないと感じていましたが。
しかし、島田先生(立場的にこう言わなければいけませんので)の本は店頭で平積、100万部にも届く勢い。
同じ物書きとしては「うらやましい限り」。
他人の印税を計算してしまいます。
売れる本と売れない本では、「真実を書いても売れない」と言われています。
適当にフィクションとノン・フィクションを交えて、読者が喜ぶことを書くのがポイントとされています。
私の本など学術書であり「嘘を書くと終わり」であり、2万部も売れれば驚異的な事態。
売れない筆者の愚痴です。
それでも今月(来月)には依頼された共著で2冊出しましが、本としては他の著者と相反する部分もあります。
そのために、共著は好きではありません。
ましてや、大学教授が20人位で書いた本は面白いのかも疑問です。
デタラメでも何でも良いですから、一般書のミリオン・セラーは羨ましいの一言です。
prof 様、いつもコメントありがとうございます。
>私の印象では「無口で温厚な人」、他社や他人を批判するタイプではない
私も良くそう言われます(^^;)
やっぱりご本人が書いたものではないのでしょうか。
今月発売される一般紙の「葬儀特集のゲラ」がメール添付で来ました。
私は葬儀は専門外と話した上での私への取材でしたので、私のコメントは僅かですが、全体的には物理教師様には怒られる内容です。
データ類は2007年の日本消費者協会のものですので、東京での葬儀費用は256万円というやつです。
葬儀はいらないというスタンスではなく、葬儀を考え直そうとのスタンスであり、特に何処の葬儀社が良いとのタイプでないことが救いです。
何箇所かは疑問な点もありますが、明らかに間違いである3点については訂正してもらっておきます。
今回の葬儀特集でも、私と他のコメンテェーター(葬儀サイドの人)では葬儀の意義がかなり異なり、医療サイドや学問的に考えるグリーフ・ケアと葬儀サイドで考えるグリーフ・ケアが全く異なることも分かります。
prof 様、コメントありがとうございます。
> 今回の葬儀特集
どれでしょう、大変興味があります(^_^)
さしつかなければ、出回ったときに
こっそり教えてくださいませ。
物理教師さん
こっそり伝わってきたらまたこっそり教えてくださいませ。
高見 晴彦 様、コメントありがとうございます。
prof 様のOKが出ましたらお伝えしますね(^_^)