年季の入った葬儀社の経営者には「濃い」人が多いです。
彼らのことを遠目で見つつ苦笑するというのが
本来の嗜(たしな)み方なのですが
今回はちょっと見過ごせないケースでしたので
からんでみたいと思います。
以前
次世代葬儀屋の戦い方
という記事の中で
某互助会元役員の大西秀昌氏を取り上げました。
(大西秀昌氏のプロフィールはこちら)
彼の新しい著作が出版されました。
「死に寄り添って、生を知る」
死に寄り添って、生を知る (扶桑社新書) 大西 秀昌 扶桑社 2014-03-01
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大体葬儀屋に限らず功成り名遂げた方のこの手の本の内容は
「自慢」と「説教」の場合が多いです。
もちろん自慢と説教からも学ぶことはありますし
日頃、世代論争というもの自体に与しませんので
大西氏の世代(バブル前経験済み)の葬儀屋の
自慢と説教に対しては
「はいはい、おじいちゃん、ちょっとお休みしましょうね~」
的なあしらい方で良いと思っています。
とはいえ 後述するような勘違い発言をされると
私のような
大西氏の世代と今の若手の世代(20代~30代)の間に位置し、
業界の転換期を担った世代としては
見過ごすことはできません。
僭越ながら
苦言を呈したいと思います。
まずはウォーミングアップがわりに「自慢」の部分について。
大西氏は互助会の経営に携わっていらしたので
互助会優位のポジショントークを展開するのは自然なことです。
しかしその根拠がちょっとひどいと思います。
現在でも葬儀といえば互助会のほうが主流になっており、
あと十数年もしたら一般葬儀社はほぼなくなって、
ほとんどが互助会に持っていかれるのではないかと私は予想しているんです。
(P98~)
伸びる良い互助会もいれば、伸びない悪い一般葬儀社もいる、
程度の認識が正解だと思うのですが。
こちらの資料をどうぞ。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/gojokai/pdf/001_03_00.pdf
上記の資料は経済産業省が作成したものです。
互助会のシェアってまだ30%ですよね。
会員の新規獲得数も頭打ちで
冠婚葬祭合わせるとむしろ失速傾向にあると思うのですが。
なぜ大西氏が互助会優位と思ったのか、
ということを確認する前にこの文章。
かつての互助会は、一般葬儀社から一段低く見られていて、
「霊枢車がないから貸してください」と一般葬儀社に頼んでも、
「空いとったら貸してやるわ」と言われて結局貸してもらえない
などという意地悪をされていたような時代もあったのです。
大西さん、大丈夫?
自社の所有する車両を自社の現場優先で使うのが、なんで意地悪なの?
今の若手葬儀屋の皆さん、
これがあの当時の葬儀屋の「レベル」なんですよ。
一般葬儀社が互助会に押されている理由①・・・ 職業意識の遣い
ひとつは意識の問題です。(中略)
一般葬儀社の集まりがあって、私もたまに参加するのですが、
そこで交わされている話を聞いていると、ゴルフがどうの、どの店がうまいだの、
どこどこで朝まで遊んだだの、そんな話ばかり。
下世話な言い方をすれば、飲む打つ買うの話ばかりで、仕事の話や業界
をどう盛り上げていこうかといった建設的な議論など、ほとんど出てこないのです。
それに対して互助会の会合では、ほほ九割方が仕事の話で占められています。
仲間内でお互いに勉強し合い、意見交換も活発になされて、
それが日々の経営に生かされている。
ここだけを見ても、葬儀という業界をどうしていくのか、
その意識が決定的に違うことがわかるでしょう。
自分の交際範囲半径10メートルを根拠に互助会がすぐれていると。
それはそれは、説得力のある深い分析だと思います。
さすが、伊達に年は取っていないですね!
(^^;)
ちなみに私の周辺では、大西氏とは逆の状況です。
もちろん一般化して結論づける気にはなりませんが。
一般葬儀社が五助会に押されている理由② ・・・システムの違い
会員にしてみれば、互助会の掛け金についての不安が当たったとしても、その50%は
保護されることになります。つまり、それだけ安心感のあるシステムだということです。
(中略)
そうした事情もあって、
一般葬儀社はこのような前受け金を預かることができる保険会
社などとタイアップをするしかないんです。単独ではできないので、保険会社の「共済」
などに乗っかるしか方法がない。
いやいや、「その50%は保護される」ってことは言い替えると
預けた金の残り50%が保護されないシステムってことですよね。
このシステムのどこに安心感があると・・・
おまけに最近は保護されているはずの残り50%すら危ない、っていう話ですよね。
(参考記事:互助会がヤバいっていう週刊ダイヤモンドの記事を読んで)
互助会のシステムがうまくいかなくなってきているから
メモリードさんを始めとして互助会さんも
保険販売にシフトしているのではないでしょうか?
(参考記事:少額短期保険は「買い」か? 1/2)
一般葬儀社が五助会に押されている理由③・・・営業カの遣い
さらに一般葬儀社の旗色が悪いのは、営業力の違いです。
営業力の違いとは、ひと言で
言ってしまえば「葬儀社は宣伝ができないが、互助会はできる」ということです。
いや、葬儀社さんは今もフツーに宣伝してますけど・・・
と、このような一方的な、一般葬儀社批判をぶっておきながら
まずは一般葬儀社と互助会が共栄共存のために力を合わせる、
葬儀業界が一枚岩となって業界の衰退を食い止めていくという発想が
求められているのです。
いやいや(^^;)
あなたの方からケンカ売ってる感じなんですが・・・
さていよいよ本題。
「説教」の部分への反論です。
葬儀離れが進み、葬儀業界の衰退が進み、
そこに勤めている若い人たちが将来に夢を持てなくなっている。
これは由々しき問題です。(111P ~)
目標とする人もいない、頼れる先輩も尊敬する上司
もいないというなかでは人は育ちません。
知識を得ようとしない、学ぼうとしない。
実体験がない、実体験はあってもそれを自分の体験として生かそうとしない。
もし大西氏の言う通りなら、
そういう状況作ったのは誰だよ、ということになるんですが
そのツッコミは置いといて
このように説教をたれた大西氏が述べる若き日の実体験で学んだこととは・・・
・祭壇に本尊を置くことさえ知らず僧侶に怒られた
・棺の底に打つ釘の打ち方を知らず、遺体を収めた状態で棺の底が抜けた。
ええっ ! (゚◇゚ノ)ノ
でも、本尊を置いておくのが当たり前なんて本当に知らなかった。
救えてくれる人が誰もいなかったので
自分で経験したり、失敗したり、怒られたり、笑われたりしながら
勉強していくしかなかったわけです。
(中略)
だから(今の世代は)現場での思いもよらないこと、
マニュアルにない想定外のことが起こると、
それに対応できなくなって右往左往してしまうのです。
いまは世の中にマニュアルがあふれています。
そういう情報で、なまじっか中途半端な
ことを知っているがゆえに、
「そのとおりにやっておけば、まあ、まずは大丈夫だろう」
という発想になってしまう。
でもそれでは、マニュアルに書いてあること以外は何もできなくなってしまいます。
だから、現場を知る人の話を聞くことが必要なのです。上司も先輩も当てにならないの
なら、実際に現場を経験して、経験を自分のものにしてきた人の話を聞くことが大事に
なってくるのです。
現場で叩き上げて成長することが難しい時代だからこそ、現場で苦労してきた人の話を
道標とすべきだと、私は思うんです。
恐れながら申し上げます。
ガタガタ言わずにちゃんとマニュアル読め!
どんな実体験を話すかと思ったら
レベルが低すぎて話になりません。
以前
葬儀業界は新人教育が下手である 1/2
や
葬儀屋のマニュアル不要論に異論有り!
という記事を書きました。
実体験がどうこう言っていますが
要は昔の葬儀屋に新人を育てる能力がなかっただけです。
ただそれだけのこと。
そしてそんなナレッジマネジメントシステムを作れなかった
自分たちを正当化しているだけです。
遺族は「あなたが現場で失敗して学習する」ことに
大金を払っているわけではないのですよ。
分ってますか?
わざわざやらなくてもいい失敗をする必要はありません。
大西氏は今の現役の葬儀屋さんに対して苦言を呈していますが
今の若い葬儀屋さんの方が
ホスピタリティマインドも人格も教養も知識も志も
何もかも全てが
昔の世代に比べてずっとハイレベルです。
大西さん、あなたの同世代を見回してください。
葬儀屋の心構えをどうこう言う以前に
そもそも男子一生の仕事として葬儀屋を続けることすらできない人が
ほとんどだったのではありませんか。
もちろんあなたから若い世代が学ぶべきところはきっとあるはずです。
しかし前述したようなことをおっしゃっていては老害の方が大きいのです。
イチローにケチをつける張本勲的老醜があると思います。
我々の世代がダメだったせいで
負の遺産(葬儀屋の社会的評価の低さ)を残して申し訳ない
と謝ることで、老兵の引き際とされてはいかがでしょうか。
お疲れ様でした。
(追記)
私も次世代から
あなた達の世代はレベルが低い、
と言われてしまう日が来るのでしょう。
だとしたら
葬儀業界の進歩にとっては良いことだと思います。
多分認めようとはしないだろうけど(^^;)
遅くなってのコメントで失礼。
市場規模につきては経産省商取引監督課のデータが過大なのです。
1兆6千億円にもなっていますが、ばかな!
こりゃダイヤモンド的推定です。
おそらく1兆円前後です。
すると計算上は互助会は5割前後にまでなります。
葬祭業全体の売上に算定するのはどこまでか、で変わりますが、
全体を1兆2千億円とまで見たとしても4割は超えます。
伸びる、伸びないは互助会システムかどうかに関係しませんが、斎場(葬儀会館)戦争に互助会が先手を打ったのが多いです。
互助会の淘汰、集約に互助会保障は乗り出していますし、葬儀社でも福岡県(大西さんの地域)に象徴的なように中小専門業者が互助会に売り渡して逃げる等さまざまです。
主旨と違い、あくまでデータの読み方ですが。
ちょっと立ち止まり 様、
コメントありがとうございます。
>市場規模につきては経産省商取引監督課のデータが過大なのです。
確かに正確な業界規模というのは算定しづらいと思います。
ただ経済産業省の立場とすると、
監督下の互助会シェアを多く見せるため(≒勢いがあるとみせるため)に
市場規模を抑え気味に操作した方が良さそうに私には思えるのですが・・・
何か戦略があるのかも知れませんね。
物理教師さんも日本消費者協会の調査の数字が過大だと見ておられたと思いますが、また、物理教師さんの会社の狙いが中の上以上だと思いますので、平均はその7~8割程度に留まるのではないでしょうか。
1兆6千億円と言うと全死亡数約125万人で割ると1件あたりは128万円にもなってしまいます。もちろん宗教者への謝礼は抜いてです。基本葬儀両、オプション、ギフトや料理の変動費を加えた金額です。高すぎませんか。
互助会の監督官庁は経産省でも取引管理課。いまここは互助会の倒産を防ぐ諸策を検討していますが、破綻の影響が大きくならないように抑制していると見たほうがいいと思います。
但し、この数字は中規模以上が回答している特定サービス産業統計からもってきていると思います。あんまり真剣に考えた数字とは思いません。
なお、経産省には専門業等を主管するサービス産業室もあります。
ちょっと立ち止まり様、
コメントありがとうございます。
>物理教師さんも日本消費者協会の調査の数字が過大だと見ておられたと思いますが
他の記事もお読みいただいているようで、ありがとうございます。(^_^)
>高すぎませんか。
確かにおっしゃるとおりです。直葬が混じっていることも考えると、さらに。
今後経産省も舵取りが難しいでしょうね。
ヤバいところと健全な所を合併させてと考えているのかも知れませんが
あんまりやり過ぎると健全な所の体力を奪いかねないので。