葬儀屋は部落民なのか?

今回はあえてデリケートな問題に踏み込んでいる。
勉強不足故に間違った記述があればご指摘頂きたい。

世界で読まれている経済誌「エコノミスト」の記事の翻訳版から

(cache) 日本と「最後の通勤」:やがて訪れる死のピーク | JBpress(日本ビジネスプレス)
(cache) 日本と「最後の通勤」:やがて訪れる死のピーク | JBpress(日本ビジネスプレス)

この国の一部の地方では、中世に虐げられた人々の末裔で今日でも差別を受けることの多い「部落民」と呼ばれる人々が、葬儀業界の従業員の大部分を占めている。

情報ソースを明示せずに「大部分を占めている」というのはいくら海外メディアとはいえアウトではないだろうか。
エコノミストの提携先は読売新聞だし、日本語に翻訳までしたのは軽率だと思う。
(本来原文も確認したいところだが大きな本屋でも扱っていない模様)

「○○は存在しない」というのは悪魔の証明と言われるもので証明することは難しいのだが
だからといって憶測でものを言われることを放置しておくわけにはいかない。
そして葬儀業界内の情報発信者としていつかこのテーマも取り上げなければと思っていたので良い機会だと思った次第。

そもそも葬儀屋、食肉、革加工関係者に被差別部落出身者が多いと言われる理由として
普通(?)の職業に就こうとすると断わられてしまうので
普通の人がやりたがらない職業に仕方なく就かざるを得なかったため、という説明がよくなされる。

葬儀屋は遺体を扱う。日本人は死を穢(けが)れとして遺体を嫌う。よって葬祭業を穢れた職業と見なし普通の人は就業しないので被差別部落者が多くなる、という構造である。

かつてはどうだったのか、というのは当然公式なデータは存在しないため私には分からない。
参考文献として戦前の民俗学者喜田 貞吉の「賤民概説」を挙げておく。
(特に「16章御坊と土師部、鉢屋と茶筅」の部分)

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では現在はどうなのか?
通常の採用面接を行っている都市部の葬儀社に勤める私からすると
部落出身者の占める比率は他の職業とほとんど変わらないのではないか、と考えている。

日常の中で部落問題を感じることは「全く」ない。

誰それは帰化しているとか在日であるとか元ヤクザであるとか前科持ちであるとかいう噂はまれに耳にする。
他社の誰それがそうである、という噂すら耳に入る。

しかし被差別部落者の話は「全く」聞いたことがない。

そこはシャレにならないから、とか
ほとんどが被部落出身者で構成されているのでそれについて語るとブーメランになってしまうから、
という仮説を立てられないこともないが、ちょっとそれは無理がある。

葬儀業界の人材は流動的である。

就業人口は増えており、入ってくる人は多く、一方合わずに辞めていく人も多い。
数十年この業界に在籍し続けているという人の方が少ないのが特徴である。

また前の葬儀社の色が付いていることを嫌って葬祭業経験者を採用することは(私の会社の場合)少ない。
そのため中途で入社する人達の前職は様々である。
またハードな仕事のため適性を見るので、採用する人より落とす人の方が圧倒的に多い。

このように多様な人々が選抜され入れ替わっている状況で被差別部落者が多いと言われても、
信じることはできない。
それともこの状況は都市部の話であって
地方の何代も続く葬儀屋さんの場合はまた事情は異なるのだろうか。
エコノミスト
さて
根本的な問題として
葬儀屋が被差別部落者であったとしてそれがなぜ悪い、
ということを考えてみたい。

被差別部落者は、実際に何かが劣っているわけではないのだから、という理屈だ。

しかし少なくとも私はそう思われるのはイヤだ。

私自身が被差別部落者と間違われるのが不愉快、ということでは必ずしもない。
君は被差別部落者だろうと面と向って言ってくる人は皆無で、内心そう誤解している人はいるかもしれないが、相手が心の中で思っている分には、 自分は不愉快になりようがない。

被差別部落者だと誤解されると困る最大の問題は 、
ポリティカルコレクトネス以前に企業活動にとってコストだからだ。

出自は能力や人格と無関係だから、世間にどう思われようと構わない、ほっておけばいいという考え方もあるだろう。
しかし世間は理不尽な考えであると分かった上で、穢れ思想の中でなお生理的に嫌悪感をいだく。
なんとなくイヤを避ける、またその逆のなんとなく好きという空気を作るために
マーケティング部門の広告宣伝に多額の予算を突っ込んでいる一般企業はたくさん存在する。

被差別部落者と思われることは「なんとなくイヤ」という感情を喚起する。
被差別部落者でなぜ悪いと開き直ろうが、そんな思想は理不尽だと叫ぼうが、
葬祭業にとって、そう思われることはマーケティング的にコストなのだ。
そんな差別はやめようと正論を叫んだところで効果は無い。

そうであるならばコストは減らさなければならない。

よって葬儀業界に対するネガティブな誤解に対しては、
(少なくとも自分が事実に反することを思うことに対しては)
このように意見を表明する必要はあるだろうと考えている。
だから私は現代の葬祭業従事者に被差別部落者が多いという事実は無い、
ということを主張したい。

(追記)
取り上げた記事のタイトルの原題は
Japan and the last commute
なのだが「最後の通勤」って誤訳ではないだろうか(ちなみに文中には同じ表現は出てこない)
最期に逝くこと≒「終活」とでも訳せば良かったのでは?

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17件のコメント

またもや、失礼します。
といいますのも、今回の記事の『部落』という言葉に引っかかるものを感じたからなのです。
実は私が暮らす香川県では
市や町ではなく、自分たちの住む区域のことを今現在でも「うちんくの部落」とみなさんおっしゃるので、このような記事をもしこの近所の方が見たら、最初は意味がわからないだろうけど、意味がわかったらすごくご立腹されるのだろうか?と感じた次第です。
誰も悪くないのですが、なんか引っかかりますよね。言葉ってこわいです。

公務員に採用されると配置前に1か月間の集団研修が行われます。
ここで最初に教わるのが「同和問題」。
今では、「同和立法」は期限切れとなりましたが、国政や自治、社会においては
「未だに存在する問題であるのも事実」です。
葬儀関係では、同和立法(同和対策事業特別措置法)において、同和対策事業として
あげられているのが、同和地区(被差別地区)内に公営火葬場、公営斎場、
公営墓地、納骨堂を整備する事。
そして、公営住宅と公営保育園の整備、地区内の雇用確保のために諸産業施設や
事業所を設置する事となっています。

この事業により国及び自治体では、「2020年の東京オリンピック予算5~6回分」を
費やしました。(多くは関連組織やタカリ企業に喰いつくされた)
この事業では、「差別を受けない環境」を謳っていましたが、裏を返せば「部落人は
部落民地区とコミュニティの中で暮らせ」との、閉じ込め自治の観は否めません。
2000年初頭には、この「バラマキとタカリ法」は廃止されましたが、行政的には
未だに存在しています。

公務員の採用において、行政職は高卒以上ですが現業職は中卒以上であり、
屠場や清掃関係現業公務員には「被差別地区出身者がそれなり」なのは事実です。
優先採用もあり、「関西地区では有名」です。
本題の葬儀では、「昔は比率が高かった可能性はあるが、今は特異性は低い」と
考えており、私も同じ考えです。
部落解放同盟にでも通告しますか?(大阪市内の斎場反対運動に絡んでいたので)

香川の葬儀屋さん 様
コメントありがとうございます。
確かに本来は部落≒集落程度の意味だったと思うのですが
いつの間にか被差別者の居住エリアという意味で使われるようになってしまいました。

prof様
確かに公的職業に就いた場合は同和利権のメリットもあるかもしれませんが
自由競争の葬儀屋さんに就いても何のメリットもないですよね。
>部落解放同盟にでも通告しますか?
全面的に彼らのやり方に賛同しているわけでもないので、
その気は無いです。

この号のバックナンバー取れますよ。(¥1,234です)
デジタルではなくアナログ(紙)です。
今回は流石に酷い。(UKから見れば極東の野蛮な国?)
私の方で取り寄せておきますが。

私の知っている限り、経営者は部落出身者ではなく、在日朝鮮人(韓国を含む)もしくは帰化人が多いように感じます。

従業員に関しても部落出身者という感覚はありません。そういった方は基本的にその集落の中で就職をされますし、公務員(ゴミ収集や汲み取り等)にも特別枠があり優遇されております。

ただひとつ言えることは葬儀社の従業員は私を含め少しクセがある人間が多いのは事実であります。
あくまでも私の主観ですが…

取り寄せは時間がかかるので、取りあえず「原書確認」は図書館で。

都内の都立や区営図書館、武蔵野図書館には原書がありますよ。
また、大学の図書館にも必ずありますので。

prof様
確かに図書館という方法がありましたね。
ありがとうございます。

名もなき日本兵 様
>少しクセがある人間が多い
確かに・・・

葬儀業界でトップクラスの読書量を誇る(元)物理教師さんでも、国会図書館等は
利用しないのでしょうか?
面白い資料や論文がゴロゴロしていますので、お使いあれ。

12月10日の件は、「1万枚の案内ビラ」が配られた様です。
12月1日には行政のHPの「広報紙」をclickすれば見れるそうです。
第3回定例議会中であり、本議会への影響は「大きい」です。
政治家ではないのでpopulismではなく、「知行合一」です。

prof様
>国会図書館等は利用しないのでしょうか?
なんかいっぱいありすぎて逆に使いづらそうなイメージだったのですが
今度行ってきます。

当該エコノミスト誌、我が家にありますので、PDFでお送りしましょうか?

さすが葬儀業界4年生 様
しかし葬儀業界4年生 様にそんなことをさせてしまうのは機会費用がとんでもないことになるので
お気持ちだけ頂戴します。
お心遣いありがとうございます。

国際火葬協会はイギリスにあり、国際遺体搬送協会はオランダ。
国際葬儀協会はEU圏。
欧州人からすれば「日本は極東の島国」ですので、伝統や格式を重んじる
者達からすれば「粗野」と見られているのでしょうが。

しかし、葬儀はビジネスでありサービス業です。
伝統や格式を重んじる事も必要ですが、「インドのバラナシも問題です」。
イギリス系の国(UKやUSA)は独自の尺度で測り、CIを無視する傾向があります。
そして、これらは「時代遅れな部分も」。(むしろ、過去の誤った知識や学問が多い)

prof様
>イギリス系の国(UKやUSA)は独自の尺度で測り
ありそうですね。

地方ですけど国籍に関しては聞きますが
同じくナイです。書いたやつ馬鹿なんじゃないの?さすがにイラっときました。

堂々たる記事に感謝します。

かかし様
>堂々たる記事に感謝します。
ありがとうございます。

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