御遺体を「適切に恐れる」 

流行ってますね、インフルエンザ。
と、珍しく時事ネタではじめてみましたが、
しっくりこないですね(^^;)

数ヶ月前、もしパンデミック(感染症の世界的流行)が起きたときの
自社の運営シミュレーションデータ作成の指示を上司から受けました。
自分が勤めている葬儀社が営業活動を全部停止させて葬儀施行に注力したら、
お葬式の最大施行件数は何件かを割り出したわけですね。

でも、よくよく考えてみるとパンデミックが起こったら、
日頃から疲労が蓄積して免疫力が低下している状態のまま人混みで仕事をする
葬儀屋さんが、まっさきに倒れてしまうだろってことに途中で気づきました(^^;)

火葬許可証(病院で発行された死亡診断書を役所に提出して火葬許可証をもらって初めて法的に火葬が可能になります)には
「一類感染症等」か「その他」どちらかに○をする欄があります。

これは何のためかというと
通常亡くなってから24時間以内の火葬は法律で禁止されているのですが
(脳死ではなく心停止で死亡確認していた時代は、生き返る人がまれにいたためだと言われてます)
一類感染症等などパンデミックを引き起こすご遺体は、
感染拡大防止のため即座に火葬することが認められているためです。

以前ある葬儀社の新人さんが、
エイズでお亡くなりなった方の火葬許可証の申請書を書く際、
一類感染症等に○をしてしまったという話を聞いたことがあります。
もちろん、これは間違い。
一類感染症はエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘瘡 (天然痘)、南米出血熱、ペスト、マールブルグ熱、ラッサ熱の7つだそうです。(ウィキペディアより引用)
なんかどれも怖そうな名前です。

病院

病院を訪れた段階で、葬儀屋さんには、
故人が何の病気で亡くなったか分からないというリスクがあります。

結核の場合は隔離病棟なのでわかります。
しかしそれ以外の感染症だった場合はお手上げです。
(ちなみに結核の方の場合は亡くなった後でも、
空気感染をする可能性があるといわれています。
そのため医療用マスクは必需品です)

血液が体外に流出しているご遺体もあり、血液感染を起こす危険が常にあります。

病院を訪れた葬儀社には死亡診断書の病気の内容を開示することを義務づける法律を作ってくれないか、といつも思います。

とはいうものの、感染症を苦に自殺した方の場合は、
死亡診断書には自殺としか表記されないので、葬儀屋にはわからない。

結局、葬儀屋が「自衛」するしかないというのが、現実です。

私の勤める葬儀社では
A型肝炎
B型肝炎
の予防接種が義務づけられており、
インフルエンザの予防接種に関しては補助金がでる
っていう仕組みになってます。

それに加えて
・遺体に触れるときの手袋の着用
(ただしご遺族の手前、医療用の無骨なラバー製ではなく、布の裏側がラバーコーティングされているものを使用しています)
・バンドエイドの常時携帯
・ささくれ(さかむけ)防止のため指先にスクワランオイルを塗る
・医療用保護クリームの使用
・アルコール系殺菌剤の常時携帯
・手洗い・うがい
ってことをやってます。

これらの対策は、当然重要です。
でもまだまだ衛生意識が低い葬儀屋さんが多いような気がします。

例えば病院の出入りの葬儀社さんで手袋をはめていない人をよく見かけます。

葬儀会館の霊安室の衛生管理もずさんです。
いろいろな御遺体を安置しているわけですから、御安置の度毎に、
清掃だけではなく、殺菌消毒をする必要があると思います。
しかし実際にそこまでやっている葬儀社は全体の1%に満たないのではないでしょうか。

エンバーミングを行えば感染症の場合でも衛生度は
かなり改善されるようですが、まだ普及率は日本全体の2%ほどです。
以前記事に書いたように(参照ページ:エンバーミングは日本に定着するか
一般的な普及は難しいと思います。

葬儀屋さんに就職を希望する方は
その葬儀屋さんの衛生管理に着目するのも良いかもしれません。

大体、衛生管理がダメな葬儀社って、従業員も大切にしないので。

あと一般の方の誤解例としては
おくりびとの粋ではない批評でも述べましたが、
納棺士が素手で遺体に触りすぎです。
(映像上しかたなかったのかもしれませんが・・・)
故人の死因を確認しているとも思えません。
だから広末の「さわらないで、けがわしい!」発言は医学的には正解。

「モーニン」という葬儀社を舞台にした漫画のなかでも、
葬儀屋さんが手袋を外して遺体に触れることが
感動的なエピソードとして描かれています。
これもヘンというか、安っぽいヒューマニズムというか。

と、いろいろ感染症の危険性について書き連ねましたが
一方で過剰に怖がりすぎるのも良くないのかなと思います。

自分がまだ駆け出しのころ、
故人がハンセン病患者であると知り、かなり動揺した記憶があります。
そして文献を調べてみて自分の無知を深く恥じました。

昨日の日経新聞で瀬名秀明氏が寺田寅彦氏の
「適切に恐れる」
という言葉を引用し、
インフルエンザに対する過剰反応と軽視を戒(いまし)めていました。

できるだけ正しい知識を持つことと
バランス感覚が重要ってことですよね。




4件のコメント

物理教師さん、こんばんは(*^_^*)。

何度も読み返してしまうほど、貴重な記事を書いて頂き、ありがとぅございましたo(^-^)o。

うちの会社はこの観点でいうとまだまだ改善点がありますね(>_<)。 早速導入できる部分から取り入れていきたいと思いました。 忙しいのに、本当にありがとぅございました(^-^)g

さくら777♪さん、こんばんは(^_^)

> 忙しいのに、本当にありがとぅございました(^-^)g
いえいえ、お題をいただいた方が、テーマについて悩まなくて済むので、自分としては書きやすかったですよ。

と、言っても以前学生さんから鳥葬について教えて欲しいってメールをもらったことがあったんですけど、
この時は何も書けなかったですね。

いくらなんでも鳥葬はやったことないって!(^^;)

今、所要で東京へ向かっているんですが…

コメント返信を読んで…

“鳥葬”…(; ̄Д ̄)

1人大笑い(≧ω≦)b!

電車の中で笑いをこらえるのは、かなり腹筋が鍛えられまふ(>_<)! 確かに日本で経験したことのある人は皆無かもしれませんね(*^m^*)

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