葬儀社の採用がダメな3つの理由

以前葬儀業界の採用について
採用されるための最大の要因は、
採用されることを目指す人の能力より、
求人のタイミングの方なのかも知れない
」ということを言いました。
(参照ページ:葬儀社に就職したい!人のためのノウハウ 4/5

システムにおいて葬儀業界が他の業界より進んでいる部分て無いのですが(^^;)
ご多分に漏れず採用においても同様だと思います。

葬儀社の採用がダメな3つの理由

葬儀社の採用がダメな理由は以下の3つ

1.人を選べるほど希望者がいない
2.辞めていくのが普通なので、採用してからふるいにかければいいと思っている。
3.葬儀屋さん採用の方法論が確立されていない

調査1

1.人を選べるほど希望者がいない

葬祭業というのは、みんながやりたがらない仕事なので、
かつては就職希望者があまりいませんでした。
だからよっぽどひどい人を除いて、フリーパスだったようです。

私が葬儀業界に入ったときも、
あなた、それ社会人としてどうよ?
っていう人が結構いました。
(今でもいますけど・・・)

でも時代は変わりつつあります。
最近は新卒で葬儀業界を希望する人も珍しくありません。

日垣隆さんの本「部下の仕事はなぜ遅いか」によると
「順調に伸びている会社の採用倍率は7倍が目安」
だそうです。
そのうち葬儀社もこのラインを超えるところが出てくると思います。

そうなったときにちゃんとした人材を選べるでしょうか?

2.やめていくのが普通なので
採用してからふるいにかければいいと思っている。

この業界は人の流動性が高く転職が多いことを以前お話しました。
(参照ページ:葬儀屋の給料ってどれくらい? 2/2
葬儀業界は新人教育が下手である 1/2)

たしかに中途採用が多く、仕事は盗めという考えだった時代は
2の方法でも採用コストも、教育という投資コストも少なくて済みます。

もちろんそれではちゃんとした人を採用して、
ちゃんと育てることはできないのですが、
全体的に葬儀屋のレベルが低かった時代はそれでも成立していたのだと思います。

しかし最近は新卒を採用し、教育にも投資する葬儀社も増えてきました。
そんな状況で新人に1年ほどでやめられては、教育という投資と、
ヒューマンリソース(人的資源)というリターンのバランスが取れなくなります。

つまり2の方法論は通用しなくなりつつあります。

参考文献


3.葬儀屋さん採用の方法論が確立されていない

私は入社した新人の教育係は何度もやりました。
そこで感じるのは
いくら教育が大事と言っても結局
その人自身が元々持っている「素材=職業の適性」で、
決まってしまう部分が大きい
ということです。

自分にできるのはその新人のベクトル(方向性)を伸ばすだけで、
向きは変えられないってことです。

同様のことは、安田佳生氏や日垣隆氏、そして多くのホテルマンが記した本でも目にします。
一流のホテルはスタッフの採用の際、多額のコストをかけているようです。
素材が大事、ってことが分かっているからだと思います。

私の勤めている葬儀社は、採用に関しては
まぁ、ちゃんとしている方だと思います。

それでも採用担当者に採用の根拠を聞いてみると、結局のところ
「印象」
を選択理由にしているようです。

面接

で、最近こんな本を読みました。

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか (光文社新書) (新書)
樋口弘和 (著)

内容に関しては賛同できる部分とできない部分がありました。

賛同できる部分を一つ挙げると
印象を基準にするのは危険
という点です。

特に葬儀業界の場合、面接官が印象を基準にすると
バーンアウト型の人材を選びがちです。
バーンアウト型は八方美人型が多いですから、
面接官に良い「印象」を与えてしまうのです。
(参考ページ:葬儀屋さんのタイプ

そして採用して熱心に教育したものの、これからって言うときにやめてしまう、
というパターンを繰り返すことになります。

逆にマイウェイ型は
印象を基準にした場合、面接の場ではバーンアウト型に負けてしまうと思います。
場合によってはこいつちょっとクセがある、って否定的に見られる可能性がありますから。
本当は一番投資とリターンのバランスが良い人材なんですけどね。

バンカータイプはそもそも面接に来ないからいいです(^^;)

アルチザンタイプは、面接官がアルチザンタイプだと共鳴して、
気に入られるってことが起こりえると思います。

個人的な意見ですが、採用人数が五人くらいいたら、
一人は意図的にアルチザンタイプをいれておいてもいいと思います。
アルチザンタイプはスキルアップのスタートダッシュは早いので
新人全体のレベルを早い段階で上げてくれるからです。
周りはトップの水準に合わせようとしますからね。

ただアルチザンタイプは一人前になってから、
上達を止めてしまうか、
もしくは上達を顧客のためでなく仕事の手抜きに使ってしまいがちなのです。

アルチザンタイプはあくまで組織にとっての、悪い意味で安定的な予定調和を避けるためのスパイス(毒?)として必要であるというのが私の考えです。

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか

先程紹介した、新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか (光文社新書)樋口弘和 (著)では
面接をかしこまったお見合いみたいな形式で行うべきではない
と述べています。

「採用面接において印象ではなく過去の行動事実のみを評価する
なぜなら社内の人事評価制度自体が、
部下のそれまでの実績で上司が評価する仕組みなのだから、
面接においても同様に行うべき」という理屈ですね。

私が葬儀屋さんに必要と思う才能は
「ホスピタリティ」と「タフネス」

です。
(参照ページ:葬儀屋に必要な能力

だから私が面接官ならそれらの点に引っかかる
過去のエピソードを引き出したいですね。
葬儀体験を通してどう思ったか、どう感じたか、という部分です。
それからメンタル耐性があるかどうかも分かればいいですね。
そしてちょっとクセのあるタイプ(マイウェイ型)に目を付けます。

葬儀屋2

この本に書かれていることで他に参考になった点は

○採用基準は今活躍している若手のコピーを取ればいい

これもその通りだと思います。
でも、葬儀社は零細企業が多いので、
若手のコピーを取ろうにもサンプル数がまだまだ少ないのが悩みの種です。

○採用チームが初期の教育も担当する。

これも同感ですね。
新人を教育しながら、
「だからこのタイプは採っても潰れるんだって。分かんないもんかな」
って歯がゆく思うことがあります。
で、過去に辞めていった新人のことを思い出し、切なくなります。

教育係の暗黙知が採用担当者にフィードバックできればいいのに、
って良く思います。

ま、私は優柔不断なんで、もし私自身が面接官をやった日には、
どっちを採用する?
って悩んだあげく絶対結論出せないとおもいますけどね(^^;)

それから、葬儀社への就職を考えている方へ。

いままで書いてきたのは私の、採用に対する理想論です。
現実の採用は違います。

実際の対策はこちらのページ(葬儀社に就職したい!人のためのノウハウ 4/5)を参照にしてみてくださいね。

従業員は5年くらいで辞めてもらった方が都合がいい?

私は葬儀社の従業員ですから、従業員目線で述べてきた訳ですけど。

しかし経営者目線ではどうなんでしょうか。

もしかすると葬儀社の経営者にとって、
従業員は5年くらいで辞めてもらった方が都合がいいのでは?

昔のHISってそんな感じだったという話を友人から聞いたことがあります。
(たしか「会社図鑑」にも似たような話がのっていたような)
安い給料で、過酷な状態で働かせて、
最初の数年で辞めてしまうって人が多かったと聞きます。
この構造は、旅行業界が人気業種で
入社希望者が多かったために成立していたようです。
(と言ってもいつまでもそんなコトが通用するわけもなく、今は違うようですが)

葬儀屋が自分の能力に付加価値をつけず、
川下り系の仕事(参照ページ:葬儀屋のキャリアプラン)を続けるだけでは、
体力は加齢とともに低下して、生産性は頭打ちになってしまいます。

となると、葬儀屋という組織にとっては、
給料が上昇カーブを描く前の入社5年くらいで従業員が次々辞めて、
20代が一番多い人口ピラミッド構造でいた方が、
経営者にとって都合がよいと考えられないでしょうか。

もちろん実際のところ、人材の需給バランスが
かなり買い手有利で成立しないとそんなことはできないわけですけど。

でも最近志を持って葬儀屋になりたいという若い人が徐々に増えていて、
かつ不景気で葬儀屋でも仕方なくやるかという人も増えてくるのであれば、
経営者がそんなことを考えないとも限らないですよね・・・

それからたしかに
労働環境が悪いと
→ES(Employee Satisfaction従業員満足度)が低くなる
→CS(Customer Satisfaction顧客満足度)も低くなる
→サービス業を営む組織として競争力が無くなる
という結果になるはずなんですが、
お客様の感謝の声があまりに甘美なので
劣悪な状況で潰れるまでがんばってしまう葬儀屋さんも
多いと思われます。
クレバーな経営者が、そんな状況を利用して
潰れることを前提に従業員を採用してしまう
っていう可能性が無いとは言えない・・・

というような被害妄想にふけってしまう今日この頃です(^^;)