葬儀屋に必要な能力

今回は葬儀屋に必要な能力とは何か?というテーマでお話したいと思います。
(葬祭業への就職を考えている方向けの内容ってことになりますかね)

たまに会社説明会や学校で話す機会があるのですが
その際良く出る質問が
葬儀屋に必要な能力とは何か?
です。
私は
葬儀屋に必要な能力とは「ホスピタリティ」と「タフネス」である
と返答しています。

ホスピタリティとタフネスがなくては葬祭業を長期的に続けられません。
逆にこの二つの能力があれば、他の欠点はカバーできると思います。

ちなみにホスピタリティは「心遣い、もてなしの心」という意味で
病院の英訳のホスピタルと語源は一緒です。

ホスピタリティが無いと葬儀サービスを供給する意味や目的を見失います。
(この点については後日詳しく述べたいと思います)
体力が無いと疲労が溜まり、サービスの質が落ちます。

ホスピタリティを習得するには

ではホスピタリティを習得するにはどうしたらよいのでしょうか?

答えは、そんな方法は無い、です。

異論はあるかと思いますが、
ホスピタリティというのは、スキル (技術)で形成されるものではなく、
タレント(才能)であると思います。

例えば顧客にちょっと難しいリクエストをされたとき「面倒だ」と思うか、
「腕の見せ所」と思うのかは教育によって培われるものではありません。

ホスピタリティの無い者には、たとえ熱心な社員教育を行ったところで、
それを与えることはできません。
百歩譲って教育によってホスピタリティを与えることができたとしても、
企業は更正施設ではないのです。
そのような教育にコストをかけるのは割に合いません。
逆にホスピタリティを持つ者は、
教育しなくても自分からより良いサービスのためにスキルを求めます。
もし、ホスピタリティはあるけどスキルが無いという人がいたとしたら、
その人はおそらくホスピタリティもありません。

つまり葬儀屋としては、
社員の選抜の段階でホスピタリティを持った人材を採用する必要があります
・・・ってことを社内で主張しているのですが、
なかなか採用というものは難しいようですね(^^;)
採用の時点で見誤ると、取り返しがつきません。
一人前になるまでの長い期間の教育という「投資」に見合った「リターン」を得ることができないという結果を招きます。

高級ホテルについて書かれた本を読むと、
クリーナー(掃除担当者)を採用する時でさえ何度も面接を行い、
支配人も面接に立ち会うと書かれています。
さすがに、歴史があるぶん、ホテル業界はシステムができあがってると思います。
長期的に見ると、結局その方が効率的なんですよね。
次はもう一つの能力である、「タフネス」についてのお話です。

タフネス

タフネスとは
肉体と精神の強靱(きょうじん)さ
ということです。
「葬儀のサービスとは?」
と聞かれたら
「体力である」
と私なら答えます。

それくらい体力は葬儀のサービスを行ううえで
大切であると考えています。

「ホスピタリティ」とは異なり「体力」に関しては努力次第で何とかなります。

防衛体力

体力も
体調を維持する「防衛体力」と
重いものを持ち上げたりする「行動体力
の二つに大きく分かれます。

体力をつけたり、維持したりする方法論は人それぞれなので、
以下はあまり参考にならないかもしれませんが、
私がやっていることを例として紹介したいと思います。

「防衛体力」のために私が行っているのは次の二つ

○酒・たばこはやらない

余談ですけど、葬儀業界は酒・たばこ・ギャンブル好きが多いですよねぇ。
人の勝手ですけど、酒とたばこはやらないですむなら、
それに越したことはないですよね。

○睡眠は十分取る

葬祭業という仕事は24時間対応なので、
徹夜もたまにありますし、3週間ぶっ通しで出勤するということもあります。
そして、悲しいことに私はロングスリーパー(長く寝ないとダメな人)なんです(-_-)

ショートスリーパーの能力が1千万円で買えるなら、迷わず買いますね。

無い才能を嘆いても仕方ないので、私の対策は
会社の近くに住む
です。

通勤時間を無くしてしまうんですね。

会社の近くに住むことによってもう一つメリットがあって、
徹夜明けなのにレポートの提出が明日までみたいな時は
(予定を立てられない葬儀現場の仕事と締め切りのあるデスクワークが混在する職種は大変なのです)
家に帰って数時間寝てしまって、夜中会社で作業をするってこともできます。
葬祭業は24時間営業ですから、事務所はいつでも開いているんです。

また休みの日に出社して、仕事することもできるし。
休みだから葬儀依頼の仕事が入っても、
デスクワークを優先できるので、確実にまとまった時間が取れるのです。
いわゆるルーティンワークではない「考える時間」に当てることができます。

いや、それって、ワーカーホリックでしょ、
って言われそうですけど、ええその通り(^^;)
トリンプの元社長の吉越さんのように、
仕事はOFFの時間を支えるためにあるっていう考え方はもちろん尊重しますけど、
その考え方では葬祭業はつとまらないと思いますね。
日垣隆さんの「仕事とプライベートの境目をぼかす」っていう考え方の方がしっくり来ます。

どうしても眠いときはカフェインの錠剤ですね。
安いしすぐに摂取できるので。
常に封を開けていないのが1箱ないと不安になります・・・っ
てあまり体に良くないですね。ま、これはしょうがないのです(^^;)
制約の中でベストを尽くすっていうことで。

ただしやっぱり限界を迎えることは当然あります。
私の場合、体調管理の危険信号というのを持ってます。
食事中に噛み合わせがずれて、唇を何度も噛むようだと体からのギブアップのサインです。

休みます。

それからもし風邪を引いてしまったときに治す方法は
お葬式の担当を持つ!
です。
やっぱり交感神経がフル回転するからでしょうかね・・・
冗談抜きで治ります!

やっぱりワーカーホリックかも・・・(T_T)

次は「行動体力」の話です

行動体力

私が行動体力の為にやっていることを書いてみます。

○ウェイトトレーニングを行う
私の場合、この葬祭業の仕事に就いてから自分の体力不足を痛感しました。トレーニング雑誌を読み漁り、遅くまで営業しているジムに通いはじめて今に至ります。

ダンベル

この仕事は特に脊柱起立筋を鍛えておく必要があります。脊柱起立筋というのは腰のあたり、背骨周辺についている筋肉です。物を持ち上げる時に使う筋肉ですね。
故人の体重が100キロを超える場合もありますから、この筋肉が弱いと腰を痛めます。
良く同業者の方で腰を丸めて持ち上げようとしている人がいますけど、これは腰痛のもとです。
「トレーニング デッドリフト」でネット検索してみると分かりますが、常に背骨はS字を描く(おへそを突き出し、お尻を引く)必要があります。
エー次に膝の動きは・・・、ってマニアックな話が続いてしまうのでこのあたりで終わります<(_ _)>

○食事の内容を意識する
私はタンパク質の摂取量に気をつかってます
(筋肉を増やす場合は体重1キロあたり2グラムのタンパク質を1日に取る必要があると言われます)
要は栄養摂取に気を配りましょうということです。

葬儀屋は、12時になったら外に出かけてランチを食べて、
1時間半の昼休みなんて、絶対無理な職業です。
移動中の車内でおにぎりを食べるということもしばしばです。
そんな状況なので、1日が終わるまでに、
どこかで栄養摂取のバランスを取らなくてはいけません。

葬儀業界に入ってから、
げっそりやせてしまう人と太ってしまう人の両極端が多いように思います。
注意しましょう。
食事

あの、葬祭業目指している人は
私の生活が葬儀屋さんの標準だと思わないでくださいね。

思わないか(^^;)

特に体調管理に関しては周囲から極端だと言われますので。
でも幸いなことに、筋力は入社当時を上回った状態でキープしています。
大きなケガをしたこともありません。
ただ最近トレーニングの筋肉痛が翌日ではなく
1日明けて出るようになったので(遅発性筋肉痛ってやつですね)朝起きて
「あれ、俺なんでこんなに体が痛いんだろう」(笑)
ってことが多くなりました。

過去、同僚で体力がなくて潰れていくスタッフを多く見てきました。

葬儀のサービスとは運動量です。

体が動かなくなったら、葬儀屋としての商品価値はありません。
体が動いていても、
いっぱいいっぱいの状況だとホスピタリティが発揮できず、
良いサービスができません。

体力は重要です。

それからタフネスのもう一つの要素であるメンタルのタフネスについては
拙文 葬儀屋さんの「面接と採用」論  をお読みください。

「ホスピタリティ」と「タフネス」は両輪の関係
です。

どちらも必要ということがお分かりいただけたでしょうか?




2件のコメント

 「ホスピタリティ:心遣い、もてなしの心」

 サービス業を生業とするものには
 不可欠のものなのではないでしょうか。

 私もサービス業の端くれなので、
 どうしたら葬儀屋さんのような、
 サービスの真骨頂に手が届くのかを
 ずっと考えていました。

 女性葬儀屋さんのブログには、
 「スペシャリストであり、
  なおかつゼネラリストでもないと、
  いけないなと思う」と仰ってました。

 私の職務は、
 逆にスペシャリストを求めない職業なので、
 スペシャリストにならないとすると、
 ゼネラリストを極めなくてはいけない
 ということになります。

 ホスピタリティならば、
 自分にも少しはある気がする。
 よし、ホスピタリティを培っていこう!
 と思っていたら、
 
 「ホスピタリティというのは、
  スキル (技術)で形成されるものではなく、
  タレント(才能)であると思います」
 とありました。
 
 う~ん、
 私のサービスのレベルが
 葬儀屋さんのレベルに達するまでの道は、
 遥か遠いなぁ…
 
 
 

 

 
 

Narcissus様、いつもコメントありがとうございます。

>  葬儀屋さんのレベルに達するまでの道は、
>  遥か遠いなぁ…

ホスピタリティも有りか無しかの二者択一ではなく
グラデーションの濃淡がいろいろある状態だと思います。
実際に葬儀屋さんでもホスピタリティ無い人も多いですので(^^;)

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