葬儀屋さんの面接官はこうやって採用している

「葬儀屋さんの面接と採用について」のお話しです。

私は大手葬儀社で採用面接の担当も務めています。このブログでも葬儀屋さんの面接と採用についての記事を何本か書いてきました。
採用する側の考えを伝えることで、就職活動のヒントを提供します。

葬儀社の採用の問題

家族経営の零細企業の多い葬儀業界で
最も多く行われている面接と採用はこんな感じでしょう。

退職者が出て欠員が生じた
→業界内のつてをたどり、声をかけて誘う
→社長が面接をして気に入ったら採用

一方でちゃんと組織化されて人事部もあり、
他業種と同じように新卒から採用するという葬儀社も、最近は増えてきました。

しかしこの場合も
採用する側がちゃんとしたポリシーやノウハウを持っていないケースが
多いです。

私が二十数年前面接を受けたある葬儀社では
「この面接官は俺のことレプリンカントだと思っているのか?」
(↑よく分からない例えで恐縮ですが、映画ブレードランナーをご覧下さい)
と思いたくなるような支離滅裂な質問を受け続けたことがあります。

従業員の生涯賃金を考えると、新卒の採用は「3億円以上」の買い物です。
また「一に採用、二に教育、三に制度」と言われます。
それだけ採用が大事だということは
サービス業で教育を担当したことがあることなら
痛感されていることと思います。

というわけで、実際に面接官である自分の考えを述べていきます。

注意点としては、前述したように葬儀業界の面接の実態はいい加減なので、
これから述べられることは一般的に広く行われている話でもなく
ましてや、こうすれば面接に通るという話ですらありません。

しかし採用する側とされる側、双方に対する提言になれば幸いです。

面接官の心構え

さて面接と採用を経験した方ならお分かりかと思いますが、
一般論として面接と採用は難しいです。
職種が葬儀担当スタッフなら、さらに難しいです。

一人の採用枠に10人の応募があったとして、
下位5人を外すのは、ほとんどの面接官ができると思います。
ちょっと、これは・・・って言うレベルです。
他の業種で通用しないから、葬儀屋ならなんとか・・・という、
考え方というか、戦略が根本的に間違っている人もたまにいます。
こういう人は明らかに、地雷がむき出しになっていますから、10分程度の面接でも十分分かります。

問題は上位5名から一人を選ぶ行為。

採用する側も自分の選択にそれほど確信があるわけではありません。
でも偶然を必然に近づける努力は絶対必要。
採用する側だけでなく、採用される側の人生のターニングポイントに関わるわけですし。

さてそれでは、面接の仕方を・・・

いや、その前に大切な視点があります。
「選んでやるではなく選んでもらう」視点です。

内定を出したのに辞退されるという煮え湯を飲まされた葬儀屋さんは
多いと思います。
心変わりとか親の反対を押し切れなかったとか。

そんな人に内定を出したのが悪い、といえばその通りなのですが・・・

葬儀業界のように、
なんだかよく分からなくてダーティーなイメージのある世界では
葬儀業界と自社がいかに魅力的であるか、
をアピールする意識が採用する側に必要だと思います。

こういう面接官がいる職場で働きたい
と思ってもらえたら、理想ですね。

「面接官である自分も審査されている」
というくらいの気持ちでちょうどいいんじゃないでしょうか。

それから葬儀業界は全ての人が顧客になりうるという特徴があります。
たとえ不採用通知を出したにしても、その人と将来顧客として出会いたいのです。

そのためにも
葬儀業界と自社がいかに魅力的だと感じてもらえるか
という視点が、面接の場では必要だと思うのです

履歴書

履歴書で誤字脱字のある人は、
かなりの減点です。
きっと礼状や発注の失敗をやらかすと思われるからです。

学歴

さて学歴をどの程度考慮するかという問題です。
実際はあまり気にしないことがほとんどです。
私も同僚の出身大学なんてほとんど知りません。
大卒がシグナリングの機能を果たすのは
大東亜帝国から上だと個人的に思っていますが
実際はこのクラスから上の人たちってあまりいません。

ただし
以前学歴に関する記事で述べたように
(参照:葬儀屋と学歴
私は個人的には高学歴の方に来て欲しいと思っています。
面接2

第一印象

面接官向けに書かれた本の中には
「第一印象」に引きづられないようにと戒(いまし)めているものもあります。
私も以前はそう思っていましたが
最近第一印象を重視するようになりました。

なぜならお葬式の現場では第一印象が重視されるからです。
実際お客様に初めてお会いしてからすぐに数百万の商談をする場合もあります。
第一印象が悪いと話になりません。

だからシャツの一番上のボタンがとまっていなかったり、
ネクタイが緩(ゆる)んでいたりしたら大きく減点です。

緊張しているのは全くマイナス要因ではありません。
私もいまだに遺族の前で緊張します。
むしろ「緩い」感じでリラックスしてる人は評価が低いです。
購買層である年配の方に好感を持ってもらえるか
この人が肉親の葬儀の担当だったらどうかが、一つの目安でしょうか。

自己分析・適正分析

面接する側の私は
「新卒採用の学生の方は、葬儀屋さんとしての
自分の適正分析を全部間違えている」
と思っています。

面接4

他の業種でも学生側の予想と、現実の実務とのずれというのは存在します。
しかし葬儀屋さんの場合は、そのずれが大きいです。
かすりさえしていないときも多々あります。

私は喪主を経験してからこの業界に入りましたが、
それでも事前に正確に理解できていたのは
実務内容の3割くらいかと思います。
そういった経験の無い人は、
1割すら理解できていない場合もあるでしょう。

だから
学生自身が語る自己分析や自己アピールや志望動機の「意図」とは、
全く別のところで「素質」をいかに見いだせるか
という伯楽の能力が面接官に求められると思います。

よくボクシング漫画で、ボクシングトレーナーの老人が
雑踏で人をよけて歩いている少年の無意識のフットワークを見て
「おおっ、この子は!」
っていうあの感じです。
・・・って余計分かりづらい例えでした。すいません。

葬儀の打合せでも、
お葬式のことを全くご存じない喪主さんから、
ご自身でも気づかなかったニーズやウォンツを引き出す作業といっしょです。
この例えは正解!

とはいえ学生の側が自分の適性をあれこれ考えてしゃべるのは
全くの無駄かというとそうではないです。
方向は間違っていても、その「深さ」はその人自身の熱意を
測るものさしになると考えています。

面接のポイント

さて面接官が、というか私が一番見ているのは
「タフか?」
ということです。
メンタル面と肉体面、両方に関してです。

葬儀屋に必要な能力

この業界で一番多い失敗は、
「教育という投資」を1~2年かけて行ったにもかかわらず
辞められてしまうことです。
これはダメージが大きいです。
大手なのに新卒を採用しない、という会社はこのリスクを避けているのでしょう。

採用担当者なら
できるだけ長く(できることなら一生)ウチではたらいてもらいたい、
と思うでしょう。
ただ、本音を言うと(上司に怒られますけど)
ウチの会社辞めても、葬儀業界に居続けてくれれば、
私個人の心情としてはまだ救われるのですが・・・

業界を離れられてしまうのは、やはり辛いです。

面接5

ではタフかどうかをどうやって見極めるか?

なんとなくタフそうに見えるから採用!
ではリスクが大きすぎます。

これは
本人の過去の事実(エピソード)
からあぶりだします。

「どんな辛いことを経験して、どう切り抜けてきたか」ということを、質問します。

志望動機

タフさ以外に知りたいのは
志望動機
です。

「あなたはなぜ(どのような経験を通じて)葬儀屋になりたいと思ったのか」
を知りたいのです。

これらのヒントを見つけるために
私は事前に履歴書やエントリーシートを
徹底的に読み込んでおきます。

ライブ感を重視し、ほとんど読まないで面接にのぞむ、という面接官もいます。
しかし私は履歴書やエントリーシートをちゃんと書く人は
熱意があり、深く考えている人である
と思っているので
あえて相手の用意したその土俵に乗って質問をするようにしています。

余談ですが
これらの 過去の事実(エピソード) で最も「強い」のは
「肉親を亡くした経験」
でしょう。

これをちゃんと語れたら
志望動機とメンタル的にタフであるという適正を
両方同時に満たすことになります。

これ以上のアドバンテージはありません。
ただよく考えてみれば
失ったもの大きさにくらべれば
こんなアドバンテージなんて塵(ちり)みたいなもんですけどね。

ただかつて就職活動中の私は
この塵みたいなものでも大切な武器にしたいと思ったのです。
(参照:私が葬儀屋さんになった理由

ホスピタリティマインド

次にホスピタリティマインドがあるかも見ます。

その中でも(遺族に対する)共感性は、葬祭業の場合必須です。先ほど

「どんな辛いことを経験して、どう切り抜けてきたか」ということを、質問します。

と、書きました。実はこのとき、新卒のグループ面接なら、その「つらい経験」を聞いている周りの就活生の表情も、よく観察しています。

他者の辛い話を聞いて、つらそうな表情を浮かべている人は共感性が高いです。

共感性が高すぎることの問題は、↓これらの記事で触れています。

葬儀屋さんが共感することの危険性

HSPの葬儀屋さんについて考える

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力も当然見ます。

しかし求めているのは流暢(りゅうちょう)にしゃべる能力ではありません。

当意即妙な受け答えができればそれにこしたことはありませんが、
人生のターニングポイントの一つである面接で緊張して
普段通りにうまくしゃべれないのが普通です。
それにトークスキルや発声なんてある程度なら教育と経験でカバーできます。
むしろべらべらしゃべる人の方が、巧言令色鮮し仁
でマイナスの印象を持つことがあります。

この仕事で大切なのは「傾聴力」だと思います。

ちゃんと人の話を聞くことができているか、
ということです。
遺族とのコミュニケーションで大切なのはそこなのです。

内向型人間が葬儀屋に向いている3つの理由

そして傾聴には、非言語的な内容も含みます。

私が面接官のときは相手がしゃべっているときにわざと、
頭に「?」マークが浮かんでいる表情を浮かべることがあります。

そのことに気づいて別の表現をしたり、
かみ砕いて分かり易く説明しなおしたりできる人は
ポイント高いです。

さらにシンプルに分かりやすく説明できれば、なお良いです。 なぜならそれがお葬式の打ち合わせで必要な能力だからです。相手が全く知らないことをうまく説明する能力が問われます。

このあたりでコミュニケーション能力を測ります。

面接3

面接での質問

一通り面接のやりとりが終わって
「最後何か質問はありますか」と面接官に聞かれて
「いえ、ありません」と答える人がいます。

これはもったいないです。

事前に複数の質問を用意しておくべきです。

ちなみに福利厚生系の質問はやめておいた方が無難です。
基本的に、ワークライフバランスの存在しない業界なので(^^;)

聞くべきは
たとえば新卒の場合
「従業員の何割が新卒か」
とか
女性の場合なら
「女性社員は何割か」
という質問です。

なぜなら葬儀屋さんは中途入社組の多い男社会
の会社が多いからです。
自分がマイノリティになるのかそうでないかは
知っておくべきだと思います。
マイノリティだとストレス度が上がるので、当然自分と同じ属性(性別・学歴・年齢など)の従業員が多い会社が好ましいです。

後は「葬祭ディレクターは何人いるか」とか「研修制度はあるか」
という質問も、
教育制度の充実度を調べられて、相手に勉強熱心であることもアピールできるので
一石二鳥だと思います。

シンプルな採用方法

私の同僚の一人が雑談の最中
「採用面接なんかしないで、
いまからビックマック買ってこい、って言って、
2番目に早く買ってきた奴を採用すればいい」
と言いました。

名言だと思います。

葬儀の現場は、
何が起こるか分からない、理屈よりもリアリズムが支配する世界です。

気転がきいて行動できる現場力のある奴を選ぶには、
上記の方法がシンプルで分かりやすいということらしいです。

面接7

それにしても
なんで2番目かっていうと、
1番の奴はモラルハザードをおこしたり、ルール破りをしたりしがちだから、
とのこと。

たしかに(^^;)

どういうわけだか、葬儀業界は
現場力と、モラルがトレードオフの関係になってしまう人が多いのです。

あっ私ですか?

私なら
「ビックマックだけ買っていったら、食べる人のノドが詰まるんじゃないか
と思って、
ドリンクもオーダーしちゃったせいで、3番手になった奴」
を採用します。

機転がきくこと

現場上がりの面接官で、機転がきくことを重視する人は多いですね。
エントリーシートろくに読まないで、やたらと突飛で意表を突いた質問を続けるのは、だいたいこのタイプです。

私はそのやり方を評価しません。

最低1時間ほどそんな話をするならともかく、
面接官一人につき10分くらいの持ち時間でそんなことをすると、
たまたまうまく回答できたという「運」の占める割合が高くなります。

もちろん「運」に左右されることはあるだろうけど、
それを認めると面接官の存在理由が無くなります。

正直10分くらいの会話じゃ正直なところ適正ははっきりとわかりませんが
面接官は最終的に誰かを選ばなければいけません。
運ではなくて、面接官なりの、その選抜の根拠を持つのが、
面接に来た相手に対する礼儀でもあると思います。

それに、機転がきくってことを、私はそれほど重要視していません。

なぜなら
私があまり機転がきかないタイプだから(^^;)

機転が利かなくても、
それをカバーするために人より多く担当を持って「経験」をつんで
日頃から葬儀のことを考え続けて「準備」を重視するようにすれば、
なんとかなります。

機転がきくにこしたことはないですが
正解は一つではありません。
面接8

コネ

コネ入社の問題です。
ちゃんとした葬儀社は
基本的に「コネだけ」で採用することはないと思います。

向いていないと判断した人は、当然落とすでしょう。
誰でもできるという仕事ではないので、お互いのためです。

またエントリーに関しても
業界の人気度の低さからいって(笑)
面接のエントリーはよほどのことがないかぎりできると思うので
実際はあんまりコネって意味がない、と思います。

まったくの余談ですが、
就職活動中の学生に聞いた「入社したい会社ランキング」って、
あれなんだろう。

就活生のころから不思議に思っていました。

入りたい会社を聞かれて、その時の人気企業を答える学生って
あんまり優秀じゃないような・・・
(入れるもんなら私も入りたいですが(^^;)
ちなみに私が学生の頃はJALが1位だったと思うのですが、そのご一度つぶれたのは御存知の通り)

すくなくとも、上記のアンケート上位に入る会社を答えるような学生は、葬儀業界には来ていないはずですし、それでいいと思います。

モラル

業界内転職の中途採用の際は
モラルを重視します。

モラルってなんだよ、って思われるかもしれませんが、
葬儀業界内の方なら分かっていただけるかと。

稼げりゃいい、ってもんではなくて。

面接9

そのために私がぶつける質問はこんな感じ。
「お葬式は必要だと思いますか」
「それはなぜですか?」
「葬儀屋さんにとって一番大切なことは何だと思いますか」
「印象に残っている葬儀をあげてください」

この質問にちゃんと答えられる人は
日頃から真剣にお葬式のことを考えていて、
信用できる人だと思います。

面接の会話

面接の会話というのは、大きく分けて
「他に(同様のことは)ありますか」
と水平方向に広げるパターンと
「なぜ、どうして」と垂直方向に掘り下げていくパターンがあるそうです。
私は垂直方向に掘り下げていくタイプです。

ただこんなふうに聞き続けていると相手に圧迫感を与えてしまうので
(以前同僚に指摘されました。)
できるだけ、相づちを打ったり、発言内容の要約と確認をしたりして
「あなたのことが知りたいから、こんな風に聞いているんですよ」
というサインを送るようにしています。
面接10

女性優位

面接をして感じるのは、
一般的に同世代なら男性より女性の方がしっかりしている
ということです。

どうしても24時間労働と肉体労働の部分があるので、
構成比率としてある程度男性を採用せざるをえない部分はあるのですが。

女性優位の原因ははっきりわかりません。
優秀な男性は葬儀業界は最初からパスなのか?
女性は名より実をとるのか?
女性の方が仕事に関して深く考えているのか?
などがその理由でしょうか。

面接1

さていろいろ書いてきましたが、冒頭で述べたように
あくまで私が理想とする、こうだったらいいなという面接と採用の話なので
必ずしも一般的に行われているということではありません。
葬儀業界の面接と採用がこうあって欲しい、という私の願望も含みます。

しかし少しでも、これから葬儀社の面接に向かう方のお役に立てれば幸いです。

それから
全部を読み返して思ったのですが
私自身、この基準で面接されたら通らないかも…

 




4件のコメント

昨年某大手K社を蹴られました。
頑丈さとエンバーミングのスキルには自身あるんですがねえ

エンバーミング以外に泊まりと搬送、受注の立ち合い、心理学専攻していた過去の経験もホスピタリティに活かせる、とアピールしまくったにも関わらず

「表情と感情がない」で落とされる…

しゃべったらしゃべったで「あいつは余計な事までしゃべる」なんでしょうけど(笑

まぁ大手とは言っても研修に来ない人間は採用しないって事らしいです(笑

エソバソマー様、コメントありがとうございます。
就職のポイントの一つは、
いっぱい受けてみる
ということでしょうか。
うまくいくことをお祈りしています。

う~ん、物理教師さんはまだ生涯賃金3億の世代ですか…ま、3億が1億でも高い買い物なのは違いありませんが(汗

はるさん、
たしかに今の若い世代は正社員でも、
そんなにいかなくなりそうなんでしたね。
うっかりしてました。

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