HSPの葬儀屋さんについて考える




今回は
HSPの葬儀屋さん
がテーマです。

HSPの関連書籍を5冊ほど読んだレベルの議論です。

問題提起を目的としていますので、
HSPの方本人からご意見をいただければ助かります。

HSPとは

HSPとは
Highly sensitive person(ハイリーセンシティブパーソン)

の略です。

直訳すると「すごく敏感な人」ということになります。

この概念は、心理学者エレイン・N・アーロンが

2000年に発売されたこの本で提唱したことがきっかけで、世の中に知られるようになりました。
近年日本でもこの概念が広まってきたことで、関連書籍が多く出版されています。

この本の中で紹介されているHSPの特徴をまとめると

  • 外部からの五感への刺激に対する感受性が、他人より高い
  • そのため普通の人が気づかない細かいことに気がつく
  • 他人の気分の影響を受ける
  • 他人が不愉快にならないような行動をとる、つまり良心的である

ということになるでしょう。

一言で言うと「神経質で良心的な完璧主義者」と表現されています。

最初私がHSPの概念を知ったとき、「内向的」と重なるところが多いと思ったのですが、HSPの3割は外交的と言われています。
(参考記事:内向型人間が葬儀屋に向いている3つの理由 | 考える葬儀屋さんのブログ

またこれは精神疾患ではなく、単なる気質です。5人に1人くらいがHSPだと言われています。
この条件を満たせばHSP、という線引きがあるというよりは、グラデーションになっていると考えるべきでしょう。

繰り返しますが気質なので、治療が必要というわけではありません。

とはいえ、
この性質に無自覚であったり、うまくやり過ごせないと、本人にストレスがたまります。

HSPの葬儀屋さんの特徴

HSPの概念を知ってから、同僚の誰々はもしかしてHSPではないか、と思うようになりました。

ある日、HSPなのではと思っていた若い女性のスタッフから
「葬儀担当で精神的に疲れている」
という相談を受ける機会がありました。

会話の途中で、テーブルの端の方に置いていた私のアイスカフェオレを、彼女がスッと中央に移動したとき、思わず
「もしかしてHSP?」
と聞いてしまって
「(HSPを)知ってるんですか!実はそうなんです」と、
それから堰(せき)を切ったように、どれだけタイヘンかを彼女がずっとしゃべり続ける、ということがありました。

なんで「もしかしてHSP?」って聞いたかというと、
別のHSPの女性から
「HSPは細かいことに気がつくのと心配性なので、飲み物の容器がテーブルの端にあると、倒しちゃうんじゃないかと心配で、堪えられない」
と聞いていたからです。

さて私の考えるHSPの葬儀屋さんの特徴は以下の通りです。

○遺族評価が高い

共感性が高く良心的であるために、遺族のためにがんばるという姿勢が強いです。また細かいことに気がつくので、さらに遺族評価が高まります。

しかしサービス業には満点はありません。また大切な人が亡くなったという絶望的な事実を、葬儀屋さんはどうすることもできません。それでも「なんとかしたい」という気持ちを緩(ゆる)めずがんばってしまうと、気を遣うところが上限なく増えていくのも、この仕事の特徴です。

ここで、適当なブレーキを踏めないHSPの人は多いと思います。

○ミスが少ない

慎重で用心深い傾向のためだと思います。

×作業が遅い

HSPは、マルチタスク(並行して複数の仕事をこなす)が苦手な人が多いと言われます。葬儀屋さんは担当を、時には複数抱えながら、発注業務やったり、遺族対応やったり、供花の受注やったりで、マルチタスクが多いです。自分からこなすというより、タスクの方から自分に飛び込んで来る感じ。

そのためHSPはどうしても仕事が遅くなりがちです。

その結果が、残業時間が多い、つまり長時間労働につながります。それでなくても葬儀屋さんの業務は、時間に不規則で長時間労働なので、疲弊しがちです。

×精神的被害を受けやすい

相手の怒りに対する感受性が高いのもHSPの特徴です。

葬儀の現場は感情的。

自分が原因では無い遺族間のもめごとでも、ダメージを受けます。また上司というより「親方」タイプが幅を利かす葬儀社で働いていると、これも粗い言動の被害を受けてしまいがちです。

×バーンアウト(燃え尽き)を起こしやすい

以上の結末として(↓この記事でも述べていますが)バーンアウトを起こしがちです。リカバリーがうまくいかないと最悪の場合、仕事が続けられなくなります。

葬儀屋さんを4つのタイプに分けてみた

 

HSPの葬儀屋さんが職場にいたら

これは私の職場での話ですが、見回してみると業界歴10年以上の人に、HSP傾向の人は少ないです。
新人や中堅にはいます。
つまり、10年保つのはなかなか難しいということになるでしょう。

では最初に、現在自分の職場にHSPの人がいた場合(というか、5人に1人いるならほぼいるはず)
まわりはどうすればいいでしょうか。

HSPをどう克服するか、という議論はしません。
前述したようにHSPは疾患ではなく、気質です。そのため「治す」というのはそもそも不可能であり、本人に「どうこうしろ」というのも無理な注文です。
HSPの良いところを活かす方法を、考えるべきです。

そうであれば、まず
・周りのスタッフがどういう言動をとるべきか、
・組織としてどういう仕組みを作るべきか
という議論が必要です。

ファーストステップは、HSPがどういうものかまわりが理解するということでしょう。

次に、仕事が遅いことに関しては
チェックリスト等を作成し、極力業務を定型化して連携とスピードアップをはかる、という対策があるでしょう。

葬儀のミスを無くす方法

本当はオーバーフロー気味になっていたら周りが助けるというのが理想的なのですが、社葬は別として葬儀担当者業務は1人で完結が前提なので、それは難しいでしょう。

次に精神的被害を受けやすい業務を減らす必要があります。

例えばその葬儀社が分業制だった場合、打合せ業務を外して、葬儀進行業務専属にするという方法です。

HSPは

自分が心底いいと思える商品だと、自信を持って売れる。自分が好きじゃないもの、納得行かない商品を売らないといけないのは苦痛に感じる

という特徴があります。販売目標を立てられてキリキリ追い込まれるのはストレスが大きいでしょう。
葬儀進行専属にすれば、ストレスが低減できて、
前述した「遺族評価が高い」「ミスが少ない」という長所を活かせます。

それでもキツい場合は、職種変更で「セレモニースタッフ」や「墓石仏壇販売」や「ロジ(配送や倉庫管理)」などの職種に転向する方法もあります。
この場合、どういう形で葬儀業界業務に携わっていたいか、という本人の嗜好の問題がでてきますが。

コールセンターは、訃報受電やクレーム処理が入ってくるので、おすすめしません。

HSPの葬儀屋さんはどうしたらいいか

次にHSPの葬儀屋さんは、少しでもストレスを減らすためどうしたらいいか、を考えてみました。

まず「完璧を目指さないこと」と言いたいところですが、目指しちゃいますよね。

今の葬儀社の環境がしんどかったら、別の葬儀社に移るという方法もあるでしょう。
環境変えるのが一番効果的なので、ここではいきなり転職の話になります。

当然どこでもいいっていう話ではなくて、以下の条件を満たしている葬儀社を転職先にすべきです。

  • 労働組合がある・・・無茶な働き方に抑止力が働いている
  • 産業医面談がある・・・十分とは言えないが、一応メンタル面含めてフォローがある。
  • うつ病復職者がいる・・・メンタルに課題を抱えている人を、受容できている。
  • いろんな部門が内製化されている・・・前述した職種変更がしやすいです。

ざっくり言うとコンプライアンスがしっかりしている大手葬儀社、ということになるでしょう。

さらにスタッフが多いと、マイノリティとはいえ、HSPの組織化ができます。
例えば社員5名の会社で、1人だけHSPという環境は絶望的です。

もちろん大手なのに、上記の点がいい加減な企業がたくさんあるのが葬儀業界の怖いところです。
一方で他社の情報が入手しやすいのもこの業界の特徴なので、事前に情報をつかんでおきましょう。

 

それから今回の記事は、
「葬儀業界に入りたいけど通用するかな」
と迷っているHSPの方を不安にさせてしまっていることでしょう。

その懸念は私にもあります。
実際HSPと言っても気質の度合いにグラデーションがあるのなら
正直なところ大丈夫ともダメとも言えません。

あえて無責任なことを言わせてもらうなら、とりあえず10年の期間限定と思って働いてみる、というのはどうでしょうか。

前述したように組織選びは大切です。

 

HSPへの警告

余談です。

職業柄自殺者の遺族と話す機会があるのですが、精神科というのは、まだまだ医学とは呼べないというのが私の意見です。

もちろんうつ病治療等成功事例もたくさんあることも知っていますし、
精神という複雑怪奇なものを扱っている難しさも想像できます。

しかしその難しさゆえに、肉体を預かる医者と比べて、成果を問われることから免責されていると思うのです。

理由はどうであれ、患者にしてみれば治せない(もしくは寛解しない)なら成果を出せなかったということです。

こんな言い方をすると精神科医の方からお叱りを受けるのは重々承知の上です。

さて、HSPの話に戻るのですが、最近HSPの存在がどんどん世間に認知されてきたと思います。
「繊細さん」という呼び方をされることもあります。
自分がHSPであると自覚することで、逆に救われるという人もいることでしょう。

それに伴いHSP専門のカウンセラーも増えてきました。
しかし精神科医と同じく、いや、無資格でできてしまうためそれ以上に、能力に疑問符が付く人がいます。

既に私の職場を辞めた、私の仲の良いHSPの同僚が
この本の著者、時田ひさ子氏のカウンセリングを受けたのですが、
初回のカウンセリングを受けた後、次回のカウンセリングの予定も決めずにほったらかしだったとのこと。
同僚の側からコンタクト取って、初めて次回の予約を提示してきたとのことです。

「初回のカウンセリングのときも、やる気がなかった。相手が共感性の高いHSPなんだから、そんなの見抜かれるのくらい、わからないのかしら」
と同僚は憤慨していました。

警告をのため記事に追記して欲しい、との依頼を受けたので、加筆しました。文責は私にあります。

HSPには、人が良くてまじめで、深い悩みを抱えている人が多いので、食い物にされやすいです。

ご注意ください。











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