このところブルーオーシャンの話題を続けています。
でいよいよ本題。
ブルーオーシャンのフレームワーク(考え方の枠組み)を、
葬儀業界に当てはめてみたらどうなるのかっていうのに挑戦してみます。
これから述べることは、
この本を読んでもらうのが一番わかりやすいと思うのですが
サイトではこのページ(投資学研究室)がよくまとめていらっしゃると思います。
「いかに、競争のない新しいマーケットを探してコストを押し下げながら、
顧客にとってのバリュー(価値)を上げるか」
っていうのがポイントですね。
ERRCグリッド(別名 アクションマトリクス)
まずは「フォーアクションフレームワーク」の補助ツールである
ERRCグリッドを描いてみたいと思います。(別名 アクションマトリクス)
アクション・マトリックスとは、
現状の業界に対して、新たな価値が生み出せないか
を考えるための4つのアクションを表します。
■取り除く(除去)
業界常識として備わっているもののうち、取り除くべきものは何か
■増やす(増加)
業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
■減らす(減少)
業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か
■付け加える(創造)
業界でこれまで提供されていなかったもので、今後付け加えるべきものは何か
これを葬儀業界に当てはめてみたのがこの図。
一から私が考えたのではなく、一部現在の葬儀業界の傾向を織り込んでます。
それでは補足説明を。
まず向かって左側のエリア。
祭壇や寺院報酬(御布施)などにかける費用が減少傾向にあるのは、
皆さんご存じだと思います。
今は単なる「減少」傾向にありますが、
将来的には消滅(除去)になる可能性もありますよね。
実際直葬の場合は、全然必要としていない項目ですし。
次に右上、「増加」の項目。
霊安室の付加価値っていうのがちょっと分かりづらいかもしれません。
都市部では安置場所不足で、快適に遺族が過ごせる霊安室が人気なんですよね。
情報提供の増加に関しては事前相談、特に生前契約の部分が増加しそうですね。
で右下の「創造」の部分。
これらの項目はまだビジネスに成長していませんが
兆(きざ)しはありますよね。
「個別の演出」に関しては、故人の趣味や人柄をいかしたディスプレイなど、
一部の葬儀屋さんでは普通に行われています。
たまにやり過ぎもありますけど・・・(参照ページ:感動葬儀屋の危うさ)
「公的手続き」に関してはこちらの活動とか
それから「グリーフワーク」に関して GSI さんの活動とか。
最近宗教にグリーフワークのパワーが無くなってきていると思うのです。
そこを補完する代替品が必要とされているのではないかと感じます。
ただ「公的手続き」も「グリーフワーク」も、
大手の参入を防ぐ障壁があるかどうかですね。(零細企業目線での話ですが)
信託銀行の代理店も自由化されていますし(参照ページ)
「公的手続き」に税理士や司法書士を絡ませていくのであれば、スケールメリットが合った方が有効に機能すると思います。
「グリーフワーク」も、自助グループ的な活動を取り入れるのであれば、
これもスケールメリットがあった方がいい。
対象者が多い方が、レバレッジが効きますからね。
今後大手のなかでもフットワークの良いところがこれらの分野に参入してくると、
私は見ています。
このアクション・マトリクスを念頭に置きながら
次は「戦略キャンパス」を描いていきます。
戦略キャンパス
次は「戦略キャンパス」の話です。
(このページより引用)
戦略キャンバスは、横軸に顧客に提供する価値、
縦軸に顧客が享受するメリットの大小を示すグラフのことです。
戦略キャンバス上に、既存事業と新事業の価値曲線を描くことで
新事業の差別化のポイントを明確に表すことができます。
戦略キャンバスを描くことで、
ブルーオーシャン戦略のコンセプトを明確に表すことができます。
ところで
「顧客はなぜ葬儀を行うのでしょうか?」
葬儀屋とお寺さんが食べていけるように?
違いますよね(^^;)
葬儀の役割(機能)に関しては
葬儀概論では以下の様に分類されています。(葬儀概論P10~引用)
1. 社会的な処理(社会的役割)
2. 遺体の処理(物理的役割)
3. 霊の処理(文化・宗教的役割)
4. 悲嘆の処理(心理的役割)
5. さまざまな感情の処理(社会心理的役割)
6. 教育的役割
これらの項目を私なりに再構築してみるとこうなりました。
1. 社会的告知(故人が亡くなったことを知らせる)
2. 社会制度上の手続き(戸籍・相続などの公的な手続き)
3. 遺体保全(霊安室・ドライアイス処置・エンバーミング)
4. 遺体処理(火葬・墓や散骨などご遺骨の処理)
5. グリーフワーク for 故人(故人の魂の処理 宗教的儀式)
6. グリーフワーク for 遺族(遺族の悲嘆の癒し)
7. グリーフワーク for 関係者(故人を知る人の悲嘆の癒し)
これに「価格」という項目を付け加えて、従来の葬儀形態である
直葬
家族葬
一般葬
の機能を戦略キャンパスに反映させたのがこの図です。
補足します
社会的告知
社会的告知に関しては、
たしかに事後通知状や喪中葉書で後日知らせるという方法もありますが、
基本的には家族葬・直葬の場合告知を行いません。
社会制度上の手続き
この点においては、どの遺族も経験することにもかかわらず、
葬儀屋さん側からのケアが行われていないと思います。
遺体処理
火葬は葬儀の形態にかかわらず、基本的に行います。
お骨の問題は葬儀形態にほとんど関係なく存在するので、
形態による差はないものとします
(勝手に直葬して菩提寺ともめるというケースは別にして)
グリーフワーク for 故人
いろいろご意見はあると思いますが、一応宗教儀式が行われたことにより
故人の魂が昇華したと、解釈してみました
グリーフワーク for 遺族
お葬式の儀式的プロセスは、信仰の浅深(せんしん)はあるものの、
少なからず遺族の悲嘆を和らげる効果をもっていると思います。
その一方で、現代においては、宗教が十分な魂の救済の効果を発揮していないと、
考えることもできると思います。
そのため「中」の段階であると判断しました。
で、ポイントはブルーの円の部分。
このブルーの円の部分が、消費者に十分にバリューを提供できていないところですよね。
顧客にとってのこの部分のバリューをいかに上げるかが
今後のポイントだと思います。
ここで「アクション・マトリクス」と「戦略キャンパス」の説明が終わったので
次は
「6つのパス」について述べた後、
最後にブルーオーシャンの葬儀ビジネスモデルを・・・
といきたいのですが、葬儀業界のブルーオーシャンについての考察は
ここまでです<(_ _)>
なぜなら
自分が考え出したビジネスモデルをバラしたくないから・・・
というのはウソで(10%は本当かな(^^;))本当は
頭のいい読者にロジック(論理)の間違いを指摘されるのがこわいから(>_<)
ちょっと時間が空いて、自分が少し賢くなったと思ったら
また続きを書くかもしれません。
とはいうものの、いきなりここで終わってしまうのもなんなので、
本質的(と自分が思っている)お話しを最後に。
なぜ葬儀を行うのか
「顧客はなぜ葬儀を行うのでしょうか?」
言い換えれば顧客が大切な人を亡くしたときに求めているのは何か?
っていう命題です。
マーケティングの本でよく
「消費者が欲しがっているのはドリルではなく穴である」
という話をよく目にしますよね。
とすると
遺族が欲しがっているのは葬儀ではなくて・・・
「弔(とむら)いたいという本能の処理」
だと思うのです。
次世代の葬儀のビジネスモデルも
この本質に収斂(しゅうれん)していくのだと思うのですが。
(期待半分で)
いかがでしょうか?
私もそう思います。
数年前から具体的なアイディアもいくつか温めております。
固定観念のハードルが高過ぎて、まだ社内では披歴できないんですけどね 笑
前回の直葬、そしてこの度のオーシャンシリーズはとても論理的で示唆に富み、勉強になりました。
私自身の朧気な葬儀哲学を後押しして頂きました。
マーケティングの「消費者が欲しがっているのはドリルではなく穴である」は、実は自己矛盾です。
何故なら、穴を売ったら(穴をあけるサービスを提供してしまったら)、ドリルは売れなくなる。矛盾というより、自己否定ですよね。
穴を欲しがっている人には、ドリルは売れません。自分で穴を開けようとしている「意志」のある人にしかドリルは売れません。
問題なのは「穴」ではなく、どのように穴を開けたいかという「意志」だと思われます。
都内葬儀社員 様、コメントありがとうございます。
>数年前から具体的なアイディアもいくつか温めております。
私もアイディアだけはあるのですが、
現実に落とし込むパワーと知識が不足しておりまして・・・
生禿様、 コメントありがとうございます。
この話題にきっとコメントをいただけると、期待しておりました(^^;)
>問題なのは「穴」ではなく、どのように穴を開けたいかという「意志」だと思われます。
あー、なるほど。さすが「本業」の方ですね。
たしかに直葬を希望する人の中には穴自体を必要としないという方もいらっしゃいますね。
多分私の場合、ドリルを売りたいっていう気持ちが弱いのかもしれないです。
自分の知り合いの葬儀屋さんの中には、エンバーマーやカウンセラーや僧侶に転職した人がいます。
ゼロベースで考えると売るものは必ずしもドリルでなくてもいいや・・・っていう考え方をしてしまうのは、私が経営者の視点をまだ持てていないからかもしれませんね。
ブルーオーシャンだったはずが
瞬く間にレッドオーシャンに
特定の技術、装置が必要でない現在の業界には
難しい課題ですね。
異業種(イオン)参入も過去の延長線上でしかありません。
皆様の新しいステージでの「お別れの形」に
とても期待しております。
冠婚葬祭森羅万象 様、コメントありがとうございます。
> 特定の技術、装置が必要でない現在の業界には
> 難しい課題ですね。
たしかに、ゴージャスな自社会館っていう文脈が通用しなくなると
ハード面での参入障壁のある差別化ってもう難しい感じがしますね。